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ああ、見事さあ。
相棒も碧も、皆酔いしれるくらいにな。
[隣で浮かぶ誇る笑顔に、赤鬼頷き答えつつ]
怒ってんのはどうしてだろうなぁ。
待ち人が居るようなこといってたがなあ。
ああ、あいつも咲けねぇ花なのかねえ……
[ふわり][広がる][水の波紋]
[さらり][湧き出る泉を掬い]
泉で戦れる機会の方が少ないじゃろうな。
[小さな珠を無数に作り]
[腕に絡める数珠となろうか]
鬼さんこちら――
[くすり][くすくす] [愉しそう]
[なれど緋色の瞳は矢張り*寂しそうで*]
手の鳴る方へってかえ?
なンだい白水の姐さんは恋煩いでもしたンかえ?
少し泉を貸しと呉れヨゥ。
[白の少女の泉借受け] [水浴び済ませ] [紅引いて] [一服済ませ]
もゥ好いかえ?
もゥ少し、未だ未だ足りぬ、未だ足りぬさァ。
[ぱしゃり] [水面叩き] [紅と黒] [夫婦金魚] [寄り添い離れ擦違う]
刹那に遊べりゃ其れで好いヨゥ。
[青い空] [紅い番傘] [くるうり] [陽光の下] [蜘蛛の巣見えず]
[赤黒の華咲く白の浴衣] [袂揺らし] [カラコロカラリ] [下駄の音連れ]
おや、昼間っから酒盛りかえ?
[僅かに頭を傾けて]
[まなこ半眼に思案顔。]
そうか。あれにも待ち人が……。
咲かぬ桜か、咲けぬ桜か。
噂は詳しくは教えてくれぬもの。おれもつい先頃まであやかしなどどうでも良かった。
開耶の噂もどうして耳にしたのやら。思い出せぬ。
[番傘差した浴衣の女、言わずと知れた常盤の髪。]
常盤の女君か。
花咲かす以外は、これしかすることが無い故に。
[笑んでまた、独り占めに抱え込んだ瓢の酒を呷る。]
[はらり散り落つ涙雨。
地に落つる前に触れたのは]
……何ぞ。
…やれ、斯様に殺さるるを見て未だ懲りぬか。
人の姿に寄らねば良いに。
[琥珀の足下、百鬼夜行。
さて今は夜に非ずば百鬼昼行か]
やれ…面倒な。
[ふぅわり降りる茶、散る雫。
拭わぬままにつぃと見て]
……我は今、気が悪い。
逃してはやらぬぞ。
[取り出す扇荒く開きて、噎せ返る程に幻香]
琥珀本人が叫んでたのさ。
辺り一面紅色の花に帰る幻を見せてなぁ。
ありゃあすごい香だったな。
[何が分かると悲痛な叫び、
さて今も泣いている]
喰って喰われて塵となり
待って待たれて忘れも出来ねぇか。
ヒトに関わるな、
そう謂いつつもヒトから変じたアヤカシも居るだろう。
結局のところ切っても切れねぇ腐れ縁なんだろうなぁ。
[一夜経ち] [蛍火消え失せ] [隻眼の碧] [弧に笑ませ]
[赤鬼] [黒鬼] [飲む様眺め] [ひらりはらり] [傘に積もる花弁]
赤鬼も今日は大人しく酒盛りかィ。
咲き乱れて酒なンざァ好いじゃないかィ。
打つはもう出来ぬし後は買う変わりに抱くくらいかえ?
鬼ごっこなんてェ遊びもあるネェ。
[戯言零し] [小首傾げ] [揺れる常葉] [ニィと笑み]
[白い喉逸らし] [番傘くうるり] [仰ぎ見る桜] [隻眼眇め]
少し歩いて来るかネェ。
佳い宵にゃ酒も貰いに来るヨゥ。
[歩み止まらず] [しゃなりしゃなり] [下駄の向く侭] [気の向く侭]
さて…如何割いてくれようか。
[緑湛えし林の樹、香に薄紅塗り替えて。
はたりはたはた落つる雨。
天も暗き暗雲に覆われて]
花に触れれば割けようぞ。
雨に触れれば貫かれん。
我が生むは幻なれど、この現夢(ゆめ)は真なれ。
[遠く逃るる妖も在ろうか。
なれど薄紅からは逃れられぬ]
さあ…せめて麗しく緋を散らすが良い。
[ざぁと風啼き花嵐。
舞う薄紅はくれなゐに。
風啼き声に混じるは断末魔]
血肉は昨日撒き散らしたからねぇ。
やつら遠巻きに唸るだけさあ。
抱くかあ、碧は抱かれちゃくれねぇかい?
