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[ナサニエルの淡々とした口調や行動に、ある種の「慣れ」のようなものを少し感じた。それが彼の生業ゆえなのか。これこそが彼の本当の姿なのか。]
分かりません。「支配」かもしれません。
支配されることによって解放されるのか。
逆にそれは私にとって過ちなのか。私は知りたいのです。
[道具を目の前に差し出されて、ネリーは口を真一文字にして頷いた。]
[ナサニエルは「分かった」とだけ告げ、ネリーを2階の寝室へと導いた。]
[ネリーに首輪を掛け、目隠しを施す。
そして、ネリーの耳朶に小さくくちづけをすると、ネリーをベッドに寝かせ、彼女の胸元やスカートの奥に掌を侵入させ、丁寧に服を剥ぎ取った。]
[太股を舐め上げ、唾液の跡を作ると、下着姿のネリーを床にひざまづかせる。]
お前に選択肢をやろうか……ネリー。
「雌犬」「雌豚」「肉奴隷」………
お前は何と呼ばれたい?
[ネリーに施した目隠しの向こう側で、ナサニエルは耳元でそう囁いた。低い声を静かに響かせた彼の唇の端は、ニヤリと歪んだ――*]
[2階の一つの部屋でネリーは跪いていた。男の問いを受け考える。ふと、本当の主人の顔が浮かび一言だけ発した。]
犬、です…
―路地―
[悲憤と絶望の感情はいまだ余燼のように微かに胸の奥で燻っていたが、漸く私は平静を取り戻した。
ニーナの遺体の前には、虚脱したままのハーヴェイの姿がある。私は、少なくとも彼が無事であることに安堵しながら、肩を抱き寄せ、くしゃくしゃと髪を撫でた]
ハーヴ、立てるか?
[虚ろな眼差しは私を正確に捉えようとはせず、薄く開いたままの唇からは声が発せられることがなかった]
普段なら、レディファーストなんだがなあ……
[胴がなにか獰猛な獣に食い破られでもしたようなニーナの遺骸は、ただ担ぎ上げただけでは損傷を与えてしまうことは確かだった]
よっ……と
[私は、ハーヴェイを背中に負い立ち上がった]
―アトリエ・作業場―
酷ぇ疵だ……。
[透明アクリルの作業台の上には、ニーナの裸身が横たえられている。辛うじて纏い付いていた真っ赤に染まったネグリジェは、襤褸布のように脇に除けられた。
四肢に欠損がないのがまだしもだっただろうが、首は四分の一程も千切れ、柔らかな胸部から下腹部にかけては無惨に引き裂かれている。
解剖学の講義を思い出しながら臓器の繋がりを再現しようとしたのだが、欠損が酷くどうにもならない。専門的な外科医ですらおそらくは匙を投げるであろう遺体の状況を前に、絶望の唸り声を漏らした。]
一体、なにでやったらこんな――
[視界に、一瞬過去の惨劇の記憶が目の前で起きたことのように甦った。
陰暗の深奥より浮かび上がる蒼白な貌と真っ赤に染まったミッキーの――]
うわっ!
…く、くそ……
[反射的に怯えたように後ずさりかける足を踏みしめる。
それにしても、未明にシャーロットの遺体があったのと全く同じ場所にニーナの遺体があると、酷く混乱させられる。
遺骸は気がつけばシャーロットのそれに置き換わり、私はニーナの躰を扱うために酷く集中を強いられた。]
[ハーヴェイを担ぎ込み客間のベットに横たえ、ソフィーにニーナの死を伝えた後。私は彼女の遺体を注意深く作業場に運び込み、その修復に苦慮していたのだった。]
専門的な医者でない私にできることはさして多くない。
すまない――
[手術用の糸での縫合を済ませると、外見上はなんとか元通りと形容して問題がない程度の状態には戻っていた。彼女の遺体にあうサイズの箱を探し出すと、躰を冷媒と断熱材でくるみ安置する。
ユージーンに頼んでニーナの遺体を安置所に安置するのは、夜が明けてからになるだろう]
[安置所にシャーロットの遺体を置いて来ざるを得なかったことの懸念の一つは、遺体が損傷を受けたり持ち去られたりしないかどうかということだった。
「死体が生き返って噛み付かれたらどうする気だ」
ダニエルの言葉を、食いちぎられたネイの首を、ナッシュと目撃したその時の惨劇を思い出す。
安置所がそうした所業を為す“何者か”が徘徊する場所だったとして、私には常に喰われるのが生者であると立証できる材料がなかった。
シャーロットの躰が何者かに喰われ、無惨な姿へと変じてしまうことだけは何があっても受け入れられ難いことだった。それくらいなら、私が代わりの餌となった方がましだ。
それ故に、安置所が誰にも管理されていないであろう夜の間、異変がないように見張る必要を感じていた。
私は油粘土に写し取った安置所の鍵の形そのままに、金属を工作機械で研削し、精巧な合い鍵を作り上げた]
[私は犬の咆哮を聞きながら、ガラスの柩の中で両手の指をわずかに動かす。]
──さっきまでより、身体が滑らかに動く…。
…でも、何…だろう。
身体全体が引き攣れるように痛いわ。
まるで私の身体に深い傷口がいくつもあって、その場所の内臓も筋肉も壊れていて、無理矢理糸で縫い固めてあるような。
[私は両手を持ち上げ、幾つかの痛む箇所に用心深く指先で触れた。
どうやら本当にごく細い丈夫そうな糸で私の身体は縫われているようだった。]
ああ、きっとパパが縫ってくれたのね。
パパは、一体どんな気持ちで私の身体を……。
それに圧倒的に血が足りない。
きっと、これだけの傷口だもの、いっぱい血が出たんだ。
……まるで、生理中の貧血を極端に酷くしたみたい。
血が……欲しいな。
[私はリックの血の匂いがまだ室内に漂っているのではと無意識に鼻を動かす。けれども、今、室内で優勢なのは綺麗に骨だけにしてしまったリックよりも、焼けた新しい死体の臭いが優勢だった。
犬の臭いと人間は違うなとふと思う。そして、皮膚を焼いてしまえば、アーヴァインさんの遺体もボブ・ダンソックさんも同じ肉の塊にすぎないな…とも。]
焦げていなかったら、今の私は……彼の血や肉だって。
ああ、肌の色で人間の味って違うのかしらね。
[まだ聞こえて来るボブの声に、]
「ハピネス」ってなにかしら?
