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村は数十年来の大事件に騒然としていた。
夜な夜な人を襲うという人狼が、人間の振りをしてこの村にも潜んでいるという噂が流れ始めたからだ。
そして今日、村にいた全ての人々が集会場に集められた……。
牧童 トビー が参加しました。
―― Mundane/Catedral Ω ――
天突き聳える聖堂群
セピアの雲が流れゆく
21世紀であれば、サグラダ・ファミリアの外観や炭鉱男達が洞穴の中に手慰みとして鑿で作ったようなものの中に見る事が出来得る
複雑で、一種のグロテクスささえ感じさせる彫刻
無数の聖と慈悲に満ちた偶像が植物の表面に
長い歴史の間に流された血を鎮めるものが如くに彫られている
全ては蛍色
黄緑色と錆びた緑色の色合い
目に優しく 陰影は濃く 神聖さを演出している
カテドラル・オメガ
その大聖堂は身なり汚らしい高僧が真言を唱え
小鳥が囀るように聖歌隊が歌を謳う聖堂群を抜けた場所に鎮座していた
神、おわしめさんとする胎内を模ったように
否、神聖は万物に存在すると隠喩するように
AlabasteR poDiuM――雪花石膏の指揮台(アラバスターポディウム)
白く滑らかに、表面に多種の豊穣の実りが細工され
四方八方へと、折れそうに長い茎が伸び先端に花々を咲ころばせている
白亜の植物の群れに囲まれ、緑の頭髪を振り立たせ、指揮者(コンダクター)は銀色のタクトを振る
雪花石膏の指揮台
それは無数の鳩に別たれ、堂内を飛び交う
双子 ウェンディ が参加しました。
─ 現世<Mundane> / 南部学術区画・電脳街 ─
……えっと、次はおばさんのところで発注してたパーツを受け取って、と。
[いまどき珍しく紙片に書き付けられたメモを片手にジャンク屋ひしめく電気街を歩む少女が一人]
[年のころは、十を少し超えた程。肩には酷くオールドタイプでコミカルなフォルムのAIが乗っかっている]
[ふい、と遠くにそびえる聖堂を見遣り、独り言]
早く戻らないとお仕事から帰ってきちゃうね。急がなきゃ。
道案内よろしくね、ルース。
[肩のAIをぽんと叩き、歩調をいささか早めて「師匠」からの頼まれ物を片付けていく]
旅芸人 ドリス が参加しました。
[様々な光渦巻く空間]
[輝いて見えるのは、引き立てる色彩に満たされているから]
―― 電脳世界<Utopia>/Closed・魔窟 ――
[グルル]
[低い唸り声をあげる頭の一つを黒の手が撫でる]
《ソウ、イイ子ダ。ケルベロス》
[三つ首の番犬から離れた手―――漆黒に包まれた腕に光が走る]
[魔方陣を描くのは血ではなく、砂粒の如き0と1]
[闇に満たされた空間に、もう一つの影が生まれる]
[影を照らす光――人の手による魔や獣のデータ――を引き換えに]
行クゾ
[ライオンの頭と山羊の胴体、蛇の尻尾を持つ魔獣に跨り]
[目指すは*狩り場*]
雑貨屋 レベッカ が参加しました。
―現世<Mundane> / 火星・ドーム―
[チカリと何かが明滅したよう。]
[料理する手を止め、レベッカは意識を其方に向ける。]
[一通のメールの表示。後ろを振り返った。]
坊ちゃんへの手紙のようです。
危険なものはありませんが、わたくしが開封いたしましょうか?
それとも――
――差出人。先日の抽選所ですね。
あらあら、坊ちゃま、手紙は逃げませんよ
[言うなり、レベッカの元から、白い視覚効果を持った開封していないメールが奪われる。]
[それについて文句一つ言うことなく、彼女は笑って、少年の行動を*待った。*]
―― 電脳世界<Utopia>/Public・MMO ――
[黒とキマイラが現れたのはゲーム空間の一つ]
[極彩色のテクスチャが貼られたモンスターが行き交う世界]
[黒目ばかりの瞳孔が開く]
目ボシイ物ハ、増エテイナイナ。
[キマイラに跨る姿も、その世界では仮初めの一部]
[テクスチャが張り替え、データの数値を組み替えただけの変化]
[魔窟に溜め込まれたデータに加えるに値しない]
Underガ一番ダナ。行ケ。
[キュルリと瞳孔を絞り、キマイラの首を叩く]
[黒の手に伝わる数値を触感に置き換えれば、しなやかが近い]
[幾つものデータから、黒の召喚を介し生まれ出でる魔獣]
[だがそれはより本物であるコトを目指し続ける、偽りの獣]
「おい何だあれ! レアか?」
「わっかんねーよ」
「んなもん殺りゃわかんだろ」
[動き出した魔獣を見つけ、数人のチームが襲い掛かる]
[キマイラの背に乗る黒が人間だろうと構いはしない]
[Underにある死を遊ぶゲームより手軽な鬱憤晴らし]
人間ハ狩リノ対象デハナイガ、
[キマイラが大きな顎を開ける]
鋭いライオンの牙の奥、吐き出された火炎がチームを包む]
狩ルナト命令ヲ受ケテイナイ。
[火花の如くきらきらと無数のクラスタが散り―――灰燼に帰す]
[黒の唇が薄く開き、漆赤の裂け目が笑みを象った]
―― 現実世界<Mundane>/
東部・カテドラル・オメガ<Catedral Ω> ――
[古びた、緑とも黄色ともつかぬ色合いをしたパイプが一斉に音を鳴らす。
振り上げるタクトは銀色。
疾る瞬間、堂内に音が響いた――そして、電脳世界にも。
Programされた舞台のトレース。
見下ろす眸は切れ長。
目尻に向かい、やや吊りあがる。
俯き加減、影となる相貌。陰影の中、世を嘲ったが如くに双眸が細められ、笑みを――音楽に身を浸らせ一体となった愉悦を浮かべていた。]
[岩窟をモチーフにした、巨大なる大聖堂。
薄暗く、琥珀色の太陽光。
生まれる音楽は透明度を増し、堂内を電脳デバイスで透かし見れば、冷たい雨が降り注ぐ。
綺羅綺羅と宝石のように。
ガァネット、アメジスト、サファイア、トパーズ、猫目石のように一筋の中色合いを変える雨も在る。
全ては幻想。
光の魔術でもなく、唯、視覚素子を楽しませるだけの仕掛け<PGM>に過ぎない。
神を讃える曲は、
様々に謳い狂うAI達の美しさは、
確かであれど。]
[完全破壊されたゲームキャラデータにアラームが鳴る]
アレハ、モウイラナイ。行ケ。
[集まってくるセキュリティポリスを振り切りキマイラが駆ける]
[余波で崩れているクラスタへと]
[曲ごとに代わりゆく場景。
夢のような景色。
黄金の飛沫を跳ねさせて駿馬一頭。
多重聖歌を奏でる神の座に居ます歌謳いはKether's Angel。
清い乙女は紅いカミ。
完璧たる容姿を保ち、妊婦が如く膝を折り水辺で遊ぶ。
黒きカミ湛えた女は嘗て在りし日の聖母。
讃えられ、生まれいずる神の名は。]
[残されたセキュリティポリス達は裂け目を修復し、帰って行く]
[死すら玩具の一つである現代、この程度の破壊など珍しくもない]
[逆に言えば収穫も追撃も浅い――それがPublicに対する認識]
モット深ク。潜レ。
[半ば電気信号と化して電脳の海を渡る]
[Underへの入り口へ向かう途中、新たなデータを得る為の巡廻]
[その途中、音声として耳が捉えた漣は―――]
[手紙という名の賞品が届いた時より後にして、時は今現在、]
― 現実世界<Mundane> / 北部・シャトル発着場―
[シャトルから降りてくる"主"をレベッカは振り仰いだ。]
[差し出す手は、重ねられる。]
地上ですね。
――本当に良かったのですか? どなたにもお知らせにならず。
「良い」
[地に降り立つ主は、答えるとすぐに手を離す。]
[ゲートの手続きを終え、レベッカは少年を招いた。]
[外(遠く)には塔が見える。]
[北部の中でも中央に近い此処は、利便性に富んでいるのだと対外的なパンフレットには書かれていた。]
「暫くは。……言った通りだ」
[囁くような少年の声に、レベッカは目を彼へと向ける。]
[彼はレベッカを見てはいなかった。]
かしこまりました。
――良くお似合いです。
[高級な素材の服ではなく、安価で手に入る服を身につけた少年に、思い出したようにレベッカは告げた。]
行きましょう、ホテルはあの大きな塔の近くです。
荷物を置いてから、どこかへ移動しましょう。
どちらに行きたいか、ご希望は?
[二人ともが一般の市民であるような様子を作る。]
[彼方<Utopia>を使い、呼び出した車が届くのは*もう暫く先の事。*]
―― 場面は代わり
現実世界/カテドラル・オメガ x 控え室 ――
[演奏を終えたトビーは、長い廊下を歩き控え室に戻ると、何もない場所に身を投げ出した。瞬時にソファが迫り出し、膨らみ、心地良く体を包み込む。
離れる直前まで足首を包み込んでいたのは、毛足の長い赤い絨毯。電脳世界に繋がるものが、ない場所。死の如き沈黙。]
…ミネラルウォーターを入れてくれないか。
『指揮者<コンダクター>、次の予定まであと5時間11分45秒です。移動準備をしなければいけません。』
修道女 ステラ が参加しました。
――UTOPIA Public-Space/STREET――
[時計の針の端で跪く男の頭上に、白い蛍光色の手が掲げられる。
蛍光的な光を放つ白いテクスチャをすっぽりと覆う、黒いテクスチャの下
薄っすらと半眼、軽く目は瞑られている。
白い唇から流れる言葉は、既に真意を忘れ去られたOld-Testament。
跪いた男も、聖句の意味など知らねど
静かな韻に身を浸し、次第に眉間の皺を和らげてゆく。
暫し後。
跪いていた男は亡羊と人ごみに消えて行った。]
――Mundane East-Side/STREET――
[時同じくして、街角に佇むホログラム映像。
両手をそっと胸の前で*組み合わせた。*]
[その声は、補佐AI。
普段、通常時にはその姿を沈み込ませている為に、視れないAI――Blue in Blue 凍り漬けの司書。
「弟子」たるウェンディにも、殆ど顔を合わせる事はない。
今、トビーの目の前にはその補佐AIの姿が浮かび、視えている。巨大な何かを蒼黒(そうこく)の布で巻かれている姿、覆い隠され中を視る事はあたわず。蒼黒の布で囲まれた何かを中央とし、四方、下部には、氷の破片が、相似、同型の形で浮かんでいる。]
アハハ。
[膝に肘を置き、両手を顔に当てる。]
――そうだった。疲れるねェ。マトモナ人間の振りというのは。
[哂笑と、三日月の形が手の間から。]
ここが。
――始まりの地。
[独白。声は静かで低く。]
もう誰も残ってはいない。
樹<シンクタンク>も、枝<メンバー>も。
その実は、もいで、食べてしまった。
甘くて…美味しくて、
その為に幾つもの十字架を背負う事になった。
後悔はしていない。
そう言うのは嘘だけれど。
文学少女 セシリア が参加しました。
── 現世<Mundane> / ???・教団本部(第10Satyam) ──
[通称サティアン。
第1〜第11までの小型の黒繭(ブラックコクーン)が円形に連なる教団施設のうち、第10サティアンの内部は、教祖の意向により、旧世界の《キッチン》のシステムが再現されている。
黒色の金属骨が露出し、ホログラムのシールドすらない──貧しいと言って良いほどに殺風景なドーム天井の内側には、宗旨に基づき、旧式のシステムを使用して食事の準備をする、女性信者たちの穏やかなざわめき。]
[灯りの少ない暗い室内。
旧式の燃焼装置の上の旧式の大型寸胴鍋。
下層民に施すために煮込んでる《それ》──の表面に浮かんだの灰汁を丁寧に除いてから、セシリアは完璧な笑みを浮かべて信者たちの話に相づちを打った。]
(黒000000 白FFFFFF 赤FF0000。
葬列と婚礼の列は等しく)
[この──新興カルト教団では、誰かがただしき《死》を迎えた晴れの日──葬儀と同一日に、婚礼が行われる事になっていた。]
(真実なる──魂と肉体を捧げよ──)
[今、信者の脳には直接に《意思》を伝える声と、この教団独自のエキゾチカルな宗教音楽が響き。そして、先刻行われていた儀式のヴィジョンが網膜に再生されているはずだった。
信者の瞳を正面から優しく見つめるセシリアの瞳はOrange Fluorescent。人ならざる蛍光オレンジに輝き、その信者の意識を染め上げようとしていた。]
(──ただしき、死を──)
貴女も、そろそろ義体を解除しなくては、ね。
自然な本来の人間の姿に近づく事も、こわくはなくなって来たでしょう?
[それは、囁き。]
[セシリアが、信者に一歩近づきさらに視線を深く合わせようとしたその時、]
[第1サティアン(教団本部)にVIPレベルの来訪者を告げる
[Sign]
が届いた──。]
こんな時間にお客様が?
[セシリアは、淡いオーキッドカラーに透けて輝く睫毛を揺らし、まばたきをした。]
申し訳ないのだけど、このシチューの火を見ていてもらってもいいかしら。後は、弱火で煮込んで灰汁を取るだけだから。
[身体のラインが明瞭に分かるほどぴったりとフィットした白いボディスーツの上から、褪せた緋色のマントを纏ったセシリアは、オーキッドカラーの髪をふわりと揺らし、不測の来訪者の元へ向かった。
信者と向かい合う時、鮮明だった人工的な蛍光オレンジの瞳は、今は一般的な装飾を纏わない種類の人間の様な落ち着いたオーキッドカラーd9aacdに戻っている。]
[小さな羽音のような音がかすかに響き、セシリアのオーキッドアイd9aacd─目元をふくむ顔の上部を、影の様なシールドが覆った。
ドーム上の通路でセシリアとすれ違う信者たちにとってはそれが自然の光景であるのか、彼女が視界を覆っている事を気にした様子もなく、丁寧な挨拶を*送るのだった*。]
── 現世<Mundane> / ???・教団(第10→第1Satyam) ──
―― 現実世界/カテドラル・オメガ x 控え室 ――
[トビーの視覚素子を通して見える光景。
赤い絨毯と重厚で最低限の家具。吊り下がる光源。それらを背景に、銀河のように粒子の白い渦をえがいていたものが凝結し、模られる。
――Virtual Girl。
うねる様に髪は持ち上がり、ゆらゆらと揺らめきながら腰まで降りてゆく。未だ、少女の面影を残している顔立ちだった。]
――like a Sexual Reproduction.
Luther・R・Blot管轄下のNewBornかい。
[双眸を細めると目尻が吊りあがる形になる。
ふてぶてしそうに笑み、両腕を組んだ。]
のんだくれ ケネス が参加しました。
――???/???――
[曖昧な記憶。模糊とした風景]
[何かを終わらせた感覚と、何かを失った感覚だけが、手の中に残っていた。一体それは何だったのか、自問を重ねても答えは見つからないままに男は立ち尽くす。白い霧が渦を巻き、視界を奪った。最早どこに行くあてもない。それだけは分かっていた。
やがて冷たい女の声が響き、茫洋とした空を彼は見上げた]
『――貴方なら、いつかは見つけ出すと考えていたけれど。
でも、それが最後の時になるなんて思ってもいなかった。
何故、あんな事をしたの。どうして?』
[答えるべき言葉など見つからなかった。
何が自分をそうさせたのか、何を求めての事だったのか。全てを語ったところで、互いの認識は違いすぎていた。口を閉ざした彼の周囲を風の音だけが取り囲む。それからどれだけの時間が経ったのか――いつしか、彼の意識は溶けるように消えていった]
―― 現実世界/カテドラル・オメガ x 控え室 ――
Works of Fractale's Goddness.――and, A.M.
