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―作業場―
[身体中を駆けめぐる情熱と、希求して止まぬ心のかつえのままに、ただひたすら粘土に命を吹き込み続けた。掌が、指先が、記憶するシャーロットの微細な肌の感触を、その肌の下の肉の躍動と血潮の潮流までをも甦らせてゆく。]
ああ……ロティ
…欲しい。君が……
[指の背が、潤いを湛えた秘めやかな花苑に触れた時――指先を上向かせその場所を探求したいという渇望を振りほどくのに、私は意志の力を総動員しなければならなかった。
熱い蜜の滴る花芯に指を滑り込ませ、ぐちょぐちょに掻き混ぜたかった。
まだ知らぬ内なる神秘への希求を、彼女は私にとって必要なことなのだと受け入れてくれただろうか。
父親としての領分をとうに越えた試みに踏み出すには未だ躊躇があった。]
[表現者としてシャーロットから美的快楽を得ることを無心に切望し、それらの探求に耽溺する時、私の魂を占めたのは父親としての愛ではなく一人の男の焦がれるほどの情愛だった。
その最終的な到達点が性的な充足にあるのか、作品の完成なのか、振る舞い方を分かつのはその動機付けの方向の違いでしかなかった。
制御しきれなくなるそのギリギリの手前まで自分自身の情欲を引き出す時、曖昧な領域の狭間で私はひどく混乱することになる。
素材に向かい、造形の完成までに欲求のすべてを注ぎ込むことができれば虚脱感とともに平静が戻ってきた。だが、それはそう簡単なことではない。
造形物としてはそれ以上手をつけることができない、という状態に至っても愛欲の影が僅かな残滓として澱のように留まっていることはしばしばあった。
そんな時は、ただ行き場のない衝動をもてあました。
夜道をロメッシュのアクセルを一杯に踏み、駆け抜けていく中で発散される時はましな方だった。真夜中に隣町まで出かけてゆき、女を買ったこともあった。
エリザとの性的な不一致の決定的な決裂となったあの出来事も、そんな衝動によって引き起こされたものだった。]
――シャーロットの細い腰を抱き寄せ、
熱い坩堝に猛り狂った強張りを
深く、深く沈めてゆく――
[狂わしいほどの淫欲が心を侵し、視界にまで氾濫してくる。足を踏みしめ、圧倒的な猛威に押し流されぬようただ目の前の粘土に立ち向かった。]
[心を灼ききる程の集中に虚脱しきった頃、塑像は完成していた。
素材に向かう時には、多くの場合そこに顕れ出るものへの道筋は導かれている。だから、私の制作は時間的には極めて早いものだった。
この塑像は、石に鑿を入れ最終的に作品を作り上げていく前段階の試製の一つに位置していた。塑像の上から乾燥をコントロールするための薄い布をかけ、作業を締めくくった。
最後に瞑目し、「今から私は父親だ」と自分自身に言い聞かせた。私の中の“美術家”と“男”を心の奥底に押しやる。色欲は未だ埋火のように燻り熱を持ってはいたが、自制を損なうものではなくなっていた。深呼吸と共に平静を呼び覚ますと、螺旋階段を*昇っていった*。]
―ナサニエル自宅・書斎―
[メモの木の葉が散乱している机の上には、1冊の黒革の手帳。
そして、1枚の走り書きのメモ。]
「これは人類史上における、最も偉大な『実験』である。
Nathaniel Oliver Mellers」
[その言葉は、空になった咳止めシロップの瓶に踏まれながらも、誇らしげに胸を張っている。]
――――――――――――――――
《ナサニエル・オリバー・メラーズの手記より》
【ステラ・エイヴァリー】
197X/XX/XX
彼女との「契約」の形態は、一見不安定なようでいて実はひとつの明確な「芯」が通っている。同性愛者である彼女が、過去にされた行為を繰り返して体験することで、罪悪感と充足感を覚える――というものだが、私はそれに些かの違和感を覚えた。何故彼女は、わざわざ「罪悪」を思い出さねばならぬのだろうか、と。
そして、男への「従属」――蔑まれ、罵倒され、好きなように犯されることと、男に対する「支配」――男を罵倒し、哀れみ、踏み付けにすること――彼女が望む行為の全ては、ひとつの《結論》へと導かれる。
即ち、男という「性」を支配してやったという達成感、或いはカタルシス。それに他ならない。
男に対する「従属」は、一見すれば自身を傷つける行為に見えるが、実は彼女にとって、本質はそうではない。「男」が欲しい、犯して欲しいという懇願と、それに付随する性的行為をもって、彼女は「男を絶頂させてやった」「私も達したけれど、貴方も満足したでしょう?」という支配的な目をするのだ。
試しに「犬になれ」と言ってみたが、彼女はついぞ「犬」に成り下がることは無かった。禁忌を破り、彼女は従属的な態度を取りながらも、「人間」であることを捨て去ることなく、「人間」のままの姿で私を「受け入れ」、そして「満たされた」のだ。「人間」である自己を、自身が従属すべき者から守った。――本来のルールでは、赦されざる事態のはずだ。
ある種の尊大なプライドが、彼女の卑屈な態度から見え隠れしている。彼女ほどプライドが高く、また自己防衛の壁の厚い人間を、私は見たことがない。
そういう意味では、私を「支配したい」と欲し、蹂躙した方がまだ素直で分かりやすいと思うのだが……そういうわけにはいかないらしい。
――何故、彼女は「自分が『男』に『従属』する」、という形態を捨て去らないのだろうか?