鬼ごっこなら本気出さねぇとなぁ。
[かえす戯言にやり笑い。]
ああ、また酌してくれやあ。
[しゃなり歩くその背中
見送り金の瞳は光る。
*いよいよ空は青くして、赤の映える色合いだ*]
アタシァ買うにゃ高過ぎるさァ。
遊ぶにゃ未だ未だ足りないヨゥ。
[背に聴く戯言] [返す呟き] [林に踏み入り] [届く断末魔]
[微か漂う香] [鼻先擽り] [遠く見える] [紅く散る異形達]
この香りは開那の兄さんかえ?
鬼ごっこでもしておいでかネェ。
[どぅと倒れる一つ目鬼。
香の無きから見れば、百鬼は何もせず倒るるように見えるのか]
[ぱちんと扇閉じれば香は消え。
薄紅消えて雲消えて。
後に残るはくれなゐのみ]
[不意に届く音、知る声に。
すぃと其方に顔を向け]
[茶はいつしか緋色に染まり、頬の雫も乾き消え]
…やれ、常盤か。
[眺めて居る内] [香り治まり] [声に応え] [番傘くるうり]
[緋色の姿見] [ニィと笑み] [躯踏み付け] [血溜りに立つ]
随分と派手にやらかしてるじゃないかィ。
ご機嫌斜めかえ?
[半ば緋色の扇を懐に。
肌の露を指で伝えばぬるりくれなゐ]
…礫投げらるるが面倒になっただけよ。
[払いて落つる筈も無し。
落ちぬ手のくれなゐ、人の姿の舌で拭う]
開那の兄さんは鬼ごっこも面倒かと思ってたヨゥ。
[ぴちゃり] [血溜り一歩] [踏み出し]
[ぬらりと染まる姿] [隻眼の碧眇める]
旨いかえ?
ああ面倒だ。
なれど妖たちは放っておいてくれぬ。
捨て置けばいつまでも投げられよう。
消せば投げらる数も減るかと思うたまで。
[拭う口許緋に染まり。
歪んだ紅のようにも見えようか]
やれ…旨いなぞ思わぬ。
放っておけば固まり動き辛くなろう。
追われりゃ逃げると謂った筈が気が変わったンかィ。
刹那に散り逝く妖しの血は綺麗だったヨゥ。
[コロコロコロリ] [軽やかに笑い] [歪む紅] [映す隻眼]
白水の姐さんの処へでも往って来りゃ好いさァ。
血塗れた形は旨そうだヨゥ、舐め取るンなら手伝おうかィ。
幾ら逃げても限が無い。
逃げるるも面倒になった。
[碧隻眼眺め遣り。
つぃと左腕差し伸べて]
斯様な妖の血で泉を染めるは好まぬ。
舐めたくば舐めるが良い。
我を喰らおうとせぬならな。
[有塵と喰児の会話を聞くか聞かずか、遥月はひとり思念の海へ―…]
ふふっ……司棋様。
わたくしの紅をたいそう怖がられている様子。ならば毒の正体を教えて差し上げましょうか。
わたくしの毒の正体は……わたくしの精に御座います。身体中に廻らされた毒を、愛され抱かれて流し込む……ふふっ。至極単純なことでございましょう?紅には、それをひとたらし、ふたたらし……ほんの少しだけ混ぜているだけのこと。
ですけれどね、流し込むだけでは只の精。『或る言葉』を囁くか、其の言葉を恋われた相手に囁かれるかせねば、毒は毒として意味を為さないのですよ……。
それがわたくしの呪いの畏ろしさ。契りたくても契れぬ因果。恋うたくても恋えず、しかし恋われる程に相手の精は甘美な味を成す……。つくづく因果なものでしょう?
わたくしの身体の呪い……其の畏ろしさは、恋うて抱かれて知るのです……。
どれも是も面倒たァ相変わらず難儀だネェ。
[伸べられる左腕] [血塗れた面] [交互に見遣り] [ニィと笑み]
[白い手伸ばし] [そぅと紅い手取り] [軽く歯を立て] [手を解く]
噛み付く前に謂われちゃ仕方ないかィ。
弱い奴の血なンざァ旨く無いから遠慮するヨゥ。
[紅差す唇] [ぬらり] [更に紅く染まり] [ちろり] [紅い舌這う]
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