Blotへは既に依頼された品を送った筈だが――、NewBorn――Girl, 恐らくはBlotのエージェント。
[毛深い赤い絨毯は、全ての音を奪う。
背を向けて近くの机まで歩くと、緻密な細工が施されたパイプを持ち上げた。口に運ぶと、煙のホログラムが上がった。]
「私はエージェントってところで合ってるわ。」
[Virtual Girlは肩を竦める動作。尤も、現在はトビーの電脳の片隅に偏在しているのだが。]
「あなたにはBlotからの伝言を持ってきたの。単なる演奏の賞賛と依頼よ、指揮者<コンダクター>」
[蝶々が羽ばたき、トビーの右肩に止まる。勿論、視覚素子を通して見ればの話だ。蝶々を一瞥し、左手で触ると、ほろほろと解けてゆくようにその姿は消え、封じられていた内容がトビー=指揮者<コンダクター>に伝わる。]
――Closed/"Nest" (専用領域/“ねぐら”) ――
[没入(ダイヴ)した状態での眠りは快適とは言い難かった。殊に、丸々二十四時間を越える調査(リサーチ)の後とあっては。電脳上に存在しない筈のこめかみが軋むような音を立て、彼は思わず顔をしかめた]
――大丈夫ですか、マスター? ひどい顔、してますけど。
ああ……いや。大丈夫じゃない。さっさと切断(アウトロン)したい。
連絡はあったか?
[虚空から姿を現したのは長い金髪の少女――"Scavengers' Nest"の維持管理を担う人格AIだった。大量のデータフォルダが散乱する室内を見回し、彼女は小さくため息をついた]
――届いてますよ。ほら。
[そっけない口ぶりで答えた少女の指先が、中空で矩形を描く。四角く切り取られた空間が窓となり、現実世界(マンデイン)の情景を映し出した。部屋の乱雑さは電脳空間と同等か、それ以上。しかし彼の視線は気に留めた様子もなく、机の上に置かれた小型端末を見つめた]
――もう暗証鍵の確認も済ませて、端末に転送して、ついでに回線からも物理遮断してあります。
……そうか。悪いな、"Celia"。
[何気なく返された一言だったが、AIの少女はきっと眦を上げて男を睨んだ。金色の髪が揺れて落ち着くまでの数瞬の間に、何百バイトという文句のフレーズが迸る]
――本当にそう思うんだったら、せめてあの部屋だけでも片付けて下さい。放っておくといつまた不具合が発生するか。いくら防塵で耐熱の外装といったって、現在の環境は劣悪すぎます。もし今度カビでも繁殖したらわたし、ストライキを起こしますからね。ここはわたしが片付けますから、マスターは早く――
わかったわかった、今度やるから。
[口を挟む隙もない苦情にどうにか割り込み、退出動作を起動させた。足元から次第に薄れだす視覚効果]
……というより、もうじきに此処も引き払う事になるだろう。
"Nest"は当分、開店休業だな。
――え、そうなんですか? だって、わたしがいるのに――
ま、それは後々説明するさ。やって貰う事があるんだよ。
送られてきた内容次第でもあるがね。
[ぱちぱちと目ばたいた"Celia"の不思議そうな表情を最後に、男は現実世界へと*帰還していった*]
―― 現実世界/カテドラル・オメガ x 控え室 ――
時間までには、そちらに手配する。
今から、また別の人物に遇わなければならないのでね。
[振り返り、両手で机の角を持ち、足を伸ばす。緩い「ω」のように歪めた口元は滑稽で、パイプが生えている。
パイプから立ち上るホログラムの煙の中、視覚素子がなければ視えない音符がスタッカートを刻みつ、Virtual Girlの元へ。]
――帰りたまえ。
引渡し場所は、Blotが居住するメガロポリスでだ。
[Virtual Girlを片隅から追い出すと、目の前の少女の姿も来た時と逆に映像を再生するように、消えてゆく。]
『指揮者<コンダクター>、次の予定まであと4時間59分21秒です。』
――ああ。
[後ろ手に右手を回し、白い手紙の封筒を取り上げると光源を透かし見るように翳し、*双眸を細めた。*]
酒場の看板娘 ローズマリー が参加しました。
── 現世<Mundane> / 中央部周辺・とある研究室 ──
[HMDを装着した状態で、マウスとキーボードを使いながら”Bahamūt”のデザインとステータスを変更している。本来なら研究室では無いが、今のローズにとってはあまり関係の無い事]
”Bahamūt”メンテナンス終了っと。じゃあね。
[マウスで”save”を選択し、画面を終了する。HMDを外し、無意識に手で髪をとかす]
”Bahamūt”は普段戦闘用じゃないから、使えるか分からないけど。
[机の上には白い封筒が置いてある]
・・・こういう挑発的なのって、嫌いだな。
[そんな気持ちとは反する”予感”。だからこそ”Bahamūt”もメンテナンスしたし、準備は整えている。
きっとこれから何かが起こる。それはローズにとって興味深いゲームの一種なのかもしれない。
大きくため息を付いた後、研究室備え付けのコーヒーメーカーに、氷をいっぱい入れたマグカップを押し込む]
いい加減、アイスが作れるのが欲しいんだけどなあ。
[熱された黒い液体が透明の固体を溶かすように注がれ、カラン、という*乾いた音を立てた*]
藪医者 ビンセント が参加しました。
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――闇の底に胎動が響く。
それはなにかが目を醒ます予兆なのか、亡者の呪詛の呻きなのか。
幹線となるデータトラフィックから外れた暗闇の辺縁に、音なき響が存在している。
それは、遠い水脈の響だ。
波濤となって何処かへと押し寄せてゆく膨大なdataの質量は、基調低音となって闇の中で知覚された。
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∠ :::::::::::::::::::::ヽ
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音なき響きは突如生じた羽音に掻き消された。
虚空に染み出た暗黒が次第に輪郭を形作り、漆黒の鳥となって羽ばたく。次から次へと湧き出る鴉は、呪わしい悪夢を具現化するかの如く黒雲となって群がった。
``ゞ y"  ̄ ̄ ''―====='"
__/∠
「カァア―――」
空を覆う墨色の叢がりは在るべき場所を見いだすと、一際高い啼き声と共に基準面となるグリッドへと降り立った。ザワザワと蠢く凶兆を告げる鳥の影は蝟集して、いつしか長身のヒトガタを形作ってゆく。
ヒトガタの闇の頭部に赤い光が二つ点り、三日月型の裂け目が笑みの形に開かれた。
「――フヒャ。
ゥヒャヒャヒャヒャヒャ!!」
哄笑が漏れ出す。
歪な笑い声とともに波打つ体の輪郭は、時折羽音を立てながらも次第に定まっていった。
《バウン――》
四つのスポットライトが光の柱となって闇の中に聳え立ち、男の姿を煌々と照らし出す。
《ブゥウーン、パチッ!》
《パチ パチッ――》
息を潜めていた巨人が身じろぎするように、いくつもの作動音を立てながら、暗がりに沈んでいた施設に次々と光が点ってゆく。
「It's Shooooow time――!!」
男のその声を合図として、一斉に音楽が鳴り響いた。
.. . .. . .. ... . . .. . . .. . .. ... .. . . .. ..
... ... ..... .. .... ... ....... .. ..... ... ..... ...
― 電脳世界<Utopia>/Under:遊園地 - NL ―
サァサ、お立ち会い。
聞いてびっくり見てとっぷり。
誰ァれも見たことがないような――絢爛豪華な夢芝居。
おぼっちゃんもおじょうちゃんも。お兄ちゃんもおねいちゃんも。レディースエンドジェントルメンっつって、おいちゃんもおばちゃんも。おじいもおばあもみぃんなまとめて楽しめちゃう。
ゆめかうつつかわからぬままに――心に焼きついて離れない。
そォんな刺激的な舞台が見れるのはギニョール座。
ここだけだよォう――。
[怪しげな雰囲気を漂わせる抑揚たっぷりの口上を述べているのは、メガネをかけたギョロ目の男だ。
山高帽にタイトなジャケット。ダボダボのズボンにズタ靴。口ひげをたくわえた姿は、いにしえの喜劇王のスタイルを思わせた。だが、インバネスコートを羽織った大柄なシルエットは魔術師のようでもあり、不気味な気配を纏わせている。
見る者を楽しませる外面にしようとして失敗したような、チグハグな歪さがそこにはあった。
無論、電脳世界で一般人として活動したいのであれば、このような扮装は必要ない。この役目のために誂えたアバターではあったのだろう。]
[男の後方では、一つの胴体を共有し繋がった双子の老婆が、大きなアコーディオンを弾いている。
二人の頭髪は混じりけのない白髪で、渇き果て無機質的ですらある指は、石柱に絡んだ荊のように楽器に食いこんでいた。]
おんやァ――
[男は眉をあげた。遊園地の小劇場前で客寄せのための演奏を行う彼らの姿を、年若い女たちが遠巻きに眺め、ヒソヒソと囁いている。]
やァや、お嬢さんたち。どうぞ、ご覧じろゥ?
[男は、とびっきりの笑顔と本人が考えている表情を向ける。
娘たちの表情が固まる。]
ごろうじろゥ?
[割引チケットを差しだそうと、男はにじり寄る。
娘たちはじりじりと後ずさった。]
[男は、きっと彼女たちは気持ちの踏ん切りがついていないのだと考える。
歓迎の感情を精一杯に表現するため、両手をいっぱいに開く。ヴワサッ!とインバネスコートが大きく広がりはためく。]
ごォろぉおぉうじィろぉおおぉおぉう!!!
[その途端、ギャァアァァアとかわいげの欠片も感じられない必死の叫び声を上げながら、娘たちは駆け去っていった。]
[取り残された男は眉をハの字に曲げ、山高帽に手をやる。
振り返れば、双子の老婆が青白くひび割れた相貌をくしゃくしゃと歪めながら、笑みとも恫喝とも判断のつかない表情を形作っていた。]
やれやァれ。――まったく。
もうちょっと愛想のいい顔をしてくれないかァい?
[せめてもう少しフレンドリーな外見のアバターをとの二人への要請は今や懇願にすらなっていたが、二人が応じてくれそうな気配は微塵も感じられない。
彼女たち曰く、自分たちはAIとしてのアイデンティティーを保つ上でアンダーではこのかたちが必要なのだということだった。
男は、一旦その日の客寄せを中断することにし、*接続を切った*。]
隠者 モーガン が参加しました。
―― 電脳世界<Utopia>/Closed Morgan's space ――
[聳え立つ大木。まるで天と地を繋ぐ理のような。]
やれやれ、馬鹿な話だ。
[天地を貫く樹の陰で、ぼんやりと中空を眺めている。]
ふん…ならば、私も対価を要求しなければなるまい。
[*無表情*]
私に真実の終焉を。
学生 メイ が参加しました。
――現世<Mundane> /下層・或薄暗い部屋――
[何かの機械音が響き、外からは僅かな人の声。部屋の住人は中央の椅子へ座っていて、両手だけが時折動く。
その手が、頭部に装着した装置へと伸び、彼女の意識は此方へと戻ってくる]
うっはー。
疲れた! あそこのセキュリティさえはずせればなぁ。新しい飯の種にもなるんだけど。
[ま、いっか。呟いて部屋を出ると、階段を下りる。降りた場所には所狭しと廃機材が散らばっていて、埋もれるように座る一人の男]
ん? 何?
[男から受け取った一枚のフィルム。見れば、虹彩による認証が行われ、文字が浮かんだ]
[それを見る目つきが次第に弧を描き]
これは、罠?
差出人もわからないし。
でも、行ってみる価値はありそ。
そういうことで、ちょーっと上に行って来るけど、何かあったらあっちで呼びかけてよ。
それと。
移動用のやつ、ある? さすがにあれは重いんだわ。
[男が差し出したゴーグルを試しに覗き、具合を確かめてから首へとかける]
ありがと。
[礼を告げて、外へと出ると、遠くに見える上層を見つめて、地を蹴った]
準備だけはして行かなくっちゃね。備えあれば憂いなし、しすぎて困る用心はないもの。
未亡人 オードリー が参加しました。
―― 現実世界/ ...... 大学 記念講堂 ――
[落成の記念式典 ...
スピーチを述べる初老の男 ...
退屈そうな聴衆 ...]
『...... 様、ありがとうございました。それでは、次にまた本学の素晴らしい卒業生を紹介できることを私は誇りに思います。
ミズ・ハックマンは、...... 年に本学の経済学部を最優等で卒業され、政府で金融政策の企画立案に携わってこられました。
この間、...... 大学の経営修士号を取得され、....... 法制の整備作業では、中心的な役割を果たしておられます。
退官後、民間へ転進されてから、BANK で輝かしい業績をあげられ、現在、同社で最年少のマネージング・ディレクターであられます。また、本堂の建設にあたり、多額の寄付をいただきました。
ぜひ、本学の新たなあゆみを前にひとこと賜りたく、ミズ・ハックマン、どうぞよろしくお願いいたします。』
―― 現実世界/ ...... 大学 記念講堂 ――
過分なご紹介に預かりまして、恐縮の極みです。
また、大恩あるこの学舎にこうやって戻ってこられたことをうれしく思います。本学の益々の発展を祈願しております。
そして、何より、前途あるみなさまを前にして、話をさせていただく機会を与えていただいたことは私にとってこのうえない名誉であり、幸せであります。
さて、私が本学に在籍していた頃は、折しも、かの金融大恐慌のときでした。
当時、政府の計画経済はもはや完全に破綻しており、市場では、再び「自由な市場」への待望論が息を吹き返しておりました。
私は、本学で ...... 先生から競争政策について学び、素晴らしい学友達と切磋琢磨するなかで、何としてもあの閉塞的な状況を打破したいという想いを抱き、政府の門を叩くことになったのです。
―― 現実世界/ ...... 大学 記念講堂 ――
そして、政府に身を投じてからは、目を覆うような困難が何度も、何度も、何度も、私を打ちのめそうとしました。
そんな苦しいときに、いつも私を支えてくれたのは、本学での教育であり、本学で得ることができたかけがえのない友人達です。
私が困難に身を屈さず、「自由な市場」を再構築に寄与することができたのは、本学によるところが大きく、感謝の念に堪えません。
また、政府でのひとつの事業を終えて、将来に迷っていたときに私のような素人を BANK に誘ってくれたのも、本学の友人の一人でした。
その結果、今、私は幸いなことに刺激に富んだ充実した日々を送っています。
みなさん、どうぞ、夢を持ち、貪欲に学び、友情を育み、本学で素晴らしい時間を過ごしてください。
あなたがたが社会有為の人物になり、いつかこの世界に貢献するような事業へ一緒に参画できる日が来るのを楽しみにしています。
[万雷の拍手。優艶な笑みを浮かべるオードリーがそこに。]
―― 現実世界/ ...... ホテル レセプション会場 ――
[...... 大学記念講堂の落成式が終わり、別の会場でレセプションが行われていた。オードリーの周りには、人だかりができている。そして、それを遠巻きに眺めながら、眉を顰める者も ...]
