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……ロティ。
もし、私を拒むなら――
どうか、君の腕の中で私を喰ってくれ。
私は、君が居なくて生きてゆけるわけがない。
君の居ない世界の終わりに
取り残されるくらいなら、いっそ――
――この身を捧げ、君の血となり肉となりたい。
[シャーロットが再び動き出すための力となるなら、この身を捧げても惜しくはなかった。
彼女の閉じられた瞼にそっと口吻をした。]
そう…遅すぎた……
知ることも…見つけることも…気づくことも……
[その後、身を寄せ合う熱にこの声は途切れるだろうか─]
[ナサニエルが詞を朗読するその頃――床に蹲るネリーの耳に、音の触手が伸びた。]
Death seed blind man's greed
(死の種 無知なる者の強欲)
Poets' starving children bleed
(詩人は飢え 子供達は血を流す)
Nothing he's got he really needs
(だが 欲しいものはなにひとつ得られない)
Twenty first century schizoid man....
(21世紀のスキッツォイド・マン)
だが私を少しでも愛してくれているのなら――
どうか――
――どうか、私の元へ……
――戻ってきてくれ
[閉じられた瞼から熱い泪が零れ、頬を伝う。
そのまま、寝台に彼女の身を横たえ、重なった]
私は生きている限り、夜毎この場所に君を迎えに来るよ。
君が目を開けてくれるその日か――
――この身を君に捧げる時まで
……ハーヴェイ。
[黄金の光で満たされた瞳が、欲情に潤んで語り掛ける。
尻の丸みを、女のそれとは違う腰骨の形を慈しむように指がなぞった。]
ギルバート………
[ブルーグリーンの瞳に、艶やかな一陣の黒が走る。]
『俺は、お前の………………』
[古めかしいトヨペットクラウンは、吸い込まれるように森の中へと――]
[手は前に至り……欲望の印を柔らかく撫で擦った後、邪魔な着衣を脱がす為に立ち働いた。]
[ハーヴェイを再び抱き寄せ、覆い被さり、湿った落ち葉の散り敷かれた大地に押し倒した。]
[自分の手の中で男の首の骨が折れるゴキッと言う大きな音を、私は冷静に聞いた。
従姉の遺体を口にする事は私に取っても心理的に望ましい事ではなかったので、私は小さな天窓からの侵入者を歓迎した。彼は暗い床に伏したままの私に気が付かなかったのだろう。
明るい場所で見たならば、きっと相手は醜悪な男だったに違いない。
天井にある小窓から侵入出来る程度の身長、触れた肌の質感から20代半ば程度では無いかと思われる。けれども天窓の灯りに透けて彼の禿げ上がった頭部には、思わぬ出来事に浮かんだ玉のような汗が光っていた。
天窓から侵入してきた彼は、台座に近寄り小さなガラスのシャーレに何かを採集するために覗き込んでいたところだった。]
[背後から首を手を回してから彼の首が折れる音を聞くまで──一瞬だった。
彼は柄が短く背の部分の一切無い異様に鋭いナイフを床に取り落とした。]
[突如触れられた所にびくりと反応し、甘い吐息が漏れた。
潤んだ目は悔しそうにギルバートを見上げる]
……ぁ……っ!
[最後に抱かれたのは数年前とはいえ体に深く刻まれた記憶は簡単には消えない。
敏感な部分はあっさりと、いつか兄と感じていた熱を思い出し、声で知らせた。
熱を与えられるばかりで、幾分悔しいのか、ギルバートの手を導いていた自分の手が、彼の同じ箇所に触れた。
そこも自分同様に熱い。]
…ギル……これ……
[耳元で囁き、先をねだる]
ウゥゥゥゥ……口惜しい、口惜しい。
[振り絞るように。]
私は、宿命的に闘争者であるのだろう。
積極的に侵す獣もいれば、それを迎え撃つ獣もいる。
この燃え上がる炎は、未だ消えず……
闘争の中で、消えることも存することも許されず。
[呻き]
ウゥゥゥゥゥ…苦しいィィィ……。
[新鮮な食事を終えた私は再び、柩に戻り泥のような眠りに落ちた。
私が再び目覚めた時──、
何故か、私は愛する父の腕の中に居た。
抱きすくめられながら、熱い涙が私の頬に触れるのを感じていた。]
[トヨペットクラウンを停め、ナサニエルは落ち葉に靴底をつけた。
頭上には、月の光――
ネリーをひとり残した自分の家の中には、今ごろ"MOONCHILD"が流れているだろうか――そんなことを考えながら、ナサニエルは歩き出す。]
Call her moonchild....
(あれは月の子)
Dancing in the shallows of a river...
(川の浅瀬で遊び)
Lonely moonchild....
(孤独な月の子)
Dreaming in the shadow of the willow....
(柳の木陰で夢を見る)
[哀しげな旋律を唇に乗せながら、かの「声」が聞こえる場所へと足を向けた。]
[私には相変わらず、死者達の呻きも聞こえている。
私が今さっき喰らった男の呻きまでもが聞こえると言うのは奇妙な事だった。小男の骨からはルーサー牧師から聞こえたのと同じ「ソサイエティ」と言う言葉。]
[ハーヴェイの触れた部分は既に硬く熱く息づいていた。
ハ…と軽く息が洩れる。
かぐわしい香りが誘うままに、首筋や鎖骨、胸にと舌を這わせながら、自らももどかしげに身を捩り衣服を脱ごうとする。]
―安置所内―
[指先に触れる感触を、その時間を愛おしむように、一つ一つ時間をかけてシャーロットの着ている衣服を脱がしていく。
白磁のような肌が闇の中に浮かび上がる毎に命を吹き込むように口付け、私自身の持つ熱を伝えるように熱い掌と指先で愛撫した。]
ロティ……
私はずっと……君を求め続けていたんだ
[ストッキングと髪を結うレースのリボン以外の何物も身につけなくなった彼女をどれほどの長い時間愛おしんでいたか、定かではない。]
[俯せにさせ、きゅっと上に持ち上がり引き締まった真っ白な双球を突き出すように抱え上げる。
羚羊のような脚を撫でさすりながら、舌は背筋を這いのぼった。脇腹から薄い皮膚を通じて感じられる肋骨をなぞりながら辿った指先は、とれたての果実のような乳房を揉みしだく。
この常闇に足を踏み入れる前から激しく彼女を求め昂ぶっていた屹立は、今は軛を脱せんばかりに荒れ狂っていた。私はその狂わしい熱情そのものを楽しむように手綱を握ろうとしていたが、それも今や限界だった。]
ロティ、愛している――
[内腿をなぞり、儚い花瓣を前に打ち震えていた淫欲の哮りを深々とシャーロットの深淵に呑み込ませていった。]
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