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この村にも恐るべき“人狼”の噂が流れてきた。ひそかに人間と入れ替わり、夜になると人間を襲うという魔物。不安に駆られた村人たちは、集会所へと集まるのだった……。
1人目、自警団長 アーヴァイン がやってきました。
**************
村人=船員・乗組員・クルー
人狼=ヒューマノイド(人間に酷似したアンドロイド)
狂人=ベジタリアン
占霊狩=自由設定。人間であればOK
**************
※補足
肩書きについては
(・船長)
・副船長(複数
・航行員(複数
・副航行員(複数
・船外活動オペレーター(複数
・船外活動員(複数
などがございます。
※独り言は中の人推奨。墓下は行ったモン勝ち。
※何があっても泣かない。
※掛け持ちは極力やめましょう。
※ネタは振ってなんぼ、拾ってなんぼ!
※RP>>>>ガチ
※リアル大事に
※三日目辺りから24h予定
2人目、文学少女 セシリア がやってきました。
[レーション(固形食糧)をかじりながらモニタを眺めている。往路では様々出来事があったが、復路ではこれといって面白いこともなく、退屈した様子]
………軌道進行方向にデブリ群確認。密度薄。
回避の必要はないと思われる、
また、デブリ群を抜けた後処理として船外活動員による船体破損状況の確認を要請。
…以上。
[もぐ][レーションをほおばる]
[もぐ][インカムのスイッチを船内放送に切り替えて]
…船外活動員へ。
まもなく本船は、微小デブリ群を通過。船体へ多少の被害が出ると思われる。通過後、速やかに船体破損状況を確認のため出動を要請する。各自準備をしておくように。
[もぐもぐ][ごくん]
[食べきってしまったレーションの包装をダストボックスにねじ込んだ]
定員に達しなかったため、村の更新日時が24時間延長されました。
[インカムのスイッチを受信専用に戻してシートに凭れる]
………退屈。
[外を眺めても闇に散る星ばかり。何年この景色を見てきただろうか。でもそれももうじき終わる筈だ。地球の重力を想って少しの郷愁を感じたとか]
[しばらくして船全体を軽い衝撃が襲う]
デブリ群通過を確認。
…もう暫く船外には出ない方が良いかも。
センサにまだ映ってるから。
[船内放送で呼びかけて、モニタに気を配る。進路計算と速度計算を呼び出し]
進路良し。速度良し。デブリ群は完全に抜けたから大丈夫。
航行員より連絡。左舷前方装甲板に直撃あったみたい。
他にも直撃が無かったかどうか、調べて。
内部隔壁閉鎖、圧力調整完了。…外部隔壁開放。
[手元のキーを叩き、船外活動員を外へ誘導する]
[素早い操作で船外活動員をマーカーで追う。同時に誘導もこなしながら]
………退屈。
[その呟きをインカムがとらえることは無かっ*た*]
3人目、冒険家 ナサニエル がやってきました。
[長い永い旅の終わり。
見慣れた宙の風景を名残惜しむことも
故郷に近づくにつれ沸き起こるべき感慨もなく
無表情にその闇を見つめて物思いに耽る。]
このまま何事もなく着けりゃいいけど。
[もらした溜息にも特に意味はないのだろう、
退屈と言うべき状況が終わるのならばそれだけでいい。]
[――と、オペレーターからの船内放送を聞くと
身を起こして指示に従うだろうか。]
ま、やることがないよりは、な。
[何だかんだと言いつつ、船外活動は忠実に*こなして*]
4人目、学生 ラッセル がやってきました。
頑張って。
[船外活動に赴くナサニエルを小さく手を振って見送り]
退屈が一番…良く言う。
[退屈は嫌いだけど退屈じゃなくなる理由が危険による物なのはもっと嫌いだ]
…何も無ければ良い。
[無事に地球に帰れさえすれば―]
[レーションを齧りながら船内の見回りと称してうろついてみる]
…そう言えば最近船長を見ない。
[出発の前、父から聞いた話を思い出す―とある星に不時着した時船長が姿を見せず副船長とたまたま乗り合わせた別の船の船長が指揮を執った、と―]
…大丈夫。父の時代とは違う―問題などない。
[自らに言い聞かせる様に呟き、その後は無言で船内通路を移動する]
村の設定が変更されました。
少々言葉足らずだったのでアナウンス。
【襲撃・処刑】
・投票は乱数勝負。<挑み挑まれてください。
・記名投票で、処刑された人の投票先がキリング
・吊り:食べられちゃった★
・襲撃:逃がされちゃった★
・独言:中発言推奨
・墓下:意識の世界
【環境】
・宇宙船の中
・スリープカプセルは故障
・農場バイオーム(食料供給源)も故障
・プロロまでは、非常食のレーション(固形食糧)があり。
・各自の個室あり。シャワートイレ完備。
・食堂は何も出てこないが集会場所としてはあり。
・脱出ポッドは密かに故障しているため逃がされても、死あるのみ。
【追記】
・乱数=fortuneです。Dではないのでご注意を。
・バイオームの故障はプロ中に発覚予定です。
「な、なんだってー!?(AA略」てやりたい人はやっちゃってもOK。
・船長の行方も流れ任せの所があります。脱出、事故…なんでもござれ。
5人目、流れ者 ギルバート がやってきました。
[館内に響く放送の音は聴こえているのかいないのか 船外の闇を透かす透明の板に骨張った両手をつき、眼前に広がる那由他の星の広がる光景を見詰め、闇を映し込み紫苑に煌めく眼差しは瞬き一つせずに緩やかに揺らぐばかり。]
――…
[微かに震える口唇は音と成る言の葉を紡ぐ事も無く、音の伝わる筈も無い船外活動の気配を感じてか、口許を引き結びゆっくりと窓際から背を向け、先程まで手を突いていた闇を透かす板へと背を預け、僅かに喉を逸らし天井の人工的な照明を*見詰めはじめた*]
[インカムは着けたまま船内を歩き回る。持ち場は他のオペレーターに任せてきた。狭いシートに押し込められた数日間のせいか、歩けるだけでも開放感を感じる]
…嗚呼、狭すぎるんだ。
いくらエンジンがいいからって居住空間と勤務環境を無視するような設計は酷い…。
ギル?……それに、ラッセルじゃない。
[いつものようにギルバートの前は素通りしてラッセルを追う]
[早足に追いついて、眼鏡のブリッジをもちあげながら]
ラッセル……?
異常?なにが……って見たとおりか。
隔壁破損、内部汚染。イコル、役立たず。
食堂の定食、もう食べられない。
[思案げな表情で黙っていたかと思うと]
船内放送で知らせるべき?
それとも、パニック防止に内密にするべき?
ラッセルはどちらがいいと思う?
6人目、教師 イザベラ がやってきました。
[スピーカーからセシリアの声が聞こえる。
長い旅の間に、オペレーターの声はすっかり覚えてしまった。
モニタに視線を落とし、彼女の言葉を確かめるとスイッチを切り替える]
本日も異常なし、かしらね?
[もう何年も同じ任務をこなしてきたクルーたち、あとは母星につくまで同じプログラムをなぞるだけのシステム。
同じことの繰り返しは嫌いではない。
髪の毛を掻き上げまとめると、モニタの端に表示された母星までの距離を確認し、微笑んだ]
[割れた強化硝子、崩れるように足元に積み重なり靴の下でじゃり、と音を立てる]
知らせるにしても、そうでないにしても、この事態は異常。
航行時間がまだ長いから、スリープカプセルを使うべき。
スリープカプセルの調子、見てもらってくる。
[ラッセルをひとり置いて、その場を立ち去った]
[船外での活動を終え、装備を外しながら船内を歩く。
その道すがらにギルバートの姿を認めれば声をかけるでもなく、通りすがりに頭をくしゃりと撫でて更に歩む。]
……どうかしたか?
[なにやら穏やかでない様子で佇むラッセルを見つけて声をかけ、手袋の中指を口でくわえて外しながら歩み寄る。]
[少し考え]
…レーションも残り少ない。隠しても直ぐに分かる。なら、隠さない方が良い。
…頼む。
[セシリアに任せて自分は現場保存に徹する事にした]
…ナサニエル。
[迷いつつも見れば分かる事だと口を開く]
…農場バイオームが破壊された。セシリアがスリープカプセルの調子を確認中。
[船が順調に機能している限り、自分の仕事はさして多くはない。
各人から上がって来る報告を確認し、まとめ、遠い母星に報告するだけ。
私室のコンピュータからでも十分に可能な任務。
癖のある乗組員たちの報告を正確に把握するのは骨が折れるが、他にやることもないこの状況では良い暇つぶしだ。
操作パネルに触れ、昨日の報告を確認した。]
[靴音が響く。船内を歩くとつなぎの上衣が邪魔になり、袖を引っ張ってきて腰で結んだ]
スリープカプセルの調子を聞きに来たんだけど。
『それが…ちょっと』
ちょっと何?ちょっとって何?
すぐ使えるの、使えないの、どっち?
『その、少し…いえ、かなり時間が要るかと』
故障?それとも点検中?
『こ、故障、です……』
あっちもこっちも……まったく。役立たずのポンコツ船。
何が最新鋭だって?笑えるわ。
…とりあえず、状況報告はそれで以上?うん、ありがとう。
[形だけの溜息をついて踵を返す。戻る先はバイオーム]
……酷いな。
これじゃもうまともな食事の確保は無理か。
[言われた通り、それは一目でわかった。
すいと目を細め、現場を眺めつつ
セシリアの同行を聞けばうなづいて。]
まぁ、まだ到着まで期間があるし、
スリープカプセル使うのが妥当だろうな。
戻った。最悪。
スリープカプセルも長期修理のため使用不可だった。
……そう。知れるなら早い方が良いってことか。
わかった。管轄外だけどアナウンスしておく。
[インカムのスイッチを船内放送に切り替えて]
全乗員へ。
こちらオペレーター・セシリア。悪い知らせが二つ。
農場バイオームの隔壁破損、内部汚染のため、現状食料はレーションのストックのみ。また、スリープカプセルも長期修理のため使用不可。
航行員以上の責任者に判断を仰ぎたい。…以上。
[ぷつっ][スイッチを受信専用に戻し。ラッセルにこれで良い?と視線を送る]
定員に達しなかったため、村の更新日時が24時間延長されました。
[ナサニエルに頷こうとした所にセシリアが戻り]
泣きっ面に蜂…まさにこの事。
[頭痛がしそうな状況に首を振り。
放送を終えたセシリアの視線に頷いた]
長旅でガタがきたか?
だとしたら随分お粗末な造りだな。
[報告に僅か眉根を寄せて嫌みの一つもこぼすが、
バイオーム内の様子を確かめると一言。]
もう使えないんなら封鎖しよう。
完全にダメだ。ここの改善策はない。
[スリープカプセルの修理待ちが現実的だが
それも見通しがたたない今は建設的ではない。]
さて、どうするか。
あら、まだ故障の原因が特定できていないのね。
[モニタに表示された報告書に目を落とし、眉をしかめた。]
今のところ、これを必要とする事態は起きていないけれど……。
これが無いと、緊急時の死活問題よね。
あー、船長に怒られるわ。
修理屋は何をやってるのかしら?
[舌打ちし、またデータを探ろうとした時、スピーカーから女の声が聞こえた]
火星日帰りツアーとは違うんだからこのくらい覚悟で乗船したんでしょ。泣き言は言わない。最善を尽くす。それだけ。
[といってもレーションのストックも大量にあるわけではないし今の最善がどんなものなのか想像がつかない]
封鎖は賛成。迂闊に入ると危険。それに…誰かが壊した可能性がある以上誰も近づけては駄目。少なくとも地球に戻るまでは。
…とりあえずレーションを無駄に食べない。少しの空腹は我慢。
[それくらいしか思いつかない]
[ラッセルの頭をぽんぽん、と叩くと]
何か、考えないとな。
……それもなるべく迅速に。
[レーションのストック分はそう多くないはず。
――のんびりはしていられない。]
破片やら危ないし、処理は俺がするわ。
[ラッセルやセシリアにそう言うと、やれやれ、とこぼしつつ、脱いだばかりの手袋をまたはめて、危なくない程度に封鎖の準備を始めるだろうか。]
はぁ?
[聞こえてきた知らせに上げた叫びは、他に聞こえることは無かった。
苛立たし気に髪を掻き上げ、船内アナウンスのスイッチを入れる]
こちら、イザベラ・ドレイク。
すぐに農場バイオームへ向かいます。
バイオームの担当航行員と修理屋も来て頂戴。
他、航行員以下は通常業務にあたり連絡を待つこと。
[スイッチを切り替え、責任者用の回線に繋いだ]
船長?
さっきの放送、聞こえてます?
厄介なことになったみたいよ。
[返事は無い。舌打ちをし首を振ると、マイクスイッチを切り船内通路へ出た]
ああ、忘れるところだった。
[予想外に動揺しているらしい。軽く舌打ちした。
船内通路を急ぎながら、片手で通信端末を操作する。
船長と副船長にだけ、短くメールを打った]
”食料庫の封鎖、レーションの在庫確認と*確保を*”
[準備中に聞こえた船内アナウンスに顔をあげ、
作業を途中でやめればため息。]
修理とかってレベルじゃないが、
指示が有る以上、触らない方が良さそうだ。
[再び手袋を脱いで見慣れすぎた星を眺める。]
今出来ることは通常業務をこなすこと、ね。
……つっても終えたとこだしサッパリしたいから部屋戻るわ。
シャワーでも浴びながら考えてみるよ。
[二人にそう言い残せばイザベラを待つこともなく
自室へと足を*進めた*]
……頼んだ。
[遠巻きにナサニエルの作業を眺めていたが、入った放送を耳にすると、身軽に離れ]
気をつけて。
[一言かけると、持ち場であるオペレーションルームへと戻って*いった*]
・ヒューマノイドを食することに関して
用語で言う「黒出し」で食料としないことを推奨します。
生体部品は少ないので、食べられません。
・アーヴァインについて
クルーの一人です。最初に脱出させられる人間なので「船長」としてしまってもいいかもしれません。この点メモにて要すり合わせ…。
[――ギルバート。一体何を見てる?]
[鼓膜を震わせるラッセルの声にも照明を見詰め続け]
……カリ…
[殆ど口唇も動かさず小さく呟く様に答え、緩やかに其方へと向き直るも答えを待つらしきラッセルを見詰め、漸く幾度か瞬き一旦は口唇を引き結ぶ]
ヒカリの中を…、…――
[「探してた」と語尾は矢張り囁く如く小さく、回答に満足したのかしないのか去って行くラッセルの挨拶に緩やかな瞬き一つを返事とし、見回りに戻るらしき背中を眺め、ラッセルの背も消えないうちに新たに近付いてくる気配と声に、緩やかに首を傾けセシリアへと紫苑の眼差しを移し]
セシリア。
[まるで其れが挨拶かの様に名を呼ばれ静かに――けれど其れは機械的なものではなく、挨拶としての役割だとすれば充分に果たせる程度には穏やかな温かみのある声音で――呼び返し、自身を素通りしラッセルの後を追うらしき様子を気に留める気配も無く、先のラッセルと同じくセシリアの背を眺め、今度こそは其の背が消えるまで見詰め続けた]
[一旦は背後へ頭を傾け照明へと視線を戻すも、闇を透かす透明な板の向こう側の世界に向き直ろうと背を持たせていた身をおこし、先と同じく透明な板に両手を突いて数多の星の煌めきを瞬きもせず見詰めるているも、不意にラッセルとセシリアの去って行った方へと視線を戻し、慌しい気配の漂うのに不思議そうに首を傾げ]
――…?
