情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 7日目 8日目 エピローグ 終了 / 最新
[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11] [12] [13] [14] [15] [16] [17] [メモ/メモ履歴] / 発言欄へ
のんだくれ ケネス に 1人が投票した。
異国人 マンジロー に 10人が投票した。
異国人 マンジロー は村人達の手により処刑された。
次の日の朝、のんだくれ ケネス が無残な姿で発見された。
現在の生存者は、流れ者 ギルバート、新米記者 ソフィー、踊り子 キャロル、酒場の看板娘 ローズマリー、村長の娘 シャーロット、隠者 モーガン、医師 ヴィンセント、書生 ハーヴェイ、メイド セリア の 9 名。
【吊り・襲撃先宣言】
貴様らには地獄を味あわせてやろう・・・・・・
【6目の犠牲者は、アサシンチームだ】
【吊り投票は、本日もセリア委任とする。宣言を頼む】
【襲撃対象はソフィーとする。セット後狼リーダーへのセット完了報告をしておけ】
ふはははは、今日はどのチームが死ぬか最後までわからなかった。中々楽しませてもらったぞ。
では、さらばだ雑魚共。
【吊り・襲撃先宣言終了】
【システムメッセージ】
というわけでこれが最後の投票です!!
○【重要】7日目の処刑投票および8日目の処刑投票を同時にお願いします!
○朝でっす!
○6日目は48h更新で行きますが、状況により7日目以降は変則的(24hに変更)になりますのでメッセージをよくチェックしててね♪
またキャスターTとアーチャーTには7日目以降の更新タイミングについてアンケートを送りますので返信よろしくお願いします!
・・・・・・ ところで、何か朝から背筋が凍るような悪寒が。私何か悪い事したかしら。
【システムメッセージ終了】
−自宅・寝室−
[昨夜は、家に帰るなり倒れた。何かが、パスッと音を立てて、途端に目の前が真っ暗になった。
気付いたら、朝]
[微睡む。温かな手が、両頬を包む。それが、幻だとわかったのは、部屋の薄暗い天井が目に映ったからだった]
[起きあがろうと、体に力を入れる。けれど、動かなかった。魔術回路を開き、身体の血流をいじって、動かそうとしても、回路そのものに魔力が通わない。
魔力そのものは、ちゃんと身体にあるのがわかる。シャルロットへ流れているのもわかる。
けれど、鍵がかかったように、*魔術回路は反応しなかった*]
―朝・自宅リビング―
[昨夜はいつの間にか酔い潰れて眠っていた。]
……宗、冬……様……。
[愛しい人の夢を見る。
二人で弾く一つの算盤。
ぱち、ぱち、ぱち。
美貴の寝顔は笑っていた*]
[動かない体。思うように流れない魔力。ゆっくり息を吐いて、天井を見つめた。
残るサーヴァントは3体。キャスターとの同盟をどうするべきか迷う。
アーチャーやセイバーを倒せても、最後はあの好々爺と戦うことになるのか、と暗い気持ちにもなる]
こんな所で、寝ているわけには行かない。
回路が閉じているのなら、作ればいいだけだ。
[目を閉じる。体中の魔術回路を意識する。魔力は通っている。その入り口に一本、新たに回路を作ろうとして]
「パシッ」
[体に響く、音がした]
[体を起こす。魔術回路が、元へ戻っていた。作ろうとして失敗したのはわかった。原因は分からなかったが、身体が動くのと魔力の放出が可能になったことで、それほど気にもしなかった。
ただ、魔力が通るべき回路の中に細く、機能を無くしてしまった部分があった。
それは、本来ならば問題にもならない部分で、その内に排除されて痕も残らないような、小さな疵]
シャルロットに、昨日心配かけてしまったことを謝らないと。
[ベッドから立ち上がり、シャルロットの姿を探した]
―ソフィーの屋敷・朝―
[昨夜、やっと帰ってきたマスターは、玄関で待ち受けていた自分の目の前で、再び倒れた。
意識を失っている様子に背筋が寒くなったが、寝室に運んで寝かせると、規則正しい呼吸と穏やかに自分に向かって流れ続けている魔力の供給が確認された。
その供給は非常に穏やかなものであったのだが、気配遮断が使える自分に、ソフィーは魔術回路を意図的に閉じる事で合わせていたため、現在もその状態を維持している可能性もあると思う。
寝かせた後部屋を辞したが、そのまま寝室の扉の前に、昨夜からずっと立ち尽くしていた。]
[寝室のドアを開けると、シャルロットがたっていた。突然のことに一瞬言葉を失う、がすぐに気を取り直し]
おはようございます、シャルロット。昨日は、心配をかけて済みません。
沖田敬一郎に、聞きたい話があったのですが、その後ケネスさんを病院に連れて行ったりしていたものですから。
マスター……
私には、もう、自分の行いが正しいのかどうかすら、判りません……
平和の具現の話をした時から、貴女は様子がおかしい。
[カタリ、音がしてドアが開く。
思いの外元気な様子のソフィーに、安堵した。]
ごきげんよう、マスター。
沖田敬一郎に会ってきたのですか。一人で敵の元に赴くなんて……
[なぜ自分を連れていかなかったのか、と、ソフィーを責める言葉を言いそうになり、口をつぐむ。追いかけなかった自分も同罪なのだから。]
ケネスさんが病院に?
一体、昨日何があったのですか?
(一番知りたいのは、ケネスの事よりも……)
何故倒れたのか、定かではありませんが……、昨日倒れる前と今朝と、魔術回路の状態が思わしくないようです。
戦闘には支障はないと思いますから。
たぶん、ですが。夢を見たことと関係があるようです。
ああ、それで、地下でお父様の遺品を見つけたのです。
ここで立ち話もなんですから、リビングまで行きましょう。
昨日教会で起きたことはお話ししておかないといけませんから。
[シャルロットの横を通り、リビングへと向かう]
魔術回路……
[それは、サーヴァントである自分にとっては、マスターからの大事な魔力の供給源でもあり、しかし自分にはないものだ。己のマスターが不調である、という事だけは理解する。]
夢……どんなものですか?
いえ。それよりもマスター。
貴女は何故、私の絵を?
[地下に置かれた自分の肖像画。その傍にあった写真。噛み合わないピースがひとつづつ揃い始めるような、不思議な違和感を感じながら、ソフィーの後に続いてリビングへ向かう。]
[リビングのソファへと座り、シャルロットを見る]
その絵が、お父様の遺品です。
お父様は、シャルロットの絵を欲しがっていた。
おそらく、ですが、夢と、思い出してきた記憶から、お父様はフランス革命について調べていたようです。
そして、シャルロット、貴女に行き着いた。
他の遺品を調べれば、もっと詳しいことがわかるのでしょうけど、それはお爺様がお父様のお墓に一緒にいれたのだと、手紙には書いてありました。
お父様は、平和を愛していた。
だから、シャルロット、貴女のことを尊敬していたのだと思います。
そしてその絵は、私がお父様にねだったもののようですね。
裏に、私の名前が書いてありますから。
お爺様も、きっと貴女を呼び出せるように、その絵をあの魔方陣の下へいれたのでしょう。
だから。
私が貴女を呼び出すことは必然だったのだと思います。
感覚として残ってはいませんが、私はその絵が、とても好きだったのです。貴女が成したことをお父様に聞いて、その絵を見て。
……マスター。
[それは、思っても見なかった話だった。
ソフィーが持っていたのは、処刑される直前、自ら望んで描いてもらった自分の肖像画。
平和を乱すものに天誅を与え、神に対して誇らしく胸を張って処刑されるのだと思っていた、あの時の自分の姿。
史実は、シャルロットの行為を否定した。
けれど、その私の肖像画を、こうして所持する人物がこの時代、遠いこの国にいた事に。
シャルロットは、驚愕していた。]
お父上も平和を愛していた。
私が為したことは、結果あの時代の人々にさらなる混乱を呼んだ、というのに、ですか……。
[言葉に力は無かった。]
結果ではなく、その課程を見たのだと思います。
シャルロット、貴女は平和を愛し、それを夢見て実現しようと、その手を血に染めた。
その精神こそが、お父様にはとても尊敬できるものだったのでしょう。
そしてシャルロット、お父様だけではなく、貴女がしたことを認めている人は、もっといるのだと思います。お父様や、私のように。
だからこそ、その肖像画はありのまま美しく描かれているのではないでしょうか。
……マスター。
[余りにも予想外の言葉だった。
この数日、史実の下した自分への評価、マスターとのやりとり、様々な事で自信を見失っていた自分に対して、そんな言葉がかけられるなどと、どう予想出来ただろうか。]
あの肖像画は、私が断頭台にかけられる直前に描かれたものなのですわ。
私が望んで……そして、私を描きたいと望んで下さった殿方が描いたもの。
[思い出した。
シャルロットの事を誹謗した民だけでなく
熱い支持をしてくれた
人々が居た事を。]
[シャルロットの言葉に目を伏せた]
その方もきっと、貴女のことを尊敬していたのでしょう。
だから。貴女が真の平和を望むなら、私はその手助けをするのだと決めました。
私個人の願いは、命を賭してかけるほどの願いはありません。
ですが、人のためであれば別です。
お父様が聖杯に願うのは私の未来だと言っていた。
だから私も、貴女のために願いましょう。真の平和の成就の、その先を。
それは、マスターの聖杯に対する望みが、決まった、という事ですわね?
[じっと目の前のソフィーを見つめた。
写真の中で笑ったり泣いたりしていた幼い少女。
そして、事務的に話す出会った時の女性。
そして……]
平和の成就の、その先……。
神々の御心に、沿う理想郷。
[ソフィーの言葉に、目を閉じた。
昨日までの心のすれ違いを思い、考える。
変わったのは、マスターなのか…それとも]
そう言えば、沖田とは何をお話になったのですか?
そして、ケネスさんは一体。
沖田敬一郎には、聖杯のことを聞きに行きました。
そしてケネスさんは……。
[言い淀み]
バーサーカーが、昨日教会で亡くなりました。
その時にケネスさんが火傷とケガを負っていたので治癒を施し、病院に連れて行ったのです。
彼の令呪はもうありません。
そして。
彼自身ももういないのでしょう。
「滝田真」に戻るのだと、言ってましたから。
バーサーカーが。そうでしたか。
[目隠しをしていた、妙ちきりんな侍の事を思い出した。
そして、次に浮かぶのは美樹の顔。天真爛漫な彼女は、今一体どんな想いで居るのか……。]
脱落したマスター、という事になったのですね、ケネスさん。
滝田とは、戻る?
[続く不可解なソフィーの言葉に、眉をひそめて首を捻る。]
ケネスさんは、本当は「滝田真」という方で、5年前にある魔術師によってその人格と魔術を与えられたそうです。ケネス・グラントという名前も。
そして、聖杯に元の人格である「滝田真」の消滅を願うつもりだと仰ってました。
そして昨日、「ケネスさん」としての人格は限界だった様子で、眠りにつかれました。
折角病院に運んだのに、抜け出して。つかまえたと思ったら、その話をして下さいました。
今はもう、真さんが目覚めているのかもしれません。
……なるほど。
魔術師としての現存の限界が、ケネスという人格の現存の限界、という話だったのかもしれませんわね。
[新聞を片手に押しかけた時に事を思い出していた。
次は教会の勧誘に行こう、それが果たせなかった事に、僅かな後悔を覚えた。]
皆、色々な境遇や思いを抱えて、この戦いに身を投じているのですわね……。
[若返りたい、と言ったキャスターの言葉もそうだ。
人の願いなど、本来他人には完全に理解し得ないものなのかも、しれない。
判ってほしいというのこそ、エゴなのかも、しれない……。]
写真……、私の小さい頃の、ですか?
それも、絵と一緒にお爺様が入れていたものです。
お爺様は、その写真を見ることで私の精神状態に何か起きるのでは、と危惧したのかもしれません。
幼い頃は何度もカウンセリングや催眠療法などを受けていたようですから。
私は、きっと幼い頃には感情があったのでしょう。それが、突然なくなってしまった。
お爺様は、私が感情がないことに対し魔術師としてならそちらの方がよい、といってましたので。
私は、記憶もありませんでしたから、両親のことも、自分のことも知らなかった。
それなら、知らない方がよいと、判断したのかもしれません。
だから。
そのアルバムにも両親の写真はないでしょう?
お爺様の写真と一緒に飾っている一枚は、魔術学校にいるときに学校の先生から頂いたものです。
両親の写真だと言われて。
お爺様が、私に一番思い出させたくなかったのは、両親のことなのだと思います。
どうしてなのかはわかりませんけど。
[飾られていた三枚の写真を思い出した。
あの、二人の男女がソフィーの両親、という事なのだろうか。]
という事は、マスターがあの写真を見たのも、最近ということなのです、か?
