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結果は………………
[目を細めて、ギルバートを見つめる。]
―――最悪だったさ。
人間の身体を、ただの血と肉の塊に還す「作業」が、こんなにも退屈で、骨が折れるものだとは思わなかった………!
いやァ、お前にゃ頭が下がるよ。
毎夜毎夜、狩りをする本能――所詮「血族」でしか無い俺が真似しても、何の意味もねぇってことだな………
[ククッ…と小さく喉を鳴らし、そして――]
――やはり、俺は「お前が与えた『死』」でないと、勃たねぇみたいなんだ……
どうしてくれンの?俺のこと………
[低く囁くような声。]
…ネリー。
あなたはどうして此処に居るの?
それに、あなたが抱えてるそれは何?
[シャーロットはすでに窓際まで来ている。
ウエストに挟み込んでいたナイフを取り出し、無造作にネリーが抱える荷物を包む布を切り裂こうとする。それは、柄が極端に短く、刃ばかりが異様に鋭利な特殊なナイフだ。]
[短い間。短い沈黙。]
[目を上げて手を伸ばし、ナサニエルの頬に触れた。]
──では。
本当の「死の官能」を、お前にやろう。
[呟いて、静かに息を吐いた。]
俺の頭ン中には、或るひとつの疑問がある。
俺に「死」の官能を与えたお前が―――
―――俺を殺したら、どうなる?
[ブルーグリーンの瞳の上に、前髪がそっと落ちた。]
―――究極の官能。
―――全てを超越する恍惚。
―――ああ。想像しただけで、身震いしそうな話だ……!
[ナサニエルの唇が、ちいさく震えている。]
[ネリーも声そのものは確かに低いが、シャーロットに比べると明らかに少し上づいている。平静を装う。]
どうしても何も…此処にいるのは「彼」に呼ばれたからよ。
これは…
やめてっ!
[よもや彼女が刃物を持っているなんて。しかも刃物の振る舞い方から、ネリーが傷つくのもお構いなしのようだ。思わず包みを両手から離してしまう。]
[ネリーの手を離れた「荷物」の布は簡単に裂ける。
シャーロットがよく見知った青年の首が勢い良く転がり落ちた。
それは、]
──ッハーヴ!
[ナイフを持つ手が震える。
シャーロットは、そのままの勢いで、室内にネリーを押し倒すように覆い被さった。]
…彼に呼ばれた?
あなたも人狼なの……ううん、違うわね。
[ネリーに覆い被さった姿勢のまま、形の良い鼻孔を小さく動かす。
試すように、ネリーの首筋に薄くナイフで筋を付けた。]
[馴染みの感覚がじわりと脳髄を侵蝕していくのがはっきりと分かる。
先程ハーヴェイを喰らった直後でなければ、それはもっと切実に彼を責め立てていた筈だ。
お陰で彼には、自分の服を脱ぎ捨てるまで我慢する余裕があった。]
俺は結構アンタが気に入ってたよ……
[目の前の相手と同じように一糸まとわぬ姿になると、そう呟いて抱き寄せた。]
[「彼」はシャーロットに見せたくなかった。
どうして感づかれる前に逃げなかったのだろう、と一瞬悔やむ。
ギリ、と歯軋りした刹那、]
ああっ…!
[シャーロットに上から覆いかぶされる。
さほど腕力は違わないはずなのに、この筋力。]
勝てない…!
[思わず目を閉じた。ナイフを巧みに動かされ、首元に鋭利な金属が宛がわれる。]
[首筋から私の「血」が僅かにこぼれ始める。私の血の濃さの度合いは、彼女の嗅覚や視覚では誤魔化しきれないだろう。
ばれた…!]
[ネリーは仰向けのままシャーロットを見上げていたが、目を逸らして呟いた。]
きっと。私はノーマンに「抜かれた」ショックから。
そのシンボルがなくなったショックから。成長が止まってしまったのかもしれないわ。
………そいつはどうも。
[ギルバートに抱き寄せられ、ナサニエルはひどく具体的な形を浮かべた自身の「塊」を実感していた。]
ああ………ギルバート。
俺は………
お前の「官能」を、愛しているよ………
[ギルバートの唇に己の分厚い唇を重ね、その奥に在るギルバートの唾液が潜む壺へと、舌を伸ばした。]
[それは痛みも殆どない程度の薄い薄い傷だったはずだ。
簡単に押さえられてしまうネリーの細い手首を再確認するように眺めて、]
──…その力じゃ、抵抗出来ないわよね。
ハーヴを殺したのは、ネリーじゃないんだ。
ううん、ハーヴは死んだ事に満足していたみたいだから…いいの。
[今では遥か遠く感じられる安置所での会話を思い出しながら反芻するように。腕を押さえ付ける力はそのままに、ネリーの胸に顔を寄せる。片手でやや豊満な乳房を押さえ、ネリーの心臓の音を聞く。]
[……喰らいたい。]
[貪りたい。]
[甘く熱い血潮を、噛み締めると弾力のある肉を、舌に甘味を残す脂肪を、新鮮な湯気の立つ臓物を、]
[喰らいたい。]
[喰らい尽くしたい。]
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