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[青鬼の赤の杯][とぷとぷとぷり] [命の水が満たし]
おや、そうかィ。
少しは愉しめそうかえ?
[赤鬼] [悪びれず] [薔薇色の唇] [僅か尖り]
唇が無くとも声は出るンだろうさァ。
喰って喰われる筈が喰うのが惜しけりゃ喰児は如何するンかえ?
さて、それは聞かねばわかるまい。
[右の手開けば歪み花。
傾けるばゆらり歪に舞い落つる]
それは薄墨に聞くが良かろう。
我に他の桜なぞわからぬわ。
[常盤が赤に吸われるを、気の無い琥珀は見送りて]
[酒を飲む薄墨の姿は童の如く。
漸く己を捉える薄墨に息吐き]
…やれ、増えてすまぬな薄墨。
桜は其方がおる、我は無粋か。
やれ、去ぬべきか。
[溜息琥珀に笑みながら]
蜜を受けるにはそれなりの器が必要ってぇわけかい?
怖いねえ、遥月は。
[くくくと笑って櫻を掬う
花びら藍にひらひらかけて]
両方さぁ、相棒。
俺は炎と血とで出来てるのさ。
お前が纏う藍とは真逆の色だぁな。
さあて、呑むといった万次郎は何処までお散歩かねえ。
猫の気まぐれにつき合わされちゃいねえかなあ。
[ついと座る影に目を向け]
よう、嬢ちゃん。
片付けはすんだかい?
わらわなら、翻弄のうちに仕留めるといった形になろうからなぁ。
得物とあわせてと言いながらも、その力でねじ伏せることに憧れもするのじゃ。
ふむ、店主も機嫌良く見送ってくれた。
万次郎は店を使うことには手慣れておるのじゃな。
興か。宴の興には事欠くことも無く良いことじゃ。
舞、唄…癪ながら犬めの蛍光、さてさて今宵は?
代金を渡したものが自由にして良い、か。
ううむ酒のみならず、店主を扱うこつについても得たようじゃ。共をして良かったわ。
[楽しげにこくり頷いて、共にこれから酒のもたらされるはずの宴の輪に戻っていく]
[ぺたりぺた。下駄は未だ社の縁下近くに転がっているらしく裸足。
賑わいが耳に戻れば、翡翠の少女の手を離すか]
それ、調達して来たぞ。呑め呑め。
我も呑む。醜態を晒さぬ程度にな。
[片手の封を切っていない瓢箪を酒宴の輪の中心へ持ち寄り
とす
と置いた。輪に加わり、手にしていた瓢箪を呷りながら]
メイよ、先の"面白いもの"でもためしてみるか。
それとも、酒が先か。どちらにする?
[どちらにしても己にしてみれば愉しいのだろう]
香が強いなァ謂っても仕方ないしネェ。
ほゥら、そんなに拗ねないでお呉れヨゥ。
そンなら次に夜斗の腹が減ったら猫を喰わせりゃ好いさァ。
アタシァ止めやしないヨゥ。
[地より毀れるは呆れ、気にする様子も無い藍]
かっかっか、天とは気儘なものじゃろうて。
元より主様にお咎め尋ねに来た次第。
三つも四つも変わらぬわ。
己が道は己が裁量、その時はその時よ。
左様、見分ける術、狐様すら無くば
食うか食われるか、食ろうて見ても判りはせぬ。
味も忘れたとは地は霞でも食らうて生きてきたか?
[常葉より満たされる杯、くいと煽る]
少しばかりか、己は愉快でたまらぬわ。
そうかィ、じゃあそう謂う事にしとこうかネェ。
司棋の兄さんが気に入らぬなら狩ってしまうが好いヨゥ。
猫が旨いかは判らぬが其ンで司棋の兄さんの機嫌が直るなら易いもンさァ。
アッチの意味で喰ってみるかぁ。
[などと嘯き常盤を見れば]
結局喰うってことかもなあ。
いや、喰う専2人なら共倒れになっちまいそうだが。
相棒が骨を拾ってくれるらしいからなぁ。
[藍色の男肩越しに]
消えるときぁ俺も骨ぐらい拾ってやるかぁ。
お、酒の到着かい。
そうじゃな……同じである方が不可思議となるかのぅ。
[藍の言葉に小首を傾げ]
有為転変の世の中よ――
変わらぬものなぞどこにもありはせぬように。
[瞳は僅かに揺れようと]
[浮かぶ表情(いろ)は笑みばかり]
妾は妖し――ヒトを狩る立場ゆえに其の裁量を量る者。
我が身に憶ふるはそれこそ罪じゃ。
[難儀なことだと苦笑をもらす]
いやですねぇ、喰児様。……好い器だなんて、そんな。
[カラカラ笑い、手をぱたりと縦に振る。]
相手がわたくしを愛する程、食らった時の味の佳さは増すのですよ。
嗚呼、人も妖しも、初対面の相手にいきなり恋ができましょうか?まして相手は無粋な子鬼。味を出すのはどだい無理……。そうではございませんか?
[少女の様子に薄く笑み]
――水でよければここに有る。
妾が口をつけたあとで良ければな。
[沸き出でる泉の清浄な水――酒とは違う命の水か]
汝れには名乗っておらなんだか。
妾は白水じゃ。汝れは何と申す?
[己が名の混じる遥月の声にゆるり琥珀向け]
永久の間は天より落つる雨ひとつ。
更にいうなれば刹那の酒か。
血肉など無くとも生きられよう。
[つぃと瞳は赤の娘。
いつぞや泉の傍に見た姿か]
嗚呼。一つは既に空きつつあるが、そちらは未だだ。
手さえつけておらぬ。
[赤鬼へ、瓢箪片手に両手を肩辺り迄持ち上げて見せ]
是が無くなれば判らぬが、
無くならぬ限りそちらには手を出さん。好きにしろ。
[到着、の言葉に軽く頷いた]
おやそれが面白いものなのか?
[注意深く観察する目を瓢箪に向けるが、別段面白いことは見つけられなかったようだ]
ううん、酒宴の輪の中へ置いたそれと同じものとばかりに思っていた。
気をつけてみても、やはりそう見える。
おお…そうじゃなぁ。
[尋ねられれば、光を反射する瞳をきらりとさせて]
わらわはな、楽しみは最後にとっておく者でも、一番にその楽しみに飛びつく者でもないのじゃ。
わらわは全ての楽しみを一挙に楽しむ者。
さあさ酒でも、その面白いものでも一度に全ての面白きを以て、わらわを楽しませるが良いぞ万次郎。
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