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[まだあどけなさが残る赤い髪の青年の言葉に、ふと笑みを零す。]
はるかなる…月。
遠い遠い空に浮かぶ、金色の光……
何をもって、かの方はわたくしにこの名を与えたのか……。今はもう、問うことすらままなりません。
わたくしは、夜に誘われ蠢く妖(あやかし)……。それ以上でも、以下でもありませんのに。
[遥月は、ふっと静かに溜息をついた。]
[白水] [遥月] [双方の眼差し] [受けて浮かぶ] [笑み艶やか]
名乗る程の名は無いヨゥ。
アタシの呼び名なら、今から喰児がつけて呉れるさァ。
[笑み頷く喰児] [小首を傾げ]
[強請る名] [呼び名] [名の御代]
安心おしヨゥ。
アタシが騙すは今以外、今此の時の酒の味に嘘は無いさァ。
喰児はアタシを何と呼んでお呉れかえ?
[常盤の少女に]
[水に溶けた黒き蝶と]
[蝶を呉れた藍の男を思い出し]
そう――青司に返すものを考えている最中じゃった。
司棋からは華をもらった。ゆえに水を返した。
蝶に返すは――華かのう?
[愉しそうに呟いて]
ならば一杯だけ、いただこうか。
[誘惑に負けてか最初から罰など信じていないのか]
[くすり][くすくす] [常盤に向ける愉しそうな紅。]
[気を取り直したように視線を上げ、常盤色の女を見やる。]
ああ……そう、そう。
そちらのお姉さんの御名を…まだ知らぬのですが…。
分からぬまま、貴女を「常盤の君」とでもお呼び致しましょうか……。
禊かい、そいつぁしゃぁねえか?
気にせず呑んじまえばいいのによ。
[ははっと笑って杯を手に、
小さな水面に映るは虧月]
偶然か、それは風流な偶然だ。
縁ってヤツを感じるね。
白水が謂っていたそれだがな。
月は良いぜ、
盈ちては虧けてまた戻る。
嗚呼、良い、好いネェ。
白水の姐さんも話が判る。
さァさ、一献呑むと好いヨゥ。
[コロコロ笑い] [瓢箪傾け] [酒注いで]
[届く下駄の音] [振り向いて] [月仰ぐ青司見止め]
噂をすればなんとやらかネェ。
[賑わい集う人の形]
[下駄を鳴らしてカラコロ歩み寄る]
かっかっか、今宵も良い日だ。御機嫌よう。
月見酒とは趣深い。己もひとつ貰おうか。
[見知った顔に、ゆるく笑む]
縁は異なもの味なもの、また逢うたな、白に司棋。
墓守 ユージーン がきたらしいよ(12人目……だったかなあ?)。
[音無く黒い霧に包まれ、集まる人影否異形達の輪からは少し離れた場所に現れる]
火影、垂氷…奇妙な眺めよな?
人影が一つも無いというのに、この喧噪。
我も加わるべきか否か、どう考える?
[柄に手を置いて双刀に語りかける。答えは出たのか黒い霧から抜け出して、名残を纏ったままその一団へと近づいて]
[狩らん殺...カランコロ...狩らんコロ...]
宵の宴か?
まあ、俺は遠まわしなのは好きじゃねぇんでな。
[常盤色がそうしたように、
緋色の男が近づいて行く。
耳元にそっと口寄せて、
低い声で囁いた。
「真理」
それはそれは小さな声で、
女の耳にしか届かないだろう。]
……どうだい?
[ついと離れて笑って見せる。
再び杯呑み干した。]
ふむ――思いつく前に会うてしもうたか。
[常葉の少女に注がれた酒]
[クイ、と飲み干し口元に当てた袖。]
縁こそが、唯一不可思議なものなのやもしれぬ――。
[藍の男へ向けた紅は矢張り愉しそうに。]
[遥月の名の字を聞き、また眼を細めて]
ご自身はその月へ赴いてみたいと思われたことは?
遥かなものに憧れを持たぬものなどいませんでしょうに。
そのお名前、お似合いですよ
[慣れないながらもつい杯重ね
眼のふちはほんのりと朱に染まり]
青司様ですか…。どうも。
どうにも賑やかにあいなりましたよ。
[常葉の髪に、肩を竦めて手をひらり]
お前さんも昨夜ぶりか。
物欲しそうな目をしても今日は林檎飴は持っておらぬぞ。
[顎をひと撫で、静かに頷きひとりごちる]
柳輪の呪いでも効いておるのかのう。
おや、茄子色の兄さん今晩は。
昨日はご馳走さンと繰り返しておくヨゥ。
今宵も佳い宵、酒も旨い。
さァさ、一献空けと呉れヨゥ。
[青司の杯に瓢箪傾け] [続く気配にすぃと顔向け] [万次郎に笑む]
兄さんも今晩はかえ?
随分と人が増えてきたネェ。
兄さんも一献如何かえ?
[チャプリ] [瓢箪掲げ] [小首傾げ]
かっかっか。
縁ほど不可思議なものはないときたか。
人の成りから戻れぬのもひとつの縁か。
[紅の瞳に頷き、赤い髪の青年の顔色にからりと笑う]
なんだなんだ。酒に飲まれるとはわっぱのようだ。
しっかり致せよ司棋。夜斗に咥えてもらって歩くようになってしまうぞ。
ふぅむ…先の香の君といい、紅の君といい…随分と賑やかだ。
悪いことではないが、あまり集まりを持つのはどうだろうな?
彼奴らに目をつけられでもしたら、我が堪らぬ。
……あぁ、今晩は。常磐の君。
お言葉に甘え、一献頂くとしよう。
すすめは受けねば失礼にあたるゆえな。
[懐から取り出すはふちの欠けた杯。
小首を傾げる真理に杯を差し出し]
ただ…、あまり羽目を外すでないぞ?
彼奴らは我らのことをよく思っておらぬ。
[寄せられる] [喰児の顔]
[震えるは] [鼓膜か] [睫毛か]
[薔薇色の唇] [音も無く]
[溜息零し] [瞬いて] [ニィと笑み]
みんなの前で喚ぶ新しい名を貰いたかったのサァ。
とてもとても素敵だったからもう好いヨゥ。
[名を問う遥月] [向き直り]
「常盤の君」でも「其れ」でも「お前」でも好きに呼んど呉れ。
アタシァ名乗る程の名はもう持ち合わせが無くってネェ。
兄さん姐さんから貰った名の分は其の内何かで返すヨゥ。
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