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[ネリーはシャーロットの顎を優しく持ち上げ、驚くシャーロットの意をよそに、口唇が開いている事をいいことに、自分の指を1本、シャーロットの口の中へ滑り込ませた。
中切歯や側切歯の具合を指で確かめている。]
…ねえロティ。人は、間違えると取り返しのつかなくなる時があるの。
人間はね、丈夫だから、簡単な怪我や傷は元に戻るわ。今の私の身体もすぐ治る。きっと。
でも、度が過ぎると駄目なものもある。
あなたは…それを間違っては駄目よ。
[そう言い終えるとネリーは静かにふっと笑い、そっと指を抜き取った。]
[ネリーの指が、シャーロットの口内の粘膜を滑り、何故か歯に触れる。不思議なあやしさを含んだ声色に、何故か肌が粟立った。]
…ん、ネ…リー、いった……、
どうい
[無防備な様子はそのまま、指を抜き去ったネリーを呆然と見つめている。ネリーの指がシャーロットの唾液で濡れていた。]
ネリー、あなた一体……。
[首を横に振る。
今のシャーロットにはまだ分からない。]
[シャーロットの口元とネリーの指に濃密な唾液のラインができる。
じっとり濡れた自分の人差し指、唾液を慈しむように、今度は自らの口に静か入れてくわえ、拭き取った。]
知らないなら知らないほうが幸せだ…ものね。
[顔を背けて服を選ぶシャーロットを後ろから目を細めて見つめている。
ネリーは…ノーマンから受けた仕打ちゆえ、オーラルセックスに極めて深いトラウマを持っているのだった。]
[下方に円弧を描いた透明な唾液のラインに羞恥心を覚えた。]
…あ。
ネリーは、何を。
[何を知ってしまったの。地倉庫に閉じ込められても平気なの──。と、言いかけた言葉は舌に登り切らず止まる。]
……怖いわ。
ううん、それよりも着替えの続きを。
[慈しむように人差し指を口唇で拭うネリーから目を背け、もう一度クローゼットへ向かう。]
[得体の知れない空気を追い払う様に、コットンなら伸びるだろうと、Tシャツをネリーに着せた。
やや豊満なバストを生地の中におさめるのに、まるで手の中で逃げるビーズクッションを弄ぶかのような具合になってしまい、シャーロットは更に赤面した。いくらなんでも、こうも露骨に胸を揉みしだくような真似をしてしまっては。]
──…あ、ごめんなさい。
でも、もうちょっとだから我慢して……。
[なんとかネリー胸を収納し、着せ終えた姿を一歩下がって眺めてやはり呆れた。
ネリーはすでに成人しているにも関わらず、短くティーンエイジャーらしいデザインのフレアスカート(、それも、ゴムウエストだけにややチープで、すぐにひらりと捲れて、太腿やヒップがあらわになってしまいそうな薄い生地。上着はブラのレースが透けそうなほどぴったりと生地が張り付き、上半身のボディラインを強調したTシャツ姿。
──下着姿よりはマシだったが、意図せず随分と扇情的な姿になってしまった。]
やっぱり、ウェンディの服じゃ無理があるみたい。
これじゃ…道歩けないわ…ね。
あ、これ、バスタオル。被っていれば少しはマシかもしれない。
[おそらくこの子はまだ知らない、あるいは慣れていない子。ならば真っ直ぐに伸びて欲しい。穢れを覚えることなく。
逆に「穢してはいけないもの程、穢したくなるのが人情」であり、「私の見てきた道に引きずり込みたい」と感情も全くないでもない。
私って駄目ね…と、少しだけ葛藤するのだった。]
ウェンディが華奢すぎるのがいけないのよ……。
私だって入らない服がいっぱいあるに違いないわ。
ネリーはなんて言うか、大人だし…ほら「セクシー」だから。
[「扇情的」と言う言葉が浮かんであわてて「セクシー」と言い換えたものの。白い素肌に刻まれた薄紅色の傷口を撫でた時、何処かでシャーロットは、傷を含めた──ネリーが無防備でいて、随分といやらしい存在なのではと感じていた。
それについ今の言葉…──。
以前から感じていた明るいはずのネリーに対する違和感と相まって、シャーロットは混乱を感じつつ心の中で眉根を寄せた。]
でも、それが彼女の服の中ではベストチョイスなのよ…多分。
どうしよう…。
ボブさんに迎えに来てもらうか、パパに送ってもらうか。
まさか、その恰好で歩かせるわけにも……。
[*言葉尻を濁す*。]
ウェンディはウェンディのいい所があるから、ほら。
私ってセクシーじゃないわよ。ローズさんのほうがよっぽど…
[ネリーも意図的か無意識的か、少し乾いた笑みを漏らす。
ネリーは元来、黙って素敵な笑顔を振りまいていれば女性的――と言うよりも人間として非常に完成されたものに見えたかもしれない。
だが、身体についている無数の傷跡に、明らかに慣れすぎてしまっている事、ネリー自身に染みついた性的なものが、普段のネリーとはあまりにもかけ離れて見える事は、やはりネリーをそれなり以上知る人にとっては、どうしても垣間見えてしまうものか。]
ちょ、ちょっとこれは…恥ずかしいかな…
誰かに送ってもらったほうがいいかしら?