小さな自分が笑っている、あの写真を。
[ケネスの事を話したとき、確かに見た。
感情が揺らぐ、その結果表れた顔の動きを。
シャルロットは、ここ数日、体調を崩しているソフィーの事を考える。
ピースが、はまる場所は、どこなのか探すように……]
それでは、マスターは、ご両親を、お爺さまから取り上げられていた可能性も、あるのでしょうか。
私は昨日夢を見ました。その時にお父様の夢を見た。その中でシャルロットの話を聞きました。
そして、貴女を呼び出せたと言うことは、どこかにその触媒があるはずだと、思いました。それが、貴女の絵。
だから、その絵と一緒にあったアルバムを見たのは昨日、ですね。
両親を取り上げられてた可能性は、無いように思います。
昨日夢を見てからと言うもの、少しずつ、幼いときの記憶が戻っているのですが、私は両親と一緒に暮らしていた。
それは、確かです。
お墓に刻まれていた没年を見る限りでは、両親が亡くなってから、私はお爺様に引き取られたのでしょう。
でも。
記憶は戻ってきているのに、両親の顔まで、はっきりとは思い出せないのです。ぼけたような、ものしか。
幼い頃だから、仕方ないのかもしれません。
そうですか。
徐々に記憶が、戻って来ているから……だから倒れたのでしたか。
断頭台にかかる直前、天使のように微笑んでいたと称された私の肖像画……それと一緒に隠されていた、ソフィーの幼年期の写真。
一体、どんな意図が。
何故、ご両親や貴女が失ってしまった感情を、持っていた頃の写真が隠されていたのでしょうか。
おじいさまは、貴女を、愛していらしたのですか?
わかりません。
[最後の問に、首を振る]
ですが、お爺様には何らかの意図があったのだろう、と思います。
それに、私のことを愛してないとしたら、何故その絵は私に残されたのかが、わからなくなってしまいます。
手紙に書かれた謝罪の言葉を見る限りでは、お爺様なりの、苦悩があったことがわかりますから。
[祖父の達筆が、崩れていた手紙。更に読み辛くはなっていたが、病床にあって、最後に書かれた手紙なのかもしれなかった]
私も。
処刑される前夜、獄中から父上宛に手紙を書きましたわ。
父上より先立つ事を謝罪することと、そして、自分自身の志を決して後悔などしていないという、宣言も共に。
親族に充てる手紙には、想いを込めても込めたりないものがありますわ。
その、文面には書かれていないおじいさまの本心も、もしかしたらあるのかも、しれませんわね。
[燃えるような熱い想いで綴った、暗殺遂行についての手紙とは裏腹に、父に宛てたシャルロットの手紙は、親への気持ちを綴った子供のものだった。]
そう、ですね。
少なくともお爺様は、魔術や知識を教えるとき以外は、優しかったように思います。
手紙は何度かもらいましたが、いつもどこかに必ず、身体の心配をしているようなことは書かれてました。
[幾度か貰った手紙へ思いを馳せる。そのほとんどは魔術や聖杯戦争に関するものだったが、今思えばそれくらいしか話題がなかったのかもしれない]
マスターは、身体がどこか、弱いのですか?
[親族が健康を気遣うのは当たり前の事ではある。
しかし、話を聞いていると、それ以外は魔術師としての話題ばかりだったようだ。
目の前で何度も倒れられた事もあり、そんな気がした。]
身体の具合、ですか?
特に、悪いところはないと思います。
今までも、それほど大きな病にはかかってませんし。風邪なら、普通の方と同程度には引きましたが。
倒れたのは、どちらも魔術回路が原因のようです。身体の具合は不調ではないですから。
魔術回路が、ですか。
マスター、残る敵は、沖田敬一郎、アーチャー、そして……キャスターです。
今までは敵同士の潰しあいを傍観しているのが私のクラスとしてのスタンスでしたが……。
私もそろそろ、敵を倒すために動かねばなりません。
魔術回路は万全にしておいて頂けると助かります。
ご存知のように私は戦闘向きのサーヴァントではありません。マスターの補助があれば、心強いのですわ。
もちろん、今は大丈夫です。
魔術の行使には問題ないようですから、大丈夫でしょう。
後三人。どちらにしても、慎重に動かなくてはなりませんね。
……ええ。
では、マスター。早速今夜から行動を開始しますわ。
基本的には奇襲を行います。
奇襲の際マスターは、屋敷で待機してて下さっても良いですし、安全な位置から援護して下さっても良いです。
戦闘に向けて、少し支度をして参りますわね。
[そう言うと、町の地図を完成させるべく*リビングを後にした*]
‐早朝・川原→自宅‐
[アサシンの望みを聞いた後、キャスターはぼんやりと夜空を眺めていた。
特に何がしたかったわけでもない。
強いて言えば、そうしていたかったのだ。
それから何時間過ぎただろうか。
空が白み始め、キャスターは自分が何時間もそうしていたことに気付き立ち上がった。]
…戻るとするか。
あのボケも帰ってるのかねー…?
[そんな事を呟きながら、キャスターは家へと戻る。
そして扉を開き最初に思った事は…]
酒くさっ!?
−教会・朝−
・・・・・・ふう。
[得意でもない回復魔術ではあったが、かなりの回復を見せている。さすがにベストコンディションではないだろうが戦闘は行えるだろう。裏を返せば慎重に事を進めなければいけない。
他のサーヴァントはその点便利というべきだろう。セイバーのように身体的ダメージによって行動を制限される事は無い。魔力を補給する方法は多種ある]
残りのサーヴァントは少ない。
[もうすぐ、願いにたどり着く。せめてこの願いによって安らかに眠る魂に安らぎを。そう*願うばかりだ*]
−『魔女の館』・朝−
[開店準備をしながら昨日のケネスの様子を思い返す。
なんだか諦観と達観の混ざったようなあの様子。
彼の言葉に露葉はあいまいな笑みを返すしかなった。
降りるなどということは考えもしなかった。
力を尽くさずに結果を手放すなどできるわけがない。]
ケネスさんの優しさなのだろうけど……
[初めて会った時、こちらが魔力が尽きて
動くこともできずにいたのに命をとらなかった。
聖杯に願うことがあるのならそうするべきだっただろうに。
次に会ったときも荷物を持ってくれた。
だから昨日の忠告めいた言葉も優しさからのものなのだろう。]
店も命も結果失うのなら惜しくはない……のよね。
でも店を守るために店を閉めるのはいやだわ。
かといって結界を張るのは……。
[自分の張る結界を思い浮かべる。
それは、いばらの城のように草が建物を覆う形になるもので、
外から見たら結界があるのがすぐにわかってしまうもの。
わからないように、そこに何もないように
幻覚を見せることはできるが
それでは結局客が店の中に入ってこられない。
店を休業するのと同じ結果になってしまう。]
……でも、敵が来て『彼』と戦闘になったら。
[確実に敵ではなくガトリングに店を破壊されるだろう。
想像してため息をつく。]
−自宅・地下−
[魔方陣に座り、魔術回路を開放する。魔力は戻っている、いつもと変わらない、回路量からすれば、若干少なめの魔力]
La chose que toutes les choses retournent, et retourne.
【万物は廻りまわるもの】
Que soit relie tendrement d'apporter-en haut de la vie, toutes les sources, les temps anciens, et le fait; un tourbillon du pouvoir.
【命の育み、全ての源、太古より繋がれし力の渦】
Donnez-moi le pouvoir.
【我にその力を与えよ】
[水脈から上るエネルギーを、魔術回路へと流し、魔力へと変換する。足りない魔力を補うためのものだが、通常の魔術であればそれで十分だった]
つっ……。
[回路が軋み出し、魔力が指先から血となって流れ、魔方陣を濡らす]
何故?
いつもと同じことなのに。
[多少キャパシティを超えたところで、問題はないはずだった。流れ出た血は固まらずに、魔方陣へと染み込んでいく]
…なんでこいつ酔っ払って寝てるんだ?
[酒臭い部屋の中を進むと、寝ている美貴の姿。
しかも、なんか寝言言ってるし。]
おい、起きろ酔っ払い。
もうとっくに朝だ。
[体を揺すって起こす。]
[それでも、問題と言うわけでもなく、血を止めて立ち上がる。先日作った紙片を上着のポケットへと入れ、準備は整った]
奇襲が成功するなら、アーチャー、か?
セイバーは教会にいれば、奇襲は難しいところだろうし。
キャスターたちはまだ同盟関係にある。
アー、チャー……。
[店にいた男を思い浮かべた。見た目、紳士に見えた、眼鏡の男]
[夢の中。
算盤が揺れれば珠も揺れる。
まどろみの中、人の気配を感じた。]
ん……宗ふ、…………、あれ……、お爺ちゃん、……?
……ふぁ。
[眠い目をこすりながら、欠伸を一つ。]
……仕方ないわね。
[ガトリングが表に出ている間は
休業にして外を歩いている方がよさそうだ。
ひとまず開店準備の手を止め、、
彼を呼びに2階へ上がった。]
アーチャー、ちょっと、
今日店お休みにしようかと思うの。
外にでかけましょう?
店で戦われるのは困るし、
外を歩いた方が敵に会えるかもしれないわよ。
[段々と意識がはっきりしてくると、胸の喪失感が重く圧し掛かってきた。]
う、……お爺、ちゃん、……宗冬様が。
…………宗冬様がぁぁぁぁ。
[キャスターの胸で泣き出した。]
[上へと戻り、リビングのソファへと座る]
アーチャー相手に奇襲と言うのも難しい、か……。
なら、教会から沖田敬一郎を呼び出せば。
[シャルロットを待ちながら、*考え込んでいる*]
なんだよ、バーサーカーがどうかしたか…
って…お、おいどうしたんだ!?
[起きたと思ったマスターが突然泣き出して、事態が飲み込めないキャスター。
わけもわからずうろたえる中、なんとか話を聞こうとする。]
とりあえずわけわからんから、何があったか話してくれ。
―朝、自室―
[イライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライラ…]
んん…。
[ずたん、ずたんと足で床を鳴らす。]
…退屈だ。
[怠惰、怠惰、怠惰、怠惰。
ただ喰って寝るだけのためにここにいるわけではない。
だが、戦闘の気配は感じず、外へ出ても人がいればそれだけで自分の引き金を引く衝動を抑えるのに苦労するし、出たからと言って戦闘の空気を感じるでもない。
俺の知らないところで、サーヴァントが戦い敗れ、ここから去っていったならば、戦闘の密度は薄くなって当然だが、それではあまりにも寂しいじゃないか。
あまりにも惜しい。
まだ満足には程遠い。
もっと撃ちたいのに。
もっと殺したいのに。]
[宗冬が教会で殺されたことを、泣きながらキャスターに説明した。
ただし現場は見ていないため、宗冬は勇敢に戦い、沖田某は卑劣な謀略を用いたことになっている。]
ひっく、……ひっく。
せっかくお爺ちゃんにもアタシたちの仲を認めてもらえたのにぃ……。
[ここへ来てからもう何日だったか…は覚えていないが。]
フシュー、フシュー…
[断続的に息を大きく吐く。
落ち着かない。
あぁ、もう、早く、俺にあの感覚を、引き金を引く感覚を、弾丸が飛び出す光景、伝わる衝撃、甘美な震え、耳を劈く爆裂音、身体を貫き飛び散る鮮血、遅れて伝わる匂いと、反抗の意思!
あぁあああああああッ!
甘い!伝わる!痺れる!
その感覚を求める全てが、俺をここにいさせる!]
遠い、遠い遠い遠い遠い遠い遠い!
あァ…っもう駄目だ、撃っちまう、撃っちまうよォ。
[床を鳴らしていた足の動きが、全身に広がる。
がくがくと、その震えを、自分で認識できるほどに。
末期症状。
もはやその特効薬なしに、完治は見込めない。]
…。
[うん、多分大筋はあっているんだろうけど…どーも話に尾ひれどころか背びれ胸鰭、ついでに服とか装飾品まで付いている気がするのは気のせいだろうか?
いやだって、頭の中の2人のイメージにどーも合わない。
もっというなら、あのバーサーカーのシリアスな場面が想像できない。
だってアイツのあの空気、なんか固有結界クラスだったし。
…まぁ、そこはいいや。大筋と結果さえ合っているなら。]
しかしまぁ、お前が死んでないのは不幸中の幸いじゃないか?
勢いに任せて特攻とかしなくて本当に良かった。
……本当にしそうだからな。
あふぅ…ッ!
[震える身体を両腕で押さえつける。
だが、その両腕ももちろん震えている。
断続的に頭の中で警報が鳴り響く。
令呪による抑止。
だが、長期に渡って働くそれは、強いものではない。
このままでは、ずっと頭の中で空想していた光景を、現実のものにせんと自分が動き出してしまう。
それは我慢しなければ、いざあの沖田敬一郎やキャスターを見つけても、自分に彼らを殺すだけの力が残っていまい。
それでは困るのだ。]
[あの二人を撃ち抜けば、いかなる快楽であろう!
ランサーと戦った時に感じた…
あの屈辱!
あの悔しさ!
それを、一瞬で晴らすほどの快感が全身に広がる!
それを想像する!
そうすれば耐えられる!
あんな建物、あの程度の人数の人!
撃ったところでどうだと言うのだ!
気持ちいいさ!
あぁ気持ちいい!
だが、あの二人を撃ち抜く時ほどではない!
よし、俺はいける!
我慢できる!
我慢できるはずだ!!!]
お爺ちゃん、……アタシ、絶対沖田某を許さない!
