―林の奥にて―
[はだけた結城紬、其の襟からは蝶の翅。仮初の契りを結んだ後の、虚しく気怠い時が流るる。]
嗚呼……貴方……また、いつか。
[自身の身体から流れる、白い液の糸。指先に取りて独り遊び。]
………ふふっ。
[其の糸を、懐に入れた草紙にぺとり。娘子が好んで読むような、色香に欠ける春画の草紙――]
嗚呼、面白し。
人も妖しも、情慾には克てず……ふふっ。ふふふふ……
[草紙を見やり、紅が頬まで乱暴に延ばされた唇を動かす。]
『あ い し て お り ま す』
[――刹那にして、草紙は黒く腐れ落ちた。]