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[幻香の塊背後に置きて。
ゆぅるりゆるり歩き往く]
やれ…ひとつふたつ当たろうが痛くはないが。
喰われてしまうは好みはせぬ。
やれ、面倒な。
[落としたひとつ礫を蹴りつ。
やがて現るは昨夜の宴場]
……やれ、此処でもか。
面倒は付き纏うようだな。
[緋く緋く地は染まり。
未だ乾かぬ緋も在りて]
[赤の少年] [頬触れる指] [睫毛震わせ] [柔らかな笑み]
[白い手] [そぅと伸ばし] [頬触れる手掴み] [小首を傾げる]
喰ろうただけさァ。
隻眼のアタシにゃ華はお呉れで無いんかえ?
メイは其方を、昨日よりひめ、ひめと慕っておったではないか?
[片手の指、己の顎を撫で]
さて、そのかんばせより大切なものとは如何に。
[気まぐれな問いをひとぉつ常葉に投げかけた]
[助け上げた手をそうと離し、翡翠の髪を撫で梳きながら]
メイ、其方もじきに狙われるであろうよ。
雑鬼どもが騒いでおるでな…。この染みも、あれらのモノ。
臭うか?それとも、心躍るか、どちらだろうなあ?
[くつくつ。着替える気はさらさら無いらしい]
[心配そうに眉ひそめ]
いいえ。君が望まれるなら星でも差し上げまする。
この眼えぐった時は、さぞかし痛かったのでありましょうか?
[酷く悲しげに呟いて]
そうだなぁ。
見られりゃ櫻も本望だろうさあ。
見事だねえ。
[青鬼謂えば頷いて]
そろそろいい時間だねえ。
どうだい、先に一杯やっとくかい?
咲かぬは陽、咲くは灯、白の言葉も謎かけのようじゃ。
では散るはなんとする?
[白、首かしげ。揺れる袖には滲む赤黒。
ちらりと赤の一筋覗く]
やれやれ、お前さんも礫でも投げられたか。
厄介ごとが多くて堪らぬのう。
[痕残る手を伸ばし、白の頬撫でる]
ふん。初めて見た犬は体もずいぶんと大きく、きゃんきゃん吠えずともその姿を静かに佇ませるのみで、周りを圧しておったものじゃが。
[メイの気には障る司棋の笑いから耳は塞げなくとも、笑う声と唸る姿から、どうにかつんと顔は逸らし]
そうじゃな知らぬ身ではなかったゆえに、弱い犬ほどよく吠えるとは本当の事のようじゃと、また一つ学ばせて頂いた。
うん仕舞ったぞ万次郎。わらわが傷つけたく思うは、おぬしではないもの。
[司棋から逸らした頭をも庇うように片方の掌を添えられ、その丁寧な扱いで抱き降ろされると、小娘と呼ばれようとも満足げに微笑みを見せて]
うん、やはりじゃ。少々口の悪い所があろうとも、万次郎はわらわをも姫のごとくに扱う。
おぬしのそういうところが気分が良うて好ましい。
問題ないぞ、おぬしに助けられてもわらわはちゃんと喜んでおる。
[青鬼向こうに見えた赤鬼]
[ゆるり首を傾げれば][くすり笑って手をあげて]
今宵も愉しい宴会かえ?
鬼ごっこは始まったというのに呑気じゃのぅ。
[かけた言葉に嫌味はなく]
[いつもと変わらぬ様子に穏やかに笑み]
おお、赤鬼に青鬼か…司棋も…揃って物騒な格好をしておる。
[赤鬼のなりを見て嘆息]
ずいぶんとまた、愉しんだようだな?赤鬼。
我にも、一献頂けるか?