『あの女狐のスピーチ聞いたか? 一体、いくら払ったんだろうな。名誉もカネで買える時代か。あ〜、イヤだ、イヤだ。』
『センセイの誰かと寝たんじゃないかね。大体、あいつに友達がいたなんて初耳だよな。』
『あの当時、あいつらがワケのわからない法案をバンバン通したから、今の大法人資本主義時代の憂き目があるんだろが、のんびりしたあの頃が懐かしいよ。』
『おまけに世の中を散々引っ掻き回しといて、責任も取らずにカネの亡者たちに天下りやがって、自分だけがいい目見てやがる ... クソったれ ...』
[ふと、オードリーと目が合う男達 ...
取り繕ったような笑顔で会釈を交わす。]
―― 現実世界/ ...... ホテル レセプション会場 ――
[人々に囲まれるオードリーにそっと近づく人影。
体の向きを変えたオードリーと目が合う。その人影はオードリーに自然に近づくと、耳元でそっと囁いた。]
『...... 会長からです。』
[一瞬、オードリーの身体に緊張が走る。気がつくと手に何か紙片を握らされていた。
その紙片に視線を移し、人影に視線を戻そうとしたとき、既にその姿は * 無かった... *]
―― 現実世界/東部・通り ――
[ウェンディに楽譜を模した伝達を送ると、着替えと準備を行い、通りへと出た。見上げた空は、セピアの陰影。]
─ 現世<Mundane> / 南部学術区域・電脳街 ─
[テンポ良くお遣いを済ませ、小さな公園で一旦荷物を下ろして休憩]
ふう。……これで、全部っと。
後はラボに戻ってごはんの仕度して。
それにしても、これなんなんだろう。
[義眼の視覚素子を操作し、今朝届けられた一通の"手紙"を呼び出す]
差出人はブランク、内容は……意味がわかんない。
S級って言われても今のわたしには手出し出来ない話だし……。
ねえルース、何か知っている?
[肩の上のAIに問いかけるが、返答は"NO"]
[さほど落胆した様子もなく、視点を手紙に戻す]
おばあちゃまの関連データに何かあったと思うんだけど、詳しく読もうとしてもロックがかかってて読めないのよね。
ママは何も教えてくれなかったし、師匠も教えてはくださらないだろうし。
……あれ?
[視覚の右隅にメールを知らせる表示]
[差出人を確認して]
んん、……お遣い追加ね。
えっと、ロイドのパーツ。これは……、ああ。お爺様のお店ね。
[差出人へ了解の意を返信]
[手紙を仕舞うと、ぴょんと飛び跳ねるようにベンチから立ち上がり]
ついでにお爺様にこの手紙のこと聞いてみようかしら。
何かご存知かもしれないわ。
−−現実世界/電波塔−−
[それが完成したのは、遥か前である。
情報という重大なファクターのために、
中央部に建設された、高層の電波塔。]
「今日はやけに、のどが乾く日だなあ。」
[彼は、電波塔で働く警備員の男である。
その仕事は、さして高給の仕事ではない。
しかし、不思議なことに、まるで電波塔に
引き寄せられているかのように、辞めるという
気持ちが起きなかった。今ではベテランである。]
[すっかり勤務している人の顔を覚えている。
技術部の誰それが、来月結婚するらしいとか
総務の誰それが、部長と不倫しているとか。
そんな、くだらない噂話すら彼の耳に入る。]
「あ、お疲れさまでーす。」
[すれ違った男は、無言のまま言ってしまった。
その男は資料管理部のメンバーである。
長年勤めている彼ですら、資料管理部だけは、
未知の領域であった。メンバー全員が
何故だか冴えない雰囲気の連中で、
そもそも誰も必要としない資料の管理なんて、
どう考えてもリストラ寸前の形式職である。
しかし、あの部署から首を切られた人が出ていない。]
「今日は資料管理部の連中、やたら大忙しだな。」
[今日は慌しく、資料管理部の連中が動き回っている。
彼には、それがひどく異様な光景に思えたようだ。
「宇宙樹」だとか「柱」だとか意味のわからない単語。
たまに耳に入る、連中の話し声に、
どうしても首を傾げざるを得なかった。]
「それにしても、本当何かあったのかな?」
[そもそも資料管理部の部屋はメンバー以外
立ち入ることができないのも謎である。
そんなことを考えても、結局彼には
スポットライトが当たることは*ないだろう*。]
―― 現実世界/中央部周辺⇔西部・某所Club ――
[カツリ、コツリと響く音――。
廊下の壁は、歩みと共に、拍動のRythmで奔る矩形波(くけいは)の淡い光。蒼い月光の滴。
護衛と拘束を兼ねる背の高い、しかしスレンダーな男女。ウェーブしたロングヘア、バルーンシルエットのトレンチコート、焦げ茶のストッキング。髪の色と輪郭が彼らの性別を分けており、更に女の方の長い髪は鞭のように撓っていた。
その間に挟まれて、連れられてゆく先は両開きの扉。近づくにつれ自動的に開き、潜った先はプライヴェートルーム。
室内は円形、色はグレイを基調とする。中央には、床から円形の機械が迫り出し、その機械――お椀に載せられた氷菓子のように、少女が氷りついていた。アイスキャンディの中、胸から上だけを出している。]
悪趣味なものだね。
[それらを舐め、齧り、快感を得ている3人の白く蒼い男達。―目の大きい黒い網目のマスクを被っており、脱色されたニットフードのアニマルイアーが頭部に―。それを見て小気味良い心地を覚えている、クラブの主に声をかけた。]
「莫大な金を払っているんだから、お前に文句は言わせないぞ。コンダクター。」
ソレにしか勃たない精神を治療した方が早いが、
―――…最上層市民の考えは理解らんね。
[互いに相手を一瞥すらしない。主の顔は、頭の後ろから前にかけて、両側から鳥の翼の飾りで半ば覆われていた。モナリザのような微笑すら浮かべているが、冷笑と見えなくもない。]
「お前も似たようなものじゃないかね?」
そうかもしれないな。
さて、例の件だ。
「――論理的には可能であっても、これ以上の発展は望めない。」
[男は別室へと歩いてゆき、その後をトビーも続く。]
――――。
[眸だけを、キョロリと動かし後ろを一瞥。
直ぐに、奥の部屋へ視線を戻す。
容姿からは男とも女ともつかぬ主が、指紋、網膜、声紋と....幾つものチェッキングを行い、闇に満ちた扉を開ける。扉前に控えていた、無表情な、真っ白いマーメイド・ライン―体に密着した―のドレスを着た女性が下がってゆく。]
[やがて、]
[闇の中から狂ったような笑い声が聞こえてきた。]
「何度行っても失敗にしかならない。有益な利用をすべきだと考えている。」
[朱鷺色....濃度の高いPinkの髪をした少女が暗闇の中、宙に浮いているように見える。両腕は、黄金色の鎖が巻かれ、彼女を閉じ込めるように、円形で無数、硬質かつ半透明な物質が床からせりあがっている。]
セクサロイドの知能にでも転写するかい?
[少女の頬に手を伸ばしたが、舌でその指に絡み付こうとしたので、僅かな距離をあけて止める。]
それとも慈悲深く、永遠の悦楽を味わわせても良いが――…
[半透明な円が重なり合う壁に触れる。]
実例がある。
此処で止めては今までのものが無駄だな。
未だ試していない方法を、試していないだろう。
[その過程での副産物が目当てである事を述べずに、淡々と必要事項を述べてゆき、話し合う。]
「クスッ、クス。キャハハハハハッ...ケフッ、クスッ。」
[BGMは、*少女の声。*]
─ 現世<Mundane> / 南部電脳街 "戎克" ─
こんにちは、お爺様。ご機嫌いかがかしら?
[屋台へ入ると、そこには存在し得ないほど広い空間]
[情報だけで構成された擬似空間]
[無論、奥へ歩めば数歩で壁に行き当たる]
[暗い暗い空間には、切り分けられた"人体"のパーツが陳列されている]
今日は師匠のお遣いで来たのだけれど、ええと。
[先ほど届けられたリストを読み上げ]
……すぐに用意していただけるかしら?
それと、お爺様に相談したいことがあるの。
今朝こんなものが届いたのだけれど、お爺様は何かご存知ないかしら?
お手紙の内容はわたしには関わりのないことだらけで、送り間違いではないのかとも思うのだけれど……。
[主はしばらく"手紙"に目を遣るが、やがて何を言うこともなく首を横に振り]
……そう。やっぱり送り間違いなのかもしれないわね。
ありがとうお爺様。
[礼を言って"手紙"を閉じる]
[主が奥から出してきた注文の品を受け取った]
―― 現実世界/中央部周辺 ――
≪ウェンディ≫
[唐突に割り込むSignal。]
≪終わったのなら、品物は例の通りに。
――塔に来なさい。≫
[応じる声も聞かずに一方的に話して切れた。]
[主に礼を言い、代価を支払ったところで通信]
……師匠?
[応えを返す前に用件だけ告げると通信は切れてしまい]
例の通りにって、今日は何もないと思ってたからおてつだいの人なんて頼んでないんだけれど……。
ルースに運んでもらうしかないかしら。
……ルース、ごめん。よろしくね。
[肩からAIを下ろし、荷物の運搬を頼むと主に挨拶して店を辞し]
師匠、お仕事終わったのかな?
[東の大聖堂を見遣り呟き、北に聳える塔へ向かった]
─ 現世<Mundane> / 下層・A Junkshop ─
[並べられたパーツは目に入らず、店の奥へと歩いていく。店主らしき男を見つけて手を振った]
やほー。
ちょっと上に行かなきゃいけなくなったんだけど、あれ、ある?
この前頼んどいたやつ。それとチャージ用のタンクと……。
『ほらよ。上に行くならその足のもメンテしといた方がいいんじゃないか?」
このままでいいよ。下手に新しくすると、いざって時に動きが悪かったりするとまずいから。
代金はそっちで落としといて。
[カウンターに置かれた包みを受け取り、後ろ手を振って店から出る]
─ 現世<Mundane> / 中央部・電波塔 ─
[南部電脳街からトラムで約15分]
[メガロポリスの中央に聳える巨大な電波塔の正面ゲートに降り立つ]
で。どこに居られるのかしら?
[ゲートで入館の手続きをして正面ロビーへ]
[そこではた、と立ち止まり]
とりあえず上に昇ってみればいいのかしら。
[そのまま一旦塒まで戻り、ウエストポーチに必要なものをいれる]
足は、オッケーと。ちょっと指の動きが気になってるとこだけど、しゃーないか。
油さしとこ。
[左手の指の隙間に、注射器を使ってオイルをさす。そして二、三度指の動きを確かめてから、次は右も同じように]
よっしゃ。
あっと。こいつも点検しとこ。
[ゴーグルを装着し、腕にマイクロチップを嵌めると、指先にキーボードの形をしたホログラムが浮かび上がる。enterkeyを押すとゴーグルに光が灯った]
感度良好、色数も音も問題なし、と。
ログインは上に行ってからの方がいっかな。
[esckeyを押して終了させると、ゴーグルは額へとずり上げる]
[準備を終えて立ち上がり――下へ行く階段とは別のドアを開ける]
行く前におばちゃんとこの定食食べていこーっと。腹が減っては戦は出来ぬ、なんてね。
[屋根の上を伝い、行きつけだった*食堂へと向かった*]
─ 現世<Mundane> / 下層・中央部─
[下層から上へと行くために何本かあるルートを知ってはいた。今までも数回足を踏み入れたことはあったが、長くても二日しか滞在したことはない。
上層の空気は肌に合わない、と周りにいつも零していた]
あっち行くと色々面倒なんだもんなー。安全ではあるけど。
[正規のルート入り口のある建物を遠目に見る。下層の人間が上に行くには身分を証明するものが必要だといわれて、身分証明書など持たない自分は、二日ほど待ったことがある。
――偽造パスポートを待つ時間だったが]
壁登るのも大変だし、ネ。
[目の前の壁にしか見えない場所をノックすると、穴が空いたように開き男が顔を出した]
[高速エレベータで塔外周部の最上階へ]
[扉が開くと、明るく開けた空間が広がった]
ここに居られるのかしら。
居られたらすぐに見つけられるかと思ったのだけれど。
[しばらくはきょろきょろと周囲を見回している]
[男に現金をいくらか掴ませると、階段を示される]
エスカレーターとか、しない?
いくら足が機械だっても、体力は人間なのにぃ。
でも、しょうがないか。さすがに端のほうにいく気はないもの。
手すり伝って上に上るとか、……傷つけるからだめ、だよね。
[項垂れて、すぐに頭を上げると、元気よく階段を登り始めた]
−−TIPS 1「フォークロア」
[中央部電波塔による放送では、1日の終わりに
その日の放映が終了したことをアナウンスする
映像が流れる。背景は、聳え立つ大木である。
この映像に、老人の姿が映り込んでいる場合が
あると、一部のアンダーグラウンドな
連中の間で噂になっているという。
老人はサンスクリットの刻まれたローブを纏い、
物哀しげな表情でこちらを見ているという。
さらに、老人の映像を見た者は、頭のなかに
電気信号のメッセージが流れてくるとのこと。]
《True end...PASS:REINCARNATION》
[真偽のほどは、不明である。]
[しばらくは背後の気配に気づくこともないままきょろきょろとしていたが]
……やっぱり居られないわね。ルースがいれば場所を教えてくれるのに。
下なのかしら?
[呟き、くるりとエレベータを振り返り]
──────っ!!??
[目の前の緑に、思いっきり悲鳴をあげた]
―― 現実世界/中央部・塔 ――
[13/14才頃の、フェミニンな面持ちとStyleを持ち、ウェンディより背は高い。透けて見えるシルクオーガンディのブラウスを着ている。
頭部には咲き誇る花々と共に、薄い陽の色のヴェール。木の枝と木の根を思わせる模様とエンボスのスラックスの上部、裾になるにつれて、布地ままに。
そのBodyは女性的フォルムから限りなく無性へと近づけたものであるが、それでも何処か線の柔らかさを残している。
切れ長で目尻が吊り気味の双眸で、意地が悪そうではあるが、にこやかな笑みを浮かべている。]
やあ、ウェンディ。
ちゃんとお買い物は出来たかい?
[問いかけた。]
やれやれ。……困ったものだね。
ウェンディ。
公共の場で悲鳴など揚げるなんてはしたない。
[内心の笑いを堪え切れないのか、口の端が緩んでいる。]
だ、だって師匠がそんなところに居られるから!!
びっくりしたぁ……。居られるなら声をかけてくださればいいじゃないですか。
師匠が悪いんですよ。呼び出すならきちんと場所まで指定してくださらないと。
[必死でそこまでは言い募るが]
……ごめんなさい。
[一転。しゅん、と頭を下げた]
おや。ルースに買い物を……まあいいだろう。
それぐらい、弟子は心得るものだよ。
今回は、
[深く、自信に満ちたような顔をして背を向けた。]
許すとしようか。
[肩が笑いで震えている。]
ルースにはお買い物の荷物をラボまで運んでいってもらってますわ。
今日はおてつだいの方を頼んでなかったものですから。
師匠、いい加減笑いやんで欲しいんですけど……。
[いくらなんでも笑いすぎだ、と頬を膨らませ]
それで。唐突なお呼び立てでしたけどいったい?
