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放っておいてもらいたいのは自分も同じ…
首をつっこんでくる人間が多いのもまた事実。
かといって危害を加える気にも毛頭なれませぬ…。
[万次郎の「鬼」という名づけに小さく笑い]
人妖にいかにも人妖という名をつけるとはまた意地悪な。しかし悪くありませんね。
[遥月の気遣いへ、赤い目元を少し伏せ]
あぁ、水があるのならぜひ一杯所望したく。
少し過ぎたようですよ
ここの社の裏に、井戸がございます。
お水を汲んで、お持ち致しますね。
では、少々お待ちを……。
[遥月は、そっと立ち上がった。]
[杯に注がれる御酒、傍らの白を眺め]
成る程。
どちらも消え行くものなれば、今しか残らぬ。
花の様で良いではないか。それはそれは面白き事よ。
[零さぬように赤の杯、常葉の女を指して]
傑作ならばお前さんは緑鬼でもするかい?
いつでも歓迎するぞ。
[遥月にきょとりとしてから首を傾げる]
いいやいいや、誰彼に林檎飴を強請られるものだからいっそ飴屋に成ってしまおうかとな。しかし止めだ、止め。
いくら世を忍ぼうとも、強請られ続けては店が潰れてしまう。
うむ? 赤鬼青鬼が如何かしたのか。
[青司と仲がよいと指摘され]
柳輪はまたお会いできますようにと祈りましたが青司様
個人とお願いした訳では…。
しかしながら、林檎飴はぜひ頂戴したいものですよ。
常盤の君も仰ってることですし。
初めて食した人の食べ物でした故、印象もまた強く。
約束、してくださいますか?
[酔いの回った眼でねだり。蒼い目は一層深さを増し]
[染み渡る酒精。黒の杯が吸い込んで居るかのごと減りは早く。
喰児の言葉を聞けば、冥(くら)い笑みを向け]
青鬼だけでなく赤鬼までヒトを喰ろうてどうする。
物語にそぐわないではないか。
…しかし、我も酒の味よりは…そろそろ血の味が恋しい。
火影も垂氷もそう申しておる。赤が欲しい―――とな。
色鬼するなら他にも鬼は沢山居そうだネェ。
[ぐるり見回し] [コロコロコロリ] [笑う声は軽い]
さっきの名も貰いモンなのさァ。
何時だか問われ名が無いと謂えば呉れた者が在ったけれど、以来アタシの名を問う者も無かった。
久し振りに名を問うて呉れた喰児に秘密の名はあげるヨゥ。
[白水へと目礼する万次郎] [長い睫毛瞬いて]
おや、御免ヨゥ。
さっさと乾かして白水の姐さんにお酌して貰ってお呉れヨゥ。
…放って置いたら人間を喰らう者達も在るからネェ。
きっとそいつァ難しい相談なのさァ。
[言い残し] [立ち上がり] [薫る白粉]
[万次郎の傍を離れ] [揺らめく桜の色香]
[酔いのせいか、深い色をたたえた司棋の瞳――制するように、遥月は司棋の唇に己の指を乗せた。]
……いけませんよ、司棋様。
酔いが回っている時に立ち上がってしまったら、余計に酔いが回りますし、転んで怪我をしてはいけません。
……わたくしが行って参りますので、お待ち下さい。
気にするない、常磐の君。
もう既に頂いておるよ。
[言い残された言葉に小さく頷く。
瞑目し、その姿を追う事なく残された言葉に思い馳せ]
放って置かれたら、我もヒトを喰らうかもしれぬぞ。
…確かに難しい相談ではあるな。
[なぜか喰児をちらと一瞥して肩を小刻みに揺らし]
[此方を見る万次郎へとこくり頷く]
良い。此方も好きに呼ぶさ。
――ふむ、可笑しな事を云うアヤカシだ。
腹が減れば食うだろう?
