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[しばらくして戻ってきたバートは、用心の為に此処に居残ると言う。わたしはそれを頑なに断った。
傷付いた身体で弱った精神力。そんな中彼がこの場所に滞在したならば…。わたしはどうなってしまうか解らなかった。]
『嗚呼、ローズの時のようにまた再び彼の命を奪って…わたしだけの物にしてしまうかも知れない…。わたしはそれが――怖い』
[再び教われる恐怖心より、自らが狂う方が怖かった。だから何としてでも彼には帰ってもらいたかった。
一通りの押し問答の末、助け舟を出してくれたハーヴェイさんによって、バートは不本意そうに折れてくれた。わたしはほっと胸を撫で下ろして、一言だけ謝罪の言葉を呟いた。]
ごめんなさい…バート――
[そして鎮痛解熱剤の入った薬箱を枕元に置いてくれたハーヴェイさんと、名残惜しそうに立ち去るバートを見送って。
早速わたしは水差しを引寄せ、薬箱に手を掛けた。
実の所気丈には振舞っていたけれど、傷みも熱も我慢が効かないほどわたしの身体を蝕んでいた。だから少しでも楽になりたいと…
薬箱から辛うじて一回分だけ残っていたカプセル薬を取り出し。迷う事無く口に含んだ。]
[全て消し去る─その言葉が彼から紡がれ、耳に届いた時
一瞬だけ笑顔を浮かべた。不安と儚さにゆれた、壊れそうな笑顔。
僅かに胸の鼓動が高鳴ったのは望みがかなうからだろうか。
それとも……]
書生 ハーヴェイは、流れ者 ギルバート を投票先に選びました。
書生 ハーヴェイは、冒険家 ナサニエル を能力(襲う)の対象に選びました。
見習いメイド ネリーは、書生 ハーヴェイ を投票先に選びました。
[私は気がつくと飛び起きていた。
身体中が汗みずくになっている。玉の汗を全身に浮かべている。]
な、なに…? この気持ち…
[カチカチと歯が鳴っている。]
確証もない。信じたくもない。けれど…
[下着だけ身につけ、ナサニエルの家を這うように歩いた。
書き置きを発見する。]
[目の前の肉体から漂う馥郁たる香り。]
[緩やかで大きなうねりが、腹腔の奥深くから湧き上がる。
甘い痺れが稲妻のように尾骶骨から脳髄へと駆け上がる。
根源的で不可分なその本能に、ゆっくりと呑みこまれていく。]
──バンクロフト邸・客室(ステラ発見前)──
[ニーナの悲報を聞くや、ソフィーは倒れそうになった。
報せをもたらしたヒューバートの口から、ニーナの遺体が喰い荒らされたような状態だったと聞いた為だ。
度重なる不幸な事故、恐ろしい事件。
失踪したまま戻らない父。
これらをニーナの死と関連付けて考える事は出来なかった。]
そんな……そんな……。
どうして一人で外に……ニーナさん……。
[ヒューバートの手を借りてソファに腰を下ろし、瞑目する。
少し出掛けるので一緒に来るかと聞かれても断った。
一人にする事を心配してくれたようだが、とても行く気にはなれなかったし、家人が居るから平気だと言って断った。
今は一人になりたかった。]
[私はナサニエルの書き置きを読んだ。
思わず顔が引き攣った。リックにアルバムを見せられたと同じぐらいの動揺が拡がる。]
あの人…あの人は「血族」を知っている!?
[主を失った部屋の中、音の濁流は構わず流れる。]
Blood rack barbed wire
(血塗られた拷問台 有刺鉄線)
Politicians' funeral pyre
(政治家の火葬のための薪)
Innocents raped with napalm fire
(罪なき者がナパームの炎に犯される)
Twenty first century schizoid man....
(21世紀のスキッツォイド・マン)
[机の上には、何かに怯えるような顔をした有色人種の顔が描かれた――青を基調としたレコードジャケットが置かれている。
"IN THE COURT OF THE CRIMSON KING"――KING CRIMSON]
「逃げろ」
[初めて言われたものではなかった。今更ながら、意味が、意義がよく分かる。私には誰よりも力がない。たぶん、逃げおおせる力も乏しい。
忠告通りに従うのが正しいと思う。しかし行ってもそこへ行き着ける確証はないし何より危険だ。だが一生見逃してしまうだろう何かもある。]
[一度抱き締めた腕を解き、柔らかい口接けを与えながら、手をハーヴェイの胸の辺りへと滑らせていく。
一つずつワイシャツのボタンを外し、前を開いた。]
……お前が、欲しい。全部、くれ。
[口接けの合間に、熱い吐息と共に告げる。]
[キスの合間、とけそうな意識の中で問う]
一つだけ…聞きたい…
何故お前は…ここにきた…?
どうして…こんなこと…を……
流れ者 ギルバートは、新米記者 ソフィー を能力(襲う)の対象に選びました。
ロティ――
[間もなく、陰鬱たる森林に分け入る。安置所からわずかに隔たった処にある廃屋の陰に目立たぬよう車を停めると、人の気配を伺いながら安置所へと歩みを進めた]
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