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恋路とは無縁…
[ころころと軽やかに笑う女に真剣な目で言う]
諦めては駄目じゃ、おぬしは中々美しく見える。
芸者とやらでなかろうとも、ほれたはれたくらい言うても良かろうよ。
[慰めや応援など到底必要のない美人に向けて言い終わると、自分の言葉にうんうん頷いている]
ノロイ?
そう言えば屋根の上へと跳んだとき、ますます身の軽い元の姿へ戻ろうともしてみたが叶わなかった……それがノロイかの。
白金の狐が言うておったことと関わりあるか?
[赤鬼が買ってきてくれるとの言葉には、ニコリ微笑んで]
[泉の水で身体を満たした遥月は、髪から零れる滴を指先で掴むように拭う。]
……ああ、何やらまた妖し達が騒がしゅう御座いますねぇ……
[ちゃぷん、とひとつ水音を。]
[下駄の音をカラリ鳴らしてやってきた女の髪は白く、瞳は紅い]
おぉこれは…少しばかり似ている。
日の光の下で見てもわらわにはやはり、白い髪も紅い瞳も美しく見えるがのう。
[簪の女に話しかける青い着物の女を無遠慮に眺めていると、名乗られて]
これはこれは、おぬしは礼儀を知る者だな。
うん白水、わらわは一度聞けばちゃんと名を覚えるのだ。だからおぬしの名も……おおっ?
[着物を脱ぐや泉の中に沈んで行った女を面白そうに暫し眺めながらも、手を振り見送った]
[はふ、と息を吐き]
[すっかり据わった眼で流し目をくれながら]
……水浴びか。
そんなものはこんな身の上になってからは一度もしたことがない。
それも……面白いやも知れぬな。
[くつくつと喉を鳴らす。]
衣は脱げるものなのかな…?どう思う。
[何がそんなに可笑しかったのか、笑いの発作に襲われたらしく一頻り引き攣った笑い声を上げた。]
[命の顔] [見詰め] [長い睫毛] [幾度も瞬き]
[コロリ] [コロコロ] [コロコロリ] [一頻り笑い]
有難うネェ、命の姐さん。
けれどアタシァ刹那に遊ぶ者、袖触れ合う瞬間しか判らぬから、惚れた腫れたは謂う間が無いのさァ。
ノロイじゃなくて呪(まじな)いだけどネェ。
どっちも似た様なもンかァ。
御狐様の結界と祀りに紛れた狩る者のせいで人型を模る呪いが解けずに何人かは難儀してるみたいだヨゥ。
[引き攣った笑い] [黒鬼を眺めつ] [団扇を帯へなおし]
嗚呼、喰児の謂う通り水浴びも好いかもネェ。
酔い醒ましにもなりそうだヨゥ。
其れが衣なら脱げるんじゃないかえ?
尤も、有塵の兄さんの何処までが本体か判らないけどさァ。
[ざわざわと声がする方へ、ゆらゆらとした足取りで歩む。]
……おや、皆様。ごきげんよう。
[滴り落ちる水が、露になった胸の蝶つつとをなぞる。結城紬をしどけない様子で羽織った遥月は、いつもどおりに挨拶を。]
>>457
…下手とは言うてくれるな。
木登りを始めてまだそれほど日々の過ぎたわけでもないが、それでもわらわほど上手く木に登れる妖が他にいようか?
[ぷっと頬を膨らませていたが、喰っちまおうかと思ったという言葉に目をまん丸にする]
なんともはや、食い意地のはった男よのう。
さては、それほどの体になったはいいが…それを保つには、四本足ならば全てを食らうといったほどの覚悟の生活が必要か?
[それでも頭を撫でられるとくすぐったそうに喜んで、それから喰児の肩に片手を置きながら飛び跳ねると、メイも彼の頭を一撫でした]
お返しじゃ。食べ物はやれぬが、これくらいならいつでも言うが良いぞ。
おやおや、そちらの可愛らしいお嬢さんは?
[紅を纏わぬ視線を、そっと見知らぬ少女に向ける。]
妖しと獣のにおいが致しましてね……。しかし司棋様のそれとも違う。嗚呼、何かと思えば、こちらの方かと。
[唇に白い指先を寄せ、くすりと笑った。]
[覚えある声] [移す視線の先] [なぞられる胸元の蝶]
[ゆるり瞬いて] [一拍の間] [何時も通りにニィと笑み]
遥月の兄さんは今日も色っぽいネェ。
>>458
暑い?
[何の衒いもなくはだけた胸元を覗きこんで、汗ばんでいるのを見て取ると]
うむ、確かに。その飲み物のせいならば、泉の水でももらって口に…
[親切な助言虚しく、有塵は煩いと自分を切り捨ててきていた]
何?名を訊かねば、どうわらわを呼ぶつもりだったのじゃ。妙なことを言う男よのう。
[世の中の誰も彼も自分のことに興味があるに違いないと信じて疑わぬ顔で目を瞬く。名を聞けば]
そうか有塵。そなたのことはともかく、その桜の花弁は気に入ったぞ。
[そして猫は苺飴を食うかねという喰児の言葉に]
これそこの、わらわのことはメイと呼ぶが良いぞ。
イチゴアメなら、もちろん食うてやるとも!