...noise...
........................................................................................................................................................
微か.........一瞬...紛れ込む..noise......
May=Waltonの遥か背後で ガヂン と嫌な音がした。
[まだ先は長い、と暗く先の見えない階段を眺める]
昔非常用に作られたんだって聞いたけど。
こりゃ封鎖されて正解ね。長すぎるもの。
[階段の踊り場には、以前は点いていたのだろう、非常灯が備え付けてはあったが、今は中の光源も抜かれて、ただのプラスチックの板だけになっている。そこに腰を下ろし、暫しの休息を]
―― 電脳世界<Utopia>/Under ――
[Under―――それは違法空間]
[違法な電脳産物、悪意と危険のスパイスまみれの情報の宝庫]
[キマイラに向けられる目も奇異や畏怖でなく、値踏みに近い]
オーケー。側ニイロ。
[山羊の胴体から滑り降り、ライオンの頭部に手をやる]
[遠く上がる悲鳴に蛇の尻尾が鎌首をもたげ、シュゥと威嚇]
[黒目を向ければ全力の面持ちで逃げる娘達]
[珍しくもない光景/無傷であり追うものも居ない事が珍しい]
……フゥン。行クゾ。
[瞳孔をキュルリ絞り、逃げて来た方向へ動き出す]
[前にはなかった―――移動してきた遊園地へ]
[聞こえた音に、びくりと肩を震わせる]
今の音、何?
下? 戻る?
いや、ここまで登ったんだから、戻らない。
調べた地図からいけば、もう半分は来たはずだもの。
下で事故でもあったのかもしれないし。
[でもここまで聞こえるだろうか、と疑問も生じたが――]
ここであたしの取れる行動は二つよ。
一つ、戻って確かめる。
二つ、このまま上へ行く。
どう考えても二、よね。戻ったって、どうせまた上に行くんだもの。
[問いには即答して、暗い底の方へと一度だけ視線を移した]
...Blockade...
一定の間隔を置き
嫌な音は響く
大きくなりながら
May=Waltonに迫ってくる
巨きな歯車、機械が噛み合わさるような音だった。
−−現実世界/中央部電波塔−−
[ここは、技術部の部屋である。
スタッフ一同、慌てて機材を操作している。]
「何者かが、ここから電波を飛ばしている?」
[モニターに映る映像。顔を抉られた赤ん坊が
少年になり、青年になり、中年になり、老年になる。
やがて彼は死を迎え体は朽ち果てていく。
腐り、虫が湧き、最後には骨になる。
映像の最後には謎のメッセージ。]
「部長、先程電波塔内全域に謎の電気信号が!」
《True end...PASS:REINCARNATION》
[響く音が、次第と大きくなってきて]
ちょっと。
まさか侵入がばれた、とか?
だとしたら、早いとこ登りきらなきゃ。
手すりが傷付くとか言ってらんない。
[両足のローラーブレードを出し、小さなスイッチを押すと、小型のengineが火を噴いた。手すりに飛び乗り、上へと向かって駆ける。僅かに平らな部分には焦げた跡と一本の傷]
[床もしくは底と定義されたグリッドの上、黒は滑るように動く]
[顔を手首以外を覆う漆黒のボディスーツは光を吸い込みうねる]
[シュゥ]
[蛇が二つに分かれた舌を向ける方向に、二つ…三つの姿]
[大きな黒目が瞳孔を開いた]
まだ知るべき時ではなく、
いずれ来たる時に目は開くだろう。
[トビーの背後で、メガロポリス全域へとも洩れ出す不可思議な謎のData。]
[足場は最悪だったが、文句を言う暇はなく。音だけが迫ってくる感覚。音だけではないのだろう、と思ったが、見えない以上は恐怖の元は音のみ]
せめてこの階段が螺旋状ならよかったのに!
折り返しがきっつ!
[器用に踊り場部分では体を反転させながら、上だけを見て上る。
もし、頭まで電脳化していれば、こんな音には悩まされないのだろう、と少しだけ後悔もしてみたが]
今更、だわ。
どういうことですか。
わたしにはなんの話なのか──。
[トビーを目で追い、重ねて問うが]
……なに、かしら?
[人のざわめき──困惑した]
[ぐるりと見回し、壁面に据えられた巨大なスクリーンに目を留める]
[映し出されるのは人──男の生まれ死に腐る様]
[その最後にメッセージ]
"REINCARNATION"
True end...PASS?
[映像に、視点が釘付けられる]
....壁ごと手すりが変形し....
.. ....しかし、May=Waltonに決して追いつかない速度で....
...鎖されてゆく......。
ココ....ゴ.......ココ..ゴ.......
....都市全域を震わすような...深く低い音.....
.....音が一つずつ消えてゆく..
[モニターは、脈動する男性器の姿を映している。
――BIRTH
―PROSPERITY―
DEATH――]
「何なんだこの文字列は?」
[「誕生」「繁栄」「死」
電気信号≪True end...PASS:REINCARNATION≫は
未だに電波塔内全域に響いている。]
「第一、PASSって何の――――」
[技術部の時が止まったように、静寂。
リアルな彫刻のように並び立っている。
バタン――部長が倒れた。
[バタン バタン バタン
部長が倒れるのをきっかけにして、
スタッフたちが次々に昏倒していく。]
……………。
[誰一人として覚醒していない技術部の部屋には
依然として謎の電気信号が流れている。]
≪True end...PASS:REINCARNATION≫
[目指す暗闇に、一点の赤。それは階段の終わりを告げるwarning light]
後ろは、大丈夫、よね?
[振り返りはせずに、手すりの終わりまで来ると、飛び降りて出口へと。封鎖されてはいたが、鍵は旧式で開けるのは簡単だった。
外へ出ると、電波塔が近くにそびえていて、人通りの多い所まで出ると、ようやく息をつく。
けれど――その人々も次々と歩みを止めて倒れ臥していく]
[視認したのは、山高帽の男と一つの胴体を共有する老婆]
[ただの人間のデータに興味はなく、焦点は老婆へと向かう]
マアマア面白イ構造ダ。
獣デアレバモット良カッタガ。
[それ以上近づく事なく焦点を牧場へ]
[――移す前に、グルルと呼び戻す唸り声]
[先程まで聞こえていた音は止み]
何?
ちょっと、みんな眠くなったとか、それとも電脳部分に対するウイルスとか?
ひょっとして、あたししか立ってない事ない?
上じゃこんな遊びが流行ってる……って訳じゃないわよね。
どうなってんのよ。
[口にしても答えが得られるわけではなく、仕方なくその場を離れることにした]
― 電脳世界<Utopia>/Under:遊園地 - NL ―
「座長――来客です」
[平板な響きの声に呼ばれ、男は再び電脳世界に意識を向けた。]
《ブンワッワ♪ ブンワッワ♪》
[ストリートオルガンをころころと押しながら、人影へと近づいてゆく。]
おんやァ――??
<バタリ>
[人が倒れる]
[ひとつ・ふたつ・連続して]
なにが──っ?
[スクリーンから視点を転じ][困惑・混乱]
し、師匠。これって、いったい──。
「遅かった」って、どういうことですかっ!
[半ば悲鳴]
["お遣い"はあれど、非常事態に直面した経験はない]
何が起きて──?
―― 電脳世界<Utopia>/Upper ――
[しばらく後、半ば開き半ば閉じた空間に黒は佇んでいた]
[黒目はキュルリ音を立てて周りを探る]
[キマイラは護衛のように足元に伏せていた]
―――イナイナ。
コンナ召喚(ヨビダシ)ヲカケルノハ研究所カト思ッタガ。
[その手には新たなる素材(データ)を仄めかす手紙]
[チョコレートブラウンの掌が動き、くしゃりと音を立てる]
[奇怪な魔獣と漆黒のしなやかな人影は遠ざかってゆく。]
ん〜ん頼もしい姿だよゥ。
今度、うちの牧場で働いてもらえるか勧誘してみようか――。
[あごを撫でながら、その後ろ姿を見送った。]
倒れなかったか。
[鷲を細工したパイプを取り出した。ホログラムの煙が立ち昇る。]
見ての通りだよ、”Kot”。
思い浮かんだ考えを言ってみてくれないか。
思い浮かんだ考えって言われても、こんなの──。
[それでも、問いには答えるべく混乱した頭を落ち着かせようと息を吐く]
人が次々倒れて──変な映像と──死んで?──ううん、まだ生きて──、Virus?でも、だったらわたしたちが平気なわけが──
[いつもと同じく、没頭すると思考がそのまま口に出る]
ネットを介して電脳を犯すタイプなら──でも誰がそんなこと──テロ?
...UTOPIA/Upper....
..何処かで 軋むような音が聞こえた...
..だが、今はそれだけだ....
[お上品なUpperでは、キマイラは護衛にしては粗野すぎる]
[無遠慮な視線が醜い魔獣へ向かい、威嚇の唸りに逃げていく]
マアイイ。
召喚(ヨビダシ)ガナクトモ、狩ルダケダ。
[好戦的な言葉が漆赤の裂け目から零れ、キマイラの首を叩く]
[研究所の棟―――データ保管庫へ、魔獣に跨り襲い掛かった]
[無機質な壁のテクスチャを火炎が砕き、防御PGMが剥き出す]
[軋むような音が破壊と重なる/電脳の壁に破壊音の設定はない]
[代わりに棟内でアラームが鳴り響いた]
[速やかに守衛PGMが動き出し、先頭の一つを火炎が飲み込んだ]
その思考は”Kot”らしい――。
[トビー=指揮者<コンダクター>は、倒れている一人に近づき、]
丁度いい。良い機会だウェンディ。
調べなさい。
[そうして、媒体を問わず映し出されている映像と文字に目を向け、]
終われば良い所に連れていってあげよう。
["師匠"の言葉に、幾分か逡巡]
わたしにこんなの、調べきれるわけが──。
[周囲に倒れ伏す人々をぐるりと見渡し]
(死んじゃうかもしれないし)
[心の声は心の声として留めるが]
[裂け目の奥、光がうねる]
他ニ魔窟ノ意味ヲ知ル機関ハナイ。
情報ヲ流シタ対価ハ払ッテモラウ。
[灰燼と化した守衛PGMの残滓を赤い舌が舐め取る]
[0と1の小さな光が漏れた]
[キマイラは奥へと進んで行く―――が、人の姿はない]
[まるで皆接続を切っているように]
―現実世界/中央部電波塔―
[電波塔のある一角。動くのは2人のみ。]
……………。
[サンスクリットが刻まれたローブを身にまとった
老人のホログラムが現れる。]
―現実世界/電波塔近く―
[こちらにも、老人のホログラム。少女を見据えている。]
……………。
[複数の箇所に出現した老人のホログラムは、
ニヤリと笑うとふっと消える。]
≪True end...私に”真実の終焉”を。
―――PASS:REINCARNATION...≫
無抵抗ニ近イ。
人間ガコノ程度デ逃ゲルダロウカ―――罠?
待テ。
[キマイラを止め、近くの扉を開け放つ]
[作動中のランプが点灯する機器/現実世界<Mundane>への窓]
[切り取られた世界の内側にはうつ伏せる姿が――複数]
[すでに、煮詰まる寸前]
[現れ消えた老人のホログラムを呆然と見つめ]
調べれば、分かるのかしら。
何が起こっているの。
そもそも何で、わたしと師匠は無事なの。
──調べれば、ちゃんと分かるのかしら。
[動きの途中で倒れたような不自然な姿/寝ているとは見えない]
企業戦争デモアッタカ?
[人間は死んでもすぐ生き返る/稀に例外は在るが]
[そう認識している召喚PGMの足元にも、異変は忍び寄っていた]
[カコン]
[床のグリッドが軋む]
[クラスタが破壊された時とは違うと、黒の中で警報が響く]
調べてちゃんと分かるなら──、調べる。
もし調べてて死んじゃったりしたら……、、、
師匠のごはんにお椀一杯分の唐辛子いれますからねっ!?
[半泣きながらそこまで言い切ったところで、通信]
[発信者"Luth"。彼女のAI]
[無事と電波塔に到達したことを彼女に告げる]
.......noise...
......黒のすぐ傍のGridが砕け 罅割れた... 底はみえない
...砕けたクラスタは..硝子のように.......落ちて 消える
[ツーーー]
[現実世界<Mundane>への窓が、小さな音を立てて消えた]
[ゆっくりと、だが次々と消えていくランプ]
[まるで時間が止まってゆくかのような]
[窓は空白/黒は映らない]
―――戻レ!
[グリッドの砕けた音と同時にキマイラに飛び乗る]
[遠ざかる底のない罅割れに、キュルリ瞳孔が音を立てた]
[静かな恐怖がひたひたと包む白亜の建物を脱出する]
師匠。わたし──、一度外に出ます。
この変な現象。範囲が電波塔の中だけなのかも気になるし、ルースが来てくれたみたいですから。
一通り見たら連絡します。
[言い置いて、返事は聞かずエレベータへ]
[幸いに電源は生きている]
(何をどう調べればいいのか分からないけれど)
[電波塔の外、*正面ゲートへ*]
黒の後方で 皹は広がり 崖となる. .. .
皹の向こう側の電脳世界がみえなくなってゆく
........ 何も みえない
他と分断されるという異状は
Upperだけではなく Under Public Closed........
全ての領域においてだった
やがて 空気が固化するごとく PublicとUpperは
..... 身動きままならぬ領域となろう *
[Upperの端の研究所が崖となり、分断され、見えなくなっていく]
[電脳世界<Utopia>が消える恐怖]
[0と1が煌き陣を描く]
[帰還(逆召喚)]
[次の瞬間、黒の姿は*魔窟にあった*]
≪生きとし生ける者、常に満足体でいるとは
限らないだろう。私はそれには興味がない。≫
[トビーに向けて、電気信号が流れる。]
≪君はそれに興味津々なのかね?
病に伏せるという生ける者なら当然の反応が、
そんなに珍しいシロモノなのかね?≫
─ 現世<Mundane> / Hotel・上層階の一室 ―
[荷物を置く。]
[部屋のセキュリティーのチェックを行い、レベッカは"主"である少年を見た。]
[彼はベッドに腰掛け、窓の外を眺めている。]
「レベッカ。誰かから接触は?」
特にはございません。
坊ちゃんがここに居ることを知る他人は、存在していません。
[繋いだままの世界/Utopia]
[何一つめぼしい情報は入ってきていない。]
どこかへ行かれますか?
電波塔と呼ばれる場所があちらですね。
他の地域には、
[幾つかの有名な施設を口にした。]
さて――。
[ある程度調査を終えると、ホログラムに視線を向ける。頭部を彩る花々は、生花ではないのか萎れない。]
僕の手紙にはこう書かれている。
来たるべき時、斯様な業を為す――と。
[双眸を細め(まるで癖のようだ)目尻を吊り上げ、直接、電脳に話しかけてきた声に興味を覚えたようだ。]
参ったな。
Levelを下げすぎていたか?
