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[車の中、深い眠りから一度だけ目を覚ます。
自分の隣に金色の髪が見えた。あぁ、これは確かソフィーという人だったか。
最後に会ったのは…そう、アンゼリカ。
魂の抜けたような表情のない顔でその寝顔を見下ろす。
そっと頬に触れたのは何か意図があってではなく、本当に無意識]
……
[アンゼリカ、久しぶりに彼女に会ったその場所で行われていたこと。頭の隅に押しやっていたのに未だに消えていなかったローズマリーの声。
この人も、シャロも、誰かの前ではあんな風に鳴くのだろうか…。
頬に触れた指はそのまま唇をなぞる。
自分よりも年上の、何か不思議な香りがした]
…駄目ですよ…体は…大事にしないと…
[あの時の風邪が治っていないのだろう、浅い息を繰り返すソフィーの体は熱かった。
ふとつぶやき、そのままもう一度意識を手放す─*]
何をしてるのって、着が…あっ、ニーナ。
[飼い主も、ペットが指す意味がまるで分からず、悪態をつかれ続けるネリー。]
あっ、こ、これ、誰の…?そんな悪いわ。
ロティ、どうしよう。
[既にウェンディの服を着ていてまるで説得力のない言葉を発するネリー。
困惑しつつ、ニーナの好みそうな露出度の低い服を押さえつけられるように渡される。]
[─夢の中─
いつか聞こえていた声はあれから聞こえない。
遠くで何かを感じても、たどるには遠すぎて]
……俺を呼んだ人は…誰…?
俺は…ここ…に…いるのに…。
…誰…?
[興味をそそったのは、男の上半身に描かれたタトゥーだった。
ワイシャツを脱がせた時に、左腕に散った赤い薔薇の花びらに気付いたのだが、よく見ればタンクトップの襟ぐりからもちらりと何かの図柄の断片が覗いている。
好奇心にかられ、タンクトップの裾を捲り上げた。]
[ギルバートの唇から、ほう、とか、へえ、というような声が洩れた。
男の胸に広がるは、"Dusty Angel"の文字が躍る白いリボンと薔薇の蔦が絡んだ、脈打つハートマーク。ハートの後ろに広がる放射状の後光は良くある意匠だが、この手のデザインに付き物の十字架は描かれていない。]
村長の娘 シャーロットは、見習いメイド ネリー を能力(占う)の対象に選びました。
[この「叫び」の発生源の居る、大体の方角が分かった。
そちらに意識を伸ばし、「耳を澄ます」。]
[が、それ以後はまた、不明瞭な言葉にならない「呟き」に戻っていった。]
[しばらくして、思い出したように捲ったタンクトップを元通りに着せると、シーツを引っ張って男に被せた。
そして、脱がせた衣服を拾い上げて邸内の探索に向かった。]
[あちこち扉を開いて、探し回って見つけた洗濯機に汚れた服を無造作に突っ込む。
ついでに洗面台でレインコートに飛んだ吐瀉物の飛沫を洗い流して絞った。は良いが、これをそのまま着る訳にもいかず、しばし思い悩んだ末、シャワールームのフックに引っ掛けておくことにした。後で帰る時に取りに来れば良いだろう。
ギルバートは男の居る寝室に戻った。]
[男の服を脱がせた時に、所持していたものは全てテーブルにぶちまけておいた。
その中から、メンソールの匂いのする煙草を一本取ると、]
……一本貰うぜ。
[ベッドサイドに引き寄せた椅子に座り、ふかし始めた。]
[崩壊の音の後から、もやもやしたものが相変わらずこちらの心の外縁を撫でていくが、出力が安定していないのか、えらく聞き取りにくい。]
[彼は煙草をふかしながら、今一度「声」を送ることにした。]
オマエの叫ビは、私ニ届イた。
お前は何を求メていル?