[背後から伸びるナサニエルの手に依り掻き混ぜられる癖のある褐色の柔らかな髪は、照明の光に透け仄か緋の煌めき零し彼の手を滑り落ちただろう。
視界に紛れ込む異物に撫でられた獣の如く僅か眼を細め、闇を透かす透明な板に映り込んだナサニエルをぼんやりと眺め、其の行動の意味へと想い馳せているうちに気配は騒ぎの方へと遠退く]
[響くイザベラの放送に緩やかに館内へ向き直り、程なく声の主が現れると一拍の思案の後に瞬き一つを挨拶代わりに其方へと歩み、お世辞にも敏捷とは云い難いながらも急く彼女に歩調を合わせ]
担当じゃないけど、手伝うよ。
[持ち場は異常無いし、と――彼の持ち場は船体の中核部が主であり、仮に大きな異常があれば船自体が危うい状況と成るだろう――共にバイオームへと向かい、其処に広がる光景に――汚染された其れ等は元が摂取出来る筈のものでありながら、所々汚染の為の斑点が浮かび始め毒々しさを漂わせ、常の健やかな筈の鮮やかな気配は消え失せていた――足を止め静かに見詰める]
――…
[イザベラに報告する船員の声もイザベラの指示も聴いているのか如何か、パンツの尻ポケットから出した黒い手袋をはめ、汚染され斑点の浮く其れを指先でそっとなぞり]
空腹の余り汚染物でも好いから摂取しようと、無理矢理に封鎖を解かれる危険が無いとは云い切れないし、封鎖前に汚染物を完全に処理してしまった方が好いかも知れない。
[誰に云うでも無く強いて云えば汚染された其れに向かい淡々と呟いて、緩やかに瞬き封鎖作業を行うラッセル達と共に*作業を始め*]
[ナサニエル達に後を任せ自室へと戻る]
…父は運が良かった。
[食料系統に異常はなく不時着した星には宇宙服の不要な構成の空気もあり帰還の術も見つけられた。対してこちらは―]
…帰還までにレーションが尽きない確率―0.0001パーセント。
…絶望的。
…スリープカプセル修理完了までは―0.001パーセント以下。そもそも何時直るかも不明…やはり絶望的。
[希望の欠片すら見えない―]
―private room―
[熱いシャワーで作業服独特の臭いを流し、
今度は冷水に切り替えて頭から浴びる。]
酸素や水があるだけマシとするか。
……今は。
[乗組員の人数とレーションの予測残量。
スリープカプセルの修理期間の目処。
不時着できそうな惑星の有無。]
過去にこんな例があったかは調べる価値があるのやら。
[海上で遭難した船の乗組員が共食いをした、なんて事件が過去にあったのは記憶しているが――]
馬鹿馬鹿しい。
[呟きながらタオルで髪を拭く。]
[考えても名案など浮かばない。
服に袖を通しながら、それでも考えてはみるけれど]
スリープカプセルの修理を急がせることが
まだ一番現実的な気がするな。
[それすらが絶望的であることくらい知ってている。
バイオームがどうにもならない以上、修理のアテはそこしかない。
息をつき、身支度を終えれば通路に出て歩き出す。]
―自室―
[ドア一枚を挟んだ先、騒然とした空気の中飛び交う疑問・質問・詰問・楽観的発言―こんな時ばかりは副航行員にも個室が与えられるこの船であってありがたいと思う。同室の人間に色々詮索される煩わしさと無縁だからだ―]
…最悪の事態を想定する必要もある。
[レーションが尽きて2〜3日内にスリープカプセルの修理が完了するか地球に到着するかどこかの惑星に不時着しない限り―そしてどれも奇跡でも起こりえない限り実現しないであろう以上99.9999パーセントの確率で―『それ』を行う必要が出てくる―]
…出来れば緊急用脱出カプセルに望みを掛けたい所。自分が船長ならそうする。
[だが、その船長は未だ沈黙を保っている―ならば]
…覚悟しておく必要はある。
[ギリ―きつく拳を握り締めれば掌に爪が食い込むか]
―→通路―
[バイオームで作業をする船員達は表向き真面目に働いていたけれど、カプセル故障の件と相俟って誰も必要以上に口を開く事は無く、汚染物の醸す毒々しい雰囲気に重苦しい空気を添えていただろうか。
作業のひと段落したのを切欠に黒い手袋をはずしながら出口へと向かい、最後に振り返り閉鎖されゆくバイオームをゆっくりと見回し、静かに其の場を後にして何時も通りの足取りで――廊下の材質的に元より足音は余り響かないかも知れないが全く音を立てず、眠った儘に歩く夢遊病者の様にすら見えるかも知れない――廊下を歩き始める]
――…
[視界に映り込むナサニエルの姿に不意に歩みを止め、自身の手へと視線を落とし暫く見詰めてから、顔を上げ彼へと向かい――先程そうされたのを真似る様に――手を伸ばす]
[足は無意識に、バイオームへと向かい始めて、その間も考え事をしていたものだから、音もなく歩いてきた男には気付かなかった。
ふいに視界に影が差し、誰かいたかと気付いて顔をあげれば彼の手が伸びていて、刹那、微かに驚いた面もちを見せるもよけることはしなかった。]
よぅ、ギル。
バイオームにいたのか。
[向かおうという意志はなかったが、自然と足が向いていたのに気づき、何となく尋ねた。]
[抵抗をされる事も無く伸ばした手はナサニエルの髪を掻き混ぜ、ひやりと湿り気を帯びた感触が指の間を伝うのに一瞬動作は止まるも、乱れた彼の髪を手櫛で梳く様に幾度か髪を撫でつけ手を放し、再び自身の掌へと視線を落とす]
冷たい。
[呟くもナサニエルの問い掛けにゆっくりと顔を上げ、頷く代わり瞬き一つで肯定を示し、緩やかに半身を捻り来た道とナサニエルを交互に見詰め、如何やらバイオームへ向かうらしき様子に首を傾げる]
作業は、ひと段落したけど?
[彼が自分の髪に触れて直後、止まった動きに髪の状態を思いだし一瞬思案するも、彼の指が髪を梳くのを見守り、離れるのを待ってから、呟かれた言葉にくすりと笑い]
悪い、ちゃんと乾かしてなかった。
[今度はまた自分がくしゃりと彼の柔らかい髪を撫ぜ、軽くだけ直して手を離す。
バイオームのことを聞けば通路の先を見つめ]
……そうか。
まあ、船行員が片づけてるなら管轄が違うし
特に用事もなかったんだけどな。
[ともらす。]
―オペレーションルーム→自室―
[束ねていた髪を解いて、再び結いなおす。見慣れ過ぎたオペレーションルームから自室への道順。上の空で歩く]
………。
[プシュ][ロックを解除して室内へ。閉まった扉に背を預けて溜息をついた]
八方塞ね。
…このプロジェクトは大失敗、責任者の首が飛ぶ。
[す、と足を進め、奥の壁にピンで留めてある封筒を手にする。表には「遺言書」と書かれてある。その中身をどのくらい前に書いたのかも、もうおぼろげだ。中を透かすようにかざし、封筒の角を指先でなぞる]
村の設定が変更されました。
[体温を確かめる如く手の甲でナサニエルの頬を撫ぜおり]
濡れたままだと、風邪をひく。
[零される笑みを見詰め緩やかに瞬く頃には、逆にナサニエルの手が伸びて褐色の髪が混ぜられ、視界にはちらちらと過ぎる前髪の零す緋色が映り、矢張り撫でられた獣の如く目を細める]
バイオームは――闇に覆われた。
[何も見えない、と小さく添えられた言の葉は彼に向けてではなく、特有の曖昧な言葉の序にか口唇から自然と零れた呟きだったらしく、ナサニエルに聞き取れたかも定かではない]
カプセルの方は、見た?
責任者は首が飛ぶだけ。私たちは…生存が絶望的。
フリーズドライの缶詰…。
最悪。
[口癖のように吐き出して、封筒を元の場所に戻す。できるだけ、目立つようピンで留めた。万が一―この場合そんなに確率が低くは無いが―命を落としたとき発見しやすいように]
誰がアレを読むのかしら。………誰でもいいか。
[結っていた髪を解くと作業着から普段着に着替え*はじめた*]
[バイオームの状態は深刻なものだった。
その場にいた航行員から説明を受け、一瞬まなじりがきつく上がる。
背後からかかったギルバートの声にひとつうなずくと、振り向いて笑顔を見せた]
そうね。
汚染されているものは土壌も全て処分しちゃいましょう。
作業の指揮を頼んでよいかしら?
[そのまま、彼が作業を始めるのを確認視界の端で確認し、また航行員と話し込み始めた]
[頬に当てられた手と添えられた言葉に瞬き]
風邪ひいてる場合じゃないってのにな。
[少しばつが悪かったのか自分を皮肉り、]
ま、あとはじきに乾くから、次から気をつける。
……バイオームは封鎖済みってとこか。
あるだけ危険な状態だ。一つ片づいた。
[曖昧な表現から状態を予測し、最後の言葉は聞こえていたのか否か、後半の言葉は独り言のニュアンスに近いもので、もう一度だけバイオームの方向を見ると視線は彼に戻し]
カプセルはまだ、自分の目で見てない。
報告を聞いただけだよ。
[一通り状況の確認を終えれば、封鎖作業は他に任せ、通信端末からオペレーターに指示を送った]
舟の現在座標と、近くの補給衛星までの距離を確認して頂戴。
[入れ違いに上がる残り食料の報告を、表面上は笑顔のまま確認する]
そう。ありがとう。
[目は笑っていなかった]
[それでも笑顔は崩さぬまま、バイオームを後にする。
周りに人がいなくなったのを確認し、笑顔を崩した。
苛立たしげに端末のパネルを叩き、船長を呼び出す。
何度かそれを繰り返したが、返答はなかった。
舌打ちし、端末を閉じると舟の中核部へ*向かう*]
医務室は汚染されてない。
[己を皮肉るナサニエルに対するフォローと云うより、風邪をひいても風邪薬は貰えると云う事実を淡々と述べ、以後注意するらしきにはまた頷く代わりに瞬き一つを返す]
イザベラの許可もおりたし土壌まで全部処分した。
其れでも未だ闇は残ってるし危険だろうけど。
[イザベラの指示通り現場で指揮をとり、汚染物の船外破棄作業は完了したけれど、バイオームの残骸は其処に未だあると言外に添えて、戻される視線を受け止め生返事と共に暫し思案の間を置き]
――…
[ノア、とナサニエルを見詰めた侭に、口唇だけが微かに震え]
カプセルを見に行く。
そうか。
[医務室無事の報告を聞いて穏やかな目で彼を見た後、窓から宙の景色を眺めつつ自分の湿った髪を指で少しいじり乾き具合など見て]
土壌から全部か。ご苦労様。
ただ封鎖するよりかは遙かに安全だ。
[ねぎらいの言葉をかけ、けれど届いた声にまた視線を戻すとそのままに]
……ノア?
[声に出したけれど。
カプセルを見に行くと言われて]
俺も行くわ。
[シャワーを終え髪が完全に乾くのを待ち部屋を出る]
まずはカプセルの確認…生存率に関わる。
[カプセルルームに向かう途中ギルバートとナサニエルに出会えば]
ギルバート…ナサニエル。
…2人ともカプセルに?
[そう問いかける]
[ナサニエルの視線が逸れるのを追い掛け、髪を弄る彼の姿から闇を映し込む透明な板の向こうに広がる光景へと、束の間だけ紫苑の双眸はフォーカスを変え瞬く光を眺め、労いの言葉にナサニエル自身へと緩やかに顔を向け直す]
ご苦労なのは、俺よりイザベラ。
[自身の口唇だけが紡いだ言葉をなぞる声に瞬く]
塗装が剥げたら、箱舟に成る。
[ナサニエルの脇を通りながら静かに囁き、共に行くらしきに一旦は立ち止まり彼を促して、彼が足を動かし始めるのを見てまた足音も無く傍らを歩き始め、少し歩けば気配と声に立ち止まり、ラッセルへと緩やかに視線を向け問い掛けに頷く代わりに一つ瞬く]
自分の目で、見てみたい。
ラッセルは、見た?
[カプセルルームに向かう途中、ラッセルの姿を認めれば片手をあげて挨拶。
問われたことにはそのまま]
そ。
カプセルの状態確認しないことにはな。
ラスも一緒に行くか?
[首傾げ、問う]
[ギルバートの問いには首を振り]
まだ。
[ついでナサニエルに問われ頷き]
ああ。同じ目的を持つ者同士が揃って居る以上分かれる必要は無い。
んじゃ行くか。
[ラッセルも合流して再び歩み出す。
――Noahの方舟……頭で反芻し、僅か目を伏せ思案するも、何事もなかったように前を見て歩む。]
バイオームの封鎖は出来たみたいだ。
[端的にラッセルに語りかけ。]
そう。…万一侵入者が無い様見張りたい所。
…その様な精神的余裕があれば。
[食料が尽きれば何をするか分からない―そして見張り役と言う物が最も侵入に近い存在である以上難しいだろうと自分でも思うが―]
侵入者、ね。
[乾ききらない髪を触りつつ]
レーションがあるうちはそれも出来そうだけど
なくなった時がどうなるやら。
[髪いじりをやめ]
見張る体力と精神力の持続が困難か。
[言外に食糧の底を予期した物言いで。]
―廊下→カプセル室―
[普段は静かなカプセル室に今は動き回る人の気配があり、バイオームの様な汚染された毒々しさは無くとも、作業員達には修復の目処が全く立たない焦燥が滲み、会話は多く無くとも室内は妙に騒がしいだろうか。
周囲を見回し人の集まっている制御装置の辺りで視線を止め、傍らで交わされている二人の会話を聴いていたのか、作業員達の様子を見詰めた侭に口を開く]
侵入しても、闇しか無い。
闇に取り込まれるだけだ。
[作業員達へと歩み寄り状況を訊ねるも、焦燥に依る苛立ちに紛れた投げ遣りな回答を受け、思案気に作業員を見詰め静かに瞬いた]
―ああ。
[ナサニエルに簡潔な返答を返しカプセルルームへと]
―カプセルルーム―
[辺りを見回し]
…見込み薄。
[作業員達の耳に入らぬ様に小さく呟いた]
[カプセルルームの様子は常とは違って慌ただしく
苛々した様子の作業員を一瞥し、ため息。]
誰かが闇に取り込まれないように見張る。
とはいえ、ミイラ取りがミイラになったら
それも意味がないけど。
[室内を見つめながらやはり最後は独り言のようで]
[こちらも独り言の様に]
…父は言った。
「一番恐ろしいのは人の心だ」
…自分もそう思う。
…父はこうも言った。
「闇は人の中にある」
[宇宙の深淵よりも暗く巨大な闇が―]
[ラッセルの言葉に視線を投げるけれど、
一拍見つめただけでそのまま視線を床に落とし、]
親父さんは――正しいかも、な。
[短く告げた。]
闇、か。
[今度は天井を仰ぎ思案気に。
視線はまた、作業員と希望の持てないカプセルに戻す。]
…出来れば間違ってて欲しい。だが―
[それ以上は口に出さず―これ以上の進展は無いと思いながらも何故かこの場を離れる気にもならずただカプセルに視線を向ける]
[子ども扱いされたと怒るかもしれない
ラッセルの頭をくしゃり、撫でて]
俺も間違ってる方が嬉しい。
[嬉しい――間違いでないと自らが認めつつの希望の言葉。
「かも」と濁したのは少なからずそう思っていたからかもしれず。]
[大人しい様子に刹那視線を投げてまたカプセルに視線を戻す。
バイオロームの封鎖は完了。進展のないカプセル。]
……副船長のとこなら幾分か情報がいってるかな。
バイオロームとカプセルの使用不能しか情報がなきゃ
幾分か思考もマイナスに偏ってる気がしないでもない。
[呟いて。ギルバートの言葉に]
光に寄り添う、か。
[言葉の真意はわからねど。反復して。]
[ギルバートの呟きが聞こえ]
―光が無ければ闇は闇では無くなる。逆も同じ。だが光を飲み込もうとする闇も闇を払おうとする光もある。
…侭為らない物。
[呟き返した]
[船の中心部に向かおうとした時、携帯端末の船内通話ランプが点滅した。
青く光るボタンを押し、回線を繋ぐ。
聞こえてきた連絡に、また眉をしかめた]
そう。わかったわ。
誰かそっちに向かわせます。
[言って、そのまま回線をオペレーターに繋ぐ]
非常食料庫付近で手の空いている作業員を、食料庫に回して頂戴。
……ちょっと、揉めているみたいなの。
なるべく冷静で力のある人がいいわ。
[言って、少し考えてから付け足した]
ギルバートの手が空いていたら彼に。
駄目なら……そうね、任せるわ。
現場に向かう際に私に連絡するように言って。
……こうして考えてたって名案が浮かぶとは思えないしな。
[問いかけには肯定の意をみせて、
ラッセルも行くのなら行動を共に*するだろう*]
―カプセル室→廊下―
情報の開示は混乱を増徴するかも知れない。
必要があればイザベラから放送が入るんじゃないかな。
俺は、イザベラの顔を見に行く。
[腕に装着した通信機へオペレータからの通信を受け、内容を確認し暫くは思案気に盤面を見詰めていたが、イザベラへと了解の旨を伝え其方に立ち寄ると云う短いメッセージを送り、話し込む二人へ顔をあげる]
光も闇も、在るだけ。
其処で――…足掻くしかない。
[色を探して、と添えられる言の葉の真意は矢張り知れず、非常食料庫へ向かうべく壁から身を放し二人の顔を交互に見遣り]
闇の侵食はもう始まってる。
[カプセル室を出て歩き始める]
よくもまあ、次から次へと。
[通話を切り、ため息をついた。
息を吐くと同時に、ぐうと腹が鳴る]
ああ、もう当分まともな食事は望めないのね。
昨日しっかり食べておけば良かったわ。
[今ならまだ少しは、食堂にも食材は残っているかもしれない。
食堂も封鎖すべきだろうか。
口の中で呟いて食堂に連絡をとれば、既に非常食料室から連絡がいっていたことを知らされる]
そう、食材は全て非常食用に回したのね?
ありがとう。良い判断だったわ。
[言いつつも、少しだけ声のトーンが落ちたのはもう新鮮な野菜も肉も手に入らないと実感したからか。
通話を切ると、暫く宙を見つめ、眉を寄せた]
[物思いに耽る間も無く、ギルバートからの返答が入る。
他に聞こえないよう、メールで指示を送った]
”非常食料庫で揉めてる船員がいるそうよ、とりあえず、抑えてきて頂戴。
空いてる船員は好きに動員して良いけれど、なるべくバイオーム封鎖の話を知っている人にして。
まだ、食料全滅の話は広めたく無いの。
私も少ししたら食料庫に向かいます”
放送のみでは何時か不満も出る。
ギルバートも行く?