減らねばさてはて、……如何したものか。
[藍の瞳は細く弧を描き揺れる。
次いで常葉の女に呆れた顔をすれば]
ああ、だからお前さんも好きに呼べ呼べ。
気が向いたら賽を振ろうとあの事か。
刹那を遊ぶとは良く言ったものだ。
気が短くて仕方ない。
[やれやれと杯を傾ける]
赤鬼と青鬼が共に人を喰ろうておるだけならば
物語にはなるまいよ――
[くすり][くすくす]
[袖を口元に当てて笑みを零し]
花のよう、か――。
生命とは総じて同じものかもしれぬ。
無論、時とて。
咲いた時から散るのを待つように
生まれた時から死に向かって歩む。
季節が廻り、また花が開くように
輪廻を繰り返し、また命が咲く。
[藍を見つめて僅か目を伏せ]
長いか短いかの違いであろう――。
[紅い鬼] [戯れにする] [鬼の真似事] [碧は弧を描き]
[白い指] [顎に沿えて] [小首傾げて] [紅い鬼見詰め]
似合うって謂うべきか似合わないって謂うべきか迷うネェ。
鬼が鬼に成って似合うかと問われても難しいヨゥ。
鬼も何も其ンまンまで立派に喰児は喰児さァ。
[青鬼の誘い] [ゆるり] [振り返り] [ニィと笑み]
好いヨゥ、アタシァ碧鬼さァ。
泣く子も黙らせ序に酒で鬼共も黙らせようかァ。
嗚呼。好きに呼ぶが良い。
[青司に軽く頷いて]
言う程可笑しいか。
我は語りになぞらえて申したのみ。
実のところは青鬼。其方と変わらぬよ。
我も腹が減れば喰らうし、減らなければ誑かす。
アヤカシの在り方とはそういうものだろうに。
[空の杯、雫を振り落とすと懐へしまい込む。
もう呑む気は無いようで]
お前さんの行い次第か?
あの話のように情とやらが芽生えれば、
いつでも助けてやろうかの。
もっとも主様と狐様の次あたりに。だが。
[くつり、喰に意地の悪い笑みを浮かべていれば
司棋の言葉に毒気を抜かれる]
細かい事等良いわ。
司棋も林檎飴と申すのか、
やれやれまったくわっぱに娘はどうしてこう――
[蒼い瞳を捉えれば、ゆらゆらゆらり、揺れて]
――約束、いたそう。
[こくり頷いてから、はてと首を傾げた]
はは、1つの縁ってぇ事だろうさ。
[司棋にまたも冗談めかし
万次郎の喉に落ち往く勢い
それにふむと微かに感嘆]
ヒトが望んだ物語なんぞ
俺には関係ないがね。
俺は在る様に在る、其れだけだ。
まあああいう歴史も在ろうさ。
血は糧。
求めるのは性なんでなぁ。
ああ、見事に光るだろうな其の刀。
業物なのだろうねぇ。
[遥月に制されてもやはりこの酒の匂いの満ちる場は
今の...には耐えられず]
少し…席を外します。
酔いがさめたらまた戻りますので。
遥月様にもそうお伝えください。
[ふらり、立ち上がると夜斗はそのままに
境内の裏手へ回り木の陰へ横たわり。
既に8割酔っていた...の意識は簡単に閉じた]
そう、ヒトの物語に関わった鬼は不幸になる。
鬼には鬼の物語があろう。
もちろん、赤鬼にも。
[刀に話が及べば
柄に手を置いて宥めるようにそぅと優しく]
血を求めるのは。
其方の性ではなく、あやかしの性であろう?
いいや、そうでもないな。常に光る事はまず無い。
ご機嫌伺いが難しいゆえ。
気位が高いのだよ、この者達は。
[言い草とは逆に、脇の刀へ優しげな視線を送った]
[宵風に乗り] [万次郎の呟き] [立ち止まり] [見返る]
[揺れる常葉] [薫る白粉] [肩越しの碧] [微か弧を描く]
アタシァ別段、今此処に人間が居たって構わないヨゥ。
賑やかに酒を酌み交わすのは楽しいじゃないかィ。
大事な者を奪われそうになった時に敵を狩るだけさァ。
[青司へ碧向け] [呆れ顔にも涼しげに]
あい、あい、好きに喚びますヨゥ。
そいじゃ、茄子の兄さん、ちょいと林檎飴を買って来てお呉れかえ?
[あからさまな冗談] [コロコロコロリ] [軽やかな笑い]
[向き直り] [しゃなりしゃなり] [咲きかけの桜の木へ歩み寄る]
万次郎、なんで俺を見て笑うかねぇ。
[常盤が謂う「秘密の名」謂われて真似て
指唇にあて]
其の名は俺の宝にしよう。
なーんて、なぁ。
[冗談本気さてどちら。
金の瞳に静かな光]
碧鬼、いいねぇ。
あらゆる意味で喰われそうじゃぁねぇかい。
物の怪が鬼と人を真似て鬼ごっこか。
それもまた珍妙な話よの。
[杯に残る酒をくるりと回し、飲み干して白へと差し出す]
なにやら人の説法のように成ってしまったな。
我ら物の怪は時の終わりなど遠いものだから、幾星霜と眺める間
散り行くものに惹かれるのかもしれぬ。
桜舞い散る美しきかな。
眺め傾ける酒の甘さは散り行く人の魂の甘さに似ている。
長いか短いか、けれども遠い。遠いものよ。
[失った左腕へと僅か視線を逸らす]
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