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[さくらさくらさくらさく
巡りて春に筆持つ指も墨へと還り。
やがて風乗りどこへ行く]
[浮かび映ろう季節の幻
春巡り夏きて秋過ぎ冬迎え、春訪れる]
[言も無く眺め
ゆるり瞬き困ったような笑み浮かべた]
やれやれ。
手など握るから、己は百鬼に成りきれんようじゃ。
[ぎゅっと眉間に皺をよせ
憤るか哀しいか。
定かではなくも、何かしらの感情は持ち合わせ]
…メイを、喰ろうたか。
そうか。そうか……あの猫をな。
あやつは、なんの悪さもせなんだ。
だのに其方は…―――メイを、喰ろうた―――…と。
鬼ごっこが聞いて呆れる…!
疑わしくもない奴を、そうほいほい喰らうことが
主様の望みと思うてか!
……其方、名を明かせ。
明かさぬのなら、斬る。
[言いながら、既に手は柄に。
手が震える訳もなかろうに鍔は
チリチリ カタカタ
カタカタ チリチリ
歓びうたう]
[目をふさがれて、唇寸前で感じる吐息にびくりと体を緊張させ]
何、を…?
[いつぞやの酒の席、彼が情やら欲やらと言うを聞いていたか]
夜…斗…!
[本能的に逃げようと体を捩り、夜斗を呼ぶも、主人の頭と気持ちの混乱のせいで夜斗も姿を維持できないか、そのまま蛍となって消え]
や…っ
嗚呼、足りないさァ。
捕まって喰らわれるンかえ?
さて、どっちが捕まえたンかネェ。
そうさァ、何も考えず刹那を遊ンど呉れヨゥ。
さァて、こン子が舞うンは何時かネェ。
喰児が茄子の兄さんに勝ちゃ見れるかも知れないヨゥ。
[万次郎の声] [すぃ] [眇めた双眸] [ニィと笑み]
[うたう刀] [呼応するかの様に] [黒き蝶] [白の面で舞う]
疑わしいか疑わしくないかなンざァアタシァ最初っから気にして無いヨゥ。
アタシァ主様の為に在るんじゃ無くってェアタシの為に在るのさァ。
誰かの為なンてェ戯言吐く様な奴にゃこン名を呉れて遣る気は無いヨゥ。
欲しけりゃ喰児から奪うと好いさァ。
………そう。
ヒトも妖しも、等しく逃げられぬ定め……。
肉を食らい、悦を求め、それを仮初の「愛」と為す……。幻覚に囚われる、愚かな生き物に御座います……
[司棋の体を抱き締める遥月の腕はそうっと下り、彼の襟の奥に掌を忍ばせる。]
司棋様。後々の為に教えて差し上げましょう……
[司棋の身体を強く抱き締め、囁く。]
いつの世も、逢瀬で「愛」を語るは身の破滅……
呉れ呉れも、「愛している」とはおっしゃらぬよう………!
[そう言うと、遥月は司棋の唇に、深く激しく口づけた――]
[目の前を流るる季節の巡り
初めて見ゆる幻に
ただただ呆然と目を瞬かせ]
なぜ……
何故わらわにも見えるのか。
他人の幻を見たのは初めてじゃ――
[悪い幻を懸念していただけに、見えることにも巡る季節にもただただ目をまるくすることしかできなくて]
この桜は――いつぞや汝れが言うていた景色か。
[青司を見上げ、けれど百鬼になれぬという言葉に]
どういう意味じゃ?
さて、どっちだろうなあ。
俺ぁ喰う方が好きさぁ。
ああ、舞う様見てみたいねえ。
いい鬼ごっこができそうさ。
[刹那に遊ぶ鬼が居る。
今までになく愉しげに]
なんだい、万次郎。
碧の名がほしいのかあ?