[と見やるも通信を受ける様子にどうやら無理な様だと思い直し首を振る]
…忘れて。
[そうして目的の場所に向かう途中で最後に掛けられし言葉を反芻するか]
色を探す―どこ?
―廊下→食料保管庫―
[擦れ違う船員達の面持ちも浮かないけれど、現状を省みれば当然の事なのかも知れず、意図せずも向かう先が同じと成った二人と共にイザベラの元へ向かう道中、右腕の通信機へと入るイザベラよりの返信を暫く見詰め、ラッセルの一つ目の問い掛けには其方へと向き直り瞬き一つを肯定として返す]
少し、仕事があるから。
後で向かうって、イザベラに伝えて。
[再び掛けられる問いにラッセルを静かに見詰め]
――…ラッセルは、何色かな?
[更なる問い掛けを投げ二人と別れ食料保管庫へと向かう]
―廊下―
分かった。
[通信端末で連絡を取ろうと準備しながら答え]
自分の色―?
[更なる問いに目を瞬かせながらギルバートを見送り。
気を取り直して改めて連絡を取る]
―副船長?聞きたい事がある。それとギルバートは先に食料保管庫へ行く。
―食料保管庫―
[近付けば直ぐに喧騒は届き始めるも歩調を変える事無く保管庫前へ辿り着き、船員同士が言い争いを超え掴み合い殴り合う生々しい音さえ、空気を震わせ保管庫全体を震わせる勢いで響き渡る。
自身の食料確保をする者、手当たり次第に食料を口に詰め込む者、押し留めようとする警備の者と掴み合う者、数名で徒党を組んで保管庫へ押し入った連中に依って、混乱は混乱を呼び凄然とした様子をぐるりと眺める]
――…
[自身の姿を見止め天の助けとばかりに駆け寄って着て捲し立てる警備担当の者を静かに見詰め、徐に彼の襟首を掴み非常食の山へと向かい投げつけると、一角が崩れ一際大きな音を立てるか。
静まり返る保管庫内をぐるりと見回し]
不要な消費は、極力避けるべきだ。
非常食を漁っても生き延びれない。
処罰されるのが落ち。
脱出ポットの整備を確認する方が建設的だと思う。
[メールを送信すれば、次はまた通話のランプが点滅する。
相手を確認し、回線を繋いだ]
ラッセル?
[少しだけくぐもった声が返って来る。伝えられた伝言に頷いた]
了解よ。
聞きたいこと?
通話で問題ないなら言って頂戴。
[トラブルの報告では無いことにまず安堵しつつも先を促した]
[安易に予測出の来る食料の枯渇に思考を奪われていた者達は、脱出ポットの存在を思い出し幾らか精神的に余裕を取り戻したか、其の表情が和らぎ手の止まるのを見守る]
整備は整備担当者の仕事。
邪魔をすれば、帰還の見込みが薄れる。
[脱出ポットへ向かおうとする連中の前に立ちはだかり、ひとりひとりの顔を見詰めて片手を挙げて退室を牽制し、非常食の山から立ち上がる警備担当者へ視線を移す]
静かに成った。
[確かに混乱は収まったけれど全く手段は選ばないらく、悪びれた様子も無く告げ、ばつの悪そうな押し行った連中のひとりの胸ポケットからレーションを抜き取る]
持ち場を離れている間に船が故障したら、食料があったって死ぬかも知れないし――…ベジタブル味のレーションばかり食べてたら人参嫌いに成るかも。
[抜き出したレーションの包みを眺めながら呟き、彼の胸ポケットへとレーションを戻し、不満気な彼等の様子に緩やかに瞬き]
落ち着かないなら、仕事の合間にチェスでもすると好い。
了解よ。
今、B-139通路にいるわ。
食料庫に向かっていたところだったけれど、近く?
近いようなら暫くここで待っているわ。
[バイオームで見かけた彼の姿を思い浮かべながら歩く。
ギルバートの伝言を持っていたと言うことは、先ほどまで彼と一緒だったのだろう]
わかっているとは思うけど、今忙しいから、重要なことだけにして頂戴ね。
[ラッセルの答えを聞き、通話を打ち切った。
その間にも、いくつかの報告が着信ランプを点滅させる。
歩きながらそれを確認し、返信を終えると通路の先に赤い髪の副航行員が見えた]
[無表情に淡々と把握している限りの状況と共に通常任務に戻るべきだと説明していると、いきり立ったひとりに掴みかかられ、握り拳が飛んでくるのに瞬く頃には強かに頬を殴られ、身体ごと飛ばされる事なく踏み止まったけれど、力任せに逸らされた顔から視線だけを相手に戻し、切れた口許を親指で拭う]
――…死にたいのか?
[問い掛けに殺意は全く無く殴っても無意味だと告げると、親指を染めた血を舐め取りながら怯む相手に向き直る]
今は、動く時では無い。
イザベラは死を待つ為の待機を命じてる訳ではないし、星に家族が居るならもっと確実な帰還方法を考えるべきだ。
[口内に自身の血の味が広がった]
[微笑みに僅かに表情を緩め―すぐに引き締める]
聞きたい事―救助の見込みについて差し支えない範囲で詳しい情報を知りたい。隠していても何時かは探り出される。
あら、それならメールでも良かったのに。
[相手とは対照的に笑顔のまま、首をわずか傾けた]
救助の見込みはまだ調査中。
現状わかっているのは、船内の設備ではバイオームが修復不可能であること、スリープポッドの修理はいつになるか不明。
現地点から一番近い補給衛星までは10〜15日かかる。
近くを運行している船が無いか問い合わせ中。
脱出ポッドの動作と定員も確認中。
ついでに、船長の所在も確認中。
[滔々と現状を語り、その間にも点滅する端末に軽く眉を上げた]
状況はまだまだ変わりそうよ。
どこまでを全員に連絡するかは私の一存で決められない。
今貴方ができることは?
そう―
[ふむふむと現状把握し]
出来る事―見回り中に船長を見かけたら連絡する。レーションをなるべく我慢する―
[前者は兎も角後者は元からそのつもりだった]
後は―
[他に何かあるだろうかと*少し考える*]
[一存では決められないと言いながらも、頭の中では皆へのアナウンスについて考えていた。
セシリアの放送で、バイオームの異常については皆が知ってしまっている。
問題は、バイオームが修復不可能であることを伝えるか否かだ。
食料庫のトラブルから察するに、噂はもう乗組員の間に流れている。
今更半端に隠しても不安を煽るだけだろう]
[ラッセルの二つ目の答えに、意識したものでは無い笑顔が生まれた。]
そうね。
あとは、自分の持ち場の仕事を確実にやってくれれば良いわ。
必要なら、こちらで指示を出します。
もし、非番なのなら、食料庫に付き合って頂戴。
何かトラブルが起きたみたいなの。
まあ、予想はつくけれどね。
[言って、笑顔のまま幅広の肩を竦めた]
定員に達しなかったため、村の更新日時が24時間延長されました。
[スリープカプセルのあるこの船の非常食料庫はさしたる容量ではなく、近いうちに食料が底を尽くのは明白であり、其れを感じているであろう周囲の船員達から建設的な意見が得られる筈も無い。
漸く大人しく成った彼等を警備の船員が捕縛する様子を見守り、荒らされた庫内の後始末をする船員達を背に、一先ずイザベラへ一応の片はついた旨を通信を送る]
ケーキが無くてパンを食べるなら、パンも無くなったら何を食べる?
[通信機から庫内へ視線を戻し誰にとも無く呟き]
――…
[僅かに頤を逸らし薄暗い庫内の照明を見詰め瞬いた]
そうそう、バイオーム修復不可能の件はまだ皆に黙っていて頂戴。
今確認中の件で、解決策になりそうな報告が上がる迄は、黙っていた方が良いと思うの。
[食料庫へと向かいながら、二人に付け足した。
ついでに端末を開き、バイオームの担当者にも同じことを告げる。
彼らが黙っていても、もう既に広まっていることは言わなかった。
通話を終えれば、その間に入ったギルバートからの連絡内容を確認し、返信する]
了解。
ご苦労様でした。
私も、もうすぐそちらに尽きそうよ。
[少々変わってはいるが彼のような人間はこういう時にありがたい。
”片をつけた”その内容を知らず、安堵のため息をついた]
[イザベラが緘口令を布いている間に保管庫の者達は幾らかの情報を聴いてしまったかも知れず、けれど喋った本人は情報を開示した事に関しては全く気に留めた様子も無く、イザベラの処置を聞いたとしても反省するかは疑わしい。
手伝いをするでもなくぼんやりと天井の照明を眺める彼を横目に、居合わせた船員達は荒れた庫内の片付けを着々と進め、包みの破け崩れた非常食も一応は廃棄処分せずに別に分けておくくらいはするらしく、イザベラの到着する頃には庫内の片付けも半ばは終了しているだろう]
待ってる。
[労いの言葉と共に到着を予告する通信に視線を落として短く返し、言葉通り廊下へと顔を向け彼女の来るのを待っている]
[ラッセルと共にイザベラの話を聞き、しかし聞いてる間も彼女の笑顔を何度か見つめて時折思案気な様子を見せ、頭の中で情報を整理する。]
……ありがとう。
だいぶ情報が増えた。
[話してる間も黙り込んで観察していたが、最後に礼を添えて、食料庫のトラブルを聞けば一つ頷き、表情を変えるでもなくついて行く。]
[途中、食料庫から戻ってきたらしい船員と行き違う。
警備員に挟まれ、顔にアザをつけてはいるものの、大きな怪我は無さそうな彼らに苦笑して手を振った]
ご苦労様。
手当てしたら反省室に放り込んでおいて頂戴。
[やがて、静かになった非常食料庫が見えてきた。
その前に立つギルバートに軽く手を上げにっこり笑う]
ご苦労様。
もうすっかり終わった後みたいね。
[あらかた片付けの終わった部屋を見て、担当者から損害の説明を受けるとにっこり頷いた。]
一度やればニ度目はそうそう起こらないとは思うけれど、気をつけて頂戴。
バイオーム担当者は暫く仕事が無さそうだし、こっちの警備に回すわ。
[次いで、包装の破れたレーションに目をやり、笑顔のまま肩を竦めた]
随分と無駄にしてくれたわね?
この分は、押し入った人たちの配給にしましょう。
まあ、食べれるわ。
[イザベラに付いていく道すがら、顔を腫らした船員とすれ違い、彼女のように声はかけなかったものの視線を投げる。
程なくしてギルバートを見つけると一拍その顔を見つめ]
大丈夫か?
[と言って自分の口をちょいちょい指差し、けれど大きく心配したわけでもない様子で声をかけた。]
[片手を挙げるイザベラと傍らに従う気配を、未だ仄か熱を孕む口の端をちろと舐めながら見詰め、頷く代わりに笑顔の彼女へと瞬き一つを返し庫内へ視線を移す]
此処の、騒ぎは収まった。
[言外に何時また他で暴動が起きるか判らないと告げる]
不安は、伝染する。
精神の消耗が激しい者や肉体的に強靭で無い者を含め、脱出艇に乗れるだけの人数は脱出させた方が混乱は少ないかも知れない。
[イザベラの言葉に彼等の食料に成るらしき破損食品を一瞥し、ナサニエルの問い掛けに其方へと顔を向けて緩やかに瞬き、捕縛された彼等に手出しはせずとも殴られたのを思い出し、漸く合点がいった様子で矢張り瞬き一つを返す]
たいした事は無い。
[舐めたしもう治る、と呟く]
ここはもう手が必要無いみたいだし、医務室に行くと良いわ。
[ナサニエルの声に振り向き、声をかけた。
血の滲んだ口のはしに、目を細める。
ついで、辺りの人員を確認すると、先の言葉に声を顰め返答した]
脱出艇の動作と乗船人数を確認中よ。
人数が判らないうちは下手にそのことを公表するのも考えものだわ。
どこ迄皆に告げるのか、まだ判断をつけて無いの。
[言いながら、先ほどのラッセルの様子を思い出した。
いずれにせよ、不安が広がる前に話さなければいけない。
笑顔のまま、首を傾げ思案した]
ナサニエル、貴方にはさっき全部話しちゃったわけだけど、どこまで公表すれば良いと思う?
[テキパキと処理をするイザベラの声を聞きつつ、
ギルバートの言葉にも耳を傾け、息を吐く。]
脱出艇……確かに、そのせいで副船長やギルのような冷静な人間が消耗するのは好ましくないな。
[非常食糧庫内を見渡しつつ呟いて、
傷は大丈夫と告げた彼に]
そか。ま、口の中は治りが早いからな。
ただ、頬は冷やしとけ。腫れるぞ。
[庫内を見つめたままに告げ、最後に視線を投げた。]
―通路―
[騒ぎがあったことも知らず、自室に篭っていた。定時になったので着替えて動き出す。部屋を出る際にもう一度「遺言書」を確認してから通路に出た]
…21世紀の映画にあったわね。こんなの。
まさか、ね。
[懐古主義故か、いつか見た映画を思い出し呟く。独り肩をすくめて身軽にオペレーションルームへと向かった]
[イザベラの提案に緩やかに被りを振り治療は必要ない事を示し、顰められる声に其方を見詰め思案気に眼差しは遠退き、先程の光景を思い出してか庫内へと顔を向ける]
さっきの連中にはバイオームの件も話した。
此処に押し入る奴が居る時点で、余り意味も無いだろうけど、必要なら緘口令でも布くと好い。
[イザベラに問われるナサニエルへと視線を移し]
疲弊し追い詰められたら、誰しも何をするか判らない。
[冷やしておけと云われ熱ぽい頬へと片手を添え瞬いた]
[聞こえた人の声にそちらへと足を向ける。いつもの道順から外れることなど今迄無かったが、無意識だった。イザベラの姿を認め、目礼を向け]
…何かあった?
……怪我人……………。
[と、ギルバートを称しちらと見遣る。控えめな視線]
まるで暴動の後みたい。
[イザベラの声に振り向き、一拍その表情を見つめると思案気に宙を見て]
バイオームの件は指示の通り通達は控え、スリープカプセルは修理中であることだけ。
使えないことはどうせバレるが期間を伝えてしまえば不安を煽ってまた騒ぎが起こる。
[期間のごまかしは担当者の腕に頼るところだろうか。]
補給衛生のことは伝えてもいいかもしれない。
半月程度なら絶食となっても死にはしないから。
まだ絶望的ではないと思える。
勿論、体力のないもののカバーも考慮。
[空腹で騒ぎが起こるのはまだ先になるはずで。]
他、確認中のことは確定してからかな?
ざっと考えただけだが、意向があるなら副船長の判断で。
[ギルバートの言葉に、口の端が皮肉に上がった。]
あら、修復不可能だってことも話したの?
[作業をする船員を慮り少しだけ声を下げた。]
まあ、最初に口止めできなかった時点でアウトなんだけどね。
[ため息には、彼女を良く知る人間にしか判らない程度の苛立ち。
頬に手を宛てる男ちらりと視線を向け、庫内に立ち入った。
片付けを続ける船員に二言三言話し、ボトルに入った水を貰い受ける。
冷えたそれを、ギルバートに差し出した]
これで冷やしたら?
幸いなことに、水は潤沢にあるの。
この状態が続けば通達をしようとすまいといずれは
そこかしこで騒ぎが起こるだろうけど――
まだこちらも情報を集めてるところだし、
何か糸口が見えればその都度対応を考えられる。
とりあえず今は、開示情報を選べば数日は抑えられる。
[ギルバートに言ったのか独り言かは不明。
船長の不在はこちらも頭を悩ますところ。
頬を押さえるギルバートを見て]
医務室、イヤか?
[何となく問う。]
[セシリアの姿を見つけて片手をあげる。]
暴動……みたいなものかもな。
[嘘かホントか曖昧な表現。]
どちらにせよ、ここはもう大丈夫だ。
[薄く笑み]
[新たな気配と声に視線を移せば控え目な視線は刹那交わり、セシリアの怪我人と云う単語に緩やかに瞬き、自身を示していると気付き無表情に頬に置いた手を動かす]
暴動の後だから。
[手をおろし庫内へと促す如く一瞬だけ視線を投げ、ナサニエルが口を開くのに其方へと向き直り、思案気に首を傾けて、イザベラの口角が上がるのにも矢張り悪びれもせず瞬き一つ]
人数が多ければ多いだけ、日程が長ければ長いだけ、食料は減っていく一方だし、混乱は否応無く広まっていくだろうから、判断は早いに越した事は無い。
早急になんらかの通達をして、一時的であれ状況鎮圧の処置が必要だろう。
[イザベラの纏う気配の微かな変化に目を細め、差し出されたボトルを受け取る]
水だけでもあって良かった。
使えない…、修復不可能…、最悪。
[聞こえた言葉の端々を繰り返し、誰へとも無く呟き]
水だけはあるなんて、皮肉。
[定時に入る筈の同僚からの連絡が無かったことを思い出した。]
副船長。交代の筈のオペレーターから連絡がない。
船内に放送を流しても?
それとも黙って探した方がいい?
効率がいいのは前者だけど。
[探しに行く気はあまり無い様で、インカムのスイッチを切り替えようと]
暴動…みたいなもの?…本当に暴動?