どうかねえ、気分しだいさあ。
[素直な赤鬼、さてどんな。
可愛いものではないだろう]
碧がそうなんなら俺ぁまた飴を持っていくさあ。
ついでに酌も頼むさ。
やはり碧が注いだ酒は旨いからなあ。
色恋沙汰と無縁たぁ勿体ねえ勿体ねえ。
[笑えば風に雪洞揺れて]
ああ、そういや名乗ってなかったかい、メイ。
俺ぁ喰児。
好きに呼びな。
いいええ。
時折、着物を纏うのが煩わしくてたまらない心地がするだけで……。
[常盤を見て微笑みを浮かべる。そして、再び観察するように少女に向き直った。]
……貴女様も妖しの方ですね。
わたくしは遥月、以後御見知り置きを。
[吐く息酒の香漂って、
薄紅さした黒鬼に]
そうかい、そりゃ勿体無いぜ。
水浴びはなかなかに気持ちがいい。
ひいやりしてな。
櫻も喜びそうなもんだ。
[さて衣は脱げるのか、聞かれてふと思い立ち]
脱げるだろうさ、
なんだい、脱がしてやろうか?
[にいと悪戯に笑って見せて]
おや、遥月じゃねえかい。
水浴びの帰りかい?
艶っぽいねえ。
この姿のどこまでが本身かおれにも分からぬよ。気にしたことも無かった。
本体は薄墨桜にある故に…人に変化する化生とは違おう。
[酔いに潤んだ眸を白面の若衆に向けて]
またひとり増えた。
ああ、有塵様の衣を剥ぐとは面白そうですねぇ、喰児様。
それを為さる時は、わたくしもお呼び下さいませね?
……ふふ。冗談ですよ。
[ひとつカラリと笑い、道具箱から紅筆を取る。鏡に向かい、男はスッと唇に紅を。*]
きっと可愛いだろうネェ。
[赤鬼相手に] [冗談か] [本気か] [謂ってのけ]
[小首傾げ] [揺れる常盤色] [白い指がかきあげ]
今は食べたばかりだから飴は遠慮しとくさァ。
酒くらい幾らでも注ぐヨゥ。
結局昨日は盃も使わず仕舞いだったしネェ。
素気無くされたら寂しいじゃないかィ。
其ンなら今だけ味わう方が好いヨゥ。
[遥月の声] [向き直り]
窮屈なら脱いじまっても好いんじゃないかえ?
アタシァ自分の肌ァ晒す気は無いが別段人がどんな格好でも構ャしないヨゥ。
ははは、登るのは上手だが降りるのは下手だろう?まさに猫だぁな。
高いところに登って降りられなくなった猫を
俺ぁ結構知ってるぜ。にゃぁにゃぁ啼いてなあ。
[猫は頬を膨らます。にやにや笑いはそのままに]
俺ぁ大喰らいだからなぁ。
謂うとおり、こんだけでかいと矢張り燃費が悪ぃやあ。
四本足だけじゃなく二本足でも喰うけどなぁ。
[軽口叩いていたところ、ぽんと頭を撫でられて]
ははあ、
撫でられたのは久方ぶりな気がするぜえ。
よく届いたな、さすが猫。
気が向いたら撫でてもらうかあ。
[にぃと笑めばまた撫でて]
それはますます、食べ応えのありそうな!
[林檎飴もあると答える真理に、良い情報を聞いたという顔で頷いて]
なあに喰い意地のはったオニなど、伸ばした手をぴしゃんと叩いて、わらわが説教のひとつもしてやれば大人しくなるじゃろう。
ならなければ木の上、風の向こうにでも避難。
誰がわらわに追いつけようものか。
[自身は何ひとつ心配しない顔で、からから笑う]
[笑う中にもちゃぷんと水音は耳に届いて、遥月に目を向けると]
髪までも沈むほどに浸かって水浴びか…偉いのおぬし。じゃがちゃんと洗いはしなかったな。
[胸の蝶を指差して]
ほれそこ、まだ汚れ…にしては見事な模様じゃ。
[緋の鬼の言葉は戯言と聞き流したものの]
[遥月のそれは気になったらしく、酔眼で睨み据え]
……おれの衣を脱がしてどうするつもりだ。
おまえのは冗談にならぬ。
[そう思うのは万次郎への仕打ちを見てのことか。]
いくら素直になっても
こんな大の男が可愛いかねえ。
[顎に手を当て思案の振りを]
そうかい、そんじゃぁ酒だな。
昨晩は悪かったなぁ、折角持ってきてくれたのによ。
[素っ気無いのは寂しいと
碧の鬼は謂って笑む]
それもまた駆け引きのひとつさぁ。
大体何でも愉しいねぇ。
[袖と袖を合わせては、遥月の言にくくくと笑い]
有塵も紅をさして貰やぁいいのによ。
似合うぜきっと。
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