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[カラコロリ、下駄の音に見上げる藍の目
花散る向こう白の姿に目を細める]
咲いた桜に陽はあらぬか。
[いつぞやの答えにそう問うてみる]
[常盤色の声がふと聞こえ、猫の救出終わったかと一目みやれば片目失う君のかんばせ]
…!どうされました、その傷は…。
[思わず指で頬に触れ]
―社の裏手、井戸の縁―
[水で清めた身体を灰色の結城紬で包み、遥月はふぅと溜息をつく。]
……ああ、嫌ですねぇ。せっかくの気に入りの着物だと申しますに。
[道具箱には、毒紅の器。
先ほどの乱行ですっかり無くなったそれを、誰にも見られない場所で作りたいと思った遥月は、人知れず井戸の縁で毒紅を調合していた。]
そろそろ皆様お集まりですかねぇ。
顔でも出しますか……。
応、相棒。
そろそろ宴の時間じゃろうて、来てみたが
桜あればつい見てしまうものよ。
咲くは本懐、散るも本懐。見ずして何の桜かのう。
醜いなどとは。
ただ、あまりにも痛々しく。
[その顔は、母親を心配する子供のように]
僕のこの眼は理由があり。いつかお話する時もありましょう。
はて、翠ではなく別の瞳をお望みですか?
なんなりとお望みの色をお出ししまする。
呪いなぞかけぬまま、お美しくあればよいものを…
[すこぅし、悲しげに]
[幻香の塊背後に置きて。
ゆぅるりゆるり歩き往く]
やれ…ひとつふたつ当たろうが痛くはないが。
喰われてしまうは好みはせぬ。
やれ、面倒な。
[落としたひとつ礫を蹴りつ。
やがて現るは昨夜の宴場]
……やれ、此処でもか。
面倒は付き纏うようだな。
[緋く緋く地は染まり。
未だ乾かぬ緋も在りて]
[赤の少年] [頬触れる指] [睫毛震わせ] [柔らかな笑み]
[白い手] [そぅと伸ばし] [頬触れる手掴み] [小首を傾げる]
喰ろうただけさァ。
隻眼のアタシにゃ華はお呉れで無いんかえ?
メイは其方を、昨日よりひめ、ひめと慕っておったではないか?
[片手の指、己の顎を撫で]
さて、そのかんばせより大切なものとは如何に。
[気まぐれな問いをひとぉつ常葉に投げかけた]
[助け上げた手をそうと離し、翡翠の髪を撫で梳きながら]
メイ、其方もじきに狙われるであろうよ。
雑鬼どもが騒いでおるでな…。この染みも、あれらのモノ。
臭うか?それとも、心躍るか、どちらだろうなあ?
[くつくつ。着替える気はさらさら無いらしい]
[心配そうに眉ひそめ]
いいえ。君が望まれるなら星でも差し上げまする。
この眼えぐった時は、さぞかし痛かったのでありましょうか?
[酷く悲しげに呟いて]
そうだなぁ。
見られりゃ櫻も本望だろうさあ。
見事だねえ。
[青鬼謂えば頷いて]
そろそろいい時間だねえ。
どうだい、先に一杯やっとくかい?
痛く無いたァ謂わぬけれど堪えられぬ事も無いから大丈夫さァ。
心配かけちまって御免ヨゥ。
[子供の様] [優しく髪梳き] [宥めるか]
さて、何時聴かせて貰えるかネェ。
眼で見えずとも気配は判るから不自由はないさァ。
司棋の兄さんの眼の秘密を訊いてから入れる眼の色を考えようかィ。
誰彼構わず触れられる様なもンは美しくなんて無いヨゥ。
易々と触れさせたアタシも触れた相手も腐れれば好いのさァ。
[哀しげな様子] [見詰めて] [隻眼] [柔らかく弧を描く]
咲かぬは陽、咲くは灯、白の言葉も謎かけのようじゃ。
では散るはなんとする?
[白、首かしげ。揺れる袖には滲む赤黒。
ちらりと赤の一筋覗く]
やれやれ、お前さんも礫でも投げられたか。
厄介ごとが多くて堪らぬのう。
[痕残る手を伸ばし、白の頬撫でる]
ふん。初めて見た犬は体もずいぶんと大きく、きゃんきゃん吠えずともその姿を静かに佇ませるのみで、周りを圧しておったものじゃが。
[メイの気には障る司棋の笑いから耳は塞げなくとも、笑う声と唸る姿から、どうにかつんと顔は逸らし]
そうじゃな知らぬ身ではなかったゆえに、弱い犬ほどよく吠えるとは本当の事のようじゃと、また一つ学ばせて頂いた。
うん仕舞ったぞ万次郎。わらわが傷つけたく思うは、おぬしではないもの。
[司棋から逸らした頭をも庇うように片方の掌を添えられ、その丁寧な扱いで抱き降ろされると、小娘と呼ばれようとも満足げに微笑みを見せて]
うん、やはりじゃ。少々口の悪い所があろうとも、万次郎はわらわをも姫のごとくに扱う。
おぬしのそういうところが気分が良うて好ましい。
問題ないぞ、おぬしに助けられてもわらわはちゃんと喜んでおる。
[青鬼向こうに見えた赤鬼]
[ゆるり首を傾げれば][くすり笑って手をあげて]
今宵も愉しい宴会かえ?
鬼ごっこは始まったというのに呑気じゃのぅ。
[かけた言葉に嫌味はなく]
[いつもと変わらぬ様子に穏やかに笑み]
おお、赤鬼に青鬼か…司棋も…揃って物騒な格好をしておる。
[赤鬼のなりを見て嘆息]
ずいぶんとまた、愉しんだようだな?赤鬼。
我にも、一献頂けるか?
先のような醜態はもう晒さぬよ。
足りぬのなら、調達して参ろうか…と云っても出店は殆どが畳まれてしまったようだが。酒くらいは調達できよう。
[酔いたい気分隠さずに。ぺたりぺたりと赤鬼のもとへ
酒の具合を確かめるように首を捻り問う]
見事も見事。有塵の顔も忘れられぬわ。
桜見るたび思い出しそうだ。かっかっか。
そうさな、酒の匂いあれば他も寄ってこようて。
桜の下で花見酒と洒落こむか。
[ゆるり赤鬼見て、思い出すのは常葉の片目。
少しばかり浮かない顔。それも一時愉しげに口元上げる]
白水も来たかい。
櫻はアヤカシを惹きつけるのかねえ。
[眼を細めてくくくと笑い
相棒の言葉ふと気づき]
はあん、お前らもやられたか。
水遊びでおいたしたヤツを屠ったかい?
[メイの言い草にカチンと来たか、好戦的な色を瞳にうかべ]
へぇ…弱い弱いとよくも。
猫なら猫らしくこそこそ隠れればいいものを、よくも堂々と僕の前へ出てこれる。
そんな年で縄張りも守れぬ犬と同視するとはいい加減、我慢もできぬよ?
[苛々と、いよいよ...も身の毛を逆立てるように]
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