情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 7日目 8日目 エピローグ 終了 / 最新
[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11] [12] [13] [14] [15] [16] [17] [18] [19] [20] [21] [22] [23] [24] [25] [26] [27] [28] [29] [30] [31] [32] [33] [34] [35] [メモ/メモ履歴] / 発言欄へ
え――?
「あら、たった今まで店に居たでしょ? ローズマリーからのお使いで。マールボロを最後に買ってった、ほら」
……あ、あぁ。
いや、タバコの銘柄とか知らないけど。
でも、一体どうして――
「それより、私お腹空いたな。
朝ご飯なに? リック?」
[彼女が話す内容に混乱して僕は思考が纏まらない。やけに朗らかな表情といいテンションの高さといい、明らかに変だった。ウェンディは低血圧で朝食だって食べない事がしょっちゅうなのに]
『ウェンディはさっき起きたばかりのはず。声が聞こえてた? いや、まさか。いくらなんでも、店内の会話が居間にまで筒抜けになるような粗雑な作りじゃない。なぜ……?』
「お兄ちゃん?
そんな事で悩んでるとハゲちゃうよ?
アーヴァインさんみたいに。あはは!」
[再び、彼女は可笑しそうに笑った。その様子がどこか不気味で不自然に感じられ、僕は思わず後じさった]
[ギルバートを避けて車に乗り込み、ぐったりと車のハンドルに頭を押し付ける。収まってきた二日酔いの頭痛がまたぶり返してきたようだ]
はぁ…。頭…痛い…
何なんだよ、これ…。
[やまない雨、見上げるとふと思い出すのは昨日のソフィー。確か医者がいなくて大変だったと言っていたか]
あの人…大丈夫だったかな…
[我ながら尾を引いて人の心配をするのは珍しいが、あの大人しい人にそこまでつっぱねる理由がなかった。
ぐるぐると考えを巡らしている内、疲れが出たのか、車を止めたままにハンドルによりかかり、なんとはなしにうつらうつらと始めた*]
あっ……と。荷物もあるのに、呼び止めて悪かった。
これから行くところがあったんだ。
機会があったら旅の話でも聴かせてくれよ。
[そう言って軽くウインクすると、足早に車の方へと*向かった*]
[去っていくギルバートの車に何かを口にしようと唇が”i”の形に歪む。
けれどそれは言葉にはならずゆるゆると息を吐き出し。
そしてぼんやりとした表情で扉を閉めればふらふらとした足取りのまま電話を手に取る。
しばらくのコール音のあと、電話の向こうから返事があったなら、居住部には届かぬような小さな声で”希う”]
…お願い。
……お願い、助けて、”兄さん”──
[ローズマリーは奥からバスタオルをとってきて、ヒューバートとギルバートが親しげに話しているように見えるのをいぶかった]
あら、ヒューバートとギルバートはお知り合い?
[答えを聞く間もなく、ヒューバートはなにか叫んで外にでていってしまう]
まったく、あわただしい人。
[その口調には親しげな調子がこめられていた]
ギルバート、これで拭いてちょうだいな。
風邪ひくわよ。
……はぁ。
[我知らず溜息が零れる。
雨は嫌いだ。
母を土に還した日も、こんな冷たい雨が降っていたから。]
『「気の毒にねぇ」
「ソフィアさん、顔もわからない状態だったって」
「……が、炎上……て、娘の……だけ…」
「父親は何をしてるんだ?」
「娘一人に……て、どうな……んだい」』
[埋葬の終わった墓を見つめて言葉もなく立ち尽くすソフィーの耳に届いて来た、親戚達の心無い噂話が甦る。]
[空から流れる雨は人の心をも曇らせるのか。
雨にはいろいろな思い入れがある。
怒りのノーマンに髪を掴まれて乱暴されたのも雨だったし、
路頭に迷った時に救ってくれたボブとの出会いもこんなだったか。
シャーロットがどこか退廃的な顔をかつてネリーに向けたのも雨空の時だったか。]
雨…やむといいな…
[ヒューバートの「火星人」の言葉に苦笑し、]
まあ、俺みたいなのは何処に行っても火星人扱いですがね……。
何しろ「良識的な市民」の皆さんにとっちゃ、俺のやることなすことが神経逆撫でするみたいなんで。
――居間――
「やだな、お兄ちゃん。
どうしたの?変だよ?」
いや、……何処でその名前、聞いたんだ?