絶対に聖杯を手に入れて、宗冬様を取り戻すのっ!!
……でも、その前に、……うぷ。
[口に手を当ててよろめきながらトイレに向かう美貴。]
はあぁあああ!
おぉおおおおおおおお!
ぬぁあああああああああッ!
[咆哮する。
ようやく、震えが収まる。]
ふぅ…ッ!
はぁ、はぁ。
…よし。
[左手の中指で、眼鏡をつり上げる。
外の空気を吸おうと、部屋の入り口の扉を開ける。
と、そこに露葉が立っているのが見えた。]
…なんだ、お前。
そんなところで黙って突っ立って、何をしている。
ついにボケでも始まったか?
クハッ。
―ソフィーの屋敷―
[町の地図には、敵サーヴァントの拠点や陣地と考えて良い場所など、色々と記され既に真っ赤になっている。
キャスターの拠点だけが判明していないが、その前に倒すべき敵が居ることは間違いなかった。]
セイバー…沖田敬一郎か。
アーチャー…リチャードか。
[こつん、と右手に持ったクロスで、教会と、魔女の館を順番に突く。]
……リチャードが温厚な人格を出している時ならば奇襲は成功するでしょう。
もし、好戦的な方であれば。
[露葉の顔を思い出す。その場合は戦場を外へ移すのが良いように思えた。]
……まずは、アーチャーの拠点を。
[ソフィーに、その旨を話しに行く。]
ああ、その意気だ。
勝てば望みは適うんだからな。
残るは後2騎……ってあー…。
[マリアちゃんもだから3騎か、と改めて思う。
戦えそうにないよなー、でも他の奴に倒されて欲しくもない。複雑だなぁコレ。]
……いってこい。
[そんな事を考えながら、トイレに走っていく美貴の姿に呆れていた。]
…………。
[無言でぽこんとガトリングの頭を殴る。]
……近所迷惑だわ。
やめてちょうだい。
それで、出かけるの、出かけないの?
[顔を洗ってすっきりした後、簡単なメイクを施してからキャスターの元に戻って声を掛ける。]
さあ、教会に行きましょ。
まずは沖田某をやっつけて、宗冬様の無念をはらさなきゃ!
[とても張り切っている。]
あァ?
オイ…ッ、勘弁、してくれよ。
は、ふぅ…ッ、グ。
[びくんびくんと大きく震えながら勝手に銃を握ろうとする右腕を、必死で抑えつける。
まだだ!
まず待て!
さっき決意を新たにしたはずだ!
さっき…さっき…殺気?
違う!
そっちじゃないぞ!]
[俺は撃つ!
キャスターを撃つ、沖田敬一郎を撃つ、全てのサーヴァントを撃ち抜いてみせる!
こんな撃っても楽しくなさそうな小物を撃って、その機会を全てふいにするつもりか!?
馬鹿な!
そんな馬鹿なことがあるか!
あってたまるものか!]
…ッ、出かけるって、どこへだ。
ふぅ、ふぅ。
…ぬ、グ。
[ガトリングの奇行をちらりと見る。
いつものことだ。
と、無視することにした。]
具合悪いなら出かけなくてもいいのよ?
出かけるなら、そうね……。
敵を見つけるんだから……。
[そういってほかの人たちの拠点を全く知らないことに気付く。
唯一知ってるのは沖田敬一郎の居場所だけ。]
……教会に向かえばいいかな?
ついでに公園も寄れたら助かるわ。
……マスター。
私は先に行っておきます。奇襲ならば相手マスターに気配を察知されると終わりですから、マスターは後から合流して下さい。
[色々と考え込んでいる様子のソフィーにそう告げると、気配遮断をし身を翻して窓から外に出る。]
私の姿は以前相手に見られている。正攻法で攻めては駄目ですわね。
[そのまま跳躍し、屋根伝いに住宅街の中を一路、魔女の館へと向かう。]
私は私の理想を目指す。
その先にあるのが、人類の滅亡かガイアの滅びか。どちらでもないか。
私は目指す。
私の理想郷を……。
…お前は馬鹿か?
[考え無しに教会に行くと言い出すマスターに溜息をつく。]
俺達は何の為に誰と同盟を組んでいる?
俺の得意な戦闘場所と属性は何だ?
教会にそれらが揃っているか?
更にいえば敵の拠点に単騎で踏み入って勝てる勝算は?
[腕を組んで静かにマスターを問い詰め始める。]
[老人は相変わらず口煩いと思った。]
あーもうわかったわよ。
お爺ちゃんの言う通りにするから。
沖田をやっつける方法を教えてちょうだい。
[連日こうして、自分と戦っている。
強敵だった。
だが、その戦いの全てに自分は勝利を収めてきた。
脳天に血が上り、露葉の声が途切れ途切れに聞こえる。]
…んだ、もっとはっきりと喋れよ。
[だが、出かけると言うなら、ちょうどいい。]
あぁ、そうするか…。
本当に教会に沖田敬一郎がいるのかは分からんし、結界の類や罠もあるかもしれんが、ここでじっとしているよりはずっと楽だろう。
クフ、フ。
[シャルロットを見送る]
魔女の館、……あそこか。
[まだ一度も店の中には入ってなかったことを思い出す。立ち上がり、外へ出る。振り返って屋敷を見た]
無事に、戻ってこられるといいけど。
―住宅街・魔女の館―
[建物の壁際にそっと背をつけて張り付く。
微かにサーヴァントの気配がする場所を、見つけた。
……何か、話しているようだ。
耳を澄ませ、中の様子を探る。]
(出かけるのね。しかも、以前のリチャードとは様子が違う……。)
そうだなー…。
当然、絶対にやらなければいけないのはマリアちゃんとの合流だ。
1対1と1対2じゃ有利性が全く違う。
それ以降の事はマリアちゃんの能力とかも考慮に入れるべきだから今は決められないな。
ちゃんと話してるでしょう。
あなたこそちゃんと人の話聞きなさいよ。
……いいわ、行きましょう。
[外出用のショールを肩にかけ、種をいくつかポケットに入れる。
下に降り、外に出て店のドアに『臨時休業』の札を下げた。]
そっかー。
じゃあ、まずはマリアちゃんのところに行きましょう。
……って、マリアちゃん達の連絡先がわからないわ。
お爺ちゃん、知ってる?
ふん。
クソが。
[全く、不快だ。]
えぇい、鬱陶しい。
[ばーん、と、自室の窓を開ける。
その縁に足をかけ、一気に飛び降りる。
どすん、という音とともに、鈍い衝撃。
甘い痺れ。]
く、く、クフッ…。
[ぞく、ぞく、ぞく。
素晴らしい。素晴らしい感触だ。
…今は、これだけで、満足しておくとしよう。]
ここでじっとしていても仕方が無いし、マリアちゃん達の家に行きましょうか。
タロ、お留守番よろしくね。
「バフ!」
[老人の言葉に頷いて、玄関に向かった。]
[魔女の館へと早足で向かう。そろそろシャルロットは着いているのだろう。いざと言うときに援護できなければ意味がない。
そう思い、歩みを速めた]
[突然、目の前から飛び出す影、着地しようとしていたのは、まさしくアーチャーだった。]
(チャンス!)
[刹那壁を小さく蹴り飛ぶ。
シュンッ、という音とともに、シャルロットの影が空を切り、アーチャーの背後に迫る。
右手には、黒く輝く短剣が具現化した。]
[後ひとつ、角を曲がれば、魔女の館が見える。そこまで来ると、魔術回路を閉じる。手に紙片を数枚持ち、角から顔だけ出した]
……入り口が、閉じられている。
「臨時休業」、留守なのか。
[視力をアップさせて、入り口を見つめ]
[何かが落下した音が聞こえ、そちらに向けて歩く。]
また窓から出てきたのね。
あの人は玄関って物があるってことを
いつになったら覚えてくれるのかな。
[キャスターの先導で住宅街を歩きながら話し掛ける。]
そう言えば、最近外泊が多いみたいだけど。
……ひょっとしてマリアちゃんと、…………。
まさかねー。
[走る。足に魔力を乗せて、体を軽くし、速度を上げる。視力もアップさせたまま、数メートル近い距離の視界で、その先の動きを察知する]
(マスターが、裏手に向かってる。これ以上近づくと、令呪の反応があるはず。反対側から、行くか)
[跳んで、数軒離れた家の塀へと乗り、そのままの速さで数十メートル先の「魔女の館」を見つめた。視界だけならば、すぐ傍にアーチャーの姿と、襲いかかろうとするシャルロットの姿が見えた]
いた。でも――。
‐住宅街‐
外泊っていうか、元々サーヴァントに睡眠は必要ないだけだ。
魔力を使うような事もここ数日はなかったからな。
だったら家に戻る必要はないだろ?
[それにまぁ、色々あったしなー。]
大体、マリアちゃんなら大歓迎だが向こうが嫌だろ。
中身はともかく外見は爺さんだ、こんなのでいいとかどれだけ特殊な趣味だよ…って。
[魔力のぶつかり合いを感じる。
この方角は…魔女の館か?]
[魔力が、足から抜ける。体重が元に戻り、速さを保てなくなる。視界はそのままに、紙片を握った]
''Dispersion''
[宝具を使われたことで、大量の魔力が、体内から抜けていくのがわかった。
掛けた呪を紙片に託し、アーチャーの方へと飛ばす。
うまく行けば、濃霧がアーチャーの回りに出現するはずだった。
魔力を乗せて紙片は風と同じスピードでたどり着く。
奪われた魔力のために、足をとられて塀の上から下へと落ちる]
[殺気の塊が後方に迫るのを感じる。
戦闘の空気ではない。
必殺の意思。
宗冬とも、また違う。]
なんだ、オイ。
こんな近くで、よかったのか。
苦しんだのが、馬鹿みてぇじゃねぇかよ。
[甘い痺れの残る両脚を、がくんと沈み込ませる。
心臓を狙ったらしき一撃が、右の肩口を深く切り裂く。]
…っ痛ぇな!
[全身が、喜びに打ち震える。
銃を撃つ、許可証が、背後にある。
痛みを感じる前に叫ぶ。
その時には既に、両手に銃を持っている。
そのまま、反動を利用し、前方へ跳ぶ。]
へー、寝なくていいなんて便利だね。
ま、お互い聖杯を手に入れて幸せにならなきゃね!
[老人を励ますように背中を叩こうとする。]
……お爺ちゃん、どうしたの?
[裏に回るとそこに見えたのは
剣を持つマリアと傷ついたガトリングの姿。]
アーチャー!
あなた何やってるの。
……あなた……マリア、さん……?
……アサシン、なのね。
[ようやく目の前の女性がサーヴァントだと確信できた。
露葉は地面に手をつき、]
"守って"
[呪文を唱えると店の周囲の草が一気に伸び、硬化して楯となる。]
アーチャー、なるべく店に被害がないように戦いなさい!
Merde!
[しくじった、と思い表情をやや歪める。黒檀のナイフはアーチャーの肩口を切り裂いたに留まった。
アーチャーが前方へ飛ぶのと同時に、シャルロットも後方へと距離をとる。アーチャーの武器は飛び道具。だが、懐に飛び込む事はしなかった。
右手に黒檀のナイフ…それは、シャルロットの宝具。その傷は皮膚を侵食し、宝具もしくはシャルロットの消滅と引き換えでなければ、消して癒えぬ傷となる。
そして、左手には防御用のクロスを持った。]
やはり、遠い。
[シャルロットのナイフが外れたのを見て、そのまま走り出した。人の家の庭だが、留守のようだった。
身を低くして、シャルロットの方へと走っていく。
一枚の紙片を再び手に持ち]
''Devenez le bouclier''
''Un bouclier de la glace''
[シャルロットの前へと、それを飛ばし――その身を守るように幾重にも重なった氷の層が出来る]
ちょ、ちょっと待ってよぉ。
[キャスターのクラスとは言え相手は常人離れした存在。
二日も続けてサーヴァントを追って走る運命を呪いつつ、キャスターの後に続く。]
[露葉の声が耳に入る。
いつかはお茶をご馳走してくれた、優しそうな女性……
耳に残るその声を振り払い、目の前のアーチャーの次なる隙を見つけようと目を凝らし、白いワンピースの裾をひらめかせながら身構えた。]
…。
あァ?
[周囲を、霧が取り囲む。
自分を狙ったその姿を、全く視認できない。
しかも、自分が動いても付き纏う。
殺気が少し鈍り、遠ざかったことだけを感じ取る。]
っち。
あー、めんどくせ。
[ぐ、と両腕を持ち上げる。
いいや。]
知らねーぞ、っと。
[撃つ。撃つ撃つ撃つ。
ただ闇雲に。
ががががが、と銃声が響く。]
ひゃははははははは!
くぁあぁああああははははは!
うふ、うふあふ。
楽しいぜ…!
誰か知らねぇが、ありがとよ!
心から、感謝する!
愛してるぜ?
俺の「敵」よ。
‐魔女の館付近‐
[目的地へと辿り着くと、予想通り戦闘が開始されていた
そこに居るのはアーチャーとアサシン。]
マリアちゃんか…っ!