[ナサニエルとギルバートから返る言葉に首を傾げ。曖昧な表現を使うナサニエルを軽く睨んだ。それも一呼吸の間だけ。特に興味は無いらしく]
おさまったなら、どちらでも構わないけどね。
[ナサニエルの言葉に少し考え込んで、皆の顔を見回した。
通路からやってきたセシリアには皆が事情を説明するのに任せる。彼女はオペレーターだし、そもそもの事態を知っている。情報を隠す必要はないだろう]
ああ、こういう面倒な決定は船長に任せてきたんだけどな。
[悪戯っぽく笑い、ため息を尽きながら髪を掻き上げた]
そうね。脱出艇があることと、補給衛星については伝達しましょうか。
衛星迄の日数は伏せておくわ。
食料の問題もあるし、弱いものは先に脱出艇を使って脱出させる。
セシリア、船内回線で通達をお願い。
既に薄々危機を感じている連中を相手取り、巧く騙して食料の代わりと成る安寧を与えられるなら、混乱回避の為の情報隠匿は別段に構わないだろう。
下手を打てば余計な混乱が生じるだろうけど、其処は――…イザベラの腕の見せ所。
[船長の所在不明は聞かずとも放送の入らない現時点では無意味と、水を呉れたイザベラの名を挙げながらボトルの封を開ける事無く頬に当て涼を得て、熱ぽい頬を冷やしつナサニエルの問い掛けに暫く彼を見詰め]
ナサニエルは好き?
[逆に問い掛け、セシリアの言葉と行動にちらとイザベラを見遣り、けれど神経質に成る必要も無いと思っているのか口出しする気はなさそうで]
足元も見ずに足掻こうとした奴が居ただけ。
[言って、セシリアを見れば逆に問い返され目を瞬いた]
オペレーターが行方不明……?
船長といい、非常時に何をしてるのかしら?
個人用端末は繋がらない?
[嫌な予感がした。笑顔が、わずかに曇る]
[セシリアに睨まれてもさらりと視線を受け流し、
結論に達した様子を見れば一つ瞬き視線は中空へ。
イザベラの回答を聞けば肯定の意を見せる。]
いいんじゃないかな。
俺は大雑把に考えてみただけだし。
[有る程度の答えは彼女の中にあったはず。
ギルバートに問い返されればほんの僅かキョトンとし]
好き、ではないな。
嫌いでもないけど。
[必要があれば行くだけだから。]
[イザベラの言葉に瞬きで頷いて、インカムのスイッチに指先をあてる]
脱出艇について、補給衛星までの距離は伏せて…通達了解。
[問い返されるとその指先を離し、手を下ろし]
……個人用端末には三度呼びかけた。応答は無し。
時間帯は、勤務時間・休憩時間・その他に呼びかけているから端末が手元に無いことはありえない。端末が手元に無いというよりも、端末の傍に本人が居ないことが考えられる。
つまり、独断専行での脱出の可能性あり。
ポッドの確認を要請…したい。
[可?と小さく口にして、首を傾げたままイザベラを見遣る。
その瞳に迷いは無く]
[インカムのスイッチを入れるセシリアににこりと微笑む]
バイオームが汚染され、食料に不足が出たので、弱いものから随時脱出艇を使用します。
他の乗組員は、衛星から食料を補給する迄、食料制限を行ないますので、協力をお願いします。
脱出艇の使用者を選ぶので、各部署の責任者は、ミーティングルーム迄集まって下さい。
他、船員は各自の持ち場を離れないこと。以上の連絡をお願い。
[首をかしげるセシリアの話を聞き終えると、一つ頷いた]
良いわ。
但し、報告は私か船長に上げるように。
[イザベラが決断を下すのに瞬きを一つ、視界の端でナサニエルの表情が微かに崩れるのを見止め、返される答えにもまた瞬き一つで応え、更に暫く思案の後に口を開き]
――…光ばっかりだ。
[自身へと投げ掛けられた問いへの回答に、震える口唇が小さく呟いた声は漸くナサニエルに届くいたか如何か程度の大きさで、他の者の鼓膜を震わせる事は無かっただろう。
イザベラの眼差しに顔を向け緩やかに瞬き、頬に当てていたボトルを開けて水を一口――口の中に薄らと血の味が広がる――楽しげな彼女の瞬きを首を傾け見詰める]
健闘を、祈ってる。
[セシリアとイザベラの遣り取りに視線は室外――廊下の闇を透かす透明な板の向こう――へと移り、会話を聴いているのだかいないのだか、ボトルの水を更に一口]
――…
[音も無く微か口唇だけが震えた]
あまり情報を隠しても不安になるけれど、不確定な情報を徒に流すのもまた不安を煽るわ。
何かあったら、船内放送を使う前に責任者の指示を仰いで。
もしくは、私や船長に直接連絡してくれて構わないわ。
[ようやく、場の片付けを終えた船員たちも含め、その場の面々に言うと、笑顔のまま、ひらりと手を振る。]
じゃ、私はもう一度船長を探して来るわ。
これだけ連絡しても繋がらないなんて、回線遮断して寝てるんじゃないかしら?
[悪戯っぽく笑うと、相変わらず光り続ける通信端末を確認しつつ、食料庫に背を向けた]
[以上、と聞こえると微かな相槌を打って]
了解。通達する。
………報告は、副船長か船長に。必ず。
[再びインカムのスイッチに指を当て軽く力を添える。船内放送に切り替えて]
こちらオペレータ・セシリア。乗員へ。
バイオームの汚染について通達あり。バイオーム汚染により食料に不足が出たため補給衛星への到着まで配給制限を行う。
体調の優れない者は随時、脱出艇にて送還する。脱出艇の使用者を選定するので各部署責任者は、ミーティングルームに集合のこと。
その他の乗員は持ち場を離れず通常任務にあたること。
…以上。
[個人回線に切り替えたインカムから手を離してイザベラに向き直る]
これから、脱出艇の使用状況確認を。
[言葉すくなに告げて、踵を返す]
[僅かに鼓膜を震わせるギルバートの呟きは聞き取れなかった。イザベラに次ぎ、そのまま食料庫をあとにして脱出艇収容室へ向かう]
…脱出ポッドの使用状況を確認に来た。
出入りした人のリストを見せて。
………。
[そんなもの無い、と言う相手に冷たい一瞥をくれて]
呆れた……。
一機ずつ調べるから手伝って。あなたはそっちから。
わたしはこっちから調べるから。
[溜息をついて並ぶ脱出艇を端から調べてゆく]
[セシリアとイザベラの遣り取りを視界の端にとらえつつ、
ギルバートが瞬きを返す様を見つめて、思案の色を読みとってか視線はその唇に。]
……―光。
[微かに聞こえた音と唇の動きと。
水を一口二口と飲む様子を見ながら思案し、
視線を追って室外を見遣る。]
闇は光に寄り添うだけ……。
[つい先刻交わした会話の一部を復唱。
さして今はなかったのか視線を彼に戻し、首を傾げた。]
グリーン…グリーン……グリーン、これもグリーン。
[多数ある脱出艇を指差し確認してゆく。まだ報告の段階ではない。ここまでは全て使用可能となっていたが]
………レッド。
…協調性の無い人…。
[呆れた声で一言。
しかし一機とは限らない。それからもチェックを*続ける*]
[食料庫に背を向けるイザベラの気配にゆっくりと視線を移し其の背を見詰めながら、直ぐ傍で通達を行うセシリアの肉声と放送の音声のと、去って行くイザベラの荒い足音とが混じり鼓膜を震わせるのに緩やかに瞬き、去って行くセシリアの背も見えなくなるまで見送り、ナサニエルへと向き直る]
闇と光の違いは?
[首を傾げるナサニエルに更に問い掛け、先程まで闇を移し込んでいた紫苑の眼差しは、ほんの刹那だけまるで其処に答えを探す如く彼の瞳を覗き、直ぐにまた瞬き己の向けた視線を遮る]
少し、休む。
何かあったら端末に連絡して。
[非常事態故に常より幾らか「まとも」に頭を働かせ、他者と支障なく会話をしていた分の疲労を払う如く、緩やかに被りを振り
寝ても醒めても其処に在る、とナサニエルの傍らを通り過ぎながら呟き、足音の無い常と変わらぬ雲の上を歩く如き足取りで*自室へと向かった*]
[通信も肉声も脳内に染み渡らせ、吐息をこぼす。
去っていく彼女らを見送れば、彼からの問いかけ。
――常とは違う瞳の表情に微かに興味を寄せ、
けれどすぐさま消えたそれに一つ瞬く]
……考えとくよ。
[色々あって疲れたのだろう、休むと言う彼を引き留めはせず、しっかり休めと声を発した。
去り際の呟きに頭をぽんぽんと叩けば、ひらり、手を振って見送る。]
了解。特に勤務は無し。
[頷いてナサニエルと共にイザベラについていく。途中すれ違った怪我人は一瞥するのみで]
―廊下→食料保管庫―
[セシリアとも遭遇しそこで更なる情報を経て3人を見送った後]
ナサニエルはどうする?
特に今しなきゃならない業務はないし、な。
情報の整理はしたいが見回りもせんとな。
[思案気に宙を眺め、ゆっくりと*歩み始めた*]
そう。自分も見回る。船長を見つけたら要連絡。
[共に保管庫を出て途中で別れて歩くか]
…どうして出ない?責任者としてどう考えてる―
[小さく愚痴の様な疑問を呟きながら]
[自室の重力制御装置を切り室内を無重力状態にして、飲み掛けのボトル片手にベットを軽く蹴って、天井が近付けば手で押し戻し、其れ等を繰り返しながら宙を蕩揺い、口の開いたボトルから零れた水が傍らを漂うのを見詰めている]
――…
[真面目に処置しなかったらしき頬は幾らか腫れたけれど気に留めた様子も無く、水を飲むにも些か口を開き難いのに気付いて漸く怪我を思い出した程度だろう。
其の身が簡素なベットに受け止められる頃、何時の間にか手放したボトルも宙に舞う中で、揺らめく水を透かす照明の光を腫れた頬に受けながら、浅い眠りに*落ちていった*]
[歩きながらも次々入る報告と問い合わせを処理する。
これだけ連絡が入っても彼が出て来ない、また見つからないと言うことは、もう一つしかこころあたりはない。
船の後部、廃棄物保管所へ遅い足を運んだ。もう使えないが、処分することも出来ないものなどを補完する小さな倉庫。
危険物もある為、一般の航行員が許可無く立ち入ることは出来ない場所だ]
やっぱり、こちらでしたか。
[ため息を尽き、部屋に一歩踏み出す。
不要の機材に埋め尽くされた狭い部屋で、携帯式の寝袋に包まる姿があった。
蹴り飛ばしたい誘惑にかられつつも、その肩を揺すり起こす]
[誰にも邪魔されたくない時、一人になりたい時に彼がここに来ることは、船長と親しい数人しか知らない。
良く寝たとばかりに、笑顔で起き上がる彼に、次々と届けられる報告を突き付けてやった。]
脱出艇はありますが、人数が足りません。
また、脱落者が出るかもしれない。
[それは自分かもしれない。
ここ迄来るのも、命の危険の全く無い旅とは言えなかった。事故で命を落とした友人を思う]
とりあえず、指揮をお願いします。
貴方が必要なのはこういう時の為でしょう?
[笑顔を消し、アーヴァインを軽く睨むと、ミーティングについて説明した。
やがて、船内にあらためて船長からの指示が*流れるだろう*]
[船長を急かし、廃棄物補完庫を後にする。
すぐに集まってくる船員達のなかに彼を残し、ひっそりと船の後部を後にした。
ミーティングの開始まではまだ時間がある。少し休んで情報を整理したかった。
先程よりだいぶ少なくなったメールを処理しながら、歩けば、封鎖された扉の前を通る。
もう、そこには人の姿は無い。つと立ち止まり、その先を透かし見るように視線を這わせた]
空も太陽も、無くなっちゃったわね。
[バイオームを歩くのは好きだった。作り物でも、そこには大地と*空があった*]
[喧嘩の仲裁や質問のあしらいをしつつ―方法は兎も角―見回りをしてると捜し求めていた人物からのアナウンスが入り思わず溜息]
…漸く。
[とりあえず待機指示に従い自室へと戻る事にした。
―無事に戻れれば良い。
そう心の中で呟きながら]
[通信機の呼び出し音が鼓膜を震わせるのに、まるで瞼をおろしていただけ――或いは瞬く途中に瞼がおりた瞬間――の様に静かに瞳を開き、サイドテーブルへと手を伸ばし通盤面を覗くと、船長から各船員へと幾つかの指示が出されたのを確認し、通信機に必要な返信を打ち込み無重力状態の宙へ放り出す。
視線は思案気に天井へと移りかけ、其の途中で照明の人工的な光を煌かせ蕩揺う水を見止めて止まり、骨ばった手を伸ばし煌く水を掴むと、手の中で崩れ零れ光諸共掌の外側へと四散していく]
――…
[言葉に成らぬ想いの為にか声無く口唇は震え、緩やかに瞬き重力装置のスイッチをオンにすると、宙に漂っていた全ては慣性の法則に従い、通信機の床に落ちる音を聴きながら自身へと降り注ぐ水滴に目を細める。
重力装置の起動でベットに沈み込んだ身を、ゆっくりと起こし身支度を整え部屋を出て、船長の指示に従い本来の持ち場である中核部へと向かい、機器の再点検及び補修の指揮を*とり始める*]
[見回り中も船員達の顔を眺め、不安な様子は感染するかのように周囲にも広まっているのに目を僅か細めて、質問をされれば短く返し、その繰り返しにどうしたものかと考える。]
……俺も少し休むか。
[案外と疲れていたことに苦笑し、自室足を向けかけた所で漸く見つかったらしい船長の指示が入る。]
遅いな。
[やっとか、とため息をつく。彼が動けば少なくとも船員達の状態はよくなるだろうか――それもわからねど。]
[部屋に戻る途中に前方の通路を横切るギルバートを見かけたけれど、声を発することもなく、ただ少し腫れていた頬を見て瞬く。]
まぁ、いいけど。
[忠告はした。
当の本人が気にしないのであればとやかく言うことでもない。]
腹は減ってない――でも、喉は渇くな。
[自室に戻り、水を取り出してそれを半分ほど飲み、蓋を開けたままにテーブルに置けばベッドに座り、少しの休息時間を*得る*]
[中核部へ向かう間に幾人かと擦れ違い――其の中にはナサニエルも居た様だが、足音も無く夢遊病者の如く歩いていた当人は気付かなかっただろう――もし、担当部署では指令通りの任務をこなすも、度重なる問題を念頭に置いた念の為の調査が主な指令だったらしく、さしたる問題もなく直ぐに手持ち無沙汰と成り、規則的な――まるで心電図の様な――稼働状況を映し出す盤面を見詰め緩やかに瞬く]
方舟は――…乗船者を選ぶ。
[タッチパネルの盤面に骨ばった指を滑らせながら、噂話と共に投げかけられる問い掛けに答えるも全く理解の及ばないらしき表情を横目に、暫くの間――盤面上の作業が終わるまでの時間――を置いてから口を開く]
状況把握も悪くないが、現状維持も重要。
今後も必要事項は船長から放送があるだろうし、動揺は不要な混乱を招く分だけ帰還の可能性を下げるばかりで、現状に於いて何ら生産的な意味を持たない。
[映し出される情報に異常の無いのを確認し、傍らに立ち尽くす人物へと向き直り――頬杖をついた為に僅かに腫れの残る頬に手が触れたが無表情は変わらず――緩やかに瞬き相手を見詰める]
人殺しに成りたく無ければ大人しくしていると好い。
[盤面の映し出す規則的な光に横顔は照らされ、眼前の人物が何と云ったのか再び緩やかに瞬き、ひたと静かに相手を見据え]
殺す事は同時に――…殺される事。
[闇と光、と小さく呟く声も相手には届かなかっただろうけれど気に留める事も無く、指令任務の終了を個人端末から上層部へと報告し、席を立ち呆然とする相手の傍らを*通り過ぎた*]
[ベッドに寝転がり、眠っていたわけでもなくただ目を閉じて体を休め。うっすらと目を開ければ天井が見えて。]
………。
[寝転んだ姿勢そのままに体をひねり、窓の外を眺めて星々を追う。]
――宇宙空間そのものじゃないか。
[その景色に頭をよぎったのは彼が口にした言葉か。
窓から視線を外し、飲みかけの水が視界に入る。
小さな容器に入る透き通った液体をしばし眺めて。]
[ゆっくりと起き上がって水を一口飲み、蓋をしてそのまま部屋を出ようとして、ロックし忘れていたことに気づく。
……とはいえそれは日常であり、あまり鍵の必要性を感じていなかったためで。]
これからは必要かな……?