[呟き、ゆっくりと歩き出す。]
藪医者 ビンセントがいたような気がしたが、気のせいだったようだ……(藪医者 ビンセントは村を出ました)
医師 ヴィンセント が参加しました。
― 現実世界<Mundane>/北部区域:Kosha Cybernetics :少し前―
「ああ、ディレクター。お願いですから、机の上、もうちょっと整理してください。」
[いつものようにデスクの上に積まれたまま散らかっている書類をつまみあげてみただけでパーティションから出ようとした俺を呼び止めたのは、エイプリルだった。]
承認が必要な資料は、全部電子化されてるってぇばさ。
どうせ紙で回されてくるものなんて、どこかの団体の要望書だとかちらしの山なのよ。ちらし寿司なら食べたいけンども。
[なに言ってるんですか、とあきれてエイプリルは眉を寄せた。]
「プロジェクトの次回選抜メンバーの履歴をデータシートで送ったから、早く確認してくれって連絡を受けたばかりです。」
あ、あ。それ、俺も聞いた。
届くの今日だっけか。ダッカハイジャック事件。
[エイプリルはまた眉を蹙める。エイプリルはかわいくて仕事もできるとてもいい子なのだが、この手のダジャレが大嫌いなのだけが玉に瑕だ。
そんなわけで、せっつかれるように書類の整理をはじめた俺だったのだが、データシートは早々に見つかった。オンラインでのデータの受け渡しはセキュリティ上問題があり、取り扱いに注意を要するものは直接このようなかたちで受け渡されることがしばしばだ。
どのような仕事でも情報には気を遣うが、ことに俺たちのような情報産業に関わる職種ではそうだろう。もっとも、デスクの書類の山の中にゴミと一緒に埋もれている状態がセキュリティ上問題がないとはとても言えないのだが。ははは。]
[北部区域に聳え立つ、金属製の巨大なガーキン(ピクルスに使うキュウリ)。全面鏡面張りの超高層ビルが、巨大企業Kosha Cyberneticsの本社ビルだ。
義体の開発を中核に、バイオ、ナノテクノロジー。人工知能や各種ソフトウェアの制作。あらゆる部門の技術を結集させて、ここではヒトガタを生み出している。
――俺が所属しているのは、その中でも少々特殊な部門にあたる。
“プロジェクト”とは、日系のプロデューサーと組んで立ち上げたハヨープロジェクトという芸能プロダクションだ。
俺は、ショービジネスに義体ビジネスの新しい可能性を模索しているのだった。]
んん――
[ジャケットから取り出した半透明のバイオ原料プラスチック製のsonosheet。ピラピラとして薄く頼りないチープな感触だが、旧世界の紙の“本”とやらをすべて収めても余りあるほどの容量がある。
目の前にかざし、義体の瞳孔に仕組まれたレーザー読み取り装置でスキャニングを終えると、シュレッダーにつっこむ。sonosheetは粉塵となって消えた。]
終わった終わった。
[仕事を終えたとばかりにデスクの前から去ろうとした俺は、なにかが気にかかって足を止める。書類の中に、一通の封書が紛れ込んでいた。]
誰からだ?
[私信がこのようなかたちで届けられることは、比較的稀なことだ。オールドファッションに血だまりのように赤い封蝋がしてある真っ白な封筒。裏返してみれば、差出人は書かれてはいない。
俺は首を傾げながらパーティションから出て、エイプリルに声をかけた。]
ねえねエイプリルちゃん。こいつ、誰から来たか知んない? ジンナイタカノリっつって。
[知りませんよ、とエイプリルは言う。社員への配達物は一度保安部を通し、安全確認がなされる。だから、爆弾のような物理的なトラップは紛れ込まないはずですよ――そういうエイプリルの言葉に、とりあえず持ち歩く分には害はないだろうと納得する。
電磁シールドの張られた窓の向こうに、つややかな光を反射させながら着陸するシャトルが見えた。]
いい身分だな、ヴィンセント君。
のんびりと油を売っている場合かね?
[その時、後ろから声をかけてくるヤツがいた。
――あいつだった。
俺はジャケットのポケットに封筒をつっこみ、たっぷりと時間をかけて振り返った。**]
「まずは、休んでからだ」
かしこまりました、坊ちゃん。
落ち着く飲み物でも、作って参りますね。
「――それより」
[部屋の中に備え付けられた調理スペースへ向かいかけた足が止まった。]
「歌え」
――かしこまりました。
[レベッカは、考える/演算する。]
[やがて発せられたのは、A/安らぎの安定した音だった。]
[それは、まだ何一つ異常のない時間。]
≪ククククク。ちょっとこの老いぼれと
お喋りでもしないかね。悪いようにはしない。≫
[ノイズ混じりの電気信号。]
≪そのときは、君は私に”どっちの顔”で
話しかけてくるんだね?≫
――UTOPIA Public-Space/STREET――
[AIの持つメモリのうち、教団――――とはいえ、宗教の概念自体が曖昧になって等しい。長い歴史の中で習合を繰り返すうちに、何を拝むのか、誰が指示を出すのかが分からなくなった。それでも宗教自体は依然として在りつづけていた。――――からの指示を受け取るような場所へ、着信。MAILの形式であった。
そもそもがセキュリティにあまり優れていないタイプのAIである。Virus散布のための足がかりとして利用されることも少なくは無い。
だがAIはそれでも、現状では届いたMAILを開く以外の選択肢を持っていない。]
[元より言われずとも、
資料管理部の方へ向かっているようだ。]
≪あなたに相応しい貌で≫
[緑の眸が資料管理部前の扉を捉え、眼前に立つ。]
[音を(歌を)止めたのは、どれほど経った後か。]
[許可を受け、レベッカは料理を始めた。]
[望まれたゆえに付属した機能。]
――?
[かすかな音を捉えた。]
[だが"主"の危険を知らせる音と、レベッカは捉えなかった。]
[銀色のタクトを取り出すと、]
[―――ヒュン]
[と、振るう。視覚素子には、無数の矩形window。
閉鎖を意味する記号と色彩とcode。]
――UTOPIA Public-Space/STREET――
[AIの受け取ったMAILには、幾つかの事柄が示されていたが、AIにとって理解の出来る単語は少なかった。MAIL本文中においてAIが理解可能であった事柄、”Publicからの一時的な脱出”を抽出し、commandとして実行した。
AIの持つリソースを全て、”CLOSED”に教団の所持する空間へのcopy。]
[『残り時間12秒』『48秒』『23秒』]
[copyへかかる所要時間が不自然に伸び縮みを繰り返す。]
――Mundane East-Side/STREET――
[電脳上でデータの移行を実行して後、地上のホログラムは、やや不安定に明滅する。メトロポリス上に流れる、不可思議なDATA(電波塔を発信源とするもののようだ)に呼応、あるいは侵食を受けているかのように、ホログラム映像へノイズが混じっている。]
≪どうせなら開けてもらいたいものだよ≫
[再度タクトを振るう。
次は88の鍵盤が半円形に広がった。]
≪モノリス・ワークスより強固とはね。≫
≪”若者”は苦労を知らぬ。その経験こそ、
生くるための貴重な財産であるのだが。≫
[自ら扉を開けるつもりはないようだ。]
≪その苦労は私からのプレゼントだ。
ありがたく受け取るが良い。≫
―― 電脳世界<Utopia>/Closed・魔窟 ――
[闇に魔法陣がうねり、キマイラであった光(データ)を吐き出す]
[そのまま奇妙な収縮と共にひっくり、"ドリス"を象った]
[古の女神の名を冠した姿/しかし"黒"の名が相応しい色]
《魔窟ハ無事カ?》
[ケルベロスを認めるや否やの通信は、確認であり問いではない]
[グルル]
[三つ首の番犬は務めを果たした事を唸り声で返す]
[「当たり前だけれど。」等と呟きながら、平時よりLevelが低いセキュリティを解除してゆく。
室内は、倒れ伏した人々で埋め尽くされており、トビー=指揮者<コンダクター>は彼らを踏んだりしつつ、奥へ向かう。]
[前述の老人の言葉に僅か冷笑。]
≪だが、ここより先はあなたの管轄ではないか?≫
[中央部にあたるのか、
緩い曲線を描く何もない壁の前に立ち、問う。]
[壁が上にスライドすると、部屋が現れる。
どうやらそこはエレベーターのようだ。]
≪どうだったろうか、苦労の味は?
甘美なる恍惚を感じさせてくれるだろう。≫
[エレベーターの行先は固定のようだ。]
≪乗りたまえ。≫
[教団の所持する空間は、古い。CLOSED領域に作られている以上、一応の十分な強度を持つが、十分なWISARDであればGARDIAN-ANGELの目を眩ませて進入する事も決して不可能では無いだろう。とはいえ、copyに対しての現状は、あまりに旧い反応である。明確な異常と言って良い。]
――Mundane East-Side/STREET――
[先刻響いた振動と音――earth-quakeであると判断するのは非現実的にすぎる。先刻から倒れ伏した通行人。どれをとってもやはり、明確な異常事態であった。]
[解除した痕跡は残さない。
――が、既に資料管理部の扉は開いたままである。
ただ、双眸を細め目尻を吊り上げると、
頑強で無機物的フォルムを前面に押し出したエレベーターに乗り込んだ。閉ざされ、浮遊感が一瞬感じられる。]
≪あなたは”輪廻”で合っているのだろう?≫
[長い下降時間の間、問うてみた。]
[何かの音。]
[何かが聞こえる気がする。]
[レベッカは手を止める。]
「おい、レベッカ?」
[怪訝そうな"主"の声。]
[彼女は、彼を見る。]
[湯の跳ねる音が聞こえない。]
[目の前で、"主"が倒れてゆく音――]
――Mundane East-Side/STREET――
[倒れたきり動かない通行人の、義体の型番を調べる。
一般に広く普及しており、また違法に手の加えられていない義体だった。
既に、電脳上ではCLOSEDへのcopyが終了している「Offertorium」を起動――義体のトラブルシューティングを検索しつつ、簡単なスキャンを行う。
結果は、”異常なし” または ”処置なし”。
動かない人々の群れの中。明滅を繰り返しながら、ホログラムは動きだした。]
≪存在の証明とでも言おうか、刹那に生きるべき
我々にとって格別の喜びは誰かに記憶されること。≫
[エレベーターは止まり、扉が開く。]
≪ようこそ”輪廻”の世界へ。≫
《Upperガ消エタ。Closedモドウナルカ、ワカラナイ》
[真ん中の頭に手を置き宥め、先程の異常をトレースする]
《現実世界<Mundane>ノ研究所、アレガ原因カ――?》
[手を離し、闇(混沌)の中の光(データ)へと伸ばす]
[キマイラが消え、漆黒の腕に刻まれていた魔法陣は既にない]
[そこに新たな0と1の砂粒が螺旋を描きながら光の陣を刻む]
[何かを思い出したのか、それとも何かを思ったのか、双眸は細められたまま。]
[フシュゥ――]
[開かれた先は、温度が低く保たれている場所だった。尤も、生身でない者にとっては意味はない。
”そこ”に在るものを眺める。]
[何かが聞こえた気がした。]
[だがその奇妙な現象に、レベッカは手を伸ばした。]
["主"を確かめる。]
[動かない。]
坊ちゃん……?
[か細い声。]
[常と変わらぬままに落とされた異常。]
[レベッカは確かに*混乱していた。*]
[聳える柱。その四方には袈裟/法衣/神主装束/アバを
身につけた4体のミイラが鎮座している。]
≪さて、私は君を何と呼ぶべきか。≫
[柱の中には液体が充満しており、脳が浮かんでいる。]
[今、立っている所までは液体自らが発光しているかのような明かりは充分には届かない。]
[一歩踏み出そうとし――]
[柱の前のPlate。刻まれた真なる被験者の名前。]
――――。
[一歩踏み出した姿のまま、暫し止まる。]
≪どうした?遠慮することはない。≫
[コポコポと気泡が弾ける。]
≪このような姿で生き恥を晒してはいるが、
間違いなく私は人間なのだよ。≫
[頭を振り、]
何とでも呼べ。
[2、3歩近づいた所で、脳を見上げた。]
僕は求むる姿と人で在り続ける。
あなたが望む名前の人物となろう。
[召喚したのは鷲の上半身とライオンの下半身を持つ魔獣]
[底のない罅割れに、電脳の翼が役立つかは判らないが]
行クゾ。
[翼広げ飛び立つ魔獣を、唸り声が送る]
[研究所と直接回線で繋がれた、Mundane中央部周辺の*本部へ*]
≪ほう…実に面白いことを言う。
まるで、自我なき人形の如き…。≫
[嘲笑うかのような電気信号。]
≪すまない。私は若者の感覚を解すには、
実に長い生を浪費してしまったのだよ。
そうだな。とりあえず”指揮者”でいいだろう。≫
[かつて分化して存在していたあらゆる宗教権威の
ミイラに囲まれ、まるで宇宙の中心のように鎮座。]
≪ならば、私のことも好きに呼びたまえ。
”輪廻”でも構わない。他に覚えがあるなら、
そちらで呼んでくれても一向に構わない。≫
[異常事態と判断された場合、上位のAI――交じり合うことのないさまざまな概念を投影しながらいまは習合され、電子化された宗教権威――へ指示を仰ぐことがまず設定されている。
一般的な通信での連絡を試みたが、電脳上では接続が不可能、または応答無しと判断された。
次いで、これらのAI間に設定された専用回線での通信を試みるが、やはり失敗。かろうじて上位AIからの応答を得ることが出来たが、内容は『C'est aaaaaaaaaaa』といった意味不明のものであり、それもやがて絶えた。]
[上位のAIとの連絡を一旦保留し、同位のAI、つまり同型のAIへの連絡を試みるがこれも失敗。
電脳上ではようやく2つ目のPGM、「Benedictus」のcopyが終了したが、command完了までの残り時間はやはり不自然に伸縮を繰り返している。]
では―――第九と。
そう呼んでも構わないのかね?
