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[わなわなと、紅い瞳を怒らせて
歯軋りする歯に八重歯が鋭く]
ならば、一度食らわれて見るがいい、お前が見下すものが何者か、しかと知れ!
[言葉が終わる終わらぬかのうち、掌からはじけた蛍火が火の粉となってメイへ飛びつき、体を封じ]
夜斗、殺せ!
[瞬間、銀の目玉を光らせた闇色の塊が、猫の喉笛にくいついた]
縁たぁ異なもの味なものってなあ。
[月が透かした相棒の蒼い髪が揺れている]
そうさあ、
どうせ散るんなら愉しくさあ。
喰って千切って契って散るってな。
[宴は常と同じよう、
遥月眉を顰めれば]
約束賭けての死合いが
今の俺には大事なのさあ。
[笑み細めるのは金の眼で]
[仔猫の] [驚愕の眼差し] [受けて弧を描く] [隻眼の碧]
[小首傾げ] [常葉揺れ] [白粉の薫り] [広がる血の薫り]
厭だヨゥ、鬼ごっこはもう始まってるって謂ったじゃないかィ。
[狗の噛み付くに] [蜘蛛に捕われ] [仔猫爪を振るうか]
[ひゅうい] [動き鈍き仔猫] [月明りに映る糸が腕捉え]
[青司をじぃと見て、溜息。]
……左様で。
「男と男の勝負」とやらの美酒に酔い痴れたいならどうぞお好きに為さいませ。わたくし男の身なれども、生憎稚児と呼ばれる身。……其のような酒に酔い痴れる趣向は御座いませぬ。
わたくしは万次郎様の「見る」力を頼りに、狩人を捜し出しとう御座います。
[くるりと向き直り、万次郎に問う。]
……しかして万次郎様。
あれより狩人の影は見えましたか?
[夜斗に食いつかれ、喉から血を吹くメイへ更に追い討ちかけんとし]
お前らのような化け物に見下されるなんて…僕も堕ちたものだね?
侮辱してくれた礼は、たっぷりさせてもらおうか?
[両掌の蛍火はそのまま蒼い炎となり、メイの体を炎に包む]
焦げはせぬ。傷もつかなぬ。
しかし、そのまま死なせもせぬよ。
[炎の熱さはそのままに、死んで意識を閉じることもできず、ただのたうち回るメイを冷ややかに。真理へ瞳をくるりとむけ]
…あぁ、そういえば…いらっしゃいましたね、翠のお方。
[ぷかり]
[泉の中心に仰向けに浮かび]
[見るともなしに月を見て]
今は何刻じゃ――それもようわからぬ。
[たゆたう衣を掴み取り濡れたままに羽織れば、
付いていた朱は滲んでいて模様のようにも見えて]
動きにくいのぅ……
[数珠から一つ珠を抜き緋が煌けば、朱色混じりの衣の水は
珠の中へと吸い取られて、それを潰せば滴り落ちる]
さてはて……刹那の宴を今宵も愉しむか――
[ちっとも愉しくなさそうに]
あの火で苦しんでも死ぬことはできませぬ。
魂が、抜けられませんので。
後はご自由にされてください。
あぁ、狩人があんな猫に侮辱されるとは。
[歯軋り未だ止まらず]
[夢中で仔猫を甚振る少年] [向き直るのにコロコロコロリ]
[ひらり] [ひら] [ひら] [赤黒の華咲く沫絞りの浴衣の裾]
[黒き蝶] [現れ] [悶え苦しむ仔猫の回り] [飛び回るか]
嗚呼、居るさァ。
紅ァい紅ァい血も綺麗だが、こン炎も綺麗だネェ。
命の姐さんの魂をお呉れかえ?
やれやれ、稚魚か。
鯉に成るか鮒になるか。少しばかり楽しみよのう。
万次頼るなればしっかり見ておくのだな。
任せきりでは何処に流れてゆくか判らぬままじゃぞ。
[さらりと顎撫でる手は傷だらけのまま
月の顔覗いてからから笑う
カラコロ下駄音、そちらを見れば白の姿に薄く笑む]
かっかっか。赤鬼青鬼の約束賭けての約束事よ。
ふむ、白にも約束ひとつふたつ在ったな。
赤鬼に腕でも食われれば絵も描けぬ。
ひとつさきほどの約束果たすか?
猫の魂なぞ足しにもならず。
捨て置くだけですゆえご所望ならどうぞご自由に。
[夜斗は命の喉笛食いちぎり、血が噴出すが、蒼い火と紅い血はそれはそれは鮮やかに]
そうかィ、其りゃさぞ難儀だろうネェ。
怒り冷め遣らぬならもう少し此ン侭にしておくかえ?
[小首傾げ] [ニィと笑み]
でももう魂が喰らいたくて我慢出来そうにないヨゥ。
―現在―
[いつからか
相もかわらず宴の席に。
童一人欠けた宴の席に。
月の問いには ぼぅ として一呼吸おくれた返事を]
あ、…―――ああ。
昨日の明け方、狩るモノが一疋視えた。
…――…司棋―――、彼奴は狩るモノ。
其方等に確かめる術は在るまいが、我は確かにそう視たのだ…。
[僅かに沈んだ表情で、懐より盃を―――]
[返事も待たず] [黒き蝶] [仔猫の胸元に張り付き]
[途端] [仔猫倒れ伏し] [猫の姿へと戻るだろうか]
さァ、漸く魂が喰えるヨゥ。
[舞い戻る蝶] [白の手伸べ] [そぅと引き寄せ]
[黒き蝶は白の太腿へ戻り] [持ち帰った魂] [薔薇色の唇寄せ]
[目覚めし蝶] [白い肌を舞い] [眼窟を覆うに] [眼帯の如く]
[遊螺り] [翅揺すり] [白の面に蠢き] [薔薇色の唇] [戦慄く]
―――嗚呼、嗚呼…
[黒き蝶] [眼窟の闇] [解かす様に] [妖し光灯す]
[深い深い] [底知れぬ] [闇色の眼] [創り出すか]
約束を賭けた約束事――妙なことを言うのぅ。
まぁ、愉しそうなのは良いことじゃ。
[首を傾げて藍を見て]
約束事か――
[少し思案顔][瞳の緋は一瞬暗くなれど]
[いつものような笑みを出せば]
それも良いのぅ。
今宵は宴の気分でもないからのぅ。
[手に持つ魂] [ひとつ] [揺ら揺ら] [揺らめいて]
[眇める双眸] [碧と漆黒] [弧を描き] [妖しの光]
命の姐さんの魂は要らぬかえ?
夜斗は魂喰らうかネェ。
[小首傾げ] [夜斗を見遣る]
………稚魚。
[ピクリと眉を動かし、青司を凝視する。]
ええ、ええ。
所詮わたくしは男にも女にも為れぬ半端者。お好きにおっしゃればよろしいでしょうに!元より揶揄され石投げられるがわたくしの運命。それを良しとして何が悪い!
貴方様にわたくしの運命を馬鹿にされる筋合いなどありませぬ!
[怒りで唇はわなわなと震え、歯をギリリと強く噛む。]
……嗚呼、口惜しい。憎たらしいことこの上なし。
貴方なんか、殺し合いで死んでしまえばいい!!冥府で己の愚かさを恥じればいい!!
[杯を地面に叩き付け、肩をわなわな震わせて居る。]
いえ、腹の足しには出来ましょう。
用が済みましたら夜斗にも適当にくれてやってください。
次は…誰を食らってやりましょうか…
既に僕の面は割れました。
誰でも、同じでありましょうから。
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