ギルバートって。
寝てた筈だろ、ウェンディ。
「寝てたけど、聞こえてきたの。夢に見たっていうのかな。よくは分からないけど。リックは感じなかった?」
……何をだよ。
[知らず、僕の表情は固くなる。昨日から何度も甦っていた記憶。あのすぐ後ならいざ知らず、それ以降十年近くも思い出す事なかった事件]
「……“あの時”と同じ雰囲気を、よ」
[そう言って口を閉ざしたウェンディの唇には、まぎれもない笑みが浮かんでいた。三日月のような、肉食獣のような笑みだった]
[ローズマリーに礼を言ってタオルを受け取る。
その目は慌しく去って行ったヒューバートという男をまだ追っていた。]
面白い人だね。ローズの知り合い?
[あの日、とうとう最後まで父は現れなかった。
叔父の助けを借りて何とか葬儀を終えたソフィーが家に帰った時、父は真っ暗な部屋の中で一人膝を抱えて蹲っていた。]
『お父さん……。』
[垂れ込めた雲のように重く陰気な気分に押しつぶされそうになり、ソフィーは振り切るように首を振って残りの道を急いだ。]
「――ところで、お兄ちゃん?」
[唐突にウェンディが口を開いた。何を言い出すのかとその動きを凝視する。妹ではない何者かを見る思いがした]
「行ってあげないの?
呼んでるわよ、助けてって。
――“兄さん”?」
…やっぱりウェンディが気になるわ。
もうかなり時間も経っている事だし、リックもいるし大丈夫でしょう。
でも、すぐ帰ってこなくっちゃ。
[ネリーはボブにその旨を申し出た。ボブはネリーが可愛いからか、ネリーのわがままをあっさり快諾してくれた。
ネリーは髪を整え、雑貨屋を目指しはじめた。]
[ウェンディが見ていたのは店舗の方。あれから客がなければ、ニーナしか居ない筈だった]
……何の事だ?
「聞こえたの。今度は夢じゃなくて肉声。
行ってあげたら?」
何言ってるんだ。
声なんて一言も聞こえなかったけど?
[そう答えた僕に、ウェンディは納得したような残念そうな、微妙な表情を返した。憐憫の色さえ含んだ声が僕の耳に届く]
「……そう。じゃ、私はお店にいるから。兄さんは出てきたら? 配達、あるんでしょ。デボラさんじゃない方に」
ええ、ギルバート、わたしの古くからの知り合いよ。
幼なじみみたいなものかしらね。
本当に、面白い人よ。芸術家だものね。
―自宅・書斎―
[昼に起きる生活洋式に慣れきった男は、いつも通りの時間に目を覚ました。外は大雨であるが故に、今が朝か昼かの区別はつかなかったが、漠然と「いつもの時間」ということを、男は感知した。]
[重い身体を引摺り、いつもどおりブランダー家の雑貨屋から配達された段ボール箱に手を伸ばす。煙草、缶詰、紅茶缶、コーヒー、パスタ、ノート、拘束具、LSD、咳止め薬が2ダース。]
あー………
[咳止め薬の瓶を1本手にし、蓋を開けようとした瞬間、男が背を向けている廊下の方から電話の声がした。]
………ハロー。こちらナサニエル・メラーズ。
[男は、レースとピンクのキルトに包まれた受話器を手にし、電話の向こう側に語りかける。]
[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11] [12] [13] [14] [15] [16] [17] [18] [19] [20] [21] [22] [23] [24] [25] [26] [27] [28] [29] [30] [31] [32] [33] [34] [35] [メモ/メモ履歴] / 発言欄へ
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 7日目 8日目 エピローグ 終了 / 最新