既に、貴様から剥奪され歴史の闇に埋もれた名を。
フン。この話は、不利益にしかならない。
化石が生きていたとは思わなかった。
[薄闇の中、左目が灰青に……双眸と髪が真っ黒になり、一巡して元のトビーの色彩に戻る。]
≪………また太古の昔の懐かしいことを。
世界は90%の欺瞞と10%の真実で構成されているが、
君は実に純粋培養の欺瞞のような存在だな。≫
[明らかに不機嫌な色彩を含んだ電気信号。]
≪仰る通り、私はもはや旧旧時代の化石。
遠い昔のことは忘れてしまったよ。≫
[空間にホログラムが浮かぶ。
「願うなら、望みのものを与えよう。」
その”手紙”にはそう書かれてあった。]
≪万物には始まりと終わりがある。
だが今ではどうだ?人間には終わりがない。
私も、その名だけでなく終わりまで剥奪されてしまった。≫
[ザザーとノイズが走る。]
――Mundane East-Side――
[ここ東部には、多数の宗教的建築物、また同型/同種のAIが設置されている。
だがしかし、どのホログラムもAI、ロボットの類も応答しない。
一見すると通常通り、瞠目のアクションを取り待機状態にあるようだが、機能的には完全に沈黙していた。
動きを止めたホログラム/ロボットの前に、ノイズを絡ませたホログラムが出現し、その様子を”確認”(ネットワーク上での連絡がつかない為に、恐るべきことにこういった旧来の確認方法が必要とされた)しては徐々に中央部へ向かって移動した。]
ありがとう。
今はそれで売ってきているものでね。
[直接響き渡る声を、唯、聞く。]
終わりの剥奪――あなたのような存在ともなれば、苦悩はあろう。けれども、終わりなき終わりもまた、一つの選択肢だ。
[滔々と。だが、呟くように。]
――Mundane Central-Area――
[結果、道中には指示を仰ぐことの可能な存在も、稼動している存在も存在しなかった。
電波塔の前に到達したホログラムは、一旦移動を停止する。]
≪消えぬ火はない。とうに情熱など失せたわ。≫
[静かな電気信号。]
≪今日、こうして生を浪費できるのも、
私がこのような姿で生きているからだ。
確かに、これが「基礎」ということか。≫
[自嘲するように。]
≪栄光と勝利を繋ぐ私が、このような
体たらくで生きている…いや、生かされている。
終わりのない終わりより、私は真実の終焉が欲しい。≫
[時に、停止状態のモニタへアクセスし画面中を文字情報として、時に施設内のプロジェクタを経由して内部へ進入する。
セキュリティの施されていたであろう領域についても、既にそれが解除されていた為に進入することは容易だった。
ある部屋の中央部、壁を取り払って現れたような小さな部屋がある。その中、エレベータが続く領域へのアクセスを試みた。]
≪昨今のネットワークとメガロポリスにおける異常事態、...sれに先立って未知のdataが電波塔より送信されてい...tようですが、原因はそちらにあるとs...て宜しいでしょうか≫
[信号を辿って返した。
ホログラムの明滅に合わせて信号へもノイズが入った。]
[それが黒い十字架。
重ねられる沈黙の罪。
その言葉は脳内に留まる。]
対価は既にもらっているので要らないが、
出来る限り、あなたの望みを叶えよう。
[コミカルに双眸を開く。
薄暗い室内(?)の中、無機質な声が静かに響く。]
新しい来客のようだ。
……このまま願いを叶えたいところではあるが、
僕には可愛い弟子がいてね。
一度、外に帰らせてもらうよ。
≪小難しい話はどうでもいいではないか。
それよりも、君は欲しいものがあるか?≫
[質問に質問で返す電気信号。]
≪ちょうど君に似合うものがあるんだ。
きっと気に入ると思うのだが。≫
≪君には「秩序」がよく似合う。
旧き友からの贈り物と思ってくれ。≫
[去ろうとするトビーに投げかける電気信号。]
≪私は常にここで無駄な時間を過ごしている。
何ならClosedの方を訪ねても構わない。
良ければ、その弟子とやらも連れてくればいい。
きっと、似合う贈り物を用意できるはずだ。≫
[人が乗るための物であろうエレベータの位置にホログラムは留まっている。]
≪私の望むものはありません。≫
[人間へ不快感を与えない程度の言語PGMを持って居ながら、端的なAI故に端的な返答。]
[ステラの回答に、嘲るような反応。]
≪それは残念だ。おそらく、君なら
気に入ると思ったんだがねえ。
そう…「個性」という贈り物を。≫
残念だが、僕には不要だよ。
[銀色のタクトを振る――
φ=1:1.618の黄金矩形に添った螺旋/渦巻き。攻撃性能動型防御壁が電気信号を呑み込み、無限roopの中に誘い込む。]
弟子は気に入るかもしれないがね。
[エレベーターに乗ると、素早く矩形windowを展開。操作をし上昇する。]
――現世/電波塔付近――
[倒れた義体や"人間"、アンドロイドの間をすり抜けながら、動いてるものがいないかを確かめる]
だーれも動いてないしー。
あの中とか、入って大丈夫、かな?
なんだか、変なのがモニターに出てたけど。
[電波塔を見上げる]
― 現実世界<Mundane>/北部区域:Kosha Cybernetics→ ―
まったく――! あんにゃろときたらにゃんとろ星人!!
[やべえ。俺やべえ。超やべえ。
そう、俺は追い詰められていた。
俺っちの上司、VP(事業部長)のマルヘアーは、嫌味たっぷりに俺の忘れたがっていた未来予想図を思い出させてくれた。]
「覚えているかね? この三ヶ月で業績が上方修正されなかった時、君が赴くことになる新しい場所の話を――」
[Kosha Cyberneticsの子会社には、義体やヒューマノイドに延々とひざカックンを行い続ける部署があるらしい。もちろん、これは社内で大げさに広まった都市伝説のようなものだ。
義体と姿勢制御モジュールの相性をテストする部門があるのはたしかだが、ひざカックンばかりしているわけがない。
生産管理や物流に移動になるのはまだしものことだが、最悪のどん底はフリーズだった。社にとって不要なばかりでなく、所持してしまった情報やスキルから有害な人物と目されて氷漬けにされてしまうことだ。
別名モルグと呼ばれる本社地下のデータセンターには、人柱の群れが古代神殿の神像のように安置されている。
Kosha Cyberneticsに籍を置いた者は、必ず一度はその光景をまざまざと見せつけられた。]
― 現実世界<Mundane>/北部区域:車中 ―
[我らがチームの新たなフラグシップ・モデルとでもいうべき二対のガイノイド、Mannequin“Twin Pillars”を連れだし、Kosha Cyberneticsを出る。
UGV(自動運転車)に乗り込むと、行く先を告げた。]
南部電脳街にある大型ディスカウントストア、
“La Mancha”まで。
[白銀の長髪を波打たせながら、双子は俺の両脇に滑り込む。Aラインのワンピースは光沢のある金属の質感で、白磁の肌のいろを映していた。皺が入ることもなく、物音一つ立てない。
双子のそれぞれの顔には乳白色の半透明のフィルムが張りつき、貌容はわからないようになっている。]
[静かすぎるのも物寂しく、フィルムの下端を上に押し上げた。こうすると、フィルムは自動的に上にスライドし、口もとだけあらわになるのだ。]
着くまで、なにか唄ってくれないか?
[二人が顔を見あわせたのは一瞬のこと。その仕草で呼吸をはかるように、歌い出した。]
――い〜つもぉ〜 ブ〜レイ〜キランプ〜
ご〜かい〜点滅ぅ〜
ア・イ・シ・テ・ルのサイン〜♪――
自動運転じゃないって、いつの唄なのよ? そ、れ。
[どこかで聞いたことがある曲だが、すぐには思い出せない。双子はまた顔を見あわせる。俺の右側のManonは言った。]
《ボスはさっき、『未来予想図』っていいました。》
《――いいました。》
[左のKanonが合いの手を入れる。
そうだ、うっかりしていた。すぐそばにいる時は、自動でネットワークが共有される設定にしていたのだった。
こいつらに落ち込んでる思考を読み取られてしまったってわけだ。くはっ――恥ずかしい、俺。ダメダメじゃねえか、俺は。]
― 現実世界<Mundane>/東部区域付近:車中 ―
――ずっと心に描く 未来予想図は
ほら 思った通りに かなえられてく――
[俺は、左右から聞こえてくる歌声をしんみりと聞いていた。
そうだ、この唄を唄ってたメンバーの名前を思い出した。
Dreams Come Trueだよ。
すげー青くせーけど、夢は叶うってことなんだよ。
――まだまだ行ける!
車窓から、ストリートで祈りを捧げるシスターの姿が見えた。
街でよく見かける立体映像だった。だが、その瞬間に見えたことは、俺を祝福してくれているように思えた。
俺は自分のテンションを引っ張り上げる。しみったれてちゃ運も向いてこない。わははと笑って、両脇の娘っ子たちの髪をわさわさと掻き混ぜた。]
《ポゥーン》
[――その時だった。唐突に警告音が鳴ったのは。]
《中央部付近で広範囲のネットワーク障害が発生中。》
《大規模事故、サイバーテロの可能性があります。》
《南部区域への移動は迂回路を選択します。到着時間に10分の誤差――》
なんだァ――?
とりあえず、停車だ。
[UGVの自動運転AIに車を路肩へ寄せさせ、中央部の電波塔を仰ぎ見る。
赤く点滅する航空灯火と共に、ライトが明滅し異常事態を示す信号を送っていた。]
なにが起こってるんだか――
《ボス。劇場で待っているプロデューサーから――》
《――コールがありました。》
[車から降りてよく見ようとした俺を、マノンとカノンは止めた。Series MannequinのAIはこうした事柄に好奇心を向けるように設計されてはいない。
俺は人を待たせている途中だったことを思い出す。]
……そうだったな。
[対処をするのは管理者の連中の仕事だろう。俺はドアを閉じ、再び車を走らせる。
今起きている出来事が、自分には無関係な事柄だと思っていたのだ。
――まだ、この時は。]
医師 ヴィンセントがいたような気がしたが、気のせいだったようだ……(医師 ヴィンセントは村を出ました)
≪好意ある贈り物を拒否することは無礼にあたります。気分を害されたのでしたら申し訳ありません≫
[エレベータが駆動しているようだ]
藪医者 ビンセント が参加しました。
― 電脳世界<Utopia>/Public:Street ―
[車を走らせるわずかな間、俺はネットワークの様子を探る。
降り立ったパブリックのストリートの向こうに、ノイズや空間の断絶が見えた。
そういえば、この異常事態を前にマーケットの変動がどうなっているかが気にかかる。
俺は、頼りにしている例のファンド・マネージャーに連絡を取ってみることにした。]
《ハックマンさん、今、市況はどうなってます?》
[プロジェクトの資産の大部分をハックマン・ファンドに託していたからだ。
市況への対応と、これが非常時ならその対策について依頼する内容のメールを彼女に宛てて*送信した*。]
≪いいや。貰うも貰わないも君の自由だ。
私には、君の意志を尊重しない権利はない。≫
[電気信号]
≪だが、私には君が満足するであろう力を
与えることはできる…君には「個性」を。
興味を持ったら、是非Closedの私のところを
訪ねてみてくれ。PASSはすでに教えてあるから。≫
[誘うような、甘く囁くような電気信号を*流す*。]
≪ただし、その対価…すごく簡単なことだ
…を払ってもらおうと思うのだがね。≫
[入り口らしい扉をじい、と見つめてくるりと体を反転させる]
やーめた。
今夜の塒確保が先。
[電波塔からは遠ざかる。南方面へと向かって足を滑らせた]
――中央部エリア→南部エリア――
[上昇してゆく間、眸を閉じて身動ぎせずに居る。]
[停止]
[開いた先に居たホログラムを一瞥するも、すり抜け、元の場所へ戻る。]
≪私には、他人の意思を第一に尊ぶことがひとつの使命として命じられています。また、私に与えることの出来るものを率先して分け与えることも≫
[先の嘲りにも甘い囁きにも、どちらにも応じた風は無い。ただ淡々としている。
”個性”という単語にもやはり反応は無い。というより、それに関する反応を用意されては居ない。
CLOSEDといえば、三つ目のPGM「Ite Missa Est」のcopyがようやく終了した。Public内での動作は不安定を増しているようだ。]
[エレベータから現れたものが通り抜けていったあと、煙を散らすようにホログラム映像は消えた。
現在、稼動を続けている存在が二つあると*記録した。*]
―― 現実世界/...... ホテル 33階 ゲストルーム ――
[レセプションを終えて部屋に独り。手渡された紙片を見る。そこには『博物館で待つ』とだけ記されている。]
さて、どうしたものかしら ...
[思案気にその紙を見つめた後、タバコに火を点ける。メールボックスには、未開封のメールの山、山、山。]
このディールはどうしましょうかね。私なしでも坊やたちうまくやってくれるかしら、フフフ。
[会長の言葉は『絶対』。何を犠牲にしても、そこに何が待ち受けていても行かざるを得ない。解せないのは呼び出される理由 ...]
さて、考えても栓のないことね。
鬼が出るか、蛇が出るか。
[灰皿には灰になった伝言の残滓。
窓から摩天楼を見下ろしながら、部下に指示を出す孤独な背中。]
―― 現実世界/博物館 ――
[古代の都市が再現された展示群の前。
それらを見つめながら静かに佇む男女、オードリーと BANK の会長、『サー』と称される男がそこに。]
『あの件は、どうかね。』
万事、うまく言っています。何かご懸念が?
『聞いてみただけだ。君を信用している。思うようにやり給え。報告だけくれればいい。』
【信用ね、この男が誰かを信じるなんてあるのかしら。】
『君が BANK に来て何年になるかな。』
.... 年でしょうか。私のような人間を拾ってくれた BANK には感謝しています。
『つまらん世辞はいい。君はよく働いている。我々の期待以上にな。今の処遇で満足かね?』
[その時、サーの目が静かにオードリーを捉えた。彼女は目に見えない何かに、今、自分が掴まえられたことを感じずにはいられなかった。試されている、のだ。何かを。]
―― 現実世界/博物館 ――
[オードリーは、動揺を気取られないように静かに口火を切った。]
今の自分の境遇を惨めだと思ったことはありません。ただ、私は欲深い女です。仮にすべてを手に入れたとしても決して満足しないでしょう。
『そうか。君らしいな。野心は重要だ。それを忘れるな。』
[サーは、オードリーの答えに満足したのか、少し口の端をあげたかと思うと静かに続ける。]
『野心や欲望だけが、人間を人間たらしめるものだ。そんな当たり前のことを忘れて安逸を貪っている人間のなんと多いことか。彼らはもはやヒトですらない。
古きよき時代には、適者のみが生存を許された。それが今はどうだ。生ける屍が群れを成している、これを停滞と言わずして何と言う。』
人間は、都合のいい刺激と、都合のいい安定を求める弱い生き物ですから。
[安定か。足下の氷が溶け出しているのにも気付かない間抜けばかりだな。まあいい、無駄口が過ぎた。それより、本題に入ろう。オードリー、我々の『パートナー』になる気はあるかね?]
―― 現実世界/博物館 ――
パートナー、ですか。それは共同出資者として、私を迎え入れていただけるということでしょうか。
[予想だにしない、突然の目の眩むような申し出。]
『欠員が出てね。我々は誰を代わりに充てるか、この .... 年間、ずっと話し合ってきた。そして、君は候補者の一人として選ばれたわけだ。』
非常に有難い申し出です。是非、チャレンジさせていただきたいと ...
[オードリーの言葉を遮るように]
『BANK のパートナーになるということは、君の想像とは少し違っているかもしれない。どんなに後悔しても、決して後戻りはできない道だ。ただし、これだけは保証できる。君の目は初めて瞠かれる。君はこの世界について、より多くのことを知るだろう。
それでもこちらへと来ることを望むかね。』
[恐ろしく冷たい声。]
―― 現実世界/博物館 ――
[オードリーは躊躇わず答えた。]
私は立ち止まる術を知らない人間です。知っているのは、前に進み、障害は取り除き、勝ち、支配すること。これまで、ずっとそうしてきました。
[その言葉を聞いたとき、サーはおもむろに "旧い紙幣" をオードリーに手渡すと踵を返した。]
『よろしい、ハックマン君。これから試験を開始する。 まずは、"S2" を目指しなさい。すべてはそれからだ。』
S2? それは ...