[船内の空気を思い呟いてみるも、次の瞬間には別のことを考えていて。そのまま部屋を出てしまう。]
[全ての脱出艇の使用状況は把握できた。連絡の文面を考えながらオペレーションルームに戻る]
……不用意で、自分勝手で、どうしようもない人たち。
[溜息とともに呟きが零れる。オペレーションルームの定位置におさまり、わざわざ窮屈そうな態勢で端末を開く]
[カタカタ][タイピングの音が静かな空間に響いて]
To:副船長
Subject:脱出艇使用状況について
脱出艇の使用状況確認完了。全10機の内、2機が使用済み。
脱出艇の積載限界は6人。最悪でも12人のクルーが既に脱出ポッドを使って船外へ脱出を試みたと思われる。
各部署に問い合わせ、不在の者の確認を急ぐ必要あり。食料庫のようなことにならないために、各責任者のみに通達がベストと思われる。
P.S 件のオペレータとは未だ連絡つかず。
[enter][イザベラの個人端末にメールを送信し*た*]
―自室―
[ロックを掛けると水を一杯飲み干し一息吐く。水も有限である以上はこれからは控えねばならない―]
本に書いてあった…塩かレモン汁があれば楽。
[水を飲む前にそれらを一舐めして唾液で水分を補えば限りある水を長持ちさせられると特殊部隊員を主役とした小説にあったのだが―食堂の調味料類も今頃は食料保管庫に入れられているだろう]
…最低2週間持たせる―出来る?
[そう自分に問い―直後苦笑する。
出来るか出来ないかではない―やらねばならないのだ]
[通路ですれ違う人間は部屋に戻る前と変わらず、今自分に出来ることは不安感を広げないような振る舞いをするくらいで。]
……大丈夫?
[ちょうどバイオームがあった付近に顔色の悪い女性作業員を見つければ問いかけ、医務室へ連れて行く。
この事態における精神的なものか常から体が強くないのかはわからないけれど、]
口つけた後で悪いけど。
[と言って迷うこともなく水を渡す。
落ち着いた?と問えば小さくうなづいたのを見て頭をくしゃっと撫でれば医務室まで送り届けて。]
本当に体調が悪いやつが埋もれないようにしないと、か。
[扉が閉まってからそんなことを呟きまた歩く。]
定員に達しなかったため、村の更新日時が24時間延長されました。
―中核部→通路―
[足音も無く常の歩調で何処か騒然とした気配の漂う通路を進み、少し広いポイントに出ると――普段から良く其処で宇宙空間を眺めているので、そんな姿を見かける者もあったかも知れない――闇を映し込む透明な板へと歩み寄り、骨ばった両手を突いたところで、初めて其処に映り込む背後のナサニエルの姿に気付き、挨拶の心算か映る彼の髪の辺りを指先でなぞる]
気配が、減ってる。
[自身の指先を眺めながら肌で感じる船の現状を呟き、其れ以上はナサニエルに言葉をかけるでもなく、透明な板の向こう側に広がる闇と其処に輝く数多の光へと視線を移し、闇を映し込み紫苑に煌く双眸は瞬き一つせず揺らめいた]
[暫く。佇んでいるとギルバートが歩いて来るのが見えて、けれど気づかずに外を見始めたのをただ黙って見守り、声をかけられればガラス越しに顔を見て]
減ってる……?
[言葉の意味を少し考えれば瞬いて、何か思い当たったのか深く息をついた。]
[背後で息吐く気配に合わせ緩やかに瞬き]
――止まらない…
[ゆっくりと振り返り透明な板に寄り掛かり、闇を映し込んでいた静かな紫苑の眼差しは、漸く壁に寄り掛かるナサニエル本人を捉え、何を思ってか首を傾けるのに褐色の髪が揺れる]
[視線が窓から自分へと移動するのに合わせて、こちらもガラス越しから本人をとらえる視線に変えて]
……かもな。
[無表情に紡ぐ。
相手が首を傾げるのに瞬き一つを返すだろうか。]
[ナサニエルの瞬くのに彼の視線は束の間途切れ、其の間に紫苑の眼差しは彼から逸れ、天井の機械的な照明へと向いているだろう]
絶望の闇と、希望の光。
どちらも、目が眩む。
[僅か目を細め半ば独り言の如き呟いた後に、再び彼へと視線を戻し常の足取りで音も無く歩み始め、無言の儘に彼から数歩の所まで到達して漸く足を止める]
違いは、何?
[静かに彼の挙動を眺め、呟きに視線は口元へ。
その後距離を縮めて前回と同じ問い。]
違いか……違い、ね。
意味合いで言えば根本的に真逆だが――
[おそらく彼が求めるのはそういう答えではなくて。]
確かに過ぎればどちらも目がくらむ。
それでも人は光を選んで自ら近寄るのは何故だろうな。
闇は畏怖の対象であると同時に安らぎをくれるのに。
[壁に背を預けたまま、一拍考えて]
難しいな。考えとくっつったのに悪い。
漠然と宇宙みたいだと思っただけで、進まない。
[ナサニエルが言葉を紡ぐ間中瞬きもせず――或いは透明な板の向こう側に広がる闇と光を見詰めている時の如く、紫苑の双眸は揺れていたかも知れない――静かに見詰め、置かれた間の後に紡がれた言の葉に、口唇だけがウチュウと其の単語をなぞり]
――…
[其れ以上は口唇が震えるだけで音に――恐らくは本人の中でも言葉にすら――成らず、緩やかに瞬き添えられた謝罪に対してか被りを振り、其の侭先程まで立っていた方へ首を捻り、彼の指摘した宇宙を見詰める]
闇と光。
[幾度も口にした言葉を確認するかの如くまた小さく呟き]
還るべき星は――…
[ゆっくりとナサニエルへと向き直ると、其処には珍しく――元より目つきが悪い訳でもないが、殆ど感情の表れる事も無い――微か目許の和らいだ表情があるだろう]
ナサニエルの、瞳の色に似てる。
[真っ向から見つめられて、けれど視線を外すことはなく]
そ、宇宙。
[揺れる瞳に僅か瞬き、呟きには肯定を。
彼が視線を外へ向ければ同じく闇の中に点在する光を眺め、紡がれる言葉―闇と光―に視線を彼に戻す。]
還るべき星……地球の色?
[首を傾けて問う。
常にない色を浮かべた彼の目に楽しげな目線を返し、幾分かこちらの表情も和らいで、]
似てる……か。
ギルがそう思うなら、そうなんだろう。
[手が届く程度に近寄れば、いつもするようにくしゃりと*撫でて*]
[地球の色かとの問い掛けには常と同じく瞬き一つで肯定を示し、自身の表情の変化に気付いていないのか楽しげなナサニエルの眼差しに不思議そうに、和らぐ表情は見て取れどナサニエルの表情の理由も判っては居ない様で]
如何かな。
[更に一拍だけ彼の瞳を見詰めまた闇と光へと視線を向け、気配を感じ伸ばされる手を視界の端に捉えるも抗う素振りも無く、褐色の髪は彼の手に緋色の煌きを零し擦り抜けて行くだろう]
本当の色は――…
[判らない、と撫でられる獣の如く目を細め口唇だけが微か囁くけれど、幾度かそうしていた様にナサニエルがまた口唇を見ていれば、音の無い呟きも読み取れたの*かも知れない*]
[仮眠から目覚めベッドに腰掛けたまま自室に残った僅かなレーションをほんの一口齧る]
…父は言った。心頭を滅却すれば火も又涼し。
[大真面目にのたまった。自分は満腹だと言う自己暗示でも掛けるつもりなのだろうか]
[如何かな、という言葉にガラスに反射する自分の瞳を見たけれど、闇に映り込む姿に色まで正確には読みとれず]
本当の色……
[彼が話し始めると口を見る癖がついてきている自分に微かに笑い、判らない、と認識すれば瞬き一つ]
……俺にも判らない。
[と短く答えると、軽く首をまわして挨拶の代わりに頭をぽん、と叩き*再び歩き出した*]
定員に達しなかったため、村の更新日時が24時間延長されました。
[扉の前で暫く佇んだ後、ゆっくりと歩き出す。
ポケットから携帯端末を取り出し、再度メールの確認を始めた]
”>To:Cecilia Vaughan
>Subject:Re脱出艇使用状況について
了解。
オペレータについては交代要員を派遣する”
[それだけを短く打ち、セシリアに返した。
返信内容を含め船長に転送し、ミーティングに参加予定の責任者にも連絡すると少しだけ顔をしかめる。
船の操作はコンピュータでほぼ自動だが、それを監視する存在は必要だ。
脱出で人が減れば、その維持にかかる人間の負担はより*厳しくなるだろう*]
[暫く言い聞かせた後再び見回りに出る]
―廊下―
[僅かながらすれ違う人の数が減った気がして首を傾げ]
脱出?…拾われる保証?
[無闇な脱出はスペースデブリを増やすのみ―]
…無意味且つ有害。
−通路−
[ギルバートと別れて以後、変わらない船内をさして興味もなさそうに歩く。変わったことと言えば少し人が減ったくらいで、それすらも彼に言われるまで気にはしていなかったようで。
火をつけないままの煙草を口に咥えて、見回りは一応しながらゆっくりと歩く。]
船そのものが故障したわけでもなし、勝手に出て得はあるのやら。
[一部の人間の愚行にため息をついて、けれど冷静さを欠いて出ていってしまう人間が船に居たところで混乱が大きくなるだけだと思えば、自分達には利点があるかもしれない、などとぼんやり*考えた*]
[――…俺にも判らない]
[言の葉と共にまた触れて離れる手の感触に、闇を映し込んだ紫苑の双眸は緩やかに瞬くも、離れて行く気配へ視線を戻す事無く、透明な板の向こうに広がる光景を見詰め続け]
――…
[其の内に壁に――ナサニエルの寄り掛かっていた辺りだろうか――寄り掛かり、時折は船員の通り過ぎる通路の向こう側に未だ暫くは、闇と光を眺める時も*ある様で*]
7人目、吟遊詩人 コーネリアス がやってきました。
[きらきら。
きらきら。
深淵の闇をとおしてスターダストがモニタの向こうを流れて行く。
うっそりとグレイブラウンの瞳をほそめ、指先で画面の上、消えていった彗星の尾をなぞって甘美な余韻を持った*吐息をひとつ*]
[声をかけられ振り向けばラッセルの姿があって。
思案気に一拍考えて、咥えていたものを指で外し]
さぁ? 確認したわけじゃない。
でも、恐らく在った。
[予測の範囲を出ない話だけれど、妙な確信はあって。]
[狭いシートは肩が凝る。ぐうっと伸びを一つ]
……―――っ…。
…水だけはあるんだっけ。
[食料庫のことを思い出し、インカムを着けたままシートを離れる。小柄な体は機敏にオペレーションルームを出た]
―通路―
[人の話し声が聞こえる。放送じゃない、生の声]
……ナサニエル。ラス。逃げてないのね。
それより、その手に持っているものをしまいなさい。
空気だってここじゃ有限の資源なの。
[ナサニエルの手元の煙草に気がつくと、火がついていないにもかかわらずつっけんどんに]
あなたが消費した空気をどれだけかかって正常にしていると思うの?そのうえ煙を撒き散らそうだなんて馬鹿げてる。
それとも、酸素不足のフリーズドライになって死にたい?
[ナサニエルから数歩の距離。大股に跳べばすぐ懐に飛び込めるだろう]
[つっけんどんな声に視線を向ければ、わかりやすく深い溜息をつく。]
俺が助かる見込みなしに逃げるかよ。
そっちこそパニクって逃げてなかったんだな。
[火のついてない煙草片手に飄々と言ってのける。]
つか、火ぃつけてないだろ。
廊下で煙草を持ち歩くのに誰かに迷惑かけたっけ?
[数歩の距離まできたセシリアに無表情に視線を投げる。]
そう…ギルバートから聞いた?
[気配に聡い―…と言うのだろうか?―彼なら直ぐに気付きそうだと思い―ふと聞こえた第3者の声に]
セシリア。…僅かでも助かる見込みがある以上自分は逃げたりしない。
そう。……そうね。
…私はパニックなんて起こして
無駄なエネルギーは使わないから。
[溜息もしれっとかわし、何事もなかったかのように]
火がついていなくても着ける可能性は否めない。
習慣で火をつけてしまうかもしれない。
……他に何年も煙草吸ってない乗員も居るもの。
彼らの精神衛生上よくない。イコル、迷惑。
[つらつらと理屈をこねて平然としている]
だから、しまって。
[最期に端的に述べた]
[ラッセルの深いグリーンの瞳を覗き]
その判断は、賢明。
まだ補給衛星にたどり着ける見込みもある。
レーションも少しは残っている。
なにより今回の航行の成果を放棄するわけにはいかない。
[でしょ?とばかりに、ラッセルへ首を傾げてみせ]
ああ、ギルが気配が減ってるって言ってたから。
言われてみりゃ減ってるな、と思ったが
原因なんてそんくらいしか思い当たらなかったしな。
[ラッセルにそう答え、
セシリアの声にくすりと笑って煙草をしまう。]
ま、正直お前が逃げるなんて思ってないよ。
[目元だけに笑みを浮かべ、理屈を一通り聞けば]
わかったわかった。
――そんなつんけんしてて疲れない?
[嫌味のつもりで言ったわけでもないけれどそう聞こえたかもしれず。]
………分かってて訊くなんて、言葉の無駄…。
[小さな声で呟く。厭味も含めて。
ナサニエルには聞こえたかもしれない。
笑みも無表情にスルーした]
わかったならいいわ。
?―……別に。これが私だから。
言いたいことを溜め込む方がよほど疲れるでしょうね。
[厭味にもならない。ただ乗務員として自然体なだけだから]
[見回りに行ったラッセルを見送って。
セシリアの呟きははっきりは聴こえずとも意味は読み取れた。
けれど愉しそうな―けれど笑っているわけでもない―表情で瞬きを一つして。]
溜め込む、ってことは俺もしないけど、
他人が何してようと気にならないだけかもしれない。
逃げたやつがいるなら馬鹿だと思うだけだしな。
[通路の壁に背を凭せ掛け、首を傾げるようにして彼女を見る。]
[ラッセルを見送った。通路を曲がって見えなくなると視線をナサニエルに戻し]
ギルバートが何か言っていたの?脱出について。
[答え待たずに、溜息とともに]
できるなら、ああいう人を増やしたくないから黙っていて。
食料庫のようなことになっても困る。
そもそも、乗員が居なくなったら船はただの空き缶。
デブリになって、航路が使えなくなる。
それだけは避けたいところね。
[本人は冗談のつもり、冗談に聞こえるかどうかはわからない]
脱出がどうとかは何も?
ただ、減ってるって言ったから、自然とそう想像しただけ。
[と、答え終わる間もなしに続けられた言葉に首を反対側に傾け]
わかってる。場が混乱して迷惑被るのは俺らだし。
[おそらく冗談らしい言葉を言ったことで、くすり、と笑みがもれ]
……だな。
波に乗ってゴミ捨て場なんてちっとも浪漫がない。
[二度、三度瞬いて、じっと青の瞳を見据える]
…知ってる。溜め込むような複雑な神経してないこと。
[今度のは厭味にも冗談にもなる。相手にもそう聞こえるか]
気にならない…のは私も同じ。
気にしたって何も始まらない。自分の判断が全てだもの。
ただ、オペレーターとして船外活動員のあなたに言わせてもらうけど、デブリの深追いはやめて。そのフォローをしなくちゃならないのは私だから。
……………逃げた人たちよりはマシだけど。
[ぽつり][つぶやいた]
[見据えられれば見つめ返して]
複雑な神経な俺はもはや俺じゃないしな?
[厭味と洒落が込められた言葉に悪戯げに返す。
続いて紡がれた言葉には少し柔らかな視線。]
オペレーターは俺達の命綱。
お前が深追いするなって言うならしないよ。
[相手が避けなければ一度だけ頭をぽふりと撫でるだろうか。]
馬鹿な連中よりは高く見てもらえたみたいで何より。
[呟きに洒落ッ気を込めた言葉を返す。]
―通路―
[透明な板の向こうを眺めていたが、何時の間に其の場を離れたのか、足音も無く夢遊病者の如き歩調で進む内には、幾らかの話し声もあっただろうけれど、自身の名を耳にすれば足を止め、其方へ顔を向け暫くは会話に耳を傾けてから口を開き]
仮令誰も乗って居なくても、方舟は蕩揺う。
[煙草に関する会話も遠く聴いていたのかナサニエルの手元を一瞥するも何か云うでもなく、緩やかな瞬きと共に視線はセシリアへと移され、相手の反応に構う事無く暫くは其の貌をじっと見詰め]
煙草の煙は、何色?
[首を傾けるも回答を求める素振りも無く、ただ幾拍かはセシリアを静かに見詰め、彼女の頭を撫で様とするナサニエルの手に、指先から順に彼の顔まで視線を流す]
定員に達しなかったため、村の更新日時が24時間延長されました。
[眼鏡のつるを持って持ち上げ、また数度まばたいた]
…そう。それがナサ。
うん。こっちがロストしたら太陽風の餌食。
神経焼かれて即死。
そんなことになったら私も後味が悪いから。
…しないなら、安心した。
[と、軽く撫でられる。表情一つ変えずに相手を見上げて]
―――…その癖…
………なんでもない。
[視線を逸らし、通路に設けられた「窓」から暗黒の空間を眺め]
私のオペレーションで、ナサが一番長く続いてる。
それは、評価の対象。馬鹿よりよほどいい。
そういえば。
食料庫、開いてる?水が飲みたい。
[ちらと通路の向こうへ視線を飛ばす]
[気配を消しているのか居ないのか、それが常なのかいつもこの男は唐突に現れて、よくわからないことを口にする]
方舟はその内、小惑星にぶつかって無数のデブリと化すわ。
[つかみ所のない視線、問い掛け。溜息をついて]
白、もしくは白に近い紫。
でも、そういうことはナサに訊いたら?