[どうするか考える…というのも今回は合流するのが目的だった為水を大量に持ってきていない。
魔力は十分だが操る対象が少ないのでは力も発揮できない上に、水以外の魔術・魔法では範囲が大きすぎる為、相手と比較的距離を詰めている2人のうちアーチャーだけを正確に狙うのは難しい。]
[視界を解除し、地面へと手を当てる。アスファルトやコンクリートでなければ、そこに水分がある。
水さえあれば、魔術を行うことはより容易だった。
逆に言えば、宝具使用により、水分がなければ、魔術の連続使用が危ういことを示している]
''Deterrez une veine de l'eau''
[水分を吸い上げ、手元へと集める]
''Un grain de la glace''
[熱を奪い、氷にしてアーチャーの方へとはじき出す。鋭利な刃物と化した飛礫が、銃を持つ腕を狙った]
(マスター、到着しているのですね)
[アーチャーの、次いで自分の前に起こった魔術に、ソフィーの到着を知る。
瞬間、まるで雹が降るような勢いでぶっ放される弾丸の雨に、自分の前にあった氷の断層が次々砕け散ってゆく。]
マスター、安全確保を最優先に!
[弾丸の雨の中を駆ける。
霧が視界を奪っている今が二度目のチャンス!
左手のクロスで、止め処なく打ち放たれてくる眼前の弾を弾く。
頬を、腕を、服を掠め千切るが、白い服に朱を滲ませた。
そのままアーチャーの目の前まで躍り出ると、足元に滑り込むようにして腹部を狙い、ナイフを突き出した。]
[ようやくキャスターに追い付く。]
あれは、……マリアちゃんと、ヒモ……?
でも、いつもと雰囲気が違う。
お爺ちゃん、どうしよう?
[塀を一枚隔てた場所で身を隠す]
''J'intercepte un signe''
[地面の水分で身の回りを覆い、気配を遮断する。あの弾丸の雨の中では、出て行けるはずもなく、ここから援護を行うのがやっとだった]
[闇雲に撃たれ、魔力が一気にもっていかれる。]
このバカっ。
どうして人のいうこと聞かないの。
[座り込んで少しでも被害が広がらないように
「楯」となる草を維持する。
露葉の魔力になじんだ植物でも
ガトリングの銃によって
次々とちぎれては「楯」の数が減っていく。]
こっちはアサシンのマスターまで相手にしてる余裕はないんだから……。
[立て続けの魔術で来ているのだろうことはわかったが
姿を探したり、魔術をとめさせるようなことはできそうもなかった。]
…、んだァ?
[殺気が増える。]
っちぃ。
[何かが、右腕に当たる。
強力な、攻撃ではない。
だが、数が多い。
避けようがない。
次々と傷を負う。
血が滲む。]
氷、か…ッ?
[右手に握った銃身がその礫の一つに当たり、弾け飛ぶ。
そもそも肩の傷で、握力が落ちているのだ。
すぐに、新たな銃を虚空から出現させ、握る。
だが、その隙は隠しがたい。]
[距離が近すぎる…が、そんな事も言ってられない。
視界に血を滲ませるマリアが映る。]
…とりあえず援護するしかないな!
[懐に忍ばせておいた水を取り出し、容器の内側から破裂させる。
それによって辺りに飛び散る筈だった水は、キャスターの周囲に静かに漂い始めた。
そして、キャスターが詠唱をすると数本の矢に姿を変えアーチャーへと放たれた。]
マスターを狙うか……。
[店に、客として顔を合わせていなくてよかった、と思った。顔見知りになっていれば、多少の手加減が出てしまう]
魔力は、……少しはまし、程度か。
[立ち上がり、激しい音の響く方へと視線を向け。植物で楯を作っていた女性が視界へと入る]
[刃が閃く。
身を捻るのが精一杯で、攻撃に手が回らない。
右の脇腹から脚にかけて、深く切り裂かれるのを感じる。
斬撃ではなく、刺突。
美しい戦い方だ。
弾丸の雨が、一瞬止む。
と。]
[同時に、キャスターと美貴の姿も目に入った]
……ここでマスターに手を出すと、二人に当たる、か。
それに、私の体では、マスターを狙えないみたいだ。
[彼女へと魔術を、と思っても、呪が口をついてでない。まるで、体が拒否しているようだった]
[少し、垣間見る。
その姿。
見蕩れた。
血が滲み、ところどころ朱く染まった、白い服。
ぞくり、と、身体の芯から、悦びが湧き上がる。]
そら、見ろ。
やっぱり、只者じゃねぇ。
[あァ…っ、なんて、美しい存在だ。
「彼」が一瞬で魅せられたのも分かる。
殺してぇ…ッ]
援護、……って言われても、アタシがどうこうできる相手じゃないわよね……。
[人外の戦いを目の当たりにして、改めて己の無力さを感じる。]
[その男は……狂ったように笑っていた。
笑いながら銃を乱射していた。
店で話したあの温厚な紳士と同じ顔をしながら、全く別人のような姿で、シャルロットの刃を受けていた……。
刃物が彼の身体を切る。
吹き上がる血飛沫とともに一瞬乱射の手が止まった。
その隙に再び背後に飛びのき間合いを詰める。
目的は、己のマスターの居場所の把握。
アーチャーを見つめながら、神経を、流れ込んでくる魔力へと注ぐ。
その瞬間、先ほどの氷の飛礫とは別の場所から矢が放たれた。]
……サーヴァントの気配が。
[しかも、アーチャーへの攻撃。正体が判った気がする。]
[ガトリングの銃が少しでもやんでいるうちに「楯」を増やす。]
あとでリチャードにお説教しなきゃ……。
食事もなしね。
こっちの負担考えて戦いなさいよ……。
[文句を言いつつも「楯」は維持し続ける。
すると、先ほど飛んできた氷とは別の攻撃がまた。]
……他にも仲間がいるのね。
これ以上アーチャーをたきつけないでほしいわ……。
と、とりあえずアタシも何かしないと……。
そうだわ、この技ならっ!
[周辺の大気を支配しようと試みる。]
新条美貴の名において命ずる。
汝拒む事能ず。
氷結・獅子舞ッ!
[そして、同時にシャルロットの姿も目に入った。赤く染まった服は、まるで模様にも見えた]
……シャルロット!
[紙片を数枚宙へと投げる]
''Priere de l'eau''
[紙片はシャルロットの方へと流れ、触れた部分から傷を癒していく]
[さらに新たな殺気が漂い来る。]
邪魔するんじゃ…ねぇよ。
折角、またとないかもしれないくらい撃ちたい相手を、相手にしてるんだからよ。
[その意思を至近に感じるまで、待つ。
視界に入ると同時に。
急所に当たりそうなものだけを、次々と撃ち抜く。
すると、じゅう…、という音とともに、熱風を感じる。]
水、か…?
オイ…面倒臭ぇこと、してんじゃねぇぞ!
これじゃ、削り合いなんだよ!
もっともっと、楽しもうぜ!?
こっちへ来いよ!
穴だらけにしてやるからよ!
[今度は殺気を感じる方向を狙い、再び銃を乱射する。]
[水を纏いながらゆっくりと2人へ近づく。
…後ろのボケはどうでもいい、てかあっち一思いに気絶させようか。
ああ、もう魔力回路ズタズタでもいいかもしれない。
まぁ、それは放って置こう、後で殴ればいい。
声が届く距離まで近づくと、マリアへと声をかける。]
マリアちゃん、大丈夫?
[にこやかに声をかけながら、水は再び無数の針へと姿を変えて、自分へと向けられた銃弾を相殺する。]
よー、お前がアーチャーが言ってたもう一人の人格か。
[再び身を隠し、息をつく]
まだ、大丈夫。
もう少し、水があればいいのに。
[辺りを見回す。水道もなかった]
でも、キャスターたちも来たから、大丈夫……。
(だろうか)
く……っ。
[奪われていく魔力に地についた手でも支えられずに崩れそうになる。
【これいじょうは……】
耳の奥で聞こえる警鐘。
爪の間に土が入るのもかまわずに手を握り締める。]
……るさい。
……うるさい。
[遠のく意識を必死につなぎとめる。
声を振り払うように頭を振る。]
だめかどうかは、わたしが決めるの。
[顔を上げ、奥歯をかみ締め、
崩れそうな身体を支えてガトリングを睨みつけた。]
[ソフィーの声と共に、先ほど弾丸で抉られた身体の傷の痛みが鈍く引いてゆくのを感じた。]
マスター、感謝、します。
[アーチャーの注意が別の方向へと反れた。恐らく、そこにはヴァイナが居る。
水気のないこの地では、彼の魔法の威力は思うようには出せないだろう……ここは挟み撃ちに。
地を蹴ろうとした。
弾丸の軌跡がこちらへと向き、背後からは、ヴァイナの声。]
ああ、やはり貴方でしたのね。
[次々に生み出されるポンデ○イオン。
それを片端から撃ち抜かれる。]
や、やっぱりアタシの魔術じゃ通用しないのね……。
[がっくりと項垂れた。
ポ○デライオンはそれでも愛くるしく歩き回る。]
[キャスターの援護があれば、いけるだろう。
シャルロットは、大きく地面を蹴ると正面から再びアーチャーの懐に飛び込むべく、駆けた。
キャスターが殆どの弾を相殺してくれているとは言え、流れ弾を弾く必要はある。そのまま、一気に愉しげに乱射しているアーチャーへと接近を試みる。
クロスで弾くたび手首にかかる重たい衝撃に、唇を噛む。]
次こそ……。
おぉ?
お前、キャスターかよ。
「彼」…もう一人の方が、世話になったな。
奴のくだらねぇ話に、よく付き合えるもんだ。
…お前も随分厄介な得物使ってやがるな。
[銃を撃ち続けるまま、話す。
激しい魔力のぶつかり合いで、霧はかなり晴れてきていた。]
しかしお前、そのマリアって女と知り合いだったのかよ。
邪魔するんじゃねぇよ、今戦ってたんだからよ…。
三角関係ってのは、勘弁して欲しいもんだぜ?
クハッ。
まぁ一度に相手をするのも、それはそれで楽しいがな。
元々「俺」はそういう武器だしよ。
そろそろ、か。
[ゆっくりと体を持ち上げ、動き始める準備をする。
最後の生き残りを決める戦いが始まったのをうっすらと感じ取る]
終わりにしよう。この世界の為に。
そうでもないぞ、もう一人のお前との話は中々面白かった。
そりゃもう、この俺が男と長話してしまうぐらいにな。
[話しながらも、水は再生をしてまた銃撃を防ぐという行為を繰り返している。
それでも少しづつ水が減ってきているのは事実だった。]
邪魔するなっていわれてもなぁ。
そりゃ美人が襲われてたら助けるだろ、普通。
[さて、どうするか…と思っていると、横を何かが走り抜ける。]
マリアちゃん!?
女だと思って甘くみるなら、痛い目見ますわ!
我が名は、シャルロット・コルデ
……か弱き女たった一人の手で、フランスを平和へ導こうとした者。
[黒檀のナイフが、振りかぶられたシャルロットの右手の中で黒く妖しい光を放ち、アーチャーの心臓を目掛け振り下ろされた。]
自由と正義を叶えし刃
Un couteau de Liberté et Justice !!
男女差別は、よくないぜ?
俺もお前に蝶よ花よと守ってもらいたくはないがな。
[と、殺気が動く。
速い。]
クハッ。
そう来てくれねぇと。
[右手の銃のグリップの底を、その得物の腹に叩き付ける。
銃の方が破壊される。
ただのナイフのように見えるが、強い存在だ。
だが、元々右腕は傷でほとんど使い物になっていない。
その攻撃を急所からずらすことができれば、それで十分。
マリアの攻撃は心臓を逸れ、脇腹に深々と突き立つ。]
[そのまま、マリアの腕を掴む。]
平和ねぇ。
いいお題目だよな。
自分のエゴは、自分のエゴだと認めろよ。
そのエゴを通すために自分の力を使うことを恐れてんじゃねぇ。
神のためとか、平和のためとか…
そんな言葉、作られた表層的な言葉でしかない。
お前は、お前が選んでこうしている。
そうだろ?
エゴを通そうとすれば、必ず反抗を喰らう。
それを通す意志がない奴に、俺は決して殺されやしない。
[マリアの周囲に魔力が渦を巻く。
英霊にとっての象徴であり究極の一の真の現界。
それが行われようとしていた。
だがそれよりも…キャスターはマリアの呟いた言葉の方が耳に残った。]
シャルロット・コルデ……。
[聞こえた言葉をそのまま口にする。
そんな中、マリアの持つ刃がアーチャーの体に突き刺さった。]
[宝具の発動と同時に、右手に強烈な衝撃を受ける。
痺れるような一瞬の感覚の後、ナイフは目標を反れ、アーチャーの脇腹へと食い込んでいた。
それは、一撃必殺で放った 筈 だった。
失敗する事など考えて居なかったシャルロットのひと突きは、勢い余ってアーチャーの身体にぶつかるほどの勢いを持ったものであり。
つまり……
ナイフを相手の身体に突き刺したままの状態で、彼女の動きは、一瞬、止まった。]
私の願いが……エゴだと言うのですか?
