情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 エピローグ 終了 / 最新
[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11] [12] [13] [14] [15] [16] [17] [18] [19] [20] [21] [22] [23] [24] [25] [26] [27] [28] [29] [30] [31] [32] [33] [メモ/メモ履歴] / 発言欄へ
[遥月は鏡を取り出し、泣き濡れて流れ去った目尻の紅を塗り直している。]
嗚呼、いやだ。酷い顔。
涙の川が紅いとは。嗚呼、羞しい。
[崩れた化粧を落とし、再び紅を施す。唇の紅も塗り直し、ふぅと小さく溜息をつく。]
『は、づ、き』……
わたくしが妖しとして息を吹いた時、唯一識っていた言葉……『は、づ、き』。わたくしの最初の「契り人」が面白がって、名も無きわたくしに『遥月』と名付けた……。
あの時は、わたくしに毒針があるとさえ知らず、抱かれるうちに愛を囁き焼き、名付け親を殺してしまいましたねぇ……
懐かしく、いとおしく、苦しみに満ちた想い出……
[傍らで眠る司棋の頭を、己の膝の上に乗せる。赤い髪を白い指で梳き、柔らかく微笑んだ。]
……嗚呼、温かな人。
可愛い寝顔ですこと。
こうしている姿を見ていると、わたくし達を殺す狩人には見えませんけれどねぇ……ふふっ。
[指先は、司棋の耳を弄りくすぐる。]
嗚呼、しかしこの安堵こそわたくしの苦しみ。
愛し愛され、望まれ抱かれても……愛しい人をいつか毒で焼き殺してしまう、因果な身体を持つ故に……。愛しき人を殺めぬ為には、自ら身を引くしかない定め……。
地獄の炎に焼かれるよりも、激しい苦しみが我が身を襲うでしょう……嗚呼。ましてや片思いだなんて。困りましたねぇ……
[目蓋がゆっくり持ち上がり]
[黒い瞳を見開いて]
[暫し、空を眺む。]
[……ややあって、]
また眠っていたか……酒。
[眠たげに半眼、瓢を探して身を起こす。]
[側に転がるそれを探り当て、]
[栓を取りて中の花露を体内に流し込む。]
[ほう、と息つき、]
[紅の髪膝に乗せた若衆を見る。]
……呑まねば持たぬからなあ。
それに今更惜しむ身でもない。
[酒精が巡りて、蒼白い面が朱を帯びる。]
[やはり夢醒めやらぬ眸でじっとふたりの有様を見詰めて、]
遥月はその若者を恋うているのか。
[遥月は首を横に振った。]
……いいえ。
恋うてはおりませぬ。
司棋様は見目麗しく、またひたすらに可愛らしいとは思いますれど、恋とは違いましょう……。
まして司棋様は、わたくしを妖しとお疑いになり、殺すのではと嫌疑を掛けられる始末。嗚呼、ひどい話……。
[司棋の髪にはらりと落ちた桜の花びらを、指でそっと摘んだ。]
[くい、とまた一啜り。]
……然様か。済まぬな。
だが、疑いは皆持っていよう。その若者とても、人かも知れぬ。分からぬ。
久しぶりに会うた喰児や開耶も、人が姿を借りて摩り替わっておらぬとは言えぬ。
[と当の緋の鬼に横から声を掛けられて、]
……倒れたのでは無うて、寝たのだ。喰児。
ええ。
妖しならざる者を区別できる方が居られれば話は別で御座いますが……。本当にいらっしゃるのでしょうかねぇ。
手掛かりを出して下さらねばあっという間に妖しは皆共倒れ……。そうでなくとも、醜い疑い合う日々。嗚呼、あさましい。
人と怪を見分ける者が居ったとて、素直に名乗り出るとは限らぬが。
それその者が狩人よと指差して、真であっても嘘であっても争いは必定。素直に去ぬ者など滅多に居らぬからな。
斃れたようにしか見えなかったぜえ。
櫻の花びらかけといたが多少は温かくなったかねぇ。
[緋色の鬼はくつくつ笑う。
片手で髪をかきあげたまま]
あぁ、ヒトかどうかってぇ話かい。
放っちゃ置けねぇし、死合いだなぁ。
喰っちまえば味で分かるだろうが、
生きてる間に分かるような術の持ち主居るのかねぇ。
[顎に手を当て思案して]
万次郎のヤツがアヤカシか桃太郎か鬼がヒトかなんてぇこと聞いてやがったがねえ。
が……殺めずとも済む者を殺めるも愚かなことか。
せめて、人でないとはっきりと身の証が立てられる者が居ればまた違うのであろうが。
[万次郎、と言われて名を尋ねられた事を思い出す。]
そう言えば、あの者、最初に会うた時にしつこく名を訊ねてきおったわ。何ものか知りたがっておった。
[ふむ、と顎を擦る。]
[ゆっくりと頭を振り]
いや、山吹色の娘ではない。…生まれ変わっておれば、女になっておるやも知れぬが、それは。
それそこの……遥月が可愛がっておる童子よ。
おれが尋ねようとするといつも寝ておる。
[やや呆れたようにまた酒を呑む。]
……確かに有塵様のおっしゃる通り、誰かがヒトを見つけることができると名乗りを挙げても、争いは必定。ですが、頼りなきまま徒に、手当たり次第殺した結果、妖しを殺して共倒れとなりますれば、それこそヒトの思う壺……。
たとえ疑わしくとも、頼りは無いより在る方が好ましいかと存じます。疑わしいなら、その頼りを鵜呑みにしなければ良いのですから。
[喰児の言葉に視線を向ける。]
……万次郎様が?
桃太郎か鬼か、妖しかヒトか……分かるとでも?
それに、喰児様も「食べてみれば分かる」だなんて。どういうことです?
ほぉう、名前をねぇ。
どうして名前に固執するんだか。
何かに使ってんのかねぇ。
[考える間も愉しそうに]
会った時にでも聞いてみるかぁ。
さぁね。
本人に聞いたわけじゃねぇからわからねぇなあ。
俺かい?言葉通りさ。
アヤカシの肉とヒトの肉は味が違ぇだろお?
[さも当然と答えてみせて]
……ああ、なるほど。
喰児は人の肉なら厭と言うほど喰ろうておるだろうからな。
違いが分かっても不思議ではないかもなあ。
[くくく、と嗤う。]
[灰の紬を口許にあて]
……はあ。
喰児様、左様ですか。
わたくしは生憎、血肉は好みませぬ故、食ろうても区別などつきませぬが。……そういうことができる方も居られるのですねぇ。わたくしが精を戴いた相手は、誰も彼も黒く腐り果てる故、区別などつけようにもありませぬ。
万次郎様が、皆様の名を聞きたがるというのも、不思議な話。わたくしを「月の君」と呼ばれるのに、妙に名を気にされておりましたからねぇ。嗚呼、まずは万次郎様にお話をお伺いせねば。
[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11] [12] [13] [14] [15] [16] [17] [18] [19] [20] [21] [22] [23] [24] [25] [26] [27] [28] [29] [30] [31] [32] [33] [メモ/メモ履歴] / 発言欄へ
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 エピローグ 終了 / 最新