現役の喫煙者だから。
[聴いてはいないだろうという事も頭の隅に置きながら]
[ギルバートが声を出すのに視線はまた彼に。
方舟の話に数度瞬きをしたけれど、口を開くことはなく。
煙の色――それはセシリアに向けられた言葉のようで。
何となく答えの予想はついたけれど、チラリと彼女を見て。]
……安心した?
それは何より。
[今度ははっきりと笑み見せて、セシリアが言いかけてやめた言葉に幾度か瞬いたけれど深追いはせず。]
評価はありがたく受け取っておくよ。
食料庫は――警備員がいるけど、空いてはいるよ。
セシリアならすぐ入れるだろう。
塵は塵、船は船。
[問い掛けに対するセシリアの溜息にも臆する――元より他者に如何思われているか意識しているのかも疑わしいのだけれど――事無く、ナサニエルを眺めていた眼差しはまた瞬き、彼女へとゆっくりと向き直る]
煙草は、嫌い?
[回答を全く聴いていなかった訳ではないのかも知れないけれど、其の口から零れる言葉は矢張り相手の言葉を受け止めているのか疑わしい内容かも知れず、恐らくはそんな意識も無い当人は相変わらずの調子で問い掛け]
飲料水は、直ぐ手に入ると思う。
[ナサニエルの説明の言葉に其れ以上は――説明が無くても其れ以上の説明をしたかは甚だ疑問だが――続ける事も無く、彼の手元に在る煙草へと視線を落としまた緩やかに瞬く]
[ナサニエルのはっきりとした笑みに僅か表情を和らげて頷く]
………特別扱い?…うっとうしい。
でも、取りに行ってくる。
[どこかで食い違ったようだ。いやそもそも噛み合うことなんてないのかもしれない]
―――…煙草は嫌い。
喫煙中は1200度近い熱源を振り回している。
立ち上る煙も吐き出される煙も四方に飛び散るというのに。
無神経としか思えない。
[ギルバートへの返答というよりナサニエルへのあてつけで]
じゃ、私は食料庫に向かうから。
何かあったら個人回線で。開けておく。
[素早く二人の脇を抜けて通路を向こうへ進む。
その先には*食料庫*]
冒険家 ナサニエルが村を出て行きました。
7人目、冒険家 ナサニエル がやってきました。
[予想通りのセシリアの回答に緩やかな笑みたたえ、
彼女が自分に返した返答には]
ああ、気をつけてな。
[特別扱いの言葉には幾度か瞬いたけれど、それきりで。]
っていうかそれ、俺に言ってる、もしかして?
[ギルバートに答えたらしき返答に何やら思うところがあったのか問うけれど、当然悪いなどと思っているはずもなく、くすくす笑って。]
お前も、何かあったら連絡寄越せ。
何が起こるかわからない。こっちも開けてるから。
[そうして、その背を見送った。]
[煙草の情報を語るセシリアを何処か不思議そうに――当然ながら其の言葉がナサニエルに対するあてつけと云う認識は無いだろう――眺め、食料庫へ向かうらしき其の背を見えなくなるまで見送り]
一本、貰える?
[傍らのナサニエルへと骨ばった手を差し出し――先程までのセシリアの言葉を何と思っているのか、常は吸わない煙草を所望し――て、彼の顔を覗いてから今更の如く思い当たった様子で]
ナサニエルは、煙草の香り。
[常、ナサニエルが纏っている香りが、人の体臭ではなかったらしいのに、煙草の香りを纏う彼を見詰めた儘――漂う紫煙は無いけれど僅か目を細め――に小さく呟く]
――吸うのか?
[意外そうに彼を見つめて]
普段吸わないんならやめた方が良い。
慣れなきゃむせるし体に悪い。
[自分で吸っておいて体に悪いと言い切るあたりはセシリアに見られていたらまた何か言われただろうけど。
躊躇しつつも、もう一度所望されればおそらくは渡すだろう。]
ま、吸ってるしな。
煙草臭いかもしれない。
[つぶやきにはこちらも返事らしきものを返した]
吸った事は無いけど。
[渡された煙草を俯き加減に――灰皿の存在も喫煙マナーも全く気に留めず――咥えてから動きを止め、喫煙の習慣が無い故に火を持ち合わせて居ないのに気付き、諦めた様子で煙草を持ち直し手の中で細長い其れを転がし弄ぶ]
別に――…
[臭くは無いと言葉にはしなかったけれど、手の中の煙草を摘み鼻先に寄せて匂ってみるも、香りは認識すれど不快なものと感じる事も無いのか、煙草を眺め回し首を傾げる]
――…
[聊か早口に音も無く何事かを囁く口唇には「死」と云う短い単語が読み取れたかも知れず、ナサニエルに向き直る頃には貰い受けた煙草を胸ポケットに仕舞い]
如何して、煙草を?
[吸ったことはないという言葉に首を傾けて、口にしたのに幾分かいつもより見開き気味の目で]
おいおい、ここ通路――
[言い掛けて、火がないのに気づけば息を吐き]
もし吸うんなら、部屋か喫煙スペースな。
それがルールだ。
[とりあえずの忠告だけはして。
何かを否定する言葉が「煙草臭い」であることはわかれども、「臭い」という単語のつもりはなかったから、ゆるりと瞬いて。
煙草遊び――という表現に留め――が終われば微か聞こえた言葉に怪訝な顔はしたけれど。
暫く……というには短い程度に彼の顔を窺ってから]
理由?
きっかけなんてもう覚えてないけど……
吸うと自分が安定するから、かな。
喫煙スペース。
[呟きながら脳裏には空気清浄機があるにも関わらず幾らか視界の悪そうな――宇宙船の外側とは別物なれど、普段は透明な板の向こう側にしか見た事の無い――空間へ想い馳せ、忠告には従う心算なのか頷く代わりに瞬きを一つ返す]
難しい。
[何に対する感想なのか刹那注がれるナサニエルの眼差しを真っ直ぐに受け止め、問い掛けに答が得られると思案気に煙草を仕舞った胸元へと手を置き、随分と――ただ見詰めあうには――長い間を置き緩やかに瞬く]
安定の代償は、黒い肺。
[胸元に置いていた手は煙草を仕舞ったポケットから変わりに――船に異変が起きる前から其処に仕舞われていた、本人が意識しているかは別として良く食べているオムライス味の――レーションを取り出し、物々交換の心算なのかナサニエルへと差し出す]
[いつものようにか瞬きで恐らく返事を返したのを見て、よし、と一言。]
難しい?
[何が、と口にする代わりに首を傾げてみたものの、答えを得られる確率は薄い見積もりを出す。
彼が胸元に手をおいてから、その間、彼の言葉を待ち]
代償は、黒か。
[色しか言わなかったのは無意識なれど、レーションを差し出されればそれこそ怪訝な顔で数度瞬き]
煙草一本で得られたものは随分大きいな。
[と単なる感想を告げ、自分がそれを自分で食べるかどうかはさておき、とりあえずは受け取り]
さんきゅ。
[等価交換でないことは現状が現状だけに明白なれど、恐らくそれは暫くそのまま持っているものと*なろうか*]
[問い掛ける如く首を傾げるナサニエルの仕草は視界に映れども、彼の予想通り其れに対する明確な返答が紡がれる事は無く、怪訝な面持ちで差し出したモノを受け取る様子を見守り]
きちんと見た事は無い。
[聴いただけ、と恐らくは喫煙者の肺の色に対する言葉で、等価交換とは思わないらしき口振りに彼の手に渡ったレーションの包みを――何の感慨も執着も感じられない眼差しで――眺め]
そう。
[貰う心算もながった謝辞には聊か不思議そうな気配も混じる瞬きを一つ返し、再び今は煙草の仕舞われた自身の胸ポケットの辺りに手を置き、ナサニエルの脇を通り自室へと――ナサニエルやラッセルが見回りをしているのも聴いては居ないが、聴いたところで矢張り自身が見回りをする事は無いのだろう――向かうも、部屋に辿り着いても彼の手に渡ったレーションと同じく、貰い受けた煙草も当分は火のつけられる事は無いのかも*知れない*]
[見回りながら出て行った者達の末路をぼんやりと考える]
長期間漂流が予想される際に必要な物…空気。食料。水。
[食料保管庫が襲われたとは聞いてない以上あるとしても備え付けの僅かな保存食のみであろう。ましてや空気―酸素が無くなればそこで終わり。最悪の手段を使っても僅かな引き伸ばしも出来るか否か―]
―愚か。
[手にしたレーションを片手で浮かせては掴むを繰り返し、
数度目かでしっかり受ければ一拍目を伏せ、胸ポケットにしまう。]
黒い肺、か。
[彼が見えなくなってからぽつりと呟き、自分も反対側に歩き出す。
けれど取り合えず今吸うつもりはなくなったらしく、喫煙スペースは通り過ぎて*見回りに戻った*]
―自室―
[サイドテーブルにに鎮座したホログラム時計――時間以外にも室温や湿度等の表示もされているが、普段は置いてあるだけで確認する事も稀な、半ば飾りとしての役割しかない無機質な数字の羅列――を一瞥し、貰い受けた煙草を時計の手前に置き、指先に微かな力を込めて平坦な机の上を転がすと、ホログラムを掠め歪んだ若草色の文字が指先に映り込む]
白い煙と黒い肺。
[僅か目を細め小さく囁いた言の葉は煙草の煙の如く霧散して、残される静寂の中では身じろぐ衣擦れの音すら大きく響き、鼓膜を震わす雑音を振り払うかの如く緩やかに被りを振り]
未だ――…
[震える口唇だけが更に何事かを呟き、自身の掌を見詰めて緩やかに瞬き、重力装置のスイッチを切り室内を無重力状態にすると、通常勤務時間まで暫く休息する心算なのか宙を蕩揺たい、目許に腕を置いて――重力装置のスイッチは切れども、照明のスイッチを切る気は無いらしい――照明の*光を遮った*]
―食堂―
[コポコポ][ボトルから水を喉に流し込む。配給制限のかかった食堂は閑散としていて誰もいない。水のボトルを、とん、と隣に置いた。すわり心地のあまりよくない椅子に凭れ]
……―――ラスは―。
ラスはまだ、見回りしてるのかしら。
体力の無駄遣い。休めばいいのに。
[ポケットを確かめるが、一つのレーションも入っていない]
―自室―
[見回りを終え部屋に戻る。ロックを掛けた後僅かな水を飲みベッドへと]
…………迂闊。
[照明と共に重力制御まで切ってしまったのは疲れて判断力が低下しているためだろうか―その様な事をぼんやりと思いつつ入れ直すのも億劫なのか宙に浮かんだまま*目を閉じた*]
[長いこと中空を見つめて黙り込んでいた。考え事をしていたのか、単にぼうっとしていたのか。答えは明白で、彼女は後者のようなことを殆どしない性質だ]
…もどろう。
[水のボトルを手に取ると、立ち上がって*自室に向かう*]
定員に達しなかったため、村の更新日時が24時間延長されました。
―中核部―
[部署へ顔を出すと明らかに普段より船員が少なく、訊いても居ないのに数名が脱出艇で脱出したらしいと教えられ、緩やかに瞬き一つ返し業務を開始すべく、席に着きモニタのタッチパネルを骨ばった指先でなぞる。
常より人の少ない割には妙に騒がしく、脱出した者達は途中で食料も尽きて――船舶の漂流した過去には人間が共食いをしたらしいと云う話からか――共食いを始めた頃だろう等と云う無責任な憶測や、彼等の内の数名が保管庫に押し入って食料を持ち逃げしたらしいとの噂話やらで、室内は――そうして居ない人間を標的に噂話にでもしないと、明日の我が身も知れぬ残された船員達の気も紛れないのだろう――おかしな方向に活気付いている。
モニタに映し出される映像には未だ補給衛星の影すら見えず、カプセル修復の目処も――投げ出して脱出する者も居ては益々遅れる事が容易に予想も出来る――立たず、保管庫の食料は日に日に減っている状況で、徐々に精神力も削られ、制限された食事のせいで体力をも削られているらしき船員達の様子を横目に、淡々と業務を*こなしていく*]
…………ぅ。
[目を覚まし状況を把握した後墜落を防ぐべく床の方へと降りてから重力制御スイッチを入れる]
――――っ。
[僅かな落下感に小さく息を呑み、ゆっくりと立ち上がると部屋を片付け始めた]
―自室→通路―
[片付けを終えた所で端末にメールが届き目を通す]
……了解。
[聞こえないと分かって居ながらも返答すると部屋を出て中核部を目指す]
[脱出したらしき船員を確認し人員の不足の報告を上層部へ回し、幾つかの打診と共に補填人員の要請を――此処でも必要以上の仕事が増えている――して席を立ち、黒い手袋を順に両手にはめ軽く拳を握り具合を確かめる]
全ては、有限。
[不在者の部屋への無駄なエネルギィ供給を止める為、システムでは対処出来ない部分に関しては手動で行う他無く、床に片膝をついて床板と成っているパネルをゆっくりと持ち上げ、更に重厚な蓋を開けると、並ぶ制御板の一つ一つを静かに確認し、不在者の居た区域のスイッチを切っていく]
――…
[主の居なくなった個人スペースは闇が侵食し、脱出艇へと至る廊下は非常灯を残し照明が消え去り、船員の減り閑散とした船は益々不気味な静けさを纏う頃には、この処置に対する――表向きは食事制限に依り肉体の体温コントロールが難しく成っていくであろう今後に対応する為、不要なエネルギィ消費の削減と、裏では脱出艇への進入を抑止する心算かも知れない――上層部からの放送もあっただろう]
[気配と声に床に片膝ついた儘ゆっくりと顔を上げ、其処にラッセルの姿を認め緩やかな瞬き一つで迎え、制御板の蓋を閉めパネルを元に戻して立ち上がり、促す様にモニタへと視線を移し骨ばった指が盤面をなぞりながら、今し方行われた処置と是からの作業――不在者の穴埋めを可能な限りシステムに任せ、残る船員達の勤務時間を通常との誤差範囲内に収める為に、多少の組み換えが必要だと――を静かに説明し]
システムは、融通が利かない。
[呟きと共にモニタからラッセルへと向き直り、説明が伝わったかを確かめる如く暫く見詰め――良く見れば頬の辺りが若干痩せてきているのも見て取れただろうか――てから、何時も通りに緩やかに一つ瞬き]
自分の色は、見つかった?
[作業とは全く関係のなさそうな――本人の中では何かしら関わっているのかも知れないが――問い掛けに、ラッセルの答えを待つ幾らかの間を置いてから、作業へ取り掛かるべく席につくだろう]
[船内を適当に歩き、今のところ落ち着いているのが判れば煙草を一本だけ取り出す。とはいえ通路ゆえに火をつけることはなく。
取り出した一本を眺めながら歩いて、暫くして咥えればゆったりと足は自室へと。]
異常がないなら歩くのも無駄、か。
[と、一人呟いていつものようにロックもかけずに部屋に戻る。
椅子に座り一息ついたところで上層部からの放送が入るだろうか。
無表情なまま外の闇を見つめて煙草に火を点け、軽く吸って息を吐けば部屋には紫煙が立ち込める。]
―中核部―
ギルバート。
[手動でスイッチを落としている彼に声を掛け、説明を受ければ黙して聞き入り見つめられれば了承したと言う代わりに小さく頷く。問い掛けには]
…まだ。
[簡潔な答えと共に勤務に着く]
[胸ポケットからレーション―ギルバートから受け取った―を取り出し机の上に置いて、幾度か紫煙を吐き出せば無造作に煙草の火を消す。
そうして立ち上がりベッドに深く腰掛け、テーブル上のレーションを何となく見つめること暫く]
――オムライス、か。
[呟いた言葉にも意味などなく、全ての身体の力を抜くように、ふぅっと仰向けにベッドに倒れこみ、どこか人形のような瞳に色を宿さぬ表情で天井を見つめる。]
[幾度か瞬けば満足したのか起き上がり、けれどイマイチ気乗りしない様子で自分のレーションを手にすれば一口かじる。]
……あとは煙草で充分。
[言えば、レーションを戻して煙草をもう一本取り出し火を点ける。
吐いた煙が部屋を侵食していくけれど、それもすぐさま掻き消えて。
ある程度休めば部屋にいる意味もなくなったのか、別段見回りでなくともふらりと部屋を出て行く*だろう*
[徐々に足場を削られて行く――或いは自分達で削っているのかも知れない――様な不安定な現状に、周囲の船員達の空騒ぎの声は、誰も居ないのに稼動している遊園地の如き狂気を帯びて響くか。
ラッセルの入室に漸く勤務から開放されるらしき船員は席を立ち、両腕を上げ左右に伸びをして首を振り大きな欠伸と労いの言葉を残し、疲れた面持ちで部屋を出て休憩へと向かうだろう]
そう。
[ラッセルの簡潔な答えへの返事も簡潔に、其の間も眼差しは必要な手順を踏まえながらモニタに映し出される文字の羅列を捉え、骨ばった指先は時折タッチパネルをなぞっていく]
このシステムは、何色だろう。
[ただ口唇から零れただけの呟きは問い掛けですら無く、背景が漆黒のモニタに映し出される数色の文字列を見詰め、また緩やかに瞬き作業を続ける]
−重力室−
[スイッチは無重力に。
ポニーテールは動きに合わせて空間を漂う。
咥えた赤いヘアピンで長い前髪をサイドに寄せて固定すると、自分同様に宙に浮かんだままのリモートコンソールの画面を慣れた様子で叩く。
相変わらず、船内の生体パルス総数のレスポンスの数は減る一方で、同様にこちらのアンバランスメッセージを拾える範囲内に他の船はない]
やれ、どうしたものかな。
[ゆらゆら無重力の中揺れながら、コンソールをたたくと画面が自然と船の外の風景を映す。
今日も宇宙は快晴のようだ]
[作業をしながらギルバートの言葉に答えるでもなく偶々聞こえた言葉への反応が声として出ただけの様に]
システムの色…作った者の色?