その理由は、彼女の「同性愛を許容して欲しい」という強い欲求であると推測される。
つまりそれは、何らかの理由で「同性愛者」として蔑まれた彼女が、自己肯定――或いは、自己防衛――の為だけに、男との性的交渉を為しているのではないだろか、ということだ。
表面上では「男」と通じ、「私は男と通じた。きちんと女としての義務を果たした。私は悪くない。」と――誰かに、或いは自分自身に見せつけるための行為。それが彼女における「男との姦通」の理由の全てではないだろうか。
そして、その免罪符を振りかざし、自身の心の奥底に在る「同性への思慕」を、下界の風雨や刃に傷つけられぬよう、密やかに守り抜くのだ。
我々「男」は、彼女の「同性愛」への免罪符。それ以上でも以下でもない。つまり、彼女にとって、男は所詮「道具」に過ぎぬのだ――
――――――――――――――――
―ナサニエル自宅―
[“妹”を抱き寄せ、何度目かのくちづけを施した時のこと。玄関の方から、チャイムの鳴る音がした。“妹”にごめんね、と告げると、“兄”は玄関に向かった。]
[扉を開ける。そこにはアーヴァイン。]
………あなたは?
何かあったのですか……?
[“兄”は眉をしかめながら、アーヴァインの話を耳にする。]
村の封鎖……崖崩れ……
電話回線は全て不通。一部停電……
なるほど。俺の家が停電したのは、そういうことだったんですか……。
[アーヴァインは、いつもとは違う様子のナサニエルに訝しげな目を向ける。現在復旧作業を早急に行っているが、万が一のための準備はしておくように、という旨を告げると、アーヴァインは次の家へと向かった。]
―2階・寝室―
ニナ……
[真っ白な寝室に戻ってきた“兄”は、“妹”に外の状況――アーヴァインから伝えられたそれを説明した。そして、悲しげな瞳で語りかける。]
残念だけど、今日はこれでおしまいだ。
リックやウェンディが心配だ。彼らの元に、戻ってあげて。……俺はこんな姿になったから、ニナとは一緒に行けない。ごめん。
また俺に逢いに来て。
それまでは……お別れだよ。
[テーブルに掛けて乾かしていた“妹”の服を手にし、*そっと差し出した*]
[ソフィーに以前依頼した衣装をまだ引き取りに行っていないこと、彼女の誕生日が訪れることを思い出していた。日頃彼女には随分世話になっており、シャーロットの16の誕生日にはドレスを戴いたものだった。
私も、些細なものだったが彼女への誕生日プレゼントを用意していた。
父親の跡を継ぎ仕立て屋を営む彼女の腕前は見事なもので、働くことができなくなった父を支える健気な姿に私は敬意すら感じていた。しかし、かつてそんな話をした時に、エリザの反応はいささか不可解なものだった。
どこか奥歯にものの挟まった物言いで、明確にどこがとは指摘しないがそれでいて否定的な言葉を積み重ねていく。
「なにかあるのか?」と私が問うと、「噂だけど」と前置きした上で「私、イアンがあんな風になったのは、ソフィーのせいもあるんじゃないかと思うわ」と口にした。]
[聞けば、妻を亡くしたイアンをソフィーが誘惑したのだという噂があるのだという。それに類する噂は私も耳にしたことがあったが、私には妻を亡くしたイアンがソフィーに手をつけたのだという噂の方がまだしも真実に近いのではないかと単純に考えていた。
そういった時、女性はたいてい同じ女性の立場を擁護するものだと勝手に感じていた私は、エリザの態度が少し意外でもあった。
「どちらにしても――」と私は言う。「しっかりしなければならないのは父親の方だよ。」
妻が死んだことがどれだけショックだったとしても、父親には娘を庇護する責任と義務がある。守るべき人がいるなら、その立場を放棄することも忘れ去ることもできないはずなんだ。私は熱を込めて話していたのだと思う。
そう信じていたし、そうでありたいと思っていた。世の父親一般もそういうものであって欲しいとも願っていた。]
[黙って聞いていたエリザは感心するでもなく、共感するでもなく、ただ冷笑的な笑みを浮かべていた。]
「……そう。それなら、あなたは安心ね。」
[私が仮にでも妻を悼まない人間に見えたのだろうかと、慌てて言い添えた。
もちろん、君に何かあるなんて考えもしないことだけど、と。
彼女はただ微笑んでいただけだった。]
―アトリエ―
「これから帰るとお電話があってから随分経ちますが、まだ奥様は戻ってきていません」
[マーティンの言葉に心の中を不穏な暗雲が垂れ籠めはじめ、様子を見に外に出ようかと考え始めた時だった。不吉な知らせを運ぶ来訪者が、重い足取りで我が家の扉を敲いた。]
なんだって!?