救イか、それとも。
[その声は以前と比べると、大分人間らしい響きを備えていた。]
──ウェンディの部屋──
…良かった、居たのねニーナ。
あの後、ちゃんと戻れてるか少し心配だったの。
[ルーサーの死をはじめ、一連の出来事をニーナにかいつまんで伝えながら、義理の叔父が目の前に居るネリーにこんな仕打ちをしたとはやはりまだ信じ難く、その事をシャーロットはニーナに伝える事が出来なかった。
何故かネリーもノーマンの話をしようとしないようだ。
ニーナの「飼い主」と言う言葉には、意味が分からなかったらしく、不審そうに首を傾けたのみ。]
あ、ネリー。
ニーナの服の方がずっと良いわ。
遠慮せずに着ちゃいましょうよ。
[と言ってまた着せ替えをはじめる。]
[ニーナの長袖の服を着せようとして、今度は手首の内側の擦り傷の酷さにびくりと身をすくませた。
一瞬、もしかしてネリーがノーマンの元を離れた理由に、先刻の地下室への監禁の様な出来事があったのでは──と浮かばなくも無い。けれども、それは目の前のネリーを持ってしても、シャーロットには非現実的な出来事に思えた。手枷、足枷、首輪に口輪。地下室で拘束され、視界の自由も奪われ、言葉で、指先や舌で、道具で──あるいはもっと…。昼夜も分からず非人間的な扱いで嬲られる。そんな世界があるとは思いも及ばず。]
…ホントに痛そうだわ。
電話が通じたら、ボブさんにすぐ迎えに来てもらえるのに。[自分がボブに会うのは少し嫌だなと思いながらも]ダンソックさんの家では、よくしてもらえてるの、ネリー?
[ネリーの着替えを終え、後の事をヒューバートに相談しようと*移動を促そうとして、ニーナの顔色も随分と酷い事に気付く*。]
…ニーナも、まさかノーマン叔父さんに?
そんなわけない…わよ……ね。
──居住部→雑貨屋へ──
[シャーロットがネリーに着替えさせる様子を見ながら]
その服、返してくれなくていいから。
[わずかな苛立ちを含む声。
大きくため息をついて、ボブが自分を送って帰っていったと吐き捨てるように小さく告げると、ネリーを僅かに睨んでいたがシャーロットの呟いた人名だけ耳が音を拾い]
あら、あの人帰ってきてるの?
[今更、と冷めた表情のままシャーロットに同行する。
彼女の傍らを歩けばかなり小さい声で]
…シャーリィお願い、ダンソックの話はしないで。
あの男に近づいてはだめ。
なるべくなら、彼女とも関わってほしくないわ。
[睨むような青い視線を少しだけネリーにむけ]
[何かが罅割れ、崩壊する音。
私は漠然と五感とは違うまた何かの感覚で感じた。周囲の人々は気づいていないのか。耳を貸そうとしない。
私は無意識的に顔を上げ、360度上を見回した。
やがて私はいつの間にか考えるのを止めた。]
あー……煙草か。別に構わねぇよ。
[そう呟く男の肌の上には、微かな震え。幻想の世界から寝室に舞い戻って来た意識の表層には、先ほどよりも微妙に感じる涼感。]
……………?
[男はその時、自分の服が剥ぎ取られていることにはじめて気付いた。]
[煙草をふかしながら男の顔を見下ろす。
あの医師に委ねて、薬物を吐かせるなりなんだり適切な処置をした方が良いというのは分かってはいたが、彼はその方法を取る気は毛頭無かった。
彼は彼なりに男の選択を尊重していた。この男が自ら望んでこうしているのは間違いなかったからだ。]
どうもこの煙草は口に合わんな。
ああ。服が汚れてたんでね。脱がした。
……寒いのか? 着替え、持って来ようか?
どっちでもい………
[ぼんやりとした視界の中に、テーブルの上の様子が入る。煙草、メモ用紙、財布、そして3本の鍵。]
なっ………!?
[それまでの緩慢な動きからは予想できないほど早く、ナサニエルはテーブルの上にある鍵に手を伸ばした。]
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