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[歯を食いしばる有塵のかんばせ
少し怪訝な顔で見た]
……煩いたぁ待ち人かい?
来るといいねぇ。
[顔を背けてしまった櫻の
黒い髪を手で梳いて]
ずうっと探してるんだもんなぁ。
[手をすいっと離して謂った]
[出来るだけ平静な声音で答えようとして、]
ああ。来ると好い。来ると……
[そこで崩れてしまった。]
……来る筈など無い。来ない。
もう疾うに契りは…ッ。
[耐え切れず涙溢れ、]
[しとどに頬を濡らす。]
おいおい……
[泣き出した黒櫻、赤鬼また手を伸ばし]
待ってたもんなぁ。
俺と会う前からずうっとなあ。
辛ぇんだろう。
俺にゃ分からねぇことだろうが、痛ぇんだろうなあ。
[あやすように髪を撫で]
[撫でる手を邪険に振り払う。]
もう良い。良いのだ。
これで終わりなのだから。
おれは最後の夢を見ると、そう決めたのだ…っ。
[押し留めた筈の滴がまたも溢れ出す。]
[振り払われた手をひらり]
おうおう、出来上がってんねぇ。
呑むんなら勝手に付き合うが、
終わりたぁどういうことだい?
[木目の杯取り出して、自分も酒を注ぎながら]
そもそもの初めから、おれの一人芝居だったのだ。
破れた契りを、それでもあると思い込みたくて、
否、契りを忘れた彼のおとこに、おれの想いを知らしめたくて、
──我が身ひとつは、もとの身にして。
……おれはあの童子の頃から変わっておらぬのにと、
おれは。
愚かだった。
浅はかだった。
……だから、彼のおとこは来ぬ。
来る筈も無いのだ。
おれが桜の下で恋死んだ時も。
国司の勤めとて主に幣帛を供えに参った時も、此処へは現われなんだ。
桜鬼の噂は聞いておろうに。
それでも待った。待ち続けた。
いつか、思い出して来はせぬかと。
恐らくは彼のおとこも死んだであろう程歳月が経っても待った。
待つ為だけにおれは在る。
この桜がおれの心を拾い上げて、己が魂(たま)とした時から。
彼のおとこを待つことしか出来ぬ。
そうかい……
命短いくせに罪なやつだぁなあ。
[杯手の上乗せたまま、
その上櫻がひとひら落ちて]
待つことだけが在る意味たあ、
それはちぃと寂しいねえ。
[刹那は要らぬ
刹那は要らぬ
後の寂寥が募るのみぞ]
嗚呼 要らぬ、要らぬ
刹那は過ぎて消えて往く
帰りはせぬ、返りはせぬ
判っておるから姿も変えたのだ
[花の薄紅から枝の茶へ。
彼と異なる雌から彼と同じの雄へ]
忘るる為に変えたのだろう
捨てる為に変えたのだろう
何故未だに捨てられぬ…!
[激情が醒めたか、]
[思いに任せて言葉迸らせたことに気付き、決まり悪げに]
……すまぬな。喰児。
忘れてくれ。
[ぽつり、呟いた。]
――……
[櫻の木は終わるという。
薄墨桜は逝くという。
白い横顔白い花、交互に見ては笑い消し]
……枯れちまうのかい。
そいつぁいけねえ。寂しくなっちまわあ。
[だが消えるも定めかねえ。
眼を細めてつぶやいた。]
[林の緑、枝の上。
枝のひとつに琥珀在る]
[はらりはらはら雫落ち、その場限りの涙雨]
[伸べても届かぬ空の青。
地は所詮相容れぬ]
うん。喰児よ。
人の命は短く、心は移ろいやすい。
だからこそ、救われるものも有る。
人ならぬ身は忘られぬ。変わらぬ。
おれは最後にやっと、桜鬼でなく、花の精になれたと思うた。
彼のおとこを想いて咲くだけの花と。
見返りも要らぬ、求めぬ、ただひたすらに想うだけの花。
おれはそれで良いよ。
喰児は優しいの。
鬼であるのに…否、鬼故に、か。
情を掛け過ぎて、昔の如くつけ込まれねば良いが。
それだけが気掛かりよ。
常磐の女君とどの様になろうとも、おまえはそれで良いのだろうな。
刹那に遊び、刹那に死ぬかあ。
[有塵が言葉を紡ぐ様、どこか儚く清廉で]
……ああ。
櫻みてぇだなあ、お前。
いや、櫻なんだけどよ。
綺麗だなあ。
[杯傾け息を吐き]
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