のぅ、青司。あの山は綺麗じゃったのぅ。わらわが見た、最初で最後の幻じゃ。[涙で藍の頬に滲んだ墨を] [袖でそろりと拭い取り]汝れが墨だからなのか、わらわが水だからなのかわからぬが真から混ざりあえずとも、傍にあるだけで安心したよ。それが遥月の言うた愛することなのかはわからぬが汝れがおらんだけで、世界がいらなくなってしまったのはまぎれもない事実ぞ。