[ゆらり、緋色の気配が揺れる]
こいつぁ俺んだからなあ。
くれてやるわけにゃいかねえさあ。
[深く口付けられ、目を見開き。
袂から忍び込む手にまたぶるりと大きく震え]
んっ…ぁ…あ…っ
[目を瞑ることすら出来ずにただただ体が硬直し、目尻からは息苦しさに涙が溢れ。
必至に遥月の体を押し戻そうとするけども、力も入らず]
[歯を食いしばれば犬歯が覗くか。
常葉の言い草に強く強く、碧の眼を睨みつけ
――赤鬼へちらり]
…戯れ言?ならば主様の言葉も、命も無用か。
ならば、どこぞで雑鬼と戯れておれば良いものを。
何の指針も持たずしての狩りなぞ、そこらの雑鬼でもできるわ。
[言い捨てて、赤鬼へ向き]
ふむ…。
赤鬼の心持ち次第…というわけだな?
どうだ、名を分けては…呉れぬか?
こやつが、…常葉の君が狩るモノであるかもしれぬ。
其方が喰ろうて確かめるまでもなく判るのであれば
……其方の特にもなろう?
[どうする?と、赤鬼に視線で問うた]
さて、白に判らぬものが己に判るわけがなかろうて。
紅見る目にでも移り込んだかのう。
[面喰らう白に、困ったような笑み向けたまま]
左様。己が棲む山よ。
刹那憶えた今ならば、泡沫越えて
血の海でも見れると思うたのじゃが
幻とはなかなか難儀なものよの。
さて、喰えぬ頃を思い出してしまったからか。
いやいや、それには足りぬものある幻よ。
己も己が映したものに面くらっておるわ。
[赤鬼の様に] [弧を描く] [互い違いの双眸] [面舞う蝶]
[深い深い底の知れぬ漆黒の隻眼] [甘い闇を孕むかの如く]
奇遇だネェ、アタシも喰うのが好きさァ。
其ンなら勝って遊んで呉れるンを楽しみにしてるかネェ。
[睨む万次郎] [視線受け止め] [コロコロコロリ] [軽やかな笑い声]
[コロリ] [コロ] [コロ] [コロコロリ] [堪え切れぬと腹抱えて一頻り笑い]
赤鬼青鬼が童を狩っても怒らぬを何を今更怒っておいでかえ?
自分の怒りの正体くらいは自覚してからものをお謂いよゥ。
謂われた通りに動くなンざァ其れこそ雑鬼にだって出来るンだヨゥ。
アタシァ全部自分で決めて自分の為に生きてンのさァ。
[はたから常葉の声。
眼の黒色は更に闇を増し、うすら黒色の靄が己を包もうか]
……っ…。
怒りの、正体………?
[唇を噛み締める。
林檎飴を呉れてやったあとの赤い舌。
木天蓼で酔わせた時のねだり声]
…我は、他のあやかしには…干渉せずに世を渡って来た故。
一つだけ、教えてくれ。
この胸の中の重石は、 なん な の、だ … ?
[困惑に揺れる黒い瞳。いつしか柄を握る手指も緩み
赤鬼へは、既に殺気めいたものもどこかへ消え去って]
……嗚呼……司棋様。
[司棋の身体を抱き寄せ、己の胸に司棋の顔を埋めさせる。]
……………ッ!
[口から出そうになる言葉を飲み込み、歯をギリリと噛み締める。
しばしの静寂。そして……]
……愚かな男とお笑いでしょう?
ですが、わたくしは貴方様を欲している……。ヒトなど、妖しなど、関係無く……。まして男と男であるなど。
これが刹那の契りなら、せめて今だけはわたくしのものに……!