人がみな、貴方と同じと思わないで。
男はいつもそう。皆そう。自分の事……ばかり!
[腕を掴まれ、頬が怒りで上気する。
何とか黒檀のナイフを相手から引き抜くと、腕を掴んでいる手を振りほどこうとする。]
それを、エゴってんだよ。
人間なんざ、誰でも同じだ。
向いてる方向が違うだけ。
でも、だからこそ、戦ってるんじゃないのか?
お前は…。
ガ ト リ ン グ 砲
火吐き狂う虐殺機構。
[…虚空から棺桶が現れる。
掴んでいた腕を放し、長大な砲身を取り出す。]
……っ。
[今までの比にならないほどの魔力が消費されていく。]
アー、チャー……。
……。
[かすれた声で文句を続けようとしたが
そのまま倒れて気を失ってしまう。
魔術で維持されていた草の「楯」が
役目を終えたように枯れて*崩れていった。*]
[様子を眺めながら、キャスターは2人の会話を聞いていた。
色々と思う事もあるが、口は挟まない。
それは…恐らく主張しあうだけ無駄な平行線だからだ。
その時、今度はアーチャーの魔力が急激に上がり始める。
そう、奴はアーチャー…ならば超接近戦のあの状態ならば宝具を出す事などないと楽観視していた。]
しまった…マリアちゃん…っ!
私の志はっ!!!
[腕から手が離れるや大きく後ろに飛び退いた。
虚空に現れた不吉な……あれがアーチャーの宝具なのだろう。
彼の放った言葉、一瞬戸惑った。]
(私の名など、誰も……)
[続く轟音に、至近距離で爆風を食らった。
身体が焼け爛れるような感覚……そして痛みに包まれながらまるで木の葉のように吹っ飛ぶ。
脳裏を掠めるソフィーの顔。
しかし、この瞬間は自分の身を守るのが精一杯……]
黒き天使の翼
Les ailes d'un ange noir
[シャルロットの真っ白な服は漆黒のそれへと変わり、暗黒の翼を背にした彼女は……
まるで天使のように、一気に空に飛翔した。]
[弾丸の嵐。
道路に次々と穴を空け、
なお、放たれる。
じゃらじゃらと音を立て、空薬莢が落ちる。]
クハッ。
[ずっと、こうしたかった。
ようやく、きかいがめぐってきた。
さいこうのあいてとともに。]
おれのすがた、わすれんじゃねぇぞ。
[
【 暗殺の天使 】
彼女はその死後、人々にそう称された。
天使の翼は黒く……血塗れの緋が、空気に触れたかのように、黒く……
焼け爛れた身体を庇い、まるで爆風の勢いに飛ばされるかのように、シャルロットは暫く空を飛び、そして、住宅街の隅に、堕ちた。]
[やがて。
からんからんと音を立てて、銃身が空回る。
魔力が尽きたのだ。]
…っち。
[見上げる。
翼持つ、黒い天使。
綺麗だ。]
…くそっ!
[一瞬の思考、それが出した結果は此方の防御以外行える手がないという事実だった。
その事実に対して、舌打ちをしながら詠唱を開始する]
『Escutcheon etta Iwayama leimata ja johtua kotona perakkain seuraaminen』
[キャスターの目の前に現れる小さい岩山の群れ。
それは盾となりキャスターの身を鋼鉄の豪雨から守る。
だが、それはただの銃撃ではない…宝具による攻撃だ。
たとえその岩山に封印の魔法の同時詠唱がかけられているとしても、全てを防ぐには力不足過ぎる。
威力を殺された幾つもの弾丸がキャスターの体を貫いた。]
[轟音が止み、岩山も姿を消し始める。
周辺の地面は荒れ果て、キャスターの足元も岩山の出現の影響で舗装にいくつもの穴が開いている。]
まさか…あの距離から射撃用宝具を出すとは思わなかったな。
考えが甘すぎたか…。
[体から血を流し、そこに佇むキャスター。
もう攻撃に魔力を回す余裕などない、全てを治癒魔術へと全力で集中する。]
[アスファルトの上に、全身を強かに打ちつけた。
全身が焼け付くように痛む……うっすらと目を開き、悔やんだ。
マスターは、果たして安全な場所に居たのか。
せめて、方角が、逆に居ててくれているならば……]
う……つほ…
[初めてその名を呼んだ。
そのまま、視界が白み、意識が、遠くなってゆく……]
[視界を上へと移す、そこには夜空よりも美しく、黒い天使が佇んでいた。
その翼の漆黒は、何を戒める色なのか…キャスターには分からない。
だが、星の光さえないその夜空に、キャスターはなぜだか酷く哀しい物を見たような気がした。]
マリア……?
[その声が彼女に届けばいいと呟いた呼びかけと共に、彼女はその身を地へと堕とし始める。]
[奪われた魔力に、一瞬気を失い、その轟音で気を取り戻す。みれば、アーチャーが宝具を取り出し、シャルロットへと向けて放つ姿]
くっ。
[こちらに弾丸は来ていない。そう思い走り出そうと体を起こし、再び、魔力がそがれる。
シャルロットに、黒い翼が出現していた]
[遠くへと飛んでいく姿。否飛ばされているようにも見える。
紙片から、染み込ませた魔力を吸収する。それを足に乗せてシャルロットが飛ばされた方向へと走った]
……シャルロット、無事で!!
[魔力はまだ注がれている、彼女は死んではいない]
…あー!くそっ!
[治療を続けながら、マリアが落ちたと思われる場所へと駆け出そうとする。
目の前に敵がいても、優先すべきは背中の仲間だとキャスターは判断した。
全身から流れる血を半ば放置し、痛みを堪えながら走り出す。]
…おい、キャスター。
巻き添え喰らわせて、悪かったな?
こういう武器なもんだからよ。
クハッ。
[こちらも、満身創痍だ。
相手の宝具によって付けられた傷からは、
鮮血が溢れ続けている。]
お前、帰るならマスターを連れて帰れよ。
戦るつもりなら、さっさと来い。
[渾身の力を込め、左手にだけ銃を握る。
限界が近い。]
[アーチャーの言葉を背中に受けながら、返事をせずに駆け出した。
どれぐらい走っただろうか、勘を頼りにひたすら探し続ける。]
【……いた!】
[視界に映るのは、血を流し倒れるマリア。
すぐに駆け寄り、自分の治療と共にマリアの治療も行う。]
大丈夫か、マリアちゃん!?
[堕ちていったほうへと走り、その姿を視認する。動かない。動く気配などない。
ようやく辿り着き、シャルロットの名を呼んだ]
シャルロット!
[目は閉じられている。体中はぼろぼろで、あの宝具の痛々しい痕が目に映る]
シャルロット?
[呼ぶ。消えていない以上、無事であることはわかるのだが、その判断すら出来ずにいた]
ふん。
また来いよ。
次は、戦ろうぜ。
[銃が、自然に掻き消える。
限界、だな。
左手の中指で、眼鏡をつり上げる。]
殺せたかどうか、分かんねぇな…。
ま。
[空を舞う、漆黒の天使の姿を思い起こす。]
あれを撃てたと思えば、今日のところは、いいか…。
キャスター……。先ほどは、援護をありがとうございます。
[キャスターの姿をようやく認めて、礼の言葉を掛ける]
マリアは、シャルロットは、大丈夫、でしょうか。
[シャルロットの方へ視線を落とす。治癒を使いたかったが、魔力が足りなかった]
…大丈夫だ、致命傷までは行ってない。
流石に宝具の攻撃を至近距離で受け続けてたら消滅はどうしようもなかっただろうけど、途中で空に逃れたのが間に合ってよかった。
[治療魔術を続けながら、ソフィーの言葉に答える。
これならば何とか間に合う…が全快とまではいかないだろう。
流石に自分を治療しながらでの同時魔力行使では最後まで魔力が持たない。]
[ボロ布のように横たわっていた。
右手からナイフは消え、背中からは羽が消えている。
左手に、熱で溶けかけたクロスが力なく握られていたが、それもやがてカタリと小さな音を立てて落ちる。
遠くの方で、名前を呼ばれたような、気がした。
焼け爛れた全身の皮膚に、暖かいものを、感じる……]
[自身も息を整え、体内の魔力回復に努める。水ならば、体に含まれている。体内の水分と血流を魔術回路と同調させ、魔力回復のスピードを上げることは、教えられたことではなかったはずなのに、自然と憶えていた]
[倒れた露葉を左腕で抱え上げ、店内へ入る。]
お前、今日は、そこそこ、いい仕事をしたぜ。
クハッ。
[…相手が同じだから、戦うんだろ?
何かが変わると、信じられるから。
殺し合いでも、虐殺でもなく。
「彼」はきっと、そう思っている。]
…さぁ、出番だぜ、甘ちゃんよ。
しっかり、働きやがれ。
[剣呑な空気が、遠のいていく。]
うるせぇよ。
[纏うは、ごく、平凡な空気。]
よくもあんな綺麗なものを、撃つ気になれるな…!
[右手の中指で、眼鏡をつり上げる。
嫌な記憶も、残ってしまった。]
ふぅ。
[ひとまず、露葉を二階へ運ぶ。
血が付くが、勘弁してもらおう。
緊急事態だ。]
この傷は…参った、な。
[宝具によって付けられた傷。
普通でも、穏やかなものじゃない。
だが、これは…。]
[マリアと自分を包んでいた光が弱まっていく。]
【……そろそろ魔力が限界か。】
[と自分の持つ魔力の残量が空に近いのが分かる。
魔力そのものともいえる血を流しすぎた。
だが、もう少し…もう少しだけと思いながらマリアに治癒をかけ続ける。
が、それも限界だった。]
すまない、流石にもう魔力がないみたいだ。
[治癒が止まる…なんとか危険な状態が脱出したマリアを見ながら、2人に謝罪の言葉を告げた。]
しかも、魔力がほとんど皆無ときてる…。
こりゃ、厳しい。
…つってても、仕方ないな。
治療を、開始する。
[右手に針と糸を生成する。
やるだけ、*やってみるしかない。*]
キャスター、貴方も、自分の治療があるのではないですか?
同盟を組んでいるとはいえ、貴方がシャルロットのためにそこまで魔力を消費して、ご自身が危険にさらされてしまったら、申し訳が立ちません。
私の魔力も安定してきました。
後は、サーヴァントの回復力で何とかなるでしょう。
[頬に何か暖かいものが触れる……痛みに気を失いそうになりながら、薄っすらと、眼を開けた。]
う…つほ?
[すぐ傍にマスターの顔。]
(無事、だった……)
[涙が一筋零れた。
そして、もう一人…逆側で懸命に自分を癒そうとしている、ヴァイナの姿が霞んで見える。]
あり……が……
[ヴァイナへ伸ばそうとした手が、震えて、そして力なく*地面に落ちた*]
いいえ、キャスター、貴方は十分すぎるほど、力を貸してくださいました。
今は同盟を組んでいるとはいえ、いずれ戦う身。
だから、謝られる事など何一つないのです。
[シャルロットの頭をふわりと撫で、そしてキャスターへと視線をむける]
シャル、ロット?
[気がついたらしいシャルロットの方を見る。名前を呼ばれ、また目を閉じたのを見て、安心したように息をつく]
ん、まぁ大丈夫だろ。
俺は一応防御はしていたから致命傷と言うほどじゃなかったしな…!
気付いたか、マリアちゃん!
[かすかに聞こえた声に反応を示す。
そして自分に伸ばされた手を取ろうとしたが、その手は途中で地へと落ちてしまった。]
…眠っただけか。
いや、いずれ戦うと言っても今は仲間なんだ。
だったら全力で助けようとするのは当然だろ?