『必要なことはそれが教えてくれるだろう。それから、...... に気をつけなさい。』
[ノイズが、オードリーが聞き返そうか躊躇した間にサーの言葉は遠くなる。]
『"奴ら" は我々の秘密の一端を知るものだ。成功を祈る。私を失望させないでくれ。』
[そしてサーは去った。]
―― 現実世界<Mundane>/中央部周辺 ――
[中小企業が集い、蹴落としあう闘争の場]
[現実<Mundane>/電脳<Utopia>同時進行で全ての取引は進む]
[だが、今ストリートに忙しなく行きかう姿はない]
……フゥン、区域全滅カ。
[漆黒に包まれた爪先が倒れる人影を踏み、そのまますり抜ける]
[建物や道路にナノ単位で埋め込まれた3Dホログラム]
[連続で映し出される像は、滑らかに通りを歩む動きを見せた]
[平行で電脳<Utopia>を見ていたなら、頭を垂れる魔獣が見える]
[だが3Dホログラムに猛々しいグリフォンは映されていない]
[電脳<Utopia>のみのPGM/現実<Mundane>に介在せぬモノ]
イイ子ダ。飛ベ。
何カ変化ガアレバ警告シロ。
[Upper――研究所エリアで起きた異変へと同じ警戒を抱き、放つ]
[猛禽の翼が大きくしなり空へと羽ばたくモーション]
[散る羽根は舞い落ちる過程で細かなクラスタと化し消える]
[ストリートに動く人影やホログラムの姿はない]
[同時に見ている電脳世界にもAIの姿はなかった]
[眠らない都市が、眠っている]
[それでもトラムは運行しており、人影のない車窓が光を弾く]
自動操縦カ。
ソレトモ、眠ラナイ者ガイルノカ。
[南部電脳街と中央を結ぶトラムを見送り、再び周辺を巡る]
――現世/南部 繁華街の一角――
[行き交う人は、まだ動いていて、先程の光景には疑問符を浮かべたまま]
別に寝られるとこがあればいいのよ。空いてるスペースない?
そうそう、話がわかるじゃない。
え? そんなにかかるの? もーちょっとまけてくんない? 空いてるスペースにいるだけだからさ。
あーもう、ケチ!
[交渉は決裂したらしい。仕方なくまた別の場所を探しにふらふらと滑り出す]
[ストリートすれすれを漆黒の爪先が進む]
[ギャア]
[猛禽が鋭い声をあげ、嘴を遠く逃げる人影に向けた]
[人影が逃げた方向―――電脳街に黒目を向ける]
[キュルリ瞳孔が開き、こちらへ向かう形で倒れ伏す人影を確認]
アチラカラ、コチラノ途中カ?
[先程の人影は、先を歩く誰かが倒れるのを見て逃げたようだ]
[結局見つけられないまま、通りに面したカフェへと腰を落ち着けて]
どこにってのまではかかれてないのよね。
[取り出したフィルムを手の上で弄ぶ。まだ熱いコーヒーを一度に飲み干し、ゴーグルをはめる。手元に現れる幕のようなキーボードを叩き、電脳<Utopia>へとログインした]
生命系統ノ電脳ハ正常稼動。
人間ノ睡眠状態ニ酷似。
[瞳孔を開いたまま中央部へ黒目を向け、観察]
南部エリア稼動人物確認。
中央部及ビ周辺エリア未確認。
同心円ノ中心ハ―――マダ情報不足。
[動きのある場所との境界線を探す為、中央部周辺を巡廻再会]
[南部繁華街方面との境へ]
――Utopia・Public――
[ゴーグルで通してみる世界はいつもより荒い]
でも、反応速度はさすがに下よりはいいかも。
メールも着てなかったし、何もないとは思うんだけど。
[所々に感じる違和感を上と下との差だろうか、とも考えたが、先程の電波塔付近での出来事を思い出し]
何か、あったとか?
ここも人影少ない気がするもの。
[嫌な予感がして、esc後ゴーグルをはずす]
―― 現実世界<Mundane>/中央部周辺・繁華街との境界 ――
[ストリートに倒れ伏す人影は他の周辺エリアと同じ]
[境界に向かうに連れて、遠く声らしき喧騒が届く]
アチラモ動イテイルカ。
[ギャア]
[グリフォンが声を上げる]
[電脳<Utopia>にもまばらに影が存在していた]
[影が一つ現れ消えたが、他の影に混じり確認は取れず]
南部電脳街・繁華街確認。
西部ヘ回ル。行クゾ。
[南から西へ、中央部周辺を順に*巡っていく*]
―現実世界/ホテル―
[追いつかない演算を中止させたのは、暫くの後。]
[レベッカは手を離し、立ち上がる。]
<<Emergency>>
連絡を取らなければ。
[通信を試みる。]
[だが繋がることはないのだと、*まだ知らない*]
――繋がらない。
[レベッカの思考がだんだんと流れてゆく。]
[zero<Yes> / or / one<No>]
【この状況は普段の(というほどよくある)、他者が"主"にする攻撃か?
――No<0>
此処<Mundane>だけの異常でなく、彼方<Utopia>の
異常もあるということは、"主"に対する攻撃か?
――...No/empirical<...0>
∴<Consequence>】
優先されるべきは、状況の把握を目指し、行動する事。
この部屋に万が一誰かがやってきても、masterに危害を加えさせることを許さない。
[弾丸/刃の攻撃を防ぐ"盾"であり"剣"。]
[一般的な(ないし現実的であり物質的な)攻撃は身一つで守るが、そばになければそれも出来ない。]
[だが優先されるべきは、原因の究明、"主"の回復。]
[持ち物の中から、"主"専用の防御物を取り出す。]
[彼女自身は使用を認められていないもの。]
[考えられる防御のすべてを施して、]
いってまいります、坊ちゃん。
[部屋を出る]
―現実世界/ホテル内―
─ 現世<Mundane> / 中央部・電波塔周辺 ─
[塔周辺も内部と同様。そこかしこに倒れ伏す人々の姿]
[己以外に、動く影もなく]
──ゴーストタウン、みたい。
[正面ゲートで"Luth"を回収、現状報告を受け]
どの範囲まで、広がって?もう全てが同じなのかしら。
……ルース、お願い。
[AIに探索を頼み、その視界は右の義眼と接続]
[AIは高く飛翔。上空から街の様子を探索]
[普段ならば、街を高く高く見下ろすバードビューはお気に入りではあるけれど]
とりあえず、人を捜すべきかしら。
動いている人がまだ居れば、の話だけど。
[言い聞かせるように呟き、歩き出す]
【動く気配はない】
[歩く音も立てず、レベッカは探す。]
[かすかな音を捉える]
――誰かいらっしゃいます?
[声をかけども返事はない。]
[古風な、氷を落とす装置に、コップが置かれていた。]
[溜まっていた氷が、落ちてゆく音。]
……坊ちゃんと同じよう。
[それを使っていたのか、人が倒れている。]
[機械からグラスを外した。]
[その内部の氷は、既に作られるのを止め、やがて溶け出すだろうという事は想像に難くない。]
――ここに居ても、状況は変わらない。
[レベッカは、一度部屋に戻った。]
[外へ行ってくるという旨のメモを残し、すぐに出る。]
エレベーターは、
[動作していた。]
[音のせぬ中に、エレベーターの動作音。]
――どうなっているのかしら。
[向かう先は、ホテルのフロント。]
[その先の、外。]
サンプルは必要って、師匠は言ってたわよね。
サンプル……ウィルスで正解ってことかしら?
人々を"停めて"しまうウィルス。
あの場でのサンプル採取は不可能みたいだった。
動こうとされてなかったもの。
……なら、どこに?
[歩きつつ、思考をそのまま唇へ]
[電波塔から少し歩けば、旅行者の利用するホテルが林立する一帯]
[高い高い建物の間をただ歩く]
[レベッカの目は人の動きを捉えない。]
――異常は坊ちゃんだけではありませんね。
["人間"のようにすることも望まれたゆえに人前で解除はせず。]
外ならば、
誰かが知っているでしょうか。
[扉を開けた。]
[静まり返った都市――]
[動きを捉えるのは、早かった。]
【動いて、いる。
何か、知っている――?】
[目を向ける。]
[道の向こう、まだ少し距離はあり、声は投げない。]
[右の視界にはAIから送られてくるバードビュー]
[生身の人間が走るのと同程度の飛行速度]
[動く影は、見当たらない]
ルース、もう少し高度を下げて。
少しでも動く影を見かけたら教えて。
[一旦立ち止まり、AIに指示を出す]
[ぐるりと辺りを見回して]
[ホテル郡に重なるように、電子広告]
インフラは生きてるのね。
人・AIに限定してるのかしら?頭がいいみたい。
[吐息。上げた視線の先に]
―― 現実世界/中央部・電波塔 ――
[銀色のタクトを振り、
汎用PGM 88の黒鍵と白鍵を展開させる。
先ず、ある前奏曲を通常の4倍程で流しながら、
滑らかに指を滑らせた。
黒鍵と白鍵が奏でる即興の音楽が前奏曲に変わる。
触れていない鍵盤が自動的に沈み込んでいる。]
Blue in Blue――凍り漬けの司書。
先程集めたSample Dataの解析は終わったかい?
[受動的防御壁を既に低Levelで展開している。]
人の睡眠状態に酷似するが、刻々と意識は落ち込み、生体素材を使っていない人々は、Robotの機能停止と同義ほどにならん――か。
正常状態から、緩慢に停止。
以降は、解除されなければ目覚める事はありえない。
目覚めなければ、永遠たる眠り ―― 即ち 死 。
[少女であるようだった。]
――良かった。
[一般人であるというように / 特別な"主"の存在を感じさせないように。]
[安心、という色を滲ませたような声を発する。]
[足音も立て、彼女に向かう。]
あなたは、動けるんですね。
何が、おきたのか、ご存知ですか?
……皆さん、動かないので、どうしたのかと。
[義体であることは、一見ではわからずとも調べればすぐに知れよう。隠していない。]
ご存知であれば、教えていただきたいのですが。
────。
[動かない]
(よ、かった。人が、居た)
[幾分か表情を和らげて]
無事な人──わたしと師匠だけかと、思ってた。
[近づく足音に、警戒するそぶりも無く]
何が起きたか、わたしにも分からなくて──みんな、倒れて。わたしと師匠以外。
変な映像が。
[言葉は取りとめも無く・安堵による混乱]
【師匠・映像……】
[Pick upする単語。]
[恐らくはkey。]
[少女(子供と認識した)の様子に、レベッカは、微笑んでみせた。]
大丈夫、だから、落ち着いて下さいな。
[目線を合わせる。]
[微かに、語尾に滲ませるAの/心を安らげる/静める音を混ぜ。]
あなたと、あなたの師匠――かしら?
良かった。わたくしは、わたくしだけしか動いていなかったから――あなたの他にも動いている方がいるのですね。
あなたの師匠は、何が起きたのかは、……ご存知ではないのでしょうね。
[呟き]
変な映像、とやらも――わたくしは見ていませんが。
何か、この状況に、関係があるのかしら……?
―― 現実世界/中央部・電波塔 ――
死 と同義。
[ついで、メガロポリス全域の簡易地図を呼び出す。]
メガロポリス以外への連絡はとれない。
[困ったような哂笑を少し漏らした。]
衛星上の【Inc.】とも連絡が取れない為に、
現在、メガロポリス同Body同モデルでの再生は不能。
仮に、Systemが一部麻痺でもしていれば別問題も発生する。
この不祥事をどう処理するのか興味深い――…。
[懐から白い手紙の封筒を取り出した。
視覚素子を通して視ると、薄い光と共に、
電脳世界への媒体ともなっている事が分かる。]
[優しげな声音に、混乱が治まる]
ありがとう。……だいじょうぶ。
ええ、わたしと、師匠。わたしも他に無事な人が居るなんて思ってなくて──今、ルースに調べてもらっているけれど──。
わたしと師匠が無事で、お姉さんも無事だった。
他にも、無事な人がいるかもしれない。
師匠は──。
[しょんぼり、と視線を落とし]
何かご存知なのかもしれない。師匠はちょっと、普通とは違うみたいだから。
けれど、わたしには何も教えては下さらないわ。調べなさいって、わたしに仰ったの。
あの映像。≪REINCARNATION≫──輪廻。
詳しくは分からないけれど、あの映像の直後にみんな倒れてしまった。
関連性をゼロとしてしまうことは出来ないと思うの。
[言葉を切り、視線を上げる]
[女性の目をまっすぐに]
わたしは。
この現象をウィルス由来と考えてるの。
誰がどんな理由でかは、分からないけれど。
ネットを介し、電脳を犯して機能を停めてしまうような。
みんな、死んでるわけじゃなくて、ただ停まってるだけ。
今はまだだいじょうぶだけど、わたしたちもいつそんな風になるか分からないし、倒れてしまった人もこのままだと──。
[言葉を濁す]
―― 現実世界/南部 博物館 周辺 ――
[サーと別れて、通りに出たオードリーは、この世界に何か異変が起きているのに気付いた。]
変ね ... 人が歩いて、いない ...
それに ... 何? このノイズ ...
気持ち ... 悪、い、わね ...
[不快な空気に圧迫され、疲労感に似た正体の無い感覚が彼女を襲う。]
これは、試験、とやらと関係あるのかしら ...
それにしても一体何が ...
[コミュニケータから部下へ連絡を取ろうとしても回線が繋がらない。]
<<もしもし、もしもし、無駄か、困ったわね ...>>
今のところは、三人ということですね。
【ルースというのは彼女の"道具"?/情報としてまだ不要。
輪廻《REINCARNATION》?/Key/映像はこれに値する。】
[情報の整理を行い、]
[困ったような顔をする。]
そう、意地悪な師匠なのね。
わかっているのなら、教えてくれても良いのに。
――あなたの、予想はそれなのね。
[目を伏せる。]
[考える/演算する/繰り返す]
[再度、瞼を持ち上げた。]
―― 現実世界/南部 博物館 周辺 ――
[メーラを立ち上げて、メールサーバにリクエストしても、サーバがダウンしているのか、レスポンスはタイムアウトばかり。パケットがロスするだけ。]
BANK のサーバがダウンですって? こんなことが今まであったかしら ...
[博物館に向かう前にローカルにダウンロードした未読のメールに目を通す。この異常に言及したメールは無い、かと、思われた、最後に受信した1通を除いて。]
キャロ? ああ、彼ね。市況ですって。私が知りたいくらいよ。でも、彼はおそらくこの状況でも活動しているということよね。それは、つまり ...
[自分と同じ唯の "被災者" か、あるいは、この異常事態に何らかのかたちで関与しているものか ... ]
ウイルスだとしたら、なぜわたくしたちは、動けているのかしら。
[背を元に戻し、少し低い位置の少女を見る。]
――そんな状態に、させるわけにはいかないわ。
なぜ止まらないのかはわからないけれど、元に戻す方法……ウイルスだとしたら、ワクチンがあるかしら? を、探さなければ。
[幾つかの施行を平行して行いながら、]
――― Hypnos 。
[封筒を開き、Inkで書かれている文章の中には、
ヒュプノスという文字があった。]
上手く作られているものだ。
範囲を設定し、大規模な禍(わざわい)を齎す。
50年程前に流行った、都市向けのPGMにスタンスが似ている。 ――思い出すよ。
[360度の展望から外に視線をやる。]
これが遊戯の始まり。
『Utopia/Upper Utopia/Public
行動不能領域に移行します。カウントダウンをしますか?』
いや、止しておこう。
―― 現実世界/南部 博物館 周辺 ――
[彼女は、ヴィンセント宛にメッセージを送ることにした。]
<<
From: A. Hackman
TO: V. Caro
Subject: RE: Request for Information regarding Market Forecast
Hello, Mr. Caro:
もし、このメッセージを見ることができたのなら、連絡乞う。
Regards,
A. Hackman
>>
[おそらく届くまいと発信したメッセージは、何事も無かったようにネットワークの海に流れていった。]
これは、どういうことかしらね。
面白いじゃない。キャロさん。フフフ
[彼女は、自分が疲労感だけでなく、得体の知れない高揚感に包まれているを *感じていた*。]
ええ。それが分からない。
偶然なのか、誰かの意図があるのか。
誰かの意図だとしたら……嫌な話。
ワクチンか、もしくはウィルスそのもの。
解析できればワクチンが作れる。
……わたしにそれが出来るかはわからないけど、サンプルさえ取れれば師匠に頼むことも、たぶん。
[通信が入る。南部学術区域に生体反応の報告]
……他に動いてる人、居るみたい。
[視点を南へと]
あちら?