[腰のくびれや胸の形がはっきりわかる姿。
扇情的になっていて人目を引くのは勿論だったが、ウェンディの服を着ている所をリックやノーマンに見られるのが怖かった。]
[部屋の錠を開けて、紺のゆったりとしたリネンのワンピースに袖を通す。
スクエアネックで七分のラッパ袖、ウエストを共布のリボンで緩く絞ったそれは、寝間着にもなるようなもので。
一息入れようと紅茶でも入れようとしたところで隣の部屋から複数の声がすることに気付いて、いぶかしむ表情を浮かべながら扉を出て隣の部屋の扉を叩く]
…ウェンディー、いるの?
開けるわよ?
[少し時間を開けてから扉のノブを捻る]
─ナサニエルの家─
[入って感じるのは、この家には何となく荒涼とした気配が漂っている、という事だ。
殺風景な廊下にぽつんと置かれた電話の、女性的な色合いの手作りと思しいカバーが、違和感を伴って侘しささえ感じさせる。
空気も何処か埃っぽい感じがするのは気のせいだろうか。]
[指示された通り、階段を上って奥の寝室に男を運び込んだ。]
―ウェンディの部屋―
>>119
は、裸よりはましに違いないわ。ありがとう。
[Tシャツやフレアスカートそのものにはそんな土台はなかったが、全てを組み合わせてネリーが纏うと、それはまるで男を誘っているかのようであった。
本来ウェンディが纏う時とはまた一風趣が異なる。]
!…ニーナ?
[ドアノブが突如開いた。頬を殴られた跡をはじめ、全身の傷は隠しきれてない上にウェンディの衣服。ニーナは何と*思うだろうか*]
─ナサニエルの家・2階寝室─
[寝室もこれまた殺風景な部屋だった。ベッドと少しの家具しか置いていない。
室内に入った時に、彼の鋭い嗅覚は少し生臭い臭気と仄かな汗の匂いを嗅ぎ取ったが、それは口にせず。]
ここでいいんだな?……ほら、座れって。まだ寝るなよ。
[蹌踉く男をベッドに腰掛けさせ、汚れた服を脱がせようとワイシャツのボタンに手を掛けた。]
[ギルバートに運ばれている間、男の脳内には、先ほどとは別のヴィジョンが流れ込んでくる――]
[柔らかな陽射しと、銃弾が飛び交う大地の狭間。
後光を背負ったキリストの像――以前、どこぞの文学研究書で見たことのあるそれ――と、リヴァプールからニューヨークにやってきた男が奇妙な指先を掲げてシュプレヒコールを上げて居る。いや、後光を背負う男と、リヴァプール出身の髭の男の身体は腰から下でひとつに繋がっているのかもしれない。光に包まれて曖昧な形をしているのだから、区別の付けようは無い。]
[黒ずくめの男が、その光の向こう側で、穏やかな笑みをたたえる女に抱かれている。目を閉じ、手を取り合い、静かに眠る男の姿。――そして、黒ずくめの男は、翼の生えた女に導かれ、極彩色の光の渦を形成する。
きらり、きらり、きらり。
――光は三度瞬くと、四方八方へ拡散していった――]
…貴方たち、何をしてるの。
[あきれたようにため息をつくとネリーを見やる。
その視線はひどく険しく、殺気のようなものすら感じられようか。
上から下まで視線が一往復して]
…まったく。
飼い主が飼い主ならペットもペットね。
[未だないくらいはっきりとした嫌悪を口にしてから一度自室へ戻り]
…こっちの方が、その格好よりはましでしょう。
さっさと着替えて、出ていって。
[辛子色のシャツと茶色のロングスカートを手に戻って来ればそれをネリーへと。
流石に投げつけるようなことはしなかったが]
ルー……
[琥珀色の男に促されるまま、ナサニエルはベッドの上に座る。]
う………頭痛ぇ。
気持ちわる………
[服を脱がされることに対してはひどく無抵抗で、ただ意味不明のことをぼそぼそと繰り返している。]
シー……
見えた………ルー………
ん? ルー……何?
[問い返すがまともな返事は返ってこない。俯きがちの目は焦点がまるで合っておらず、どこかのワンダーランドを逍遥していると思しい。
諦めてギルバートは、ブツブツとうわ言じみた意味不明の呟きを繰り返すナサニエルから、手際よく衣服を剥ぎ取っていった。
男は特に抵抗もしない代わりに、自発的に脱衣に協力ということもなく、されるがままに促されれば手を上げたりするという程度。この手のことに慣れていなければ、結構大変な作業だ。
漸くズボンまで脱がせてベッドに転がすと、改めて男をまじまじと見詰めた。]
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