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さて、どこぞで下駄でも濡らしてしもうたのではないか。
[くつり笑って]
まるで散り際わかるようなもの云いよ。
我らには我らの裁量如何で散り際あろうて。
何処より匂うこの血の香がなによりの証。
それが仮令鬼ごっこであろうても、な。
[万次の掲げる瓢箪に袂から杯取り出し差し出す]
見るとはなんぞ、酔いつぶれた艶でも見るか。
それとも己の尻尾でも見ると云うのかのう?
[濡れた茶は置き息吐いて。
青司に向けたる万次郎の言に瞬いた]
…見る者?
やれ、其方が見る者だと申すのか?
[其方に気を取られたか、元より気にしておらぬのか。
距離置く青司にそれを問うもなく]
先程?
…嗚呼、大した事で無し、気にするな。
[腰は下ろすが杯持たず。
桜との声に顔上げて]
[青鬼の差し出す盃に
とくとく、こぽり
と酒を注いで遣り。
琥珀からも青からも向けられる問いかけ]
何時かは話さねばと思っておったが…
狩るモノは、正体を見破られることを嫌うでな。
今迄謂わずにいただけのこと。
そう。其方等の云う通り。
我が、狩るモノか否かを見分ける者ぞ。
そして既に一人は、狩るモノでないと判っておる。
[琥珀の瞳と青鬼を見比べて]
其方等。此の話、信ずるか?
さて、詰まらぬ喧嘩を買うより甘露な魂でも探そうかネェ。
目を醒ますにゃ未だ未だ足りぬと謂うのさァ。
起きりゃ厭でも目にするだろうけどネェ。
[見上げる赤鬼] [浮かべる笑み] [ニィと笑み返し]
[一拍金色見詰め] [一つ頷いて] [カラコロ歩き始め]
なンぞ、昨日の桜の侘びらしいヨゥ。
永久も刹那も空も桜もどンだけのもンかネェ。
[呟き] [歩きながら] [番傘ずらし] [月仰ぎ]
[袖は口元][目を細め]
[万次郎を見据えつつ]
見る者か――汝れは事前に判るものかえ?
結構結構……事前に見えるは羨ましい。
[袖を外してくすりと笑めば][開耶に向けて]
汝れは妾と水でも飲むかえ?
左様か。それならば……
[顔上げる開耶の様子に、ゆると瞬き逡巡して]
のう、開耶。
先ほど己と有塵で少々言葉遊びをしておった所よ。
桜咲けば散る儚さよ。
人の夢と書いてはかないならば、
花の夢と書いてなんと読むかと。
開耶ならどう読むか。
開那は酒宴は好きでないと云ったな?
まだ、そう人は集っておらぬ。
一献如何か。
[瓢箪口を開那へ向けて、今迄の話などなかったかのように
清々しく笑みを浮かべた]
はあん、寝起きが悪いのかねえ。
甘露の魂か、難題を吹っかけるねぇ。
其の分死合いは見事なんだろうなあ。
[くつくつ笑いで歩みを進め]
櫻ってあの一面の紅かい?
あれはあれでよかったがなぁ。
さぁねえ。どいつも背中合わせさ。
[月は金色瞳と同じ 女の肌を青々照らす。]
[立てる片膝、肘置いて。
つぃと唇に指滑らし]
さて、狩る者が偽り言うて出るも有る。
なれば容易く信ずるはできぬ。
が、どちらであろうと幾つかわかることもあろう。
其方の言う、狩る者で無きは誰ぞ?
[白の問い掛け、判らぬ部分も多く有り。笑顔消む]
事前にとは…?
さて、我の他に視る者がいるのなら…
それは喰ってはじめて判る、そういう力なのだろうな?
[確認込めて白を見据え。盃を地に置く
其の手で顎を撫で、思案げに]
そも、我は我の力のみ知る。
他の者の力に、我は関知せぬ故……
そのような者が在るとは知らなんだ。
[瓢箪も盃も置いたまま。口元を覆い深く思案に沈む――。]
[満ちる杯。口付け
くらり、酔いしれる。微か眉寄せ]
――ふむ。
半々よの。過信は危うき、けれど目を閉じるも愚か。
さてはて、面白い事に違いないが、
信じるかと問われればまだ話半も聞いて居らぬゆえ判らぬわ。
誰それが狩人であると聞いたほうがまだ話は早いのう。
やれ、水か。
貰うと言いたいところだが、我は杯は持っておらぬ。
[さてどうするかと唇撫で]
[青の問う声瞬いて。
返す言之葉、見付かり難く]
…せつな。
[ひとつ呟きふると払い。
茶の髪より雫が散り]
[万次郎の手、瓢箪ひとつ。
向けらる口に息吐いて]
杯無き以上は受けられぬ。
誰ぞ杯を貸してくれるというなれば一献くらいは貰おうか。
[思案から浮かび上がれば、琥珀色の瞳がこちらを]
……其れは、我も考えていた。
信ずるか否かについては、其方等に任せよう。
只、信を得るための労は惜しまぬつもりよ。
其方、畏れもせずよく訊くこと。
[くつくつと思わず笑い声零した]
月の君…―――遥月。彼奴は、狩るモノではない。
左様ですね。開耶様……。
狩る者が偽りを言うか、それとも万次郎様が本物の「見る者」なのか……。すぐおいそれと信用することはできませぬが……。
伺う価値はあるかと存じます。
さァてネェ。
魂無いと眼も醒まさないンじゃ探すより他無いヨゥ。
アタシの頭ン中ァ鬼ごっこでいっぱいさァ。
[赤鬼の眸と同じ色] [月を仰ぎつ] [カラコロカラリ]
アタシもそう謂ったンだけどさァ。
背中合わせに表と裏かィ、如何なンかネェ。
楽しければアタシァなンでも好いヨゥ。
[カラリ] [コロリ] [やがて見えるは始まった宴会の場]
………わたくし、ですか。
[それだけ告げて、万次郎の目を見つめる。]
確かにわたくしは、狩る者ではございません。ですが、それを信頼するか否かは……他の皆様次第、でしょう……。
[視線を落とし、吐息をひとつ。]
……貴方様が本物の「見る者」か否かの判断は未だつきかねますが、……承知致しました。
[あぐら。袂で腕を組み。
どうやら異種の酒にあてられかけた青鬼に
口の端を持ち上げた]
もう口にしてしまったことは仕方がないが。
我が思うに、狩るモノが見つかる迄暫し黙ろうかと思うよ。
如何か、其方等の考えも聞かせてもらえようか。
月の君の件に関しては…内々にしてもらえると助かる。
[ぽつりぽつり。其の割に長く言葉を選びながら話終えた]
では、このまま一口試してみてはどうか。
試す価値はあるものと、我は見る。
そこの…青鬼も、味わっているようだしな。
そうれ。
[栓をした瓢箪を開那に放り]
[声に見遣れば遥月]
容易く信ずる者が在るとも思えぬが。
[それと同時に遥月の名が出でて]
遥月は妖というか。
やれ、難しきことよ。
畏れていても何も変わるまい。
早々に狩る者見付け主に捧ぐのみ。
信ずるかは暫し置こう。
未だ何もわかりはせぬ。
[くつくつ笑う万次郎。
見遣る琥珀は思案色]
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