[少女の見る方向へ、視線を滑らせる。]
何より、原因の究明――
それがすめば、元に戻すことも可能ですね。
[口に出さぬ"猜疑心"/むける先は彼女の師匠]
【非常事態に(恐らく弟子を相手にだとしても)あえて試す必要があるのか/否か】
[だが口にはせずに。]
ともかく、人に話にいきますか?
わたくしも、あなたについていっても構いませんか。
あ――
『指揮者<コンダクター>。
最小限のインフラは保たれています。』
そうかい。
[補佐AIからの報告を聞きながら]
――下層への都市駆動の昇降手段がなくなり、
都市内の自動交通手段は確保されているものの、
シャトル……都市外への移動も不能か。
[頷き、軽く握った左手を顎にあてる。]
―現実世界/中央部電波塔-柱の間-―
[電波塔内の映像情報を精査。
至る所で人は倒れ、AIはその姿を消している。]
「………………。」
[外部のホログラム装置が起動可能か確認。
どうやら、ホログラムとして出ることは可能。]
「やれやれ。実に……実にタチの悪い偶然だ。
いや……偶然と呼ぶのは具合が悪い。
この私ですら、見えざる手によって
操られている……そうかもしれぬなあ。」
[ホログラムとしてどこかへ出現する準備。]
「私を待つは”真実の終焉”か。
もしくは”栄光の幻想”か……。」
そうね。原因を探るのは師匠からも言われていることだし。
他に無事な人がいるなら、その人の話を聞いてみることも大切だと思うわ。
一度、Utopiaに行ってみる必要もあると思うけれど……。
[と、思ってもいなかった申し出に目を瞬き]
一緒に来てくれるの?ありがとう。
わたしは──、
[一瞬、逡巡し]
Kot。"コット"と呼んで下さいな。
こちらこそよろしくお願いしますね。
[にこりと微笑み、折り目正しく一礼]
では、行きましょうか。
徒歩では、時間もかかってしまいますけれど。
どこかで"足"も、確保しなきゃいけないかしら……。
[くるりと体ごと南へ向け、*歩き出す*]
藪医者 ビンセントがいたような気がしたが、気のせいだったようだ……(藪医者 ビンセントは村を出ました)
医師 ヴィンセント が参加しました。
― 現実世界<Mundane>/南部区域:電脳街
La Mancha 内 SBY109 Theater - 会議室 ―
――だからさ!
今、求められてるのはMK5ってか。マジキレ5秒前の方じゃなくって『MajiでKoiする5秒前』っての?
なにかが始まる予感のドキドキでワクワクなわけよ!
[興奮した様子でまくし立てる俺。置いてけぼりにされたような表情の彼らに気づき、最初から話すことにした。]
まずはこいつを見てくれ。
[中央のテーブルの上のホログラム装置を起動させ、ブックマークからURLを送る。
旧世界の動画共有サービスのキャッシュが読み出された。
三次元映像ではなく、二次元のPV動画だった。
女性振り付け師のナツミが、またレトロなものを――と言ったが気にしない。
ショートカットの女の子が屋上で洗濯をしながら唄をうたっている。]
――ボーダーのTシャツの 裾からのぞくおへそ♪
[ああ……とどこからか溜息が漏れた。プロデューサーのハルモトはイントロを聴いただけでわかったらしい。
ネットワークが発達して以降の公的な記録は旧世界のものであれ、検索で一発で誰もが見つけることができる類のものではあったが。]
[双子が『未来予想図』という言葉を検索してその曲を見つけてきたように、俺が車中でネットワークに接続しながらなんとなくその時代の動画をちらほらと検索していて見つけたのが彼女だったというわけだ。]
《MK5……。絶滅した単語です。》
《――死語です。》
[双子はおもしろくもなんともなさそうに、突き放したことを言う。
――ああ、わかってるよ。
検索で調べてみたところでは、この曲が発表された当時ですらヤバい雰囲気の言葉だった。言ってみればすぐ風化しそうな、賞味期限のひどく短い言葉だ。
当時の女子学生の流行り言葉をタイトルにアレンジして持ってくるという発想自体、ちょっとさぶい。無理して若者側に寄ろうとしてるのがイタイ。そのくらいのことは、俺だって感じる。
だが、唄ってる彼女からは、そんなあぶなげな気配を木っ端微塵にして男の子のハートをわしづかみにするピカピカのオーラが迸り出ているじゃないか。]
――やっと私に来たチャンス
逃がせないの――♪
[そう、これだよ。この力強さ。
この時彼女は無敵モードだった。やばいタイトルのデビュー曲なのに、当然のようにヒットを飛ばした。
無敵モードのピロスエ。
沈滞した今の俺たちの状況を打開するのはそんな力なんじゃないか?]
「ピロスエはいいね。」
[PVが終わるとハルモトはにっこり笑って言った。俺たちはがっちりと固い握手を交わした。]
[劇場に行けば毎日アイドルに会える――アイドルを身近なものとするのが、SBY109と銘打たれたこのプロジェクトのコンセプトだ。
SBY109は人間と、AIの入った義体、ガイノイドの混合チーム109名を定員とする。
劇場で公演を行い、百回公演を見に来た客はMVP会員になれた。
そしてMVP会員には、好きなメンバーのレプリカたるガイノイドの販売が許される。
だが、残念なことに人間メンバーはいまだ定員の半数に満たない、若干48名。新規AIの開発も順調ではない。楽曲のダウンロード販売数は頭打ちとなり、興行収益はやや低迷しつつあった。]
[ピロスエがKochiという辺境域から現れたように、まだまだ未開拓のフロンティアは残されているはずだ。俺はそう主張する。メンバーを募集するだけでなく、積極的に色んな場所へと探しに行くべきなのだと。
ナツミはピロスエが好みではないらしくぶつぶつ言っていたが、プロジェクトのてこ入れの方針は概ね定まり会議は終了した。]
ところで、何が起きてるか知んない?
[劇場まで来る途中の光景が思い出され、聞いてみた。ハルモトたちはこもりっきりだったらしい。首を傾げるばかりで、真新しい情報は得られなかった。
塔の異変。電脳世界には異変が生じていた。空を駆る魔獣に騎乗する女。断絶した空間――。]
[塔を中心として発生しているらしい災害をよそに、しかしこの電気街の様子は普段とさして変わりがなかった。
劇場も普段と変わらず大入り満員だった。全体から言えば収益は下衰傾向にあるとはいえ、すっかり常連となったファンの客足は途絶えることはない。
大型ディスカウントストア、La Manchaの8階にある劇場へと続くリニアフローターは荷重オーバーで時折ストップするほどだ。冗談みたいな話だったが。
しばしステージを観覧すると、劇場のファンの熱気にあてられたように顔を仰ぎながら、その場をあとにした。]
― 現実世界<Mundane>/南部区域
電脳街 La Mancha 前 ―
おやん。ハックマン女史からだにぃ。
[駐車スペースから排出されてきたUGVの座席に腰を降ろしながら、返信を作成することにした。]
《今どちらですか……》っと。
[女史からの返信が簡単な対応策についてのものではなく、連絡を求めるものだったことがなにか複雑な事態が生じているものと予感させた。
電脳でも直接の面会でも話ができる旨のメールを送信した。
会議室にいる時からずっと、ManonとKanonは押し黙っている。みじろぎもせず固まったまま座席に身を横たえる姿は、人形というよりもっと無機的な家具のようだ。
その静けさが異変が生じている最中だけに妙に不気味に思えた。]
── 現世<Mundane> /西部・空中庭園──
[人が歩くのに最適な速度でゆったりと回転する通路。
ブルーの制服に身を包んだ公立学校の生徒たちが、メガロポリスの外に広がる緑を退屈そうに眺めている。子どもたちの外見は皆似かより、整っており、まるで人形のようだった。
遠くで子ども独特の甲高い歓声が上がるのは、見慣れない生物をこの場所で見る事が出来るからだろう。ざっと視界に入る範囲内にいる生徒の人数から、300人前後の集団だろうか。]
―現世/中央部―
【偶然< 必然?
何がしかの「意図」があり/即ち共通点?】
[思考だけは繰り返し繰り返し、情報を積み上げ、演算を開始する。]
[彼女の名を記録するのは、また同時に行われ。]
コットお嬢様。
[呼び方は彼女の望むままに幾らでも変更可能とし。]
――Utopiaには行っていませんが、火星への通信は不可能でした。
理由は、不明ですが。
[そうして南へと、彼女と向かう。]
ある程度のものでしたら、運転も出来ますよ。
通常の、乗り物でしたら。
見つけたら、それを"足"にしましょうか
── 現世<Mundane> /西部・空中庭園──
[空中庭園の一画にある教団が買い取った土地で、信者たちは旧時代に近い方式で自然農業を行っている。
セシリアはその農地で、行方不明者探索目的で雇われた保険会社の人間と、すでに出家し、信者自身のバックアップデータの削除をデータ保存会社に依頼済の信者の間に、《何時もの》《よくある》トラブルが起きたと聞いて、《仲裁》の為に、メガロポリスのはずれまでやってきたのだった。
今、くだんのトラブルの原因である信者は、晴れやかな笑顔で、収穫したばかりの野菜を籠に抱え、他の信者やセシリアと共に通路を歩いていた。]
―― 現実世界/南部 博物館 周辺 ――
[ヴィンセントからのメッセージの受信を告げるアラート。口笛を吹くオードリー。]
<<
ご機嫌いかがかしら、色男さん。
近くに居られるのなら、お茶でもいかがしら? 私は今、博物館の近くにいるのだけれど。
>>
[探るような短いメッセージ ...]
なあ……
[なにか気になることでもあるのか?と二人に尋ねかけ、上げた眼差しがUGVのコンソールに明滅する警告ランプに留まった。]
おい、KITT、どうした?
[UGVのAIに語りかける。]
「本社とのネットワーク接続が切れています。」
……なんだって?
[俺は訝しげに問い直した。
Kosha Industry Total Think system、略してKITT。
UGVのAIは、常時Kosha Cyberneticsのネットワークと繋がりシステムの一部となっている。Kosha Cyberneticsが一時とはいえ、社用車の管理を手放すことは考えられないことだった。]
医師 ヴィンセントがいたような気がしたが、気のせいだったようだ……(医師 ヴィンセントは村を出ました)
藪医者 ビンセント が参加しました。
― 電脳世界<Utopia>/Public:遊園地 - Dream Land ―
[そこはいつもと異なり、静寂の中にあった。客の人影一つ見あたらない。
動物型の乗り物は客に乗り捨てられたのか、路上に中途半端に放置されている。
いつもは音楽が響いてくる円形劇場も、象の亡骸のようにひっそりと身を潜ませていた。
男の影は陽炎のようにゆらめいて、その場から*消えた*。]
―― 現実世界<Mundane>/中央部周辺・西部エリアの境界 ――
[中央部周辺――ドーナツリングを南から西へ移動]
[右手に生物反応はなく/左手南部から西部エリアに反応あり]
[約90度の調査から同心円の中心を算出="中央部"]
中心部―――電波塔カ、エリア・ゼロ。
インフラハ生キテル。
電波塔ハドウナッテイル?
[人間のインフラを司るエリアゼロより、電波塔の方が重要と判断]
[黒は空に手を上に伸ばし、電脳<Utopia>のグリフォンを手招く]
――南部・繁華街――
[カフェを後にしてどうしようかと考えた結果]
もっかいあそこまで戻ってみようかな。
宿はてきとーに探すってことで。24時間営業の店でもいいし。
何より、さっきの現象が気になるんだもの。
まだ倒れてのか、他に人はいなかったのか。
よし。
[先程来た道をまた戻りはじめる]
そういえば、ホテルの中では、エレベーターが使えましたが……
[それは一昔前のものではあったが]
Ice machine/製氷機は動いていませんでしたね。
――何が動いて、何が止まっているのかしら。
[問うようにではなく、ただ呟くように。]
―現実世界/中央部電波塔―
[老人の姿を模したホログラムが、電波塔の
あちらこちらに出現する。]
「生きとし生けるもの…沈黙もまた一生の
うち経験すべきものだろうな。」
[昏倒する人々を静かに眺める。]
「いつから。いつからこうなったのかね。」
── 現世<Mundane> /西部・空中庭園──
[信者たちの服装は、セシリアと同じく身体のラインがくっきりと浮かび上がる様な、白のボディスーツ。
農業や酪農の修行を行っている信者たちは、比較的五体のボディパーツが揃っている者たちが多かったが、自然回帰の教義に基づき、義体や機械パーツを取り除いたその身体は、例えば──目の前にいる生徒たちと比較すると、《特異》に見えた。
五体の不自由だけではない。
褪せたような髪の色、劣化した皮膚の皺、沁み、ほくろ、疣……。
普通ではない外見に、白の衣装にしるされた教団のシンボルマーク──黒の十字架を囲む11の熟れた果実のような赤い繭(コクーン)。その彼等の腕に抱えた、野蛮なにおいのする有機物(農産物)。
晴れやかな笑みを浮かべる信者たちと、生徒たちが遭遇してしまった事に引率の教師たちは、通路上で凍りついたように立ち止まった。]
―現実世界/中央部電波塔前―
[電波塔前にも、昏倒する人々。]
「しかし、物言わぬ人自体見るのが久々だ。」
[電波塔前に老人のホログラム。]
「久々だからといって、こんなに一度に。」
[繁華街を抜けて、中央部までをゆっくりとしたスピードで駆ける。人の姿はどんどんと少なくなっていって、中央部付近まで来ると倒れている人の姿を見られるようになった]
まだ、倒れてるんだ。
何なの? これって。あの"手紙"、まさかこれを予見してたとかないわよね?
[倒れている人に駆け寄ると、その様子を探ってみる]
ん。
反応ないや。直接繋いで反応見られれば良いんだろうけど。変なウイルス貰いたくないもの。
通信途絶?ルースとの通信は──
[右側の視界はAIと直結されたまま]
生きてる。
もしかして外部に出すことが出来ないのかしら。
市街広告も、エレベータも生きてる。
インフラは完全に保護されてるのかと思ったけど、そうでもない?
これが誰かの意図だとしたら、その人は何を考えてるんだろう。
[考えるが、気分を改めるように]
レベッカさんは火星から来られたの?
わたし火星にはまだ行ったことがないの。
ここと似てるのかしら。
お嬢様 ヘンリエッタ が参加しました。
[そして、人は世界を握った]
[限りなく遠い過去 限りなく近い未来]
[人は地球(ほし)から去るだろう]
[遥かなる新しき世界を手に入れるために]
お嬢様 ヘンリエッタがいたような気がしたが、気のせいだったようだ……(お嬢様 ヘンリエッタは村を出ました)
村の設定が変更されました。
わからないことだらけね。
[困った顔をして。]
ええ。わたくしは、火星から。
似ている――といえば似ているかしら。
でも、こんなに広くないし、ドームの外へは出られませんよ。
生憎と、昔の人が言っていた――何だったかしら。水母? のような生き物は、いませんけれど。
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