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[けれど、10年前。
その印象は錯覚にすぎなかったのだと僕は知った。
突然、人が変わったように――人でなく獣になったように、荒々しく野蛮な表情を見せ襲い掛かってきた隣人。思い出そうとしたことなんて、今まで無かったけれど。
それでもあの日、僕は知った]
『たとえヘイヴンに縁のある人間でも、全てを信じてはならない』
[――のだ、と]
[わたしにはこの親子がどういう関係を望み、どういう未来を描きたいのかははっきりと把握は出来なかった。いいえ、したくは無かったのかも知れない。
だから親身になるような振りをして、実の所何一つ教師らしい事を言わなかったのだろうかと、少しずつ呼吸が荒くなっていく身体を宥めながら理由付けをしようとする。
しかしそれは今ひとつ明確な理由に欠けるような気がして、また正しくないようにも思えた。]
遠慮なんてそんな…。
ではお言葉に甘えて、傘だけ。お借りいたしますわ。
[送り届けて貰う事を断ると、彼は傘を差し出してくれた。それをわたしは有り難く受け取り]
ではまた後日――傘をお返しに上がりますね。
ごきげんよう。
[彼らは果たして玄関先まで見送ってくれただろうか?それとも断りを真に受けて部屋でのみ見送ってくれただろうか?]
『だから、守ってやらなきゃ。
ウェンディは、僕が。兄貴なんだから』
[そう自分に言い聞かせ、熱を帯びた腕の中の身体を抱え直した。少し苛ついたようなニーナの声が聞こえる。視線を辿り、未だ逡巡するネリーの姿を見て取った]
染みがつかなくても然して売れはしませんけどね──。
ハーヴェイさんの車も、無事で良かったです。
お陰でこうして、私も雨を逃れる事が出来ましたし。
[冗談めかしてくすりと笑う。
そうこうするうちに車外の風景が見慣れた町内の景色に変わり、ふと思い出したようにソフィーは尋ねてみた。]
あの──。
ハーヴェイさん、ご存知ないですか?
父を診て下さるような、精神科の先生を……。
[シャーロットとはリビングで別れたのか。戸口へ向かう途中彼から囁かれた言葉に、わたしは精一杯の笑顔を努め]
いいえ、お父様が心配なさるほど悪い生徒ではございませんわ?
だから気にする事は無いと思いますの…。
[それは本当に教師として口からついで出た言葉だったのか。私には判別付かなかった。]
そんなに、いつまでも迷っていなくて良いのに。
それとも、本当は残って手伝っていたいのかな、ネリー?
こんな指摘をすると、また“旦那様”の機嫌を損ねるかも知れないけど。でも、それはそれで嬉しい事だね、ネリー。
もし何時かまた奉公する先を探すことになったら、うちを一番に考えてくれると良いと思うよ。今なら、決定権を持っているのは僕しかしないことだしね。
ネリー、ネリー。雨に打たれ、キミまで
具合悪くなったらどうする?
[彼の深層に潜む、支配欲が彼女を押し倒してしまう
ことも確かに、確かにあった。
しかし、身も心も打たれ続けた人生を歩んだ彼にとって、
自分に尽くしてくれるネリーは、本心から
かけがえがないと思える存在であった。]
キミにまで何かあったら、私は後悔するよ。
頼むから、私に雨という鞭でキミを打たせる
マネをするのは、どうかやめてくれよ。
[ネリーは何かを呟いたかもしれない。それは誰にも聞き取れないものであったか。謝罪の言葉にも聞こえるか。
小降りの雨を受けて長い前髪が瞳を隠し、少し俯いているようにも見える。]
行きましょう、旦那様。
[ネリーはボブの助手席の側へ行き、ドアに手をかけた。]
―アトリエ・戸口―
――そうですか。
よかった。
[彼女の内心までは知るよしもなく、私は素直に安堵していた。その表情は常の父親と変わりのないものだっただろう。]
――雑貨屋→居間――
[ニーナに目配せで合図し、足元を確かめつつウェンディの身体を運び始める。腕から伝わる体重はさして重くなかった。けれど体温は高く、熱が見せる悪夢に魘されているかのように呼吸は小さく早かった]
……ん。こっちが頭、だね。わかった。
……下ろすよ。そう、ニーナの方が先で。
……ありがとう。
[ゆっくりとソファに横たえてニーナを見ると、うっすら汗をかいているように思えた。ごめん、と頭を下げて水のボトルを一本渡す]