まー魔力も少し休めばそれなりには…って。
[疲れた顔をしてそう答えるキャスター。
そこまで言って「あ」と声をあげ振り返る。
そこにいたのは…。]
あー…魔力吸い上げすぎたか。
[フラフラとしながらへたり込んでいる美貴だった。
というか気絶一歩手前っぽい]
[それでも、まずは魔力を回復しなくては、と思い一旦家に戻ることにした]
キャスター、私たちは一度家まで戻ります。さすがに、マリアがこの様子では何も出来ませんから。
私も体を休めないと、その分マリアの回復が遅れてしまう。
[シャルロットを背負い]
[立ち上がり、美貴がいることに気づいて、その様子に笑みを浮かべた]
美貴さんも、無事なようでよかったです。
乱射されてましたから。
[美貴の様子を眺めながら、あれはあれで静かだし丁度いいんじゃないかなんて感想を思い浮かべていると、ソフィーから声がかかる。]
ん…あーそうだな。
俺も少しでも回復しないと。
[キャスターもその場から立ち上がると、美貴を背に背負った。]
それじゃ、俺達も戻るわ。
マリアちゃんによろしく伝えておいてくれ。
[キャスターの姿を見送ると、自分も自宅へと向かって歩き出す。シャルロットの様子は危険はなくなったようだったが、それでも、息は微妙に荒く。
自分自身も体力、魔力ともに底をつきかけていたせいか、家までの道のりがだいぶ*遠くに思えた*]
−自宅−
[傷ついたままのシャルロットを普段使っていたベッドへと運び、自身は魔力の回復に努めた。
魔方陣の中であれば、より回復量が多くなるのもあり、半分ほどは戻っていた]
奇襲失敗、か。キャスターがいてくれたおかげで助かったけれど。シャルロットはしばらく動かさない方がいいな。
[眠るシャルロットを気にしながら目を閉じ、*平静を保つ*]
[勝負が決まる日は近い。教会に配置してある聖杯の魔力の高まりでそれが手に取るように分かる。
だが早期にランサーを失った沖田にとって、その肉体があるというハンデが重くのしかかる。サーヴァント同士の連戦においてこれ程の不安要素は無い]
ならば・・・・・・
[これが致命傷になるかもしれない。だがありとあらゆる戦略において、それが現状の最善手であると悟った。
そして、胸元の令呪、残り2画のうち1画が光りだす]
−セイバーのマスター、アド・エデムが命じる。
現在生存しているサーヴァント一体と戦闘を行い、それを撃破しろ。
[沖田の影が、動く]
‐自宅‐
[とりあえず気絶した美貴をソファーに寝かせた後、キャスターも軽く眠る事にした。
数時間じゃ3割程度が限界だろうが、それでも魔力が回復しない事にはどうにもできない。]
【まいったなー、今日はもう戦闘になんかならないことを祈るか。】
[まぁ、アーチャーはあの様子だと温厚な方の人格になっているだろうし、マリアは同盟相手。
ならば沖田とさえ出会わなければ何とかなるだろうと気楽に考えてキャスターは眠りについた。]
−教会・外−
[かつてその霊体は、自分がどのような存在だったかも不明瞭だった。彼は今”セイバーのサーヴァント”としてその存在を保っていた。
その姿に残るのは使命。与えられたのは仮初の力。
アド・エデムが自身を強化する為に吸収したはずの残滓。だが、そのアド・エデムが自身の魔力を裂いてでも生み出したその”かつてセイバーだった何か”が求める。のは、サーバントの撃破という結果のみ]
・・・・・・
[その右手には、失われたはずの剣”菊一文字”が握られていた。
獲物を狙う猛禽類のような鋭い眼差しのまま、闇に溶けた]
[疲労感が彼を襲う。
彼はもう魔術戦闘は出来ないだろう。あとはその手に生成させる異形の剣のみ。
残滓には自身の一部を削り”宝具”まで分け与えた。
相打ちでも構わない。それで彼は”使命を全うする”。
聖杯が覚醒を始めている。既にサーヴァントは3体消滅している]
もう少しだ。
[激痛が走る体を起こし、戦場へと向かう]
―自宅―
[キャスターに運ばれてソファに寝かされる。
寄り添うように主人の隣で眠る愛犬。]
ん……、さむ……。
[小さく身震いをして、愛犬の温もりを求めてもぞもぞと動いた。]
−自室−
[目が覚めた。
天井を眺めて状況を思い出す。]
……起きないと。
庭と店、修理しなくちゃ。
[鈍い動きでベッドから降り、ドアへと向かう。
壁に手をつき体を支え、部屋から出て、
階段を下りようとしたところで先に言うことをいっておこうと思った。
彼の部屋の前に行き、ドアを開ける。]
ちょっと、リチャード。
[それは……
酷く揺れる馬車の中だった。
シャルロットはずっと、その揺れる馬車の窓から、外の風景を眺めていた。]
―自室―
あー、もう。
こりゃ、うまくないわ。
[キャスターの攻撃によって受けた傷などは、もうそのほとんどが問題ないところまで治療が終わっている。
だが、肝心の、マリアの攻撃…
黒いナイフによって受けた傷は、違う。
止血、縫合、全て終わっている。
だが、その先は一向に進展しない。
今でも、処置を止めればすぐに鮮血が溢れ出すだろう。
処置を続けていなければならない分、魔力の回復も緩やかだ。
魔力が落ち着いてしまえば、もう少し楽になりそうなものだが…。
脂汗が滴り落ちる。
「死なないようにする」ので、手一杯の状況。]
[横揺れの激しい馬車は、長い間、群がる群衆の間をのろのろと進んでいた。
窓の外には、あらゆる人々が居た。
多くは下層階級の民。
口々にこちらを指差し罵る怒声
男も 女も
興味本位で覗くものも居た。
後を追って着いてくるものも居た。]
[死刑執行人の男は、時折私の顔を窺った。
私は 微笑を浮かべて 外を見ていた。
死刑執行人の男は、不思議そうな表情で、静かに目を逸らす。]
……あら、まだ治してなかったの?
[外を見る。
倒れたときよりだいぶ時間はたったようだ。
いつもなら治療自体は終了しているはず。
だが、治し続けている様子を見て]
……無能……?
[と呟いた。]
私の行いは、フランスを救う 筈 だったのだから。
人々は、マラーの死を契機に目を覚ますがいい。
そして、祖国を真の平和へと導くために立ち上がればいい。
私がその警笛を鳴らそう。
命を、かけて
[その時確かに、私は、そう思っていた。
祖国を救う。
いずれ、皆、それを理解する。
私は、そして、英雄となる。
その時確かに私は、そう思い
神への誇らしい気持ちが心に満ちていた。
だから、微笑んでいたのだった。]
[酷く揺れる馬車はのろのろと進み、やがて、馬車は止まる。
死刑執行人の背中越しに、私は断頭台を見た。
多くの鮮血を雨のように大地に染み込ませた
そして、私の血も雨となり、革命広場に落ちるだろう。
その、大きな断頭台を。]
[私の衣服は真っ赤だった。
手を縛られたまま、断頭台にかけられる。
一呼吸つくまもなく
刃が落とされた……当時の人々と、歴史が下した、私への、審判。
私は…… 間違っていた……]
うるさいなー。
[「彼」に言われるよりも、なんか腹が立つ。]
こりゃ、必殺だよ。
対処のしようが…ない。
今となっては。
クソッ。
[そう。
傷を治すくらいしか、出来ることはないのに…。]
[時折乱れた呼吸をする以外は、穏やかな表情を浮かべて目を閉じていた。
突然、苦悶の表情を浮かべたシャルロットの瞳が開く。
その眼光に宿るのは、緋の色の影……]
ふぅん、そう。
彼にならない分物を壊されなくてすむけど
常に魔力もっていかれすぎてて
なかなか回復できないのが困るわね。
それにしても治療しかとりえがないのに
対処できないなんてほんと、使えないわね。
ここの庭で戦ったりするからバチが当たったのよ。
[サーヴァントの治癒能力と、キャスターの治癒魔法のお陰か、辛うじて起き上がることが出来る。
しかし、至近距離で受けたあの炎の咆哮は、未だ身体の芯を焼くように身体機能を奪う。
よろりと立ち上がり、壁に手をつき無言で窓を開いた。
……その、向かう先は。]
――私を否定する歴史は、人類が作ったもの
【倒すべきは、アーチャーとキャスター】
――私の判断は、本当に間違っているのか
沖田敬一郎を、葬る事でそれを――
−自宅・地下−
[目を開ける。魔力は十分ではなかったが、だいぶ潤っている]
そろそろ、シャルロットの様子を見てこよう。
目を覚ましてるといいのだけど。
[立ち上がって部屋を出、上へと向かう]
[階段を上り、シャルロットが眠る部屋のドアに手をかける。ドアの隙間から、冷たい風が流れてきた]
……風が、通ってる。
[気づいたように急いでドアを開けた]
[それはね、僕じゃないわけ。
と言うのを我慢するのにも少し慣れてきた。]
そりゃ、ここへ相手が来たわけだから、しょうがないじゃないか。
戦闘になれば撃ってもいいってことになってるわけだし。
[もう、現状では手がない。
とりあえず魔力の回復を待つしかない。
そうなれば、別のアプローチもある。]
はぁーあ、っと…。
疲れちったなぁ。
許可なく撃つなって命令しておけばよかったわね。
好き勝手撃たせない方法があればいいんだけど。
[深く息をつく。]
疲れてるのはこっちだって同じよ。
これから庭の手入れもしないとならないんだから。
手伝い……は、してもらうと
余計に手間が増えそうだから頼んでも無駄ね。
そう、それから。今日はごはん抜きよ。
庭を傷つけたんだから。当然でしょう?
えぇっ…。
[絶望的な表情。
今となっては、それだけが楽しみのようなものなのに。]
…。
[ま、ま、まぁ…。
どうせ傷のせいでろくに食べられやしない。
仕方ない。
と考え、自分を慰める。]
戦いで痛んだハーブとチーズ使ってリゾットを作って、
残りのハーブと野菜でミネストローネ作って、
花寄せババロアにすればいいかしら……。
[庭の草花を思い出してメニューを考える。]
……あなた、サーヴァントなんだから
食べなくても生きていけるでしょう?
それとも食べないとだめなの?
[あまりにも傷ついた声だったので思わず確かめてしまった。]
【実現しろ……お前の望む 真の平和 を】
[脳裏で囁く、ガイアの声……
気が狂うほどの間、断頭台の、夢にうなされた]
[窓枠に足を掛け飛ぶ。
……冷たい空気が肌を裂く感覚と、着地時に受けた体中に響くような痛みに、表情をわずかに歪ませながら、ひたすら走る……
向かうは、教会。]
[窓は開き、カーテンが風に揺れている。ベッドの中にシャルロットの姿はなかった]
シャルロット、何処に……!?
[窓際に駆け寄り、外を見る。視界を拡げ、虚空を見つめた。わずかに、白い人影が見えた]
まだ、動いてはいけないのに。
[追おうとして、地下へ行き、残りの紙片をつかむ。そして外へと向かった。
魔力の流れを追う。住宅街ではない。ならば、もう行き先はひとつのように思えた]
間に合って。
[足に魔力を乗せ、走り始める。行き先は教会]
―住宅街→教会・夕方―
[右手を軽く一振りすると、黒く光るナイフが具現化する。
所々に濃緋の滲んだ白い服は、夕闇に溶ける事無く不吉に浮かび上がる。
そのまま住宅街を、目視すら出来ないほどの一陣の風の速度で走りぬけた。弱った身体には、それだけで疲労感が重たく浸透してゆくのも、構わなかった。]
私は……揺らがない!!
‐自宅‐
[あれから何時間経っただろうか、目を覚ましたキャスターはゆっくりと起き上がると己の魔力量を確かめる]
…やっぱ3割程度か。
[予想通りとはいえ、若干心許ない。
本格的な戦闘…それも川原以外だと厳しいものがある。
本来はこのままもう一度静かに魔力の回復をするべきなのだろうが……。]
うん、やっぱ心配だしなぁ。
[マリアの所に行く事にした。
まだ回復が遅いようだったらもう一度治癒をしたほうが良いだろう。]
さて、行くとするか。
[キャスターは部屋でそう呟いた後、簡単な用意をして家を出る事にした。
マスターは多分寝ているだろうし、どうせ魔力は空だろう。
……魔力があっても役に立つ気は全くしないのだが。
というわけで行くのは自分だけ、静かに一人で外へと出かけた。]
貴方を倒す!
私を悩ませて来たものは
[脳裏に一瞬浮かび上がる、爛れた大地…ガイアの最期……
歯を食いしばった。
本当に正しいのは、正しい 願い とは何なのか……]
―教会―
[速度を落とし、気配遮断を行った。
無駄だろう
そんな事は判っていた。
打てる限りの手を打って、沖田敬一郎を倒す。
相反する二つの思いに……もう心を切り裂かれたくは…ない!]
Noircir......
彼女の真っ白なワンピースは、漆黒の闇の色を纏った。]
貴方を倒せば……
私は、聖杯から "召喚" されなくなる筈ですわ。
私は、悪しき干渉を止めるために……世界と契約を……
・・・・・・
[虚空に向かい、まるでその先に誰かが居るように語り掛けるような仕草をしている。
そして、その気配が近づいているのも把握している。気配探知ではない、違う何かのラインがそこには存在した]
[教会の扉に忍び寄る。
ここは、彼の"拠点"だ。当に自分の到着など、知れているだろう。
構わない、ならば。
神経を研ぎ澄ます。
中からは、静かな思念が溢れ出してくる。]
そしてまた英霊の座で。
君は嘆くだろう。
自分がなした事は歴史にとって闇でしかなく。
その結果何も変わりはしない。
君から見て人は愚かなままだ。
君の苦しみは、永遠に終わらない。
来たか、アサシン。
[静かに目を開き、扉を見据える]
君の答えが出たようだな。
愚かな娘だ、シャルロット。君の魂が安らかに眠る事は永遠に無いだろう。
……くっ。
[教会の扉を隔てたこちらとむこう。
流れてくる思念に、唇を噛む。
沖田敬一郎の言葉は、心の確信を突く。
そう、私は、民を……憎んでいるのだから。]
−駅前−
[駅から、帰宅途中の学生や会社員の群れが降りてくる。足を止めて歩き、不自然なスピードを隠す。
あがった息を整えて、教会方面の空を見つめる]
お願いです、マリア……。どうか早まらないで。
[扉の前で、シャルロットの髪が微かに揺れる。
それは風のせいではなく……
ナイフを握り締める指に力が入る。爪が手のひらに食い込む感触、未だ治癒されぬ皮膚の焼けるような痛み……]
私が望むのは
(本当に望んでいるのはなんだろう)
[チリチリと心が焼け付く]
(英雄になるとは、どういうこと?)