まさか……
いや、ああ……そうか。
これが……
[男から震える手で黒拍子の冊子を手にとる。字体を確かめただけで中を読む気になれず、玄関に入ってすぐのウォークインクローゼット脇の椅子の上に置いた。
寒気を感じたのは土砂降りの雨で低下した気温のせいだけではなかった。]
ああ。わかった。場所はだいたい察しがつく。
……知らせてくれてありがとう。
[男を見送ると、急いでウォークインクロゼットから雨具と傘、レインシューズを引っ張り出す。振り返ると、姿の見えないシャーロットに張り上げた声で呼びかけた。]
ロティ!
少し出てくる。危ないかもしれないから、お前は家にいなさい。
何かあったら、マーティンを呼ぶように。
[そして、返事が帰ってくる暇も惜しむように戸外へと*飛び出していった。*]
――酒場二階 ローズマリーの部屋前――
[ソフィーの、探るような視線を無視するようにわたしは彼女と彼女のお父様を残し部屋を後にしようとしたその時。ドアノブを捻ろうとする手が一瞬妙な軽さを覚える。
と、同時にわたしはドアと共に軽く引き摺られるような形になり、バランスを崩しかけた身体は前に倒れそうになった。]
[それでも身を護ろうと反射的に踏み出した次の足は、床ではなく人の足に着地しそうになり。わたしは再び慌てながらも何とか踏み止まり、前に倒れる事も誰かの足を踏む事もなく無事体勢を立て直した]
あっ…とっ…ごめんなさいっ…ギルバードさん。お怪我はな…く…て――?
[真っ先に視線を落とした足許。そして瞬時に反転する瞳に映し出された姿に、わたしは申し訳なさそうな表情を作り彼を見上げた]
[そんなわたしに、ギルバートは微笑を投げ掛けようとする。それは物腰の柔らかい男特有の癖とも言えようか。
彼らは常に微笑みを投げ掛ける事で、相手との距離を縮め時に物事を円滑に運ぼうとする。それは獲物を落とす時も変わらない。
男にとって女とは獲物であり、女を落とす事は狩猟と同じ事。]
[ギルバートもまた楽して獲物を取るスタイルを貫き通す男だろうと、わたしは初対面時に向けられた人懐っこい笑顔と気負いしない態度にそんな予測を立てていた。
そう、見上げた視線先に投げかけられた微笑の意図する事を読み取るまでは――]
[香染色の瞳が鋭く光ったような気がした。そして歪んだ口許に浮かんだ微笑。
それらは明らかに好意的なものではなく。言うならば裏を見透かしたような、圧倒的優位に立った物が見せる示威のような色合いを湛えているように思えた。]
[見透かすような透き通った瞳。訳あり物同士で交わされる秘密のやり取り。
瞳は語る。
「秘密を…欲望を紐解いてやろうか?」と――]
『冗談はよして。わたしが一体どれ程の苦労を積み立てて今の平穏を手に入れたのか…。あなたには解らないでしょう?』
[しかし無言で見つめ返す瞳には本心は滲ませる事なく、訳が解らないと言わんばかりに不思議そうに微笑を返して。
わたしは無言で彼の横を通り過ぎ、階下へ続く階段をゆっくりと踏み締めた]
―回想 自宅―
[ステラの悲痛な告白に塞ぎながら、ルーサーは2階の執務室へと向かった。
彼が部屋のデスクに腰掛けたとき、部屋の電話が鳴る。その様子はまるでそれがその時間に鳴ることを知っていたかのように落ち着き払っていた。2回目のコールで静かに受話器が上がる……]
ルーサー 「はい、私だ……」
?? 「やあ、ドクター ラング、調子はどうかね」
ルーサー 「無駄口はいい。用件を言え……」
?? 「頼んでおいた件はその後どうなっている」
ルーサー 「昨日、『因子』のサンプル採集に成功した。実験体はもう死に掛かっているが、やはりというべきか、投与している薬物に対して面白い反応が見られたよ。」
[ルーサーは、患者の人懐っこい笑顔を思い出し、胸が痛んだ。]
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