[ネリーが来たことに、安堵の表情を見せる。
小さな小さな子供のような、笑顔。]
ウェンディちゃん、お大事にね。
[リックに見せる表情は、厳しい。]
じゃあ、ネリー行こうか。
[ネリーが乗り込んだのを確認すると、アクセルを踏む。]
これでも一生懸命掃除してやったんです。
そしたらまたこの雨ですからね。
俺に乗られたばかりに不幸な車ですよ。
[ソフィーの真面目な質問に、少し考え込むように黙り込むが]
精神科の先生、ですか…。少なくともこの町で精神科がフィールドの先生は知らないですね…。俺が行ってた大学の近くにならいくつかありましたけど。
もしこのまま道の整備が進んだら町の外に出てみたらどうですか?もしかしたら俺の叔父も知ってるかもしれないし。
はい、旦那様。
[前髪や方をタオルで拭く。ボブだって何時だって私をしっかりと見てくれているのだ。軽はずみに行くわけにもいかない。
ネリーは小さな声でリックに謝った。]
[言い方はおかしいかもしれないが、ネリーがようやくボブをつれて帰ってくれたことに大きく息をひとつ吐くとリックの合図に応じてウェンディを居間へと。
普段から重い本を相手にしているとはいえ、流石に軽く疲れたところにミネラルのボトルを差し出されれば礼と共に受け取るだろうか]
ありがとう。
…大丈夫かしらね。
[ちら、とウェンディの様子を見やり、その頬や額にミネラルで少しだけ冷えた手で触れて]
―戸口→玄関―
[戸口で傘を開き、ステラの上に掲げる。私も傘を持ち、彼女を玄関まで見送った。
彼女を送って――送ってどうするつもりだったんだ?
小雨が降る中、彼女を乗せるのは屋根のついたセダン――彼女と出会った時のあの車だったことだろう。
ステラの歩みと共に、ロングスカートは空気を孕みその長い足に纏い付くように流れ、また膨らむ。柔らかい布地が彼女の太股を滑り、愛撫する。
服の下の彼女の肉体を、私の目は鮮明に甦らせていた。
だが、それは6年前のものだった。断絶した時が彼女の上で重なっていただけだった。私はその残像と呼び覚まされそうになる渇望を辛うじて払いのけた。
――どうもしないさ。家では娘が待っているんだ。
今は姿を見ないが、エリザも――
別れ際にステラに笑顔を向けた時には、葛藤は顕れてはいかなかった。]
エイヴァリー先生。来て戴いてありがとうございます。
[そうして、私は彼女を見送った。]
――居間――
[ウェンディの額に浮き出た汗の玉を拭い、唇にボトルの口を寄せる。それでもやはり嚥下する様子はなく、水はただ頬から首筋を伝って落ちるだけだった]
……うー……ん……。
……仕方ない、よね。それとも、ニーナがする?
[こく、と一口分の水を含んで従姉を見上げる。
次に指差したのはウェンディの唇。ニーナが頷けば任せるつもりで、とりあえずその一口分は飲み下した]
[ウェンディの様子を見つめるニーナの声。僕は背後を確かめた。少なくとも、この説明だけは部外者に聞かれる訳にはいかなかった]
……大丈夫、だとは思うよ。
……たぶん、一種のバッドトリップだから。
[ネリーは顔を上げた。いつもの車にいつもの景色。
ただ景色が少し違う。やや薄暗い。
この景色、ごく最近見た記憶がある。…でなければいいが。]
[安堵する姿。その面影はわたしの知っている彼ではなく。
娘を耽溺する父親の姿でしかなかった。]
えぇ、だからあまりお父様も心配なさらないように。
親の不安は子にも伝染わってしまいますから…。まずは親御さんがしっかりなさらないと…。
[落胆する姿を見せまいと、わたしは無理に振舞って彼を励まして見せた。今この時こそ自分が滑稽に思えたことは無い。]
では雨も本降りになってきましたので、この辺で。
お邪魔致しました。
[相槌を入れられないように少々捲くし立てるように別れの言葉を告げて。わたしは雨の中へと飛び出していった。]
−居間−
[しっとりと汗ばむ従妹の肌に微かに背筋に何かを感じて、ゆるりと小さく首を横に振ってその熱を払い]
…いいわ、私がやるわ。
[少し見上げるリックの視線に瞳を緩く細めればウェンディの傍らへと膝をついて]
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