[司棋の浴衣に指を掛けそっとはぎ取り、その胸板に口づけを。]
――嗚呼、もう……戻れない……
[黄金色に輝く月明りの下、遥月の胸に刻まれた紫と黒を纏う蝶は、ゆっくりとその姿を現す――*]
ははあ、俺の得にねぇ。
[にぃと笑んで男を見つめ]
違うんだなぁ、万次郎。
そいつぁ違う。
碧が碧なら俺ぁどちらだろうと関係ねえのさ。
それに、
碧と遊ぶ約束もあるからなぁ。
[碧の方を振り向いて]
楽しみにしてな、
鬼さんこちら手の鳴る方へ、ってなぁ。
[低く笑い酒を干し、*緋色は血のいろ揺れている*]
何故かはわからぬが――良いものが見れた。
青司の棲む山……連れて行けと言うたくせに、
泉を離るるを出来ぬゆえ諦めておったゆえ。
幻でも、此を拝めて嬉しいわ。
[まぶしそうな目][藍の言葉に首かしげ]
食えぬ頃……が、あったのか。
蘇芳を食うて笑っていた汝れがそれを思い出すも不思議なれど
――汝れが面食らっておるならば、それこそわらわも面食らおう
[くすり][あどけない笑み]
[酒煽り] [遊螺り] [立ち上がり] [紅い番傘] [くるうり]
やれ、面倒だネェ。
開那の兄さんの気持ちが少しだけ判ったヨゥ。
面倒だからお暇するさァ。
[殺気消え去る] [万次郎] [ゆるり] [顔向け]
色恋沙汰ァ刹那にゃ要らぬ、兄さんと鬼ごっこする気にゃなれないヨゥ。
[赤鬼低く笑う] [ニィと笑み返し] [揺らめく蝶]
嗚呼、楽しみにしてるヨゥ。
喰児となら本気の鬼ごっこが出来そうさァ。
[踵返し] [しゃなしゃなり] [番傘差して] [*今宵は何処へ*]
此処より動けぬか。
連れて行けと云うのに、随分な話だのう?
[繋いだ手のまま、からり笑い]
ああ、昔の話よ……いや、今とて喰えるかどうかの。
しかしてどちらも己じゃ。
面食らえども、そうさな少しばかり納得する幻じゃったわ。
[あどけない笑みを浮かべる白の顔覗き]
さて、己が幻は見たが、白はなんぞ幻望むか?
まったくもって難儀な頼みごとよのぅ。
あいすまなんだ。それでも見たかったのじゃ。
[くすくすと楽しそうに笑って]
どちらも汝れか……成るほど。
なれど、今見えた幻が此ならば、
今、心に一番深く根差しているのがこちらなのじゃろう。
[自らの幻には思考巡らし]
汝れとこうして件の山を見られただけで、幻としては満足じゃ。
墨絵で描く刹那は物悲しゅうもなるが――
今一度、蝶を所望しようかの。
汝れが似合うと言うてくれた、あの蝶を。
必ず消えるは寂しいが――嗚呼、そうじゃのう、
どうせなら、わらわの身に、直に書いてはくれまいか。
[はかない笑みを向けながら]
[抱きしめられ、着物を剥がれ、胸に口付けられ。今の自分に出来るものはわずかばかりの抵抗と僅かに上がる拒絶の声。しかしそれすら本物か区別は付かず]
いや…だ…、やだ、
おねが…、や…めて…
は、づき…!
[体を震わせ、強張らせ、目元には涙を浮かべ。
思わず口にした自分を抱くものの名前、一体何を*思ってか*]
根ざしておるか……そうかもしれんのう。
さてはて、どちらの先もあれに在りそうじゃ。
[身体に蝶を望む白を見下ろして]
己の墨を入れれば、己が気分ひとつ
そのまま喰らわれるやもしれんぞ。
[云えどもすぐに笑むは戯れか]
まあ描くと云うたから大人しく描こうか。
それもまた何れ消えるものなれど。
全ていつか消えるものじゃ、
寂しいばかりでは何も出来ず何処へも往けぬ。
[赤を避け腰下ろせる場所まで手を引いて
腰おろし、硯置き墨を下ろして、筆を持つ]
着物を脱げ。
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