ダンソックさんが死んだのなら、ネリーはどうしてるんだろう。
ううん、私のパパはどうしてるんだろう…。
……パパに。
パパに会いたいわ。
[私は左頬に涙が一筋零れるのを感じた。]
[私は今、完全な無表情になっているのではないかと思う。
右頬にも涙の感触。私は涙が流れるにまかせて止めない。]
どうしてこんな風になってしまったのだろう。
──…私は一度死んでしまったの?
──…今の私は生きているの?
──…いいえ。一体、何になってしまったの?
[身体の中で一番痛みの酷い場所が、ギュルギュルと粘度のある液体が沸き立つような奇妙な音を立てているように思う。痛みの中に、奇妙なむず痒さと熱さが有り、私は私の知らない感覚に戸惑う…──。]
…自然治癒、しかかってる、
ってこと?
[私の身体は今、*どうなっているのだろう*。]
[制作のための時間が取れたことを喜んだ。なにしろ、印象が新鮮なうちに作っておきたいものがあったからだ。
芯材を用意し、石粉粘土を練る。
まず、ラング牧師のことを思い浮かべた。暴漢に襲われた彼の、ジッパーから引っ張り出されていたその器官を。
それは、デュシャンの『Objet dard』のようにしんなりと身を横たえたままの形を運命として定められているかのようだった。
私は彼の性生活についてほとんど何も知らない。ただ、疵痕から類推して彼の性的能力の欠如を想像しただけだ。
だが、その想像を土台に私は新たな夢想を膨らます。脳裏に正確に再現されたそれを、美の女神のあるいはヘタイラ-高級娼婦-の指先が優しく扱う]
――――――
指先が滑らかなその感触を愛おしむように――緩やかに、少女の皓い肌を撫でてゆく。
ギリシャ人が入浴や神殿で用いた香料、立麝香草を用いたエキス。コキュートスのニンフの名を冠した、ミント。王女ミュラの泪、ミルラの香油。しっとりと丹念に、熟した桃の果実の表面の繊毛の一つ一つさえも傷つけないような注意深さで、それらを満遍なく肌に馴染ませてゆく。
言葉一つ発せられなくても、そこでは濃密な対話が交わされる。私は薄い肌の下に息づく豊饒な生命の手応えを実感する。潺のような、時に奔流のような、熱い血潮の流れに耳を傾ける。私の指先がその命に語りかけ、昂ぶりを願い導く。
少女の純白の肌が桜色に染まり、上気し息づく。甘い體香が香料と入り交じり馥々と妖氛を立ち上らせる。
私は云う。これは、アテネの美神の装い。或いはヘタイラの。
ギリシャの伝統的な装いが、少女の躰のありとあらゆる場所に施される。
古代ギリシャでは――と続ける。全身を綺麗に除毛する。香料を染みこませた綿で秘められた処を拭く。バニシングオイルが塗布される。そして――
夢の中を彷徨うような少女の瞳に。その言葉が届いたかどうかはわからない。
私の指先が熱く潤いを湛えたヴィーナスの丘に触れる。人差し指と薬指が重なりあった花片を割り開く。ヘンナに染められた中指が、秘められた唇に紅を差す。
君は私の女神だと――私は少女の耳元で囁く。
――
「今、少し、足元が…。」
茫とした彼女を支え、そして降り立つ姿を見送る。
女神の、あるいは娼婦の。聖と俗の両極を夢想して。
――――
―アトリエ・作業場―
[私の女神。
女神の指が羽根扇の擽りのようにやさしくラング牧師の茎を撫でる。快楽が生命力の奔流となって流れ込む。幹は聳え立ち、根はしっかりと大地に足を踏みしめる。
いつしか、目の前には石粉粘土で作られた、ラング牧師のファロスがそそり立っていた。]
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