英雄とは即ち……
君の成した功績は誰に評価されたんだ。
歴史に残った君は、唯の暗殺者。
君は革命を起こしたかったのではないのか。歴史を変える聖人になりたかったのではないのか。
今の君は、黒く汚れているな。そのまま英霊の座に居続けるか。
−西ブロック・教会近く−
[ドクン、と魔力が騒ぐ。何の痛みかはわからない。令呪が痛んだ]
教会が、見えた。
[前方に教会。何事もないようにそこに佇んでいた]
……そう。
私は歴史を変えたかった。
私は英雄になりたかった。
そう。
私は"人類"に評価されたかったんだわ。
だから私はサーヴァントとして世界と契約した。
だから、今こそ、人類を救おう。
真の英霊になるために!
もう、惑わされませんわ、沖田敬一郎!
[そのまま扉に手をかけた。
扉はあっけないほど、静かに開いた。
正面からこちらを見据えていたのは、沖田敬一郎。]
…いや、食べなくても、いいんだけどね。
ほら、やっぱり傷を治すには食べて血を作って英気を養わないと。
[息をつく。
食べたところで、傷が治りはしないだろうが。
…もう、何かは諦めないといけない段階かもしれない。
昨日だって、二対一の戦いを強いられた。
こちらよりも、相手の回復の方が早いのは間違いない。
沖田敬一郎というイレギュラーもいる。
守りながら戦える、そんな戦況では、もはやない。
いかに相手を倒すかになるんだろう。
窓の外を見る。]
あー。
これを言うと、「彼」は怒るかもしれないけど。
ちょっと、庭の手入れの前に、聞いてほしいことがあるんだよね。
これからの戦いを考える上でさ。
「近くにマスターの気配を察知していた。
少し離れた距離に居る事を確認し、扉に立ちはだかるように立つ。]
ええ。
決まりましたわ、沖田敬一郎。
私の願いは"真の平和"
人類が、この星を守るよう、歴史を、変える事。
[つぶやいた声には、もう迷いは無かった。]
食べなくていいならそんな声出さなくてもいいでしょう。
[呆れたようにリチャードを見る。]
……聞いてほしいこと?
いいわ、聞いてあげましょう。
[何を言い出すのかといぶかしげにしつつ
長い話になったときのため壁に寄りかかった。]
[教会へと走る。闇色に染まったワンピース姿のシャルロットと、剣を掲げた沖田敬一郎。入り口から、半歩下がり、中を見つめた]
……マリアの、服はいったい。白かったはずなのに。
[ポツリと呟く。そして腕の令呪へと手を伸ばした]
令呪よ。
シャルロットの力となってその宝具へと宿れ。
[令呪の一画が光り、そしてその輝きを失う]
うーん。
[どう言えばいいものか。
隠すのは気がひける。
だが、言ってしまえば躊躇が生まれるかもしれない。]
…。
えぇと、ね。
うーん。
[右手の中指で、眼鏡をつり上げる。]
[シャルロットの願いが耳へとはいる。わずかに目を伏せ、そして沖田敬一郎を見た]
私の願いも、決まっています。
平和を願うなら、貴方はそこに齟齬が生まれるといった。得るものと、失うもの。
なら、私はその失うものを、失わないように願うだけ。
万物が皆、願いに反することなく、繁栄出来るように。
[ソフィーの声と共に、眩い光がシャルロットの右手に握られたナイフを包み込む。]
マスター……令呪を……
[発光が収まると、手の中のナイフは鋭い輝きを宿した。
沖田敬一郎がこちらへとやってくるのを確認し、マスターを抱えリーチを取るため背後に飛んだ。]
聖杯に望めば、ガイアは滅亡しないわ。
貴方の望みも叶う。
ガイアが求めているのは、人類への憎悪を晴らすこと、ではなくて?
いやいや。
[慌てる。]
んーと、その。
…前、「彼」の名前は「ガトリング」だ、と言ったよね。
「彼」は、そう。
リチャード・ジョーダンではない、独立した一つの人格だ。
僕が人として生きていた頃にも、「彼」はいた。
だけど、今の「彼」の存在には、一つの人格という以上の意味合いがある。
「彼」は、「ガトリング砲」そのものだ。
ガトリング砲そのものを象徴する存在として、「彼」は存在している。
だから、一介の人に過ぎなかった僕よりも、遥かに強い力を持っている。
ガイアが望むのは人類に対しての遺恨からの滅亡ではない。
ガイアという生命を維持するためだ。
[人類を恨んでいるのは、俺だ]
マスター、援護をお願いします。
[傷ついた足が地面を蹴る。
相手の戦闘能力は、不明。ならばまずは様子を見る。
大きく右へ跳び、側面からの奇襲を試みる。相手からは左、剣と逆側を狙う。]
ならば、ガイアの維持を聖杯に願えば済むことですわ。
何故、それをしない?
だから、「彼」が最もその力を大きく発揮する時、「彼」自身の意思というものは存在しなくなる。
「彼」は銃、そのものだからね。
銃は、自ら引き金を引くことはできない。
人が意思もて引き金を引き、初めてその存在の価値を示すことが出来るものだ。
…っていうことを言いたいんだけど。
[これじゃ、分かんないよな。]
私は。
「今」生きているから、私にとっては未来なのです。貴方にとっては過去でも。
未来は不確かなもの。変えられるもの。その時代に生きる人によって。
不変の未来だとしても。
私は人としてその滅びを今受け入れるわけには行かない。
それは違います、沖田さん。
私の願いは、私が決めることです。それが私のためでなく、人のための願いでも、私がその人のために願うのだから。
ふぅん。
つまり、どういうこと?
[いっていることがよくわからずに首をかしげる。]
「彼」は人の形をしてるけど
てっぽうにもなれる、ということ?
ならば願ってみろ。
[平正眼の構えをとり、そのアサシンのいる方へと高速の突きを放つ。その回り込みを苦にもしないかのように]
結果は同じだ。聖杯は”ガイアの命を保つために”人間と亜麗百種を滅ぼすだろう。
信じていないなら、この俺に勝って願ってみるがいい。
[シャルロットに頷き、沖田敬一郎とは離れ]
La chose que toutes les choses retournent, et retourne.
''Deterrez une veine de l'eau.''
[唱えると同時に、空間に水が出現する。そして]
Un chuchotement sans etre sur!!
[言葉を紡ぐと、水は刃物へと形を変え、沖田敬一郎のほうへ降り注ぐ]
「彼」自身は「銃」だから引き金を引けない。
人が……引き金を引く。
[考えながら呟く。]
彼を最大に利用したいなら、
……わたしに、引き金を引け、と。
[あのときの、「彼」を喚び出した時に引いた引き金の感触を思い出す。
体中に響いた衝撃や腕に残った痺れも。]
そういう、こと?
おぉ…。
察しがいいね。
そう、要は、「彼」が一番強いのは、「彼」が銃の姿になっているときなんだよ。
その時、僕の身体は意味を失い、「ガトリング砲」そのものだけが、そこに残る。
でも、そのままじゃ、どうしようもない。
引き金を引くことが出来ないからね。
ってことで、さ。
もし、「彼」が勝てそうにない、そんな状況になったら、君がその引き金を引いてくれないかな…?
[瞬時に繰り出された高速の突きに、リーチをそれ以上詰める事が出来ず、そのまま刃を避けるため身を低め、地面に受身を取って転がる。
地面に触れた身体のあちこちが、焼け付く痛みで疼いてくる。
転がりながら、ソフィーの攻撃で出来る隙を窺う]
ええ、やって、みましょう。
マスターと願いましょう、調和の取れた、平和、を。
[ソフィーの願いが、耳に残る。]
……。
[考える。
宝具を使うだけであっという間に吸い上げられる魔力。
それ以上の力を持つものを使うとすれば。
それは。]
……。
考えておくわ。
それでいい?
[と言っていたところに、かぶせるように結論を言われてしまった。
…察しがよすぎるのも、なんだか寂しい。]
…そうなのさ。
うん。
ただ、その時には、注意して欲しいことがある。
「彼」は、自分が引き金を引けない状況は、大嫌いだ。
自分で引き金を引き、自分で撃ち抜き、自分で殺す。
「彼」はそんな意志の塊だからね。
だから、いざそういう状況になったら、令呪を使ってくれ。
「彼」を呼べば、手元にそれが、現れるはずだ。
それと、その…
んー。
未来は。
その人の心の中にあるものです。
周りなど関係ない。環境も何も。砂の大地で見る夢は、緑豊かな土地で見る夢と違うのでしょうか?
その人があきらめたら、そこでその未来は潰える。
逆にいえば、あきらめなければ、未来は紡がれる。
その人の描く未来を、現実にするのが人というものです。
ガイアが母で人が子ならば。
子の滅びを願う母など既に母ではない。
母親は、子の繁栄を願うものです。
[紙片を取り出し――教会の床へと投げ]
''Je deviens le nuage et ai le tonnerre''
[小さな暗雲が出現し、雷を発生させ、矢の如く沖田敬一郎の腕をめがけて光が放たれる]
・・・・・・
[体制を建て直し、再度平正眼の構えを取る]
本当に残念だ。君たちには失望した。
[剣に力が篭る。光速の突きを打ち出す間合いを取る]
[手のひらの令呪を見つめる。]
これで呼べばいいのね。
[そして「彼」を使ったその時は。]
撃つのにわたしは……
全ての魔力を引き換えにするのでしょうね。
[魔力を空になるまで持って行って撃ち尽くされる宝具より強力なものならば。
そうなるだろうと想像するのはたやすかった。]
教えてくれてありがとう。
「彼」をどうするかは、よく考えてみるわ。
それじゃ。
[壁から離れると、部屋をでてドアを閉め、
手入れのために庭に*下りていった。*]
・・・・・・ まとめて射抜く。
”光速三段突”
斬 撃 皇 帝
[三筋の光が、空穂の放った魔術もろともアサシンを貫かんと放たれる]
あ、いや…。
ん。
[目の前でばたんと扉が閉まる。
そう、魔力の消費は、圧倒的だ。
魔力を失う、ではすまないかもしれない。
一生魔力を持てなくなるかもしれない。
…下手をしたら、命も、失うかもしれない。]
…なんてなこと、言えないだろう、なかなか。
くそ。
沖田さん。
滅びを願う貴方と、滅びなど望まない私たちには、同じ道などなかったのです。
貴方が失望するのは当然でしょう。
貴方の理想と違うことで失望されても、それは何の意味も持ちません。貴方が、失望しただけ。簡単に言うなら、それは貴方の勝手です。
マリア、この戦いを、共に勝ち抜きましょう。
[令呪に手をのばす]
くぅっ!
[沖田の宝具から伸びた3筋の光。軌道を見る。左手に魔力で生成したクロスで上を庇い、ナイフで中央を……残るひとつ、間に合わない。]
諦めかけた瞬間、眩い光がシャルロットの身体を包む。
その光は、シャルロットが発動していないにも関わらず、彼女に大空を与えた。
刹那。彼女は夕闇の空に浮かんでいた。
背には、漆黒の、翼。]
感謝しますわ、マスター。
[眼下にソフィーの無事を視認。
そのまま反撃に出るため、闇色の翼をはためかせる。
黒檀のナイフを、刃を下に向けるように握りなおすと、止めを刺すべく沖田に向かい一気に下降した。]
自由と正義を叶えし刃
Un couteau de Liberté et Justice !!
[シャルロットの姿が消えたことを確認し、続けて紙片を放り]
Un mur de la terre.
[床から、氷が出現して壁を作る。薄いものだったが、白くにごり、姿を一瞬でも隠すのには十分だった。
そのまま教会の外へと出る]
[令呪を使い一撃を回避したのが観える]
無駄だ!
[すぐさま構えを元に戻し、剣を”成長”させる]
斬撃皇帝!!
[教会の地面が割れ、建物の崩壊が始まる。その剣は教会の屋根を貫き、そのまま全てを切り裂きながら迫り来るアサシンへと振り下ろされる]
……何ですってっ?!
[一直線に下降していた自分に、真正面から迫り来る強大な……剣の刃。
それは瞬時の出来事、その巨大な宝具を避けるのは不可能。
咄嗟に、己の宝具で相殺するのが精一杯だった。
身体の前にナイフを構える。
令呪で強化されていたそれは、剣を受け止めはしたがそのままの威力でシャルロットを吹き飛ばした。
教会の正面にあった大木に身体を強かに打ちつけ、ずり落ちるように地面へと落下する。
アーチャーから受けていた身体の爛れから、鮮血が噴出し黒い服に不吉な緋を乗せてゆく。]
[剣はその姿を縮めない]
これで終わりだ、アサシン!
[その巨大な剣は飛ばされたアサシンを今だ間合いに捉えている。崩壊しかけた教会を気に留めることなく、再度振り上げその大木もろとも真っ二つにするために振り下ろす]
[逃げ場が無い……令呪も、ストックは無い筈。
こうなれば、一か八か。]
我が身を守れ……!!
自由と正義を叶えし刃
Un couteau de Liberté et Justice !!