先のような醜態はもう晒さぬよ。
足りぬのなら、調達して参ろうか…と云っても出店は殆どが畳まれてしまったようだが。酒くらいは調達できよう。
[酔いたい気分隠さずに。ぺたりぺたりと赤鬼のもとへ
酒の具合を確かめるように首を捻り問う]
見事も見事。有塵の顔も忘れられぬわ。
桜見るたび思い出しそうだ。かっかっか。
そうさな、酒の匂いあれば他も寄ってこようて。
桜の下で花見酒と洒落こむか。
[ゆるり赤鬼見て、思い出すのは常葉の片目。
少しばかり浮かない顔。それも一時愉しげに口元上げる]
白水も来たかい。
櫻はアヤカシを惹きつけるのかねえ。
[眼を細めてくくくと笑い
相棒の言葉ふと気づき]
はあん、お前らもやられたか。
水遊びでおいたしたヤツを屠ったかい?
[メイの言い草にカチンと来たか、好戦的な色を瞳にうかべ]
へぇ…弱い弱いとよくも。
猫なら猫らしくこそこそ隠れればいいものを、よくも堂々と僕の前へ出てこれる。
そんな年で縄張りも守れぬ犬と同視するとはいい加減、我慢もできぬよ?
[苛々と、いよいよ...も身の毛を逆立てるように]
慕われるなァ好いが姫を助けるなァ殿の役どころってだけさァ。
兄さんがもう少し舞台袖で待ってて呉れりゃ助けたヨゥ。
[問いに] [笑みを絶やさず] [番傘くるうり]
人様に話す程無い詰まらないもンだヨゥ。
[赤の少年] [哀しげで] [白の手伸ばし] [赤い髪梳き]
痛く無いたァ謂わぬけれどそンなに軟(やわ)じゃないヨゥ。
さァさ、今宵は何の華を見立ててお呉れかえ?
[気配三つ] [赤鬼] [青鬼] [白の少女]
[遊螺り] [顔向け] [番傘くるうり] [ニィと笑む]
おや、お揃いかえ?
[笑みそのままに少女を見おろして]
そうか?嫌われてはおらなんだ。
[くつり、と戯けてみせた]
其方が傷つけるのは、何ぞ。雑鬼か、それとも鬼狩りか。
はたまた―――、我ら主様の命に従い動く者共か。
ははは。其方がヒトで無い限りそれはないな。
ヒトでない女子供を斬る趣味は無い故、丁寧に扱うのも当然。
[するり―さらさら。
翡翠の髪を指から流し、頭を撫で梳く手を降ろした]
―社にて―
[灰の結城紬を着込んだ遥月は、いつもの人だかりへとやってきた。]
これはこれは皆様、ごきげんうるわしゅう。
……?
どう為されました、常盤様。
嗚呼、其の眼はどこで傷つけられたのですか……?
まさか、ヒトの狩人に…?
[青ざめた表情で、常盤の顔を見る。]
散るを悲と評すのは無粋じゃろうて。
―――……さしずめ緋かのぅ。
[くすり][困ったように笑み]
[撫でられた頬][俯いて]
水の礫を返して一度は見逃してやるも
大勢連れてきよったでな――全部狩ってやったわ。
ほんに難儀じゃ。
[顔をあげれば][くすりと笑い]
同族喰らいをしてみようかと思うたが
不味そうじゃったから捨ておいた。
["せんせい"の問いには薄く笑み]
おいたをしたからたっぷりお仕置きしてやったわ。
なぁに、水浴びの延長じゃ。
[くすくす笑って報告か]
[白水笑えばにやりと笑い]
愉しいは愉しいが
赤が見れるかもしれないねえ。
[ふと相棒の曇り顔、眼を細めて覗き込み]
どうしたぁ、相棒?
酒が足りねぇかい。
[続々気配を感じつつ]
ああ、万次郎。
そういうお前も相当なんじゃないのかあ?
おう、呑め呑め。
こんな櫻の花の下、ぼおっとしてるのこそ無粋ってもんよ。
[瓢箪突き立つ氷刃。
つぃと撫でればひやりと冷たく]
さて、暫しは溶けはせぬようだが。
急がねば時の問題か。
[時折ぴちゃりと緋色は撥ねて。
古草鞋、足先、点々と]
[着けば周りは噎せ返る]
…やれ、酷い血の香よ。
[つぃと見遣るは赤隻眼]
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