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この絵を見てくれ。型取りをする二人の男は、モデルに傅いているように見えないか?
彫刻の素材はブロンズや石膏や大理石といった単一の固形物だ。本物の型を取って本物そのものを再現しようとしたってとても再現できるものじゃない。人体の劣化した模造品だ。
もちろん、型取りに手法として新しい試みが持ち込まれたり冒険的な別の意図があるなら例外だけど、ただ単純に本物の形だけを写し取ろうとする試みならそれは創造を放棄しモデルの価値に身を委ねているに過ぎないのだと思う。
[言葉を選んでも、創作について語ることは難しいことだった。語調が厳しくなっていないだろうか、と内省しながら言葉を紡ぐ。]
造形は、一度対象の姿を自らの内側で受けとめなければならないんだ。対象の持つ美を最も的確に現すことができる道筋を追い求める。モデルそのままではモデル本人の美に到底及ばない。自分に従いすぎれば対象は逃げる。
だから、モデルと自分との間のどこかにある理想の美を探し求める。それでも、複雑で精緻極まりない人間の美に近づくのは難しい。
[黙って聞いていたホレスは、それだけ聞くと口を開いた]
「それで、そうやって、完璧だと思えるものを作れたことはあるのかい?」
いや。
[私は笑って首を振った。]
挑んで挑んで、私はいつも敗北する。
この絵の男達と同じく、やっぱりモデルに屈服する。
だが、同じ敗北でもそちらの方がどこかへたどり着けるのだろうと思ってる。
それにこうした敗北は常に幸福なものだよ。
また挑みたいという気持ちになる。
[まして、それが自分の娘ならば、という胸の中の想いは口にはしなかったが。]
―アトリエ・リビング―
シャーロット。
君をモデルにした作品だけど、評判がいいみたいだ。
[ホレスの度重なる勧めに従って一度美術館に貸し出したシャーロットをモデルとしたいくつかの作品。それらは派手な目新しさを盛り込んだ前衛的な作品ではなく、むしろ古典的な作品と解されるものと考えていたのだが、予想していたより遥かに評判がよかった。
かつて、二十代になったばかりの頃、私が発表した具象的な作品についての評価は「リアルそのものだが創造的な魂が宿っているとは感じられない」というのがほとんどだったにも関わらず。
新たに受け取った評価は、娘との制作過程を経ずしては得ることができなかったものに違いなかった。
私はホレスの置いていった美術雑誌と目録を彼女に手渡した。
窓の外に広がる幽邃とした森林に、静かに雨が吸い込まれてゆく。静謐な夜の親密さの中で、私は一時の*幸福の中にいた*。]
──……、………
……──……、 ……
──── 、 ……。
[不明瞭な切れ切れの、それは声にならない声。
音にならない音。 ノイズ。]
―― 町の路上 車中 ――
ふう、参ったな。当分、雨は御免蒙りたいんだかな……
[ルーサーの頭には先日の暴風雨の猛威が頭を過ぎる。]
ああ、そういえば頼んでいた薬…… まあ、今戻っても、な……
[ブランダー家での出来事を思い、沈んだ面持ちを浮かべる。]
私は、ウェンディを、リックを、置き去りにしてきてよかったのだろうか…… たとえ何を言われようと私はあの場を離れるべきでは無かったのではないか。しかし……
[ルーサーは、ブランダー家に引き返したい思いを抑えながら、車を自宅へと*走らせた。*]
−回想−
[ソフィーを送り届けた後、真っ直ぐに自宅へと戻る。
去り際にこちらを見るソフィーが不思議だったが、自分が考えていた事は恐らく彼女が思っていることとは正反対だろう。
両親に毎夜罵られ、殴られ、一人震え泣いている所に優越感すら漂わせ無理矢理覆いかぶさってくるもう一人の自分。
その時、その顔は酷く醜く見えていたことを覚えている。
あれが自分の顔なのかと思えば、自分の容姿を見たくないもう一つの理由となった。
誰かに触れられるのもまっぴらだった。
大学入学後、言い寄ってくる女性はいたが殆どをつっぱねた。
人との付き合い方をしらなかったし何より誰にも関わりたくなかった。
押しに負け付き合った数少ない女性も身体を重ねたのはほんの数回程度。
前戯はこなしても挿入前の、自分を求める顔にどうしようもない嫌悪感を感じ、大体はそこで終ってしまうからだった]
[宵の口から降り始めた雨は、夜が更けゆくにしたがって徐々に激しくなっていった。
やがてそれは豪雨となって、先日の暴風雨の痛手から立ち直りきらない町に容赦なく降り注いだ。
そして、散々に痛めつけられた山腹の斜面のどこかで、不吉な鳴動が始まった……。]
─酒場「アンゼリカ」2階客室─
[窓辺に立ち、外を眺める。朝だというのに、低く垂れ込めた暗雲が太陽を遮り、町は夜明け前のように薄暗い。
家々の屋根を、路面を打つ雨音。ごぼごぼと流れゆく泥水。
夜が明けてからは幾分か雨足も弱まったとは言え、酷い雨であるのは変わらない。]
[雨の音を聞きながら]
どんどんひどくなっていくんだわ。
また、被害がでるのかしら。
この雨じゃ、注文したものをとどけてもらうことも難しいかもしれないわね。
一度店に行くべきかしら。
ひとつ幸いだったことは、昨日洗濯をしておいたことだわね。
[洗濯から連想された昨日の一連のできごとに微妙な笑みを浮かべた]
[きっと聞かれたであろう、あの行為の声。気配を感じながらも声を落そうとしなかった自分。行為に没頭していたからというのはいいわけにすぎないのだと]
[昨夜はあれからローズマリーと幾度となく身体を重ねた。
容赦ない攻撃を加えながら、昇りつめていく表情の美しさを、うねる肢体の柔らかさを、蜜が溢れる内奥の熱さを熱心に囁いた。]
ブランダーの店に頼んだものを取りにいくなら今のうちだわ。
このぐらいならまだでかけられる。
[ローズマリーはブランダーの店に電話をかけようとした]
もう少し色々見てみたかったんだが、この分だとしばらくお預けかな……。
[昨日洗濯してもらった自分の服を着て、彼女の姿を求めて階下に降りて行った。]
−回想−
[ローズマリーはギルバートの客室を訪れ、何度も快楽の頂点に昇り詰めた。
まるで知っていたかのように弱点を攻められ、ローズマリーは喘ぎ、叫び、ギルバートにしがみついた]
おはよう、ローズ。
[ニッと笑みを浮かべてローズマリーに歩み寄り、その頬に軽いキスしようと顔を近付けた。]
邪魔だったかな? 電話するつもりだったんだろう?
[ギルバートのキスを頬に受けて微笑みながら]
ええ、ブランダーの店に注文していた品物をどうしようかと思案していたところなの。
雨だし、取りにいった方がいいかしら。
ギルバート、あなた、車の運転はできる?
ンン……
まあ、一応は。
[と頷いて見せた。]
じゃあ一緒に取りに行くかい?
ブランダーの店って、雑貨屋かな?高校生くらいの女の子が店番してる・・・。
ありがとう。戴くよ。
[食卓につき、ローズマリーの用意してくれたクロワッサンとスクランブルエッグを、旺盛な食欲で平らげる。]
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