[左手に生成したクロスを、巨大な剣に向けて投げつける。
黒檀のナイフにありったけの魔力を込め、宝具発動とともにクロスと一緒に右手から剣へ投げつける。
その食い止めた一瞬の隙に空へ……
先ほどのダメージで、翼は片翼しか開かなかった。
血の香りを振りまきながら、転げるように地面すれすれを右へ這う。]
うぐぅ!
[そのまま刀は、シャルロットの左半身を抉るようにもっていった。]
人で…あった私には
成し得なかったわ。
変えようと願って、決死の覚悟で…挑んだけれど。
だけど、同じ轍を踏まない選択肢も、私にあっていいでしょう……?
・・・・・・
[勝負は決した、そう判断し剣を通常のサイズへと戻していく]
アサシンの割にはよく持ったほうだ。
惜しかったな。
[ゆっくりと近づいていく]
[片腕がもげ、切断面からは血が噴出し続ける。
黒い服はずたずたに裂かれ、血を吸い重くシャルロットの身体に張り付く。
小さな息を浅く繰り返しながら、近寄ってくる沖田をぼんやりと霞む視界で捕らえた。]
……マ…スター、に……逃げ……。
[逃げてくれ、そう言おうとしたが、声が上手く出ない。
肺もざっくり切り裂かれており、サーヴァントの修復能力が辛うじてその穴を塞いでいるに過ぎなかった。]
マスター…には、手を……出してはなりま……
[僅かに残った気力を振り絞り、沖田を、睨む。]
貴様さえ消えれば、マスターに用は無い。
さらばだ、この俺の願いの糧となれ。
[大きく振りかぶり、止めとばかりに斬り付ける]
[覚悟を決めていた……迷いがあった自分に、勝利など、与えられるはずがないのだ。
心の底から、そう思った。
刹那空気が揺れた。
ザシュ、と鈍い音がする。
そして、地面に何かが崩れる音。
疑問符がめぐる。
目を、開ける。
そこには、一番見たくない、光景があった。
……沖田敬一郎と自分の間に居る人影。]
うつほ!
[それは己のマスターの姿だった。
自分の度重なる宝具発動で、ソフィーの体内の魔力は相当もっていかれていただろう。
満足に魔術を発動出来る状態ではない中、ありったけの魔術を使っただろう事は、シャルロットの前に張られた薄膜の氷が物語っていた。
ゆらり、と揺らめいたそのソフィーの身体は、血を流して倒れている自分の足元へ倒れた。
明らかだった。
最期の止めを食らう自分を助けようと、駆け寄り至近距離から防御の魔力を力いっぱい放った。
……その放出量は、魔術師としての自分の生命維持を、恐らく脅かすくらい…ではなかったのか。]
[振り下ろした直後、空穂がアサシンとの間に飛び込んできた。
咄嗟にその剣を制御しようとするが、残酷にもその剣は彼女を斬りつけた。
絶命という一撃は取り止めたが、その一撃は彼女にとって致命的なもののように見えた]
・・・・・・ 空穂。
[剣が、体を貫く]
[ように、思った]
[目は閉じなかった。これで、命が終わりなのだとしても。それでも、恐怖などない。ただ、彼女を守ることが出来たのなら。
魔力の壁が、わずかに、彼女と剣を隔てている]
[剣は通った。ただ、引き裂こう、とする一撃は、寸でのところで彼女の急所を守り――致命傷に至らなかった]
……シャルロット、無事、ですか?
[息もできなかったが、シャルロットの名を呼んだ。
痛む体を引きずり、シャルロットの方へと動く]
空穂、もう終わったんだ。
アサシンはじきに消える。君にはもうどうにも出来ない。
[剣を消し、空穂を受け止める]
もう戦う必要は無い。
沖田、敬一郎。
シャルロットが、消えるのだとしても
私は彼女のマスターです。
……マスターが、サーヴァントの傍にいたい、と。思うことは間違いではないはずです。
[幾分はっきりとした言葉で、告げる]
‐南ブロック→西ブロック‐
[マリア達の家へと到着したキャスターだったが、呼び鈴を押しても誰も出ない。
魔力探知で中を探ってみるも、サーヴァントの気配らしきものはなく、何故か不安になったキャスターはマリアを探し始めた。]
【ダメージなんてまだ全然治っていないはず…一体何処にいったんだ?】
[最初に思い浮かんだ場所は、何故か川原だった。
マリアと何度も待ち合わせた場所…もしかしたら、ソフィーが再び治療を頼む為に自分を探しに来たのかもしれない。
だが、そこにマリアの姿はなく、代わりにあった物は…。]
サーヴァントの戦闘の気配…?
[朦朧とした意識の中、瞼の裏に浮かび上がる風景があった。
それは沖田敬一郎の夢……搾取され続けた大地の皹]
(あの、爛れた大地が……現実のものとなるのならば……
私の願いは……人類の誕生は一体……何だったというのでしょう。)
[朦朧とした意識が掠れてゆく……もうすぐ、私は恐らく消滅する。
マスターの声が、自分の名を呼ぶ声が、遠くから聞こえたような気がした。]
(さようなら……うつほ……)
[全身で魔力を練る。否、魔力など既に尽きていた。残った一枚の紙片から、魔力を吸収し、シャルロットに触れる]
Priere ....de l'eau.
[癒す。それはわずかにシャルロットの傷を癒したにすぎない。
自分は、守ることが出来なかった。彼女はもうすぐ消えてしまう。
シャルロットを失うことが、心の中へと深く突き刺さり、涙となって現れる。
失うことへの寂しさと、守れなかったことの悔しさと、傷ついた姿を目にした痛みが、心を抉って行く]
・・・・・・
[意識を失った空穂をそっと抱え上げ]
空穂はこちらで病院に連れて行く。
この世界が滅びる瞬間まで立ち会ってもらうつもりだ。
アサシン、君はもう長くは無いようだ。
消えるまでの時間をゆっくり味わえ。
[アサシンが死ぬ事で、聖杯は本格的に動き始める。
教会は戦場に使いすぎた。聖杯を確保する事も含めて拠点を移動する必要がある。
空穂を抱えたまま、アサシンの前から立ち去った]
‐西ブロック・教会‐
[気配に向かって全力で走る。
迅く、更に迅く…そう思ってもそれ以上速度が上がらない体が恨めしい。]
【くそっ!】
[悪い予感が消えない、むしろ近づく程にそれは確信へと変わる。
きっとそこには、自分が見たくない光景があるのだと…。]
マリアちゃん!
[目の前に広がる、無残に破壊された廃墟。
そしてそこに横たわるのは、どう見ても彼女だった。]
[血塗れのマリアに駆け寄るが、そこでキャスターは言葉を失った。
いまほど、自分の賢者としての知識を憎んだ事はない。
なぜ分かってしまうのだろう、"もう助からない"と言うことが。
愚かでもいい、目の前のマリアを助ける為に全力で治癒をかけ続けたい。
だがそれも全て無駄と悟ってしまっている自分が酷く嫌になる。]
マリアちゃん…。
[キャスターは彼女を静かに抱き寄せ、治癒をかけた。
助からなくてもいい、言葉ぐらいは最後に喋られるようにと。]
[意識が遠のいていくのが判った。
真っ白になってゆく…そう感じていた刹那、身体が軽く揺れ暖かいものに触れる。
左腕がもげた場所から溢れる血のせいか…そう思ったが、遠くに聞こえてきた声は、ヴァイナのものだった。
柔らかな光に包まれ、薄っすらと目を開ける。靄がかかったような霞む視界の中、ぼやけて魔法使いの心配そうな顔が見えた。]
[マリアの目が開く、それもこれが最後だろう。
もう魔力など残っていない、全て使ってもこの程度だ。
なにが魔法使いだ…と心の中で吐き捨てる。]
気が付いた?
なんでこんな無茶するかなぁ…まったく。
[そう言ってキャスターは、マリアの顔に付着していた血を拭った。]
……ヴァイナ、さん?
[最期までこの人は……温かかった。そう思った。]
貴方と戦うことにならないように……
負けて、きましたの。
[とうに全身の感覚など無かった。
僅かに、唇を動かし、彼女は微笑んだ つもりだった。]
……そっか。
[静かに頷く。
俺だってマリアと戦いたくなんてなかった。
だが、これは…。]
俺だってマリアちゃんと戦うのは嫌と思ってたよ。
でもさ…俺、マリアちゃんの今の姿見てるほうが、よっぽど辛いんだけどなぁ…。
[そう言って、キャスターは哀しげに笑った。]
それに、マリアちゃんにだって叶えたい願い…あったんだろ?
じょう、だん、ですわ。
[そう言って、再び、微笑む。己の唇が動く事に、驚愕していた。]
(この暖かさは治癒の魔法だろうか。)
[ぼんやりとした頭でそう、考えていた。
シャルロットにとって殿方はいつも、どこか信用できなかった。
けれど、キャスターは違った。
明確な敵なのに、全く敵ではなかった。
同盟を組む、という、それだけの言葉を信じあい、いつも手をガッチリと握りあっていた。]
[シャルロットは多くの男性に慕われながらも、人を愛することを知らなかった。
心に芽生える、不思議な感情を、それまで彼女は知らなかった。]
本当…は、勝ち残り…たかった。
でも、これで…いいので…すわ。
ヴァイナさ…ん。
ありがと……
まったく、酷い冗談だなぁ。
[呆れたように笑う。]
……ねぇ、マリアちゃん。
平和を聖杯に願う…っていってたよね。
[キャスターはマリアの頬をなでて、ゆっくりと喋る。]
平和は間違った願いじゃないと思う。
むしろ誰もが思っている、正しい願いだと思う。
でもさ…それって他人が与えるものじゃないと思うんだ。
願って、長い間願い続けて、それでやっと手が届くものだと思う。
突然他人から与えられた物なんて、どれだけそれが大切なんかわからないだろ?
だから、…本当に尊い願いだからこそ…聖杯なんて物に願ったらいけないんだ。
……そう、です…わね。
[まるで子供を諭すように話すキャスターの口調に、緩く目を細めた。
それは、意を反さない、印。]
過ちは起きる。
でも、それを…正す事も…出来る…の、ですものね…
[こうしている今も、ソフィーからの魔力供給は続いている。
怪我をしているから尚、マスターから奪う魔力量は相当なものだ。
先ほど彼女の魔力が枯渇した事を、シャルロットは知っていた。
これ以上自分が、留まっている訳にはいかない。]
お願いが…ありますの。
私を、一思いに。
貴方の手で…楽に、させて…下さい。
[微笑むシャルロットの瞳から、一筋の光が零れ落ちる。]
…あーあ、本当に酷いなぁ、マリアちゃんは。
俺って、女の人の頼みって断れないのに。
[そう言って、キャスターは自分の手を強く握った。
皮が破れ、そこから血が滴り落ちる。
無理矢理…笑顔を作る。
作れているかなんてわからないが、出来ていると思おう。
ゆっくりと…手から零れ落ちる血が刃と形を変えた。]
……俺に女を殺させた責任、いつか取ってもらうからね?
[最後にそう語りかけると、キャスターはマリアの体の中心を貫いた。]
[マリアの姿が音もなく消え去る。
最後の微笑みの時、彼女は何を思っていたのだろうか。]
…ったく、こんな辛いならさー。
[静かにキャスターは立ち上がり空を見上げる。
視界が何となくぼやけるのは気のせいだろう。]
軽く振られる方が、よっぽど楽だっつーんだよ。
[いつもの口調で、誰に向けているでもない呟きを口にする。]
……。
[どれほどそうして居ただろうか。
紅く染まっていた筈の空は、とっくに星空へと変わっていた。
その夜空に…彼女の"翼"を思い出しながら、キャスターは*その場を後にした*]
[混濁した意識の中]
[わずかに繋がっていたシャルロットとのラインが途切れる]
(シャルロット……逝ってしまったのですね。貴女が夢見た平和が、いつかこの世界を覆うことを、その座から、見守っていてください。
人はそれほど愚かではない。私はやはり、そう信じたい――)
[意識は、やがて再び闇へともぐる。最後の魔力の雫が、シャルロットへ渡ることなく、*零れ落ちた*]
[急速に、傷が治り始める。]
…ッ?
これは、なんだ?
いきなり…
[…宝具により、受けた傷。
その効果が、治療不能に繋がっていたのなら。
それがなくなったということは、つまり。]
…そういうこと、かもな。
…。
[押し黙る。]
…っふ。
殺せていなかったんだな、「彼」は、やっぱり。
詰めが甘いんだ。
全く…。
お前を差し置いて彼女を殺した奴も、殺せないぜ。
これじゃあな。
さー、過去を見てもしょうがない。
次だ。
[さっさと、治療を進行させる。
彼女は死んだか、少なくとも力を失ったのだろう。
それには、「彼」による攻撃も影響したはずだ。
挙句こちらもその影響で敗北なんてのは、あまりに情けない。]
彼女に偉そうなこと言ってたろ、お前。
*お前は負けるなよ。*
[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11] [12] [13] [14] [15] [16] [17] [メモ/メモ履歴] / 発言欄へ
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 7日目 8日目 エピローグ 終了 / 最新