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…5年も前に亡くなっていて…
[顎に手を当て考えてみたが、ふと自分のことを思い出す。
鏡を見たくなかったのは自分が兄に当然ながら瓜二つだからだ。自分の場合は家庭環境もあったから。しかしニーナの場合は]
…ニーナさんとお兄さん、仲良かったんですか?
[身体を捩り抵抗する雌犬の上に、幾つもの赤い雫を垂らしてゆく。
哀れな雌犬の肌に咲く、赤い花――ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ……]
………逃げても無駄だぞ、雌犬?
ほら……熱いくせに……
[挿し込まれた「尻尾」を、指先でフサフサと弄ぶ。]
………「そこ」、すげぇヒクヒクしてんだけど。
[体勢を変え、ナサニエルは雌犬の尻尾の手前を観察する。毒々しい色をした赤い花びらが開閉し、ぬらぬらと妖しく光る液体を吐き出している様子を見て、ナサニエルはクスリとわらった。]
「――仲良かったんですか?」
[ハーヴェイの言葉に、それが触れてはいけない記憶であるかのように、頭のどこかがチリチリと痛んだ。]
よくは知らないが……おそらくはね。
兄の名を呼ぶニーナの様子を見たら――
ひどく仲のいい兄妹だったんだろうと……誰もがそう思うだろうさ。
[その時の様子を思い浮かべながらどこか茫漠とした眼差しで答えた]
きゃっ…
[急に抱かかえられて反転した視界に、わたしは思わず小さな悲鳴を上げる。
てっきりそのまま命を奪うと思われていた腕は、今はわたしに躰を支える為に回されている。]
[一段一段階段を上がる度に振動が躰に伝わる。その度にわたしの心臓は高鳴りを強める。
二階に到着すると同時に下ろされた躰。即座に走る耳許への柔らかく甘い感触と性感を呼び起こす吐息に、わたしは五感を全て"女"へと変えられてしまう。]
――部屋は…こっちよ…
[白いレースの手袋を嵌めた手で、わたしは彼を案内する。
わたしの裏と表、すべてが詰った閨室へ。]
『ファファラ……』
[別れ際のステラのことを思い出す。
彼女は一体どうしているだろうか。
きっぱりと差し伸べた手を拒絶された私だったが、ニーナを凶事が襲った今、彼女のことが気にかかっていた。]
――とにかく、話なら車の中でもできる。
できたら、一緒に来てくれないか?
[そう告げると、出かける準備を整え始めた。]
みどりいろの河、くろい河、
ながれて、まじわり、ひとつになるの
真珠は、しあわせ
きらきら、きらきら。
あかい花びら、しろい花びら、
ひらひら、ひらひら、
ひみつの、はなぞの
熱いのは…あなたがこんなことを…はぁっ…!
[蝋を避けるように、或いは痛みを紛らわすために身体を激しく振る。じっとする事もできない。]
ひっ…ああぁ…
[尻尾から、下腹部の淡い茂みまで丸出しにされる。
暴れようとすると首が絞まるようだ。じっとりとしみだす透明なしずくを見られ、屈辱で、顔が紅くなるのを止められない。]
5年前になくなって…生前は仲がよかった…
[暫し考え込む風だったが]
分かりました。お供します。
あ、先生ちゃんと俺のこと守って下さいよ?
俺まだ強くて可愛い彼女見つけてないんですから
[そのままガレージに降り、車に乗り込むだろう]
[現時点で自分はニーナを殺した上に喰ったことを忘れていた。
いや、恐らく今だけ「人狼に変化している」事実すら忘れかけているのかもしれない。
それはまるで大きな波に記憶が飲み込まれたような感覚。
あの時脳に走った大きな戸惑いはそれだけ大きなものだった。
─ギルバートを間近にした時、また蘇るのだろうが─]
[白いレースに包まれた女の手に導かれ、閨へと進んでいく。]
[牝鹿のような肢体が眼前で揺れる。
それに惹かれるのは情欲ではなかったが、根源で不可分に結び付いた欲望に隔たりを置くことは出来なかった。]
……………ん?
[ナサニエルは雌犬の顔の前にしゃがみ込む。]
自分が雌犬だって忘れてるよね?
犬って言葉喋ったっけ?
………喋らないよなァ?
[目を細め、分厚い唇を左右に広げ、ナサニエルは屈託の無い笑顔を見せる。]
……喋るの止められないンなら、喋るのやめさせないとな?
なァ、雌犬サン?
[片手で雌犬の顎を持ち上げ、もう片方の手でトランクの中を探る。目的のものを見つけると、ナサニエルはそれを雌犬の眼前にぶら下げた。]
何だか分かるよなァ?コレ……
[ナサニエルの手にあるのは――鉄製のボールギャグ。
ナサニエルは有無を言わせぬまま雌犬の身体の上に乗り、それを雌犬の口の中に嵌め込もうとする。]
――寝室――
で、此処であなたは何をしたかったのかしら?
[わたしはドアを静かに開けて招き入れた彼に尋ねた。
首を絞められた瞬間、わたしはすぐに彼の手で命を奪われるものだとばかり思っていたので、今こうしてこの部屋に立っていられるのだけでも不思議だった。]
[わたしは彼の返答が聞こえるまでの刹那、くるりと部屋中を改めて見渡す。
チェストにしまってある聖女と艶女を使分ける正反対の下着、クローゼットにはモノクロを基調とした服のほかに、華やかな色彩を纏った、光沢のある露出の激しい服もしまってある。
ここは私の人生そのものを現した部屋。誰にも見られたことの無かった…聖域。]
あれは、だぁれ?
はなびらの聖域に、入ってきちゃだめだよ?
おとこのひとは、きちゃいけないの。
ここに入れるのは、きらきらきれいな、おんなのこだけ。
だめだよ、だめだよ。
だめだよ、だめだよ。
ざわざわ、ざわざわ。
―――――はなびら、揺れる。
う…え…?
[犬、犬と言われながらも否定の色が濃くなると言葉を発していたネリー。目隠しは離れていないので確証はないが、笑っているのだろうと思う。]
あ…何…ンッ!! や…
[腕を巻き込むように馬乗りになられた。背中に何か細かいものがあたる。この部屋は掃除されていないのかもしれない。
鉄製の何かが口元にあてがわれた。何かをされると思い、首を1度2度横に振る。じゃら、と首輪の鎖が鳴った。
ネリーは口を真一文字に閉じる。]
─寝室─
……邪魔が入って欲しくなかっただけだ。
ここの方が下より落ち着いて愉しめる。
[ちらり、と周囲を見回す。持ち主がすぐに女性と分かる、如何にも女性的な雰囲気の部屋だ。
立ち並ぶ家具に収納されている衣類は彼の気を引かない。彼女の人生にもさして興味はなかった。]
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