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[ニーナの遺体…冗談口だと思っていた「死体」と言う単語、そして今もこう聞いたのならあのニーナの死体は現実だったということ]
…ニーナさんが…どうしたんですか?
[それでも未練がましく冗談だと思いたかったのか、目の当たりにしたくせに聞き返す。夢だったと思いたかったのかもしれない]
[ふと男の動きが止まる。
そして覗き込む視線――]
ええ、言われるまでも無く愉しむつもりよ?
もちろん…充分愉しませてくれるんでしょう?
[わたしはその投げかけられた視線に、熱を絡めて見返す。お互いの視線がかち合った。]
なァに云ってんだ。超かっくいー名前じゃないか。
地球防衛軍とか、サンダーバードみてぇじゃん。
[などと云いながら、もっとイカした名前はないものかとどうでもいいことに寄り道しそうになる思考をハーヴの言葉に本線へと戻した]
ラルフの写真と、今起きている出来事の手懸かりを探すために図書館にでも行こうかと思ってたんだ。
……こんな時間だけどな。
投票を委任します。
修道女 ステラは、美術商 ヒューバート に投票を委任しました。
[見返す女の瞳に宿った貪婪な色。
目を細め、心の底から愉しげに微笑った。]
ああ。
お前が愉しみたいと言うのなら、存分に愉しませてやる。
[顔を寄せて、その目元に舌を這わせた。]
多分そのセンス通じるのこのアトリエ内だけだと思います。
ついでに俺バットマン好きなんで。
[きっぱりと極め付けるが続くものが真面目な話と見えて自分も冗談はやめる]
ニーナさんの…お兄さん…ラルフ…さん?
俺は…殆ど面識ないです…。会ったとしても多分覚えてないですね…。写真も多分ないですが…探してみますか?
ブランダーの家なら…多分リックやウェンディなら親戚ですし、一枚くらいありそうですけども?
う…ン…
[ナサニエルが上のほうで何かをしているらしい、がネリーはそれどころではない。
ナサニエルに覆いかぶされ、逃れようと身体をくねらせるが、がっちりと、そして艶かしく腕で抱きしめられる。
抗議の示しなのか、目隠しを外そうと手を伸ばしたりする。]
[目を細めて微笑む男の姿に、私もつられて目を細める。
彼の整った顔が微かに崩れる。]
『あぁ…』
[わたしの胸はとくんと高鳴る。]
『この人、綺麗な顔立ちをしているのね…』
[ふいに芽生えた女の感情に非日常性を感じ、可笑しくなる。随分と不謹慎ね。今から死出の旅路へと追い出される身というのに。]
[そんな事をぼんやりと思っていると]
っ…んっ…くすぐっ…たいわ。
えぇ、期待…してる…
[瞳をなぞる様に生温かい感触が走る。耳許でざわめく音で、それが口内から顔を覗かせた舌だということを知り、わたしの躰は微かに熱くなった。]
喰われたように……!?
まさか…そんな…!
でもニーナさん先生達と車に居たじゃないですか!?
何故ですか!?誰かニーナさんを一人外に放り出しでもしたんですか!?
[一瞬顔に暗い影が落ちた。またルーサーの死体のように血まみれになっていたのか。そしてユーインのように…
死体の様子は目の当たりにした筈なのに鮮明には思い出せない。
この忘却は恐らく脳からのささやかなプレゼントだったのだろう。
しかしニーナがバンクロフト邸に逗留するきっかけを考えればありえない状況に少し感情が高ぶるように問い詰める]
………っと。そろそろかな。
[小さく呟くと、雌犬の身体に巻き付いている白い下着を剥ぎ取った。立ち上がり、下着をぽいと床に投げ捨て、ナサニエルはテーブルの上に置いたものを手にした。]
目隠し、取るのか………ふぅん。
これ目にしたら、後悔すると思うがなァ………?くっ……はは……
[ナサニエルが手にしたものは――赤い蝋燭。
その上で炎がゆらゆらとと踊り、炎の足下では蝋がちゃぷちゃぷと揺らいでいる。]
これ見るのと、見ないのじゃァ……どっちがツライかなァ……?
なんてな………!
[ニヤリと大きく唇の端を歪め、炎の足下で揺れて居た赤い雫をネリーの背中の上に落とした。]
[目隠しに手をやったかやってないかの時に支配感情を満たす、自分よりも遥かに低い声が降り注がれた。
全ての衣服を取り上げられ、身体が離れたかと思うと。]
え……何…?
あ、熱い…! やめ…!
[熱のこもった雫を傾けられたと瞬時に理解する。
ネリーは避けようと身体を揺らそうとする。]
そうか。ハーヴもラルフのことはよく知らなかったか……。
[ハーヴェイの言葉に眉を蹙めた。]
ブランダー家でも探せば見つかるかもしれない。
ただ、あの家では少なくとも目につくところには置いてなかったんだよ。
なぜ、ニーナが外へ一人で出たかはわからない。
ひっかかってるのは、ニーナが呟いていた「兄さん」という言葉なんだ。
ラルフは五年も前に亡くなったというのに、彼女はまるでまだ彼が生きているようにその姿を追い求めていた。
最後にその言葉を聞いた時にも……。
それが、どうにも引っかかっていてな。
[そして、図書館を訪れたい理由はもう一つあった。
ステラの躰に刻印されていた三つの図章。
――有翼獅子、蠍、大蛇。
実のところ、私にはその象徴の意味を正確に理解できなかったのだ。]
[獅子は、古代エジプトでは太陽が獅子座に入る八月にナイル川の増水が始まるため、泉や水源に獅子の頭を模した彫刻が飾られた。これはギリシャ・ローマに受け継がれ、口から水を吐くライオンの意匠が浴場などに使われるようになった。
獅子は太陽・水・夏と結びついて考えられ、エジプトではスフィンクス、アッシリアでは有翼獅子として神格化された。いずれも力と知恵の象徴となった。
アッシリアでは、その強大な力は目に集中していると考えられ、見張り番の象徴として門扉の彫刻として飾られるようになった。
錬金術では、獅子は太陽の連想から硫黄の象徴だった。
だが、それらは他の図章の意味をこれまた一つ一つ考えた時に、明確な関連をもって意味を為さなかった。
そこで、ステラがかつて敬虔な基督教徒だったことを思い出した。これらは、キリストの教えに関連性を持つものではないか。我が家の書籍にはそれらの資料がなく、図書館ならばあるいはと思い立った所以でもあった。]
[抱え上げるように階段を上り、2階へと女を連れて行く。
そこにある扉を前にして、熱を込めて問いかける。
耳の縁に唇を軽く付け、吐息を吹き込む。]
さあ、案内してもらおうか? お前の部屋に。
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