[どんな物でも製作者の個性が出るものだろうと―]
[元々食事はあまり取らない質だから食べ物が減ったところでそれほど問題があるとは思わなかったのだが、流石に一日にゼリータイプのものを一袋だけ、と言う日が続けば体はこたえるし、いい加減咀嚼力が落ちたような気がしてそのうち自分のあごがとても細くなってしまうのではないかと気になった指先が思わず元々細い顎をなぞる]
…顎が弱って歯が無くならないうちに、肉も野菜もまた食べたいもんだね。
[それほど困ったような様子もなく、のんびりした声でもうひとつ呟く。
困った、と]
[ラッセルから反応があると思って居なかったのか、不意に作業の手を止め其方へと顔を向けて、暫くは返事をするでもなく作業する彼の横顔を眺めてから、モニタへと視線を戻しゴーグル――机にホログラムを呼び出す同システムもあるが、擬似空間にキーボードを呼び出す今と成っては旧式の装置――をかけて、中空で骨ばった指を躍らせ始め]
製作者の色。
[色を探る様にかゴーグルをかけた儘に首を傾げ]
――…還りたいのか…
[其れは恐らく製作者に限らずこの船に乗っている者達――或いは脱出艇で脱出した船員達も含め――の願いだろうけれど、ポンと中空を叩きシステムの書き換えが開始されるのにゴーグルを外し、再びラッセルへと向き直る]
後は、自動的に書き換えて呉れる筈。
[労いの言葉までは無いけれど幾らか穏やかな声音で告げ]
[コンソールで室内の重力を徐々に通常へと戻していけば足はフロアへと降り、コンソールは落ちる前に脇に抱えられ、波のように広がった長い髪も重力に任せて馬の尾のように下へと向かって垂れ下がる。
それからぐーっと伸びをすると、髪を揺らしながらセンターフロアへと向かう。
中核部を通り過ぎて船首先端の自分のエリアへと向かおうとしたところで作業をしている姿を見かけて]
おや。思ったよりも人間残ってんだね。
[挨拶がてらいきなりぼやく。
船が壊れる直前、このあたりは右を向いても左を向いても作業クルーが目に入るなんていうのが当たり前だったような気がした]
…出来れば。
[地球に帰れば、父とも再会出来るのだから―
終了を告げられ]
そう…自分は戻る。ギルバートは戻る?
[問いかけた所で別の声が聞こえ]
コーネリアス。
[会釈を返す]
Hello?
[自分の存在を認めたラッセルに、ひらっと手を振って]
お前ら、二人とも残ってたのね。
ちょっと意外って言うか、らしいって言うか。
[他の面子はどうなのだろう。
あえて口には出さないけれど、灰色の瞳は問いかけるだろうか]
[気配と声にゴーグルを脇に置きながら緩やかに入り口へと顔――顔を見ずとも肌と耳はコーネリアスである事を察知してか、余程注意深く見て居るか親しい者が見なければ判らない程度だが、常より幾らか穏やかな面差し――を向け]
来て貰ったから。
[其の人を伝える如くラッセルへと視線を流し示し、コーネリアスを暫く見詰め、元々細い彼の顎のラインをなぞった眼差しは僅か細められ、珍しく微かに表情を曇らせる]
――…
[食料の殆ど無い現状ではかける言葉も無く、口唇は震えるだけで緩やかに瞬き、何時も通りの感情を写さない面持ちに戻り]
是から、仕事?
[ラッセルからの問い掛けには暫く思案の間を置き]
還る為に、足掻く。
[紡ぐ言の葉は常と変わらず淡々と静かではあったけれど根底には意思も滲んで、コーネリアスの問い掛けに答える様子を見守り、部屋へと戻るらしき後姿を見送る]
[休憩も終えて出歩いてみるも内部ですることなどあまりなく、
退屈と言えば退屈だけど、ちょっと前までの退屈ともまた違い。]
俺の場合は仕事がない方が平和ってことだけど、さ。
[そういや医務室に行った女性作業員は元気になったのかな、とかどうでもいいことなど考えてみたりもして。
宛てもなく歩くのは何故か。以前は自室か喫煙スペースで煙草を吸うか他愛もない話をしながら暇を過ごしていたのに。]
じっとしてられない、ってのは子供かな?
[歩む速度はゆっくりで。]
ハーイ、ニコル。元気?
お仕事おつかれー。
[ひらひらと手を振って彼にいつものように笑ってみせる。
身振り手振りから推察すれば、自分は船内クルーにしては比較的テンションが高いといえるだろう。
少しだけ表情が曇ったように見えたけれど、それに気づくような様子もなくて、むしろ笑顔のまま首を傾げるだけ]
ああ、そうなんだ?
じゃあえーと…ナサは部屋かねぇ。
[小脇に抱えたコンソールで重力質から確認した生体パルスの中に彼の部屋で点滅しているものがあったように思われて、ふむ、とちいさく相槌を打ちながらラッセルを見送る]
定員に達しなかったため、村の更新日時が24時間延長されました。
[減った人間を頭で思い起こすも、それもどうでもよくて。矢張り頭の良い行動とは思えないからどこかで馬鹿にしたかもしれず。]
出来ることは、少ない。
[少しつまらなそうな顔にも見えたかもしれない。
と、恐らく中核部あたりから出てきたラッセルを見かけて一拍見つめれば、彼が部屋に戻るようなのに声をかけたわけでもなく――目が合えば片手をあげて挨拶の一つもしたろうか――何となく足は彼が出てきた方向に向いてしまうだろうか。]
[元気かとの問い掛けにコーネリアスの笑顔を見詰め思案気に――傾く彼の首と同じ様に――首を傾げ、結局は労いの言葉と纏めて緩やかな瞬き一つを返すに留め]
ナサニエル?
[煙草を貰い受けて後の行動は判らずに被りを振り]
残っては、居ると思う。
[最後に貌を見てから暫くの時は過ぎていたけれど、なんとなく未だ彼は船に居るのだろうと思い付け加え、モニタの明滅に視線を移しシステム書き換え終了を見て取り、タッチパネルをなぞり待機画面へと変更し席を立つ]
仕事と云えば…?
[笑みと共に返される言葉にも不思議そうに瞬くも、別段に答えを求めていると云うよりは、単純に疑問が口から零れたらしき呟きで]
そ、仕事と言えば仕事。
相変わらず拾ってもらえないボトルレターの送受信、ってさ。
あとは、船の航行ルートプログラムの差分修正。
[小さく肩を竦めて、けれどやはり笑った。
残ってはいる、というあいまいな返事にも、ふぅん、とひとつ相槌を打っただろう。
別に今すぐリモートコンソールで確認することは可能だったけれど、そこまで慌てて確認をする必要があるわけでもないのか、それは実行に移されることはなかった。
そんな話をしていればラッセルが去っていった方向からの気配が再び近づいてきたことを感じてそちらを見れば]
うわさをすれば影、かねぇ?
[ナサニエルが見えたなら、手を振っただろう]
[気だるそうな、けれどつまらなそうな様相で付近まで来たけれど]
ココ入ってもすることないんだよなぁ。
[けれど来てしまったのは人気がありそうだと思ったから。
人恋しいわけでもなかったし、今まで一人になりたいとは思っても誰かと居たいと思ったこともない。
コーネリアスが手を振っているのに気付けば何拍か見つめながら歩み、近くまで来てから漸く手をあげて。]
減ったな。
[かけた声は挨拶でも何でもなかったけれど、それは挨拶代わりだったらしい。うわさをされていたなだととは露知らず。]
そう。
[コーネリアスの言葉に瞬きと共に短く――労う如く幾らか穏やかな――声も応え、肩を竦めども常と変わらず笑みを零す彼の様子を静かに見守り、ふと僅か目許を和らげる]
ナサニエルに…
[何か用?と問うより先に、近づいて来る気配へと緩やかに視線を移すと、コーネリアスの言葉には瞬き一つで応え、噂の主であるナサニエル其の人の登場に、何時も通り挨拶代わりに瞬きを一つ送るも、常は中核部に立ち入る事も稀な筈の彼が、何か用でもあるのだろうかと問うらしき眼差しで暫く見詰め]
――…見回り?
[問題が起きれば通信が入るであろう状況で彼の他の用件を思いつかず、口唇から微か零れる呟きはナサニエルへの問い掛けと云うよりは、自身の内へ向けられた問い掛けの様相で、する事が無いとぼやく彼を不思議そうに見詰める]
そ。
だから仕事でもあるし仕事でもない。
拾ってもらえない手紙はいつまでも片思いのラブレターと一緒だ。
別に、ナサニエルに用があるわけじゃないよ。
ただ、いるんだなーって思っただけ。
[小脇にコンソールを抱えているので、抱えていないほうだけの手振りと共に肩をちょっとだけわざと竦めて見せた。そして近づくナサニエルに軽い挨拶と共に応じ]
ハーイ?
うん、減ったね。ものの見事に。
[その口ぶりはあくまで軽く、注意して聞いていなければ聞き逃してしまいそうなほど普通で]
[ギルバートのいつもの様子にこちらも首を傾けて、けれど紡がれた言葉には自分も一拍考えるような素振り。]
見回りは……終わった。
する必要というか原因そのものが減ってきてるし?
[不思議そうな眼差しをどうしたものかと考えるけれど]
まあなんだ。暇だから。
[仕事をしてる人間に対して言う理由じゃないけれど、悪びれた様子は全くないのはいつものことで。]
[明るい口調のコーネリアスに自然と表情は和らいで。]
一体何人にラブレター出してるんだか。
[聴こえた会話に冗談を返したけど、
当然彼が遊んでるわけじゃないのは明白で。
やはり、少し居場所がないかと思案気に表情を戻した。]
減った中に俺はいないわけだけど、この状況じゃココに居ても
仕方がないなぁと思わないでもない。
[さらっと現状に不満を漏らし、肩を竦めた。]
[「片思い」と口唇だけがコーネリアスの言葉をなぞり、ナサニエルとの挨拶の遣り取りを聴いているのかいないのか、彼の挙動の度に揺れる長い髪へと視線を移し、照明に煌く髪の様子を暫く眺め、コーネリアスの灰色の瞳へと眼差しは戻る]
コーネリアスも、居る。
[確認する如くか余りにも当然の事を呟き、残っているのと逃げ出すのと一体どちらが生存率が高いのかも判らない状況で、何故か此処には未だ数名の人間が存在している事を改めて認識する]
人が、減ってるから。
[原因が減ってきたと云うナサニエルに応え、暇だから此処に居ると云う回答には――自身が勤務中だからと云って気分を害した様子は全く無いが――益々不思議そうで、暫くは思案気に彼を見詰め]
チェスでもする?
[唐突に暇潰しとして思い付いたモノを其の侭を口にする]
それは秘密。
余計なこと知っちゃうと、馬に蹴られて宇宙の彼方よー?
[小さな含み笑いをひとつ。
実際にそんなものは履歴を見ればわかるだろうことであって何の秘密でもないのだが]
そーお?
まあ、船に何か掠ったり穴でも開かない限りは今のところ有給状態なんだし、折角だからゆっくり暇しておけばいいじゃない。
どうせ、また船が本来の航行ルートに戻ったら仕事なんて降って沸いたように出てくんだからさ。
[まるで無理を言う子供のようなナサニエルの仕草に苦笑して、それをなだめすかすかのように彼の頭を撫でようと手を伸ばす]
流れ者 ギルバートが村を出て行きました。
うん?
ああ、そうだね。ここにいるよ。
ニコルもここにいる。
ラッセルとナサも、この船の中にいるね。
[子供のような言葉によく出来ました、と褒めるようにニコルへと笑ってみせる。
実際、声に出してみればどれだけのクルーがこの底も波も見えない宇宙の海へと補陀洛渡海とばかりに旅立っていったことか]
チェス。いいねー。
将棋も好きだけど、ここにはなさそうだ。
暇なら頭脳労働よろしくやってみたら?
[どうやらますます不思議な眼差しを受ける羽目になってしまったことに苦笑し――けれどどこか楽しそうに――チェスと言われれば今度はこちらが僅かにきょとんとした面持ちを返す。]
ギルは仕事中じゃないのか?
[自分だけが手持ち無沙汰な気分でいたから、疑問は自然と口からもれて。]
秘密と言われると知りたくなるのが世の常だろ?
宇宙の彼方に飛んでった先が地球だったりしたら喜んで蹴られるね。
[そんなことを言いつつじゃれたりして。]
後々高くつきそうな有給だ。
本来の航行ルートに戻った時に、船外活動するのが俺だけでした、
って状況なら酷くこき使われそうでぞっとするよ。
[くすくす笑って会話を続ければ彼に頭を撫でられて、ふいと視線を外す。普段撫でる癖はあるくせに、撫でられるのは何だか慣れず。とはいえ自分を撫でるのは恐らく彼くらいのものだけど。]
7人目、流れ者 ギルバート がやってきました。
[褒める如く紡がれるコーネリアスの言葉と彼の笑顔に僅か目を細め、視線は黒い手袋をした儘に成っていた掌へとおりて、両の手から其れを抜きポケットへと仕舞い、幾度か確認する様に手を握って開いて、将棋は無いと云うコーネリアスに首を傾ける]
簡単なプログラムなら、組むけど。
[単純にチェスくらいしか思い付かなかったらしい]
さっき、終わった。
[ナサニエルの問い掛けに答えるも、流石に此処で遊ぶ訳にもいかないと云う事には思い至ったらしく、二人の顔を見比べて]
するなら、通路に移る。
まぁ、それはねー…けど好奇心は身を滅ぼすって言葉、知ってるでしょ一応。
蹴られた先が太陽だったらどーすんの、一発で蒸発よ?
[合掌すると皮肉っぽい発言をひとつ]
ああ、ああ、そういうしっぺ返しは今考えないの。
こういうときぐらい楽しいこと考えとけよなー。
[撫でる手は最終的にぽこんと一つナサニエルの頭をたたいて引き戻され]
ああ、いいよいいよ、どっちにしろ今はボトルレターの送受信のチェックして来なきゃいけないしね。
あ、でも。もしニコルが将棋したいなら、用意しといてよ。
そしたら、今度一緒にやろう?
[好きにしていいと彼に選択肢を与えてから小脇のコンソールを抱えなおし]
さてと、それじゃ報われないラブレターの貰い手を捜しにいってくるよ。
チェスやるんだったら、どっちが勝ったかあとで教えろよー?
[じゃあね、と二人に手を振ってそのまま*船首のほうへ*]
仕事終わったなら付き合ってもらおうかな?
[チェスをしたい、とか、そういうつもりもないのだけれど、やはり暇なことは暇ならしく。]
ま、確かにココじゃちょっとな。
[移動する、という言葉には肯定をしめして、コーネリアスに]
蒸発はごめんだな。詮索はしないでおこう。
[くす、っと笑う。ただの言葉遊びなれど。
添えられた言葉と共に頭を叩かれれば、むー、と考え込み]
へいへい、楽しいこと、ね。
善処するよ。
[素直に頷くことはせず、ひねくれた答えを返す。
この状況で本当に考えられるとしたら随分と能天気な気もするが。]
[今は要らないと云うコーネリアスの言葉に頷く代わりに瞬き一つ返すも、続く言葉には選択権が与えられるも聊か困惑の気配が滲んで、口を開くより先に彼は部屋を出て船首へと向かう様子に、結局は言葉をかける事も無く後姿を見送り]
将棋は――…知らない。
[存在は知っていてもルールを把握していないらしく、将棋をしたいしたくない以前に――先ず前提としてチェスをしたいのかと云う時点で、答えは曖昧であろう行きずりの状況だろう――プログラムを組むには知識が足りないと云う事実は、コーネリアスの後姿が見えなくなってから漸く呟きとして零され]
何処?
[ナサニエルへと短く問いながら今一度モニタ覗き問題の無いのを確認し、コーネリアスに次いで共に中核部から出て歩き始め、二人の会話を思い返し緩やかに傍らの彼へ顔を向け]
楽しい事って?
[将棋は知らない、という呟きは聴こえたけれど、自分も詳しく知っているというわけでもなく。短い問いかけには]
どこがいい?
[と言っても部屋だとか食堂だとか、そこらへんしか思いつかないのも事実で。けれど呑気にチェスなんてやってる様をまたややこしい人間に見られるのも軽く頭を悩ませ、ギルバートの返事も待たず]
……部屋にしようか。
煙草の臭い、気になるならギルの部屋でもいいけど。
[と応えた。続く問いかけには困ったような表情を返して]
楽しいこと……なんだろな。
俺もこれから考えるんだけど。
[言いつつ、足を進めて]
[将棋のルールに関しては知っている筈のコーネリアスが去った今更判る筈も無く、其れ以上は言及する事も無く――とは云え何処かから将棋のデータを探し出せれば、近いうちにプログラムを組んで居そうではある――て。
ナサニエルの問い掛けに思案気に間を置く内には、彼の中で結論が出されたらしいのに、緩やかに瞬き――彼の思考はさっぱり理解していないだろうけれど――肯定の意思を伝え]
別に、気に成らない。
[ナサニエルの匂い、と小さく呟きを添え、問い掛けに返される困った様子の彼の表情を静かに見詰め、彼の面持ちを写し込む如く僅か困惑の色を浮かべ、紡がれる言の葉に直ぐに普段通りの表情に戻り]
そう――…
[歩きながらも暫くは思案して居るらしく、若しナサニエルに言葉をかけられたとしても返事の無いひと時もあっただろう]
見つかると好い。
[漸く口を開いたと思ったら出てきたのはそんな呟き]
そう?
じゃ、決まり。
[行き先が決まればそのように歩み、ナサニエルの匂い、という言葉に幾分かくすぐったさを感じてしまったらしくきょとりと瞬くだろうか。
けれど己が表情に相手が困惑の色を映せば僅か瞬き、普段通りに戻ればもう一度瞬いて。
彼の間。考え事をしているだろうか、言葉を待ち。
紡がれた言葉にゆるく頷いて]
……かな?
[と答えた所で部屋につこうか。目に付くものといえば煙草くらいで、後はこざっぱりとした片付いた部屋に。]
[きょとりと消えまた現れる還るべき星の色に似たナサニエルの双眸を、常は余り浮かばない――恐らくはくすぐったさ故のものだろう――気配を感じてか暫く静かに見詰め、歩む方向が決まるのに、彼の部屋の位置を把握していないらしく幾らか遅れて後を追う。
言葉を待たれていたのも気付かぬだろうけれど、頷くナサニエルに緩やかな瞬きを一つ返し、通される余り不要な物も無い部屋をぐるりと見渡し、机の上の煙草を一瞥すると彼へと向き直り]
是で好い?
[チェスをする台を確認し指定されたものへと歩み寄り、自身の腕にある端末からコードを引き指定された台へと差し込み、端末の盤面を操作すると直ぐにチェスが起動する。
台上にホログラムの白黒のチェスの盤面と立体的な駒が並ぶと、白と黒のポーンの置かれたマスに触れてから両手を合わせ、両手の甲を上に緩い握り拳をつくりナサニエルへと視線を移しゆっくりと首を傾げた]
[部屋にギルバートを通し、台を確認されれば頷き準備する様を眺めて。
流石に煙草は遠慮をして待って、セットが完了した所で座り、差し出された手には深く悩むこともなく自分から見て左側をつつく。]
――こっちで。
[選んだ先は、黒。]
[指し示され開いた掌の黒いポーンのホログラムを確認し、両方のポーンをチェス盤に戻すと、家具の少ない彼の部屋の床――若しあれば椅子かベットかも知れない――へと腰を下ろして、暫く盤面を眺めてから骨ばった指先が駒をなぞり、一手目の駒を動かしながら不意に――煙草の香りの残る部屋だから――彼の言葉を思い出してか口を開く]
吸わないの?
[視線は相変わらず白と黒の盤上に注がれている]
[黒のポーンを確認すれば彼の一手目を待ち、彼が動かし終えたのを見遣れば自分も一手目を動かさんと手を伸ばす。
かけられた言葉に一つ瞬き]
ん。
一応、来客だし。
[と呟いて完了する。]
[ナサニエルの黒い駒が動くのに緩やかに瞬き]
そう。
[一手目よりは長い間を置いてから骨ばった指は駒を動かし、「別に気にしないけど」と添える様に小さく呟く]
[気にしないとの言葉に「そう?」と短く返し、幾度かの手数を繰り返し――]
――案外
[やるな、と言ったか否か本人もわかってないくらいには悩んだ何手目かの駒。
手元は無意識に煙草を取り出して、口にくわえ。]
[返される問いに静かに顔を上げ瞬き一つで肯定を示し、ナサニエルの悩む間も彼の貌を眺めていたかも知れず、其の口唇から零れる半ば無意識らしき呟きは聴こえども、盤面で動く駒へと視線と共に意識は戻り]
――…
[何手目かの黒い駒の動きを見守り、首を傾け盤面を見詰めた儘に随分と長い間身動ぎもせず、音も無く口唇だけが微かに震えた後に、漸く動いた手が打つのは掴みどころの無い一手だろう]
[長考――その間も視線は盤の上に注がれて、いくつかのパターンで返しを想像はしていたのか、漸く動いた一手にくわえた煙草に火を点けることも忘れたまま幾度か瞬き]
……この手は
[口を開きかけるもまた黙り込んで駒を眺め、今度は彼が長考する立場らしく暫し悩んでまた一つ、動かす。
やや眉間に皺がみられたかもしれなく。]
[ナサニエルの長考する間は火のつかない煙草を眺め、彼の眉間に皺が寄り駒を動かす動作に、漸くチェスの途中だった事を思い出した様子で、盤面へと視線を落とし先程よりは幾らか短い思考の後に白い駒を動かし]
安定する?
[火をつけなくても、とは言外に盤面を見詰めた儘に問い掛け]
――ん。
ああ。
[尋ねられたことに一瞬意識を戻して意味を考え、
漸く自分が火もつけてなかったことに気づいて]
くわえてるだけでも小さな安定がなくはない。
[などと言いつつ盤を眺め、黒の駒を動かす。
そうして火を点けるものの、吸うことを止めて手元で溶けていくばかり。]
そう。
[漂い始める煙草の香りと白い煙に――或いは彼の手元で煙草が燃えていく微かな音も聴こえただろうか――緩やかに瞬き、火はつけたけれど今度は咥えても居ない様子に首を傾げるも、ナサニエルの駒が動くのを見守り、更に何手目か骨ばった指は静かに盤面をなぞる]
――…チェックメイト。
[盤面から顔を上げナサニエルを見詰めた]
[いつから負けは見えていたのか、宣言と共に漸く吸わぬままに少し短くなった煙草に口を付け、ふぅー、と真上に一息つけば紫煙は広がり。
見つめる目を見つめ返し聊か納得し難い面もちで]
どこで覚えた、ああいう手。
[仲間内でもチェスはよくしていたし、苦手な相手はそれなりにいるも自信はあった方で、相手の力量をはかるのも出来たはず――けれどこの状態が理解出来ないのはあのつかみ所のない一手のせいもあり、解せない表情のまま。]
ま、負けは負けだけど。
[興味は勝敗の方よりも過程らしく、初手から脳内で思い出しつつ考え込み、髪を掻き上げて紫煙を*吐き出した*]
[恐らく最後の一瞬まで自身の勝利は見えて居なかっただろうけれど、白い煙の向こう側に納得のいかないらしき面持ちを捉え、続く問い掛けに不思議そうにナサニエルを見詰めた儘に瞬き]
さっき。
[思い付いた、と語る口調は何時も通りに、負けは負けと零しながら髪を掻き揚げる仕草を静かに見守り、吐き出される白い煙の向こう側へと手を伸ばし、何を思ったのか何時かと同じく彼の髪を梳き]
冷たくない。
[指の間を零れていく髪の感触にか僅か目を細め、離れた手は漸く咥えられた煙草の直ぐ傍で止まり、視線だけが口許の其れを取っても良いかと*問うだろう*]
教師 イザベラが村を出て行きました。
――そっか。
さっきか。
[何時も通りな様子に思考をやめて、小さく笑みをもらす。
そうして煙の先から彼の手が伸びてきたのに僅か瞬き大人しく髪を梳かれ、]
風呂上りでもないし、ちゃんと乾かすしな。
[当たり前のコメントを返して移動するギルバートの手を目で追い、煙草の傍で止まった様子に彼を見れば何となく意味は読み取れて。
言葉を返す代わりに軽く顎を上げて取りやすいような体勢に。]
[ナサニエルの笑みを見ても面持ちは変わらず瞬き一つで肯定を示し、彼が顎を上げるのに乾いた髪が微かに指先に触れ僅か目を細める。
如何やら取って良いらしき煙草を親指と人差し指で挟み、ナサニエルの口許から抜き自身の目線の高さに持って、白い煙の揺らめき昇っていく様子を暫く眺めて、煙の向こうの彼へちらと視線を戻し]
チェスは、楽しい?
[また煙草へ注意を向け様々な角度から眺め回し、ナサニエルのしていた様に口に咥えて、一息吸い――…]
ゲホッ…
[暫くは俯き盛大に咳き込み息吐く間も無さそうで、漸く貌をあげると僅か潤んだ眼差しが手元の煙草とナサニエルを見比べた]
[煙草が口から離れ、其の行く末をなんとなしに眺め、ギルバートが煙草の観察をして煙の先から声が聞こえれば]
そ、だな。
いつもより楽しかったかもしれない。
[終わった後に手順を考えるとかはあまりしない性質だから。勝ちは勝ち、負けは負け。力量差から生まれる結果を受け入れるが常。]
……――、言わんこっちゃない。
[煙草の観察が再会され、彼がそれを口に咥えるのに あ、と息をもらしたけれど遅く、盛大に咳き込んでいるのを心配と苦笑が入り混じった表情で見つめ、漸く落ち着いたらしい様子に]
待ってろ、水持ってくるから。
[見比べられ、軽く首を傾げてみるもストックしてあった水をコップにいれてギルバートの前に置く。]
…そう。
[ナサニエルの声にも表情にも殆ど注意を払う余裕も無さそうで、首を傾げる様子にもニコチンに侵食され軽い眩暈を覚えてか幾度か瞬き緩やかに被りを振り、何時の間にか目の前に置かれるコップに気付き、手にした煙草をナサニエルの口許へと差し出し]
苦い。
[摘んでいた煙草が手から離れればコップへ伸ばし、ゆっくりと一口喉を上下させて飲み、珍しく安堵の溜息にも似た息を零し、煙草を咥えていた口許を拭う為か親指を寄せると仄か煙草の香り]
――…
[口唇は微か震え結局は拭う事無く手を下ろし]
安定?
[何する余裕もなさそうな様子に自分が初めて煙草を吸った時のことをぼんやりと思い出し――確か盛大にむせて二度と吸わないだとか思ったような気がするけど――感想と共に煙草を返されれば一つ瞬いてまた咥え、水を飲む様子に頭をぽんぽんと叩いて。]
だから前に、やめた方がいいって言ったろ?
[言いつつ髪を撫で続けて]
俺は安定するよ。
ただ……こんなもので安定は、本当ならしない方がいい。
[伸ばされた手に頭を軽く叩かれ癖のある褐色の髪が揺れ、前髪を撫でられ拓ける視界に上目にナサニエルを見詰め、紡がれる言の葉の意味をはかりかね思案気に緩やかに瞬く]
煙草が無いと――…
[緋色の煌きが彼の手を滑り落ち視界の幾らかは遮られ]
不安定?
[手の動きの邪魔に成らない程度にゆっくりと首を傾げた]
[柔らかな髪の感触で遊ぶように絡ませて、上目遣いの視線を色のない表情で眺めて、質問にはふいと視線を僅かそらし]
かもな。
[セシリアの嫌いそうな曖昧な答えを返す。]
煙草は依存性・中毒性が高いから。
[視線を戻して笑いながら最後はわしゃっと撫でて離れる。]
[ナサニエルの指に絡まり褐色の髪が踊るのも厭う素振りも無く、色の無い瞳――透明でいっそ純粋なくらい鮮やかに色彩だけは映るのだろうか――が逸れても真っ直ぐ其の瞳を見詰めた儘に、曖昧な答えに漸く緩やかな瞬き一つを返す]
黒は闇に――…
[似てる、とは聴き取れる音に成らず口唇だけが囁き、乱雑に撫でられ若干乱れた髪に幾らか勢い良く左右に被りを振り、頬に落ちる褐色の髪のひと房に僅か目を細め天井を仰ぐ]
[一つ返された瞬き。紡がれた言葉。]
なら、白は光?
[恐らくは煙のことを言ったのだろうけど、自分が発した言葉の意味も自分でよくわかってもいない。対比として言っただけ。]
もう大丈夫?
[天井を仰ぐ姿に問いかけて先ほど口元を拭うのをやめた仕草が気になっていたのか思い出してか]
部屋、平気か?
[いつも煙草を吸ってる空間だから、気分が悪くなってはいないかと心配もして。医務室――に、行くようなことでもなく。
もし部屋を出るというならそのように従うだろう。]
[白い煙、とまた口唇だけが囁く其れは恐らく肯定]
回ってる。
[天井の照明を見詰めた眼差しを細め答えるのは、ニコチン摂取に依り眩暈を起こしている自身の視界の話で、とは云え気分の悪い様子も無くゆっくりとナサニエルに向き直り]
匂いは、別に。
[借りる、と断りベットに視線を向けると、許可を待つ事無く覚束無い足取りで一旦立ち上がり、其の侭ぽふりと――眩暈ゆえに歩く事を諦めたらしい――足を床に下ろした状態で仰向けに倒れ込む]
侵食された。
[微か愉しげな響きを孕む呟きと共に目許に腕を置き、表情までは見えないだろうけれど、其の口許は確かに薄らと笑みを引いた]
[回ってる、と答えられれば幾度か瞬き、やれやれと息を吐く。]
匂いが気にならないのなら構わないけど。
無理すんなよ?
[ベッドに歩んでいく姿を眺め、倒れ込む姿に僅か目を細める。]
――……。
[侵食された
その呟きに常と違う感覚を覚えて顔を見ようとしたけれど
目許は隠れ、口許に笑みがひかれるのを見れば不思議そうに]
闇に?
[「侵食」という言葉のイメージでしかないけれど。
呟けば歩き出し、ギルバートが寝転んでる位置の隣くらいの床に腰下ろしてベッドに背をもたせかけて宙を見る。]
[自室はこまごまとした地球産の雑貨―それも20世紀の―ばかりそこここに飾られている。その内の一つが掛けている眼鏡だった。外して向こうを透かしてみる。何の変りもない景色。伊達なので歪みすらない]
補給衛星見つかったかな…。
[掛けなおして、起き上がる。軽く身なりを整えると部屋を出てオペレーションルームに向かった]
[無理は全くしていない――人のベットに半ば無断で寝転んでおいて無理も何も無い――だろうけれど、ナサニエルの動く衣擦れの音に意識は其方へと向くも、口許に引かれた薄い笑みは直ぐに消え去る事無く、掌で解ける雪の如く緩やかに解ける。
短い問い掛けの声と傍らに落ち着くらしき気配に、目許から腕を退け緩やかに瞼を下ろし、おろした腕ははたりと傍のナサニエルの方へ倒れ込み、其処に彼の在るのを確認する如く指先は軽く其の頬をなぞりおりる]
――…
[何か紡ぎかけた口唇は音を発する事無く、若し更なる説明を求められたとしても、返るのは規則正しい静かな寝息と、幼子の如きあどけない*寝顔だけで*]
また減った…。
[ぽつり]
[ひとけのない通路で零す。ほどなくオペレーションルームに到着し―ここもひとけがない―]
無責任で不用意。
…そんな人もともとこの船には必要ない。
[低重力の室内で、揺れるおさげ。シートに腰をおろしてモニタを正面に見据える。ログを辿っても補給衛星までの距離・日数が出た様子はない]
還れるの…?
[今いる場所と体勢からでは相手の顔をうかがい知ることは出来ないけれど、問いの答えを待つ間はずっと宙を見つめていて、けれどふいに何かが頬に触れたのに視線をそちらを向けると、そこにあるのは指。]
……ギル?
[立ち上がり、彼の顔を覗いてみたけれど、紡がれなかった言葉を読み取るには至らず、あどけない寝顔を見つめて溜息一つ。]
こんな半端な体勢で……ったく。
[そう言って、きちんとベッドに乗せてからブランケットの一つもかけて頭を一撫で。
別段熱があるとか、身体に異常があるというわけでなさそうなのを確かめると、その表情を再び見て暫し考える素振りをしてから、テーブルに水とコップを置いたまま部屋を後にする。]
[パネルに触れて、遠く在る太陽をズームするが他の一恒星とかわりないほどに小さい。地球など当然見えもせず。しばらくの間、ぼんやりと見入っていた]
…遠い。
[その口は事実しか述べはしない]
[ぽん][軽くパネルに触れて画面を閉じる。表示されているのは現在の宙域の状態だ。デブリも無く良い状態と言える]
上々。これで食糧不足と脱走が無ければ最高。
軌道は………
[陽気な同僚のとったデータを呼び出して]
[画面上に弧を描く軌道が表示され]
交差軌道上に異物無し…。
――――…退屈。
退屈で死ねたら、とっくに死んでるわ。
[シートの背凭れに体を預けてモニタから目を離す。その視線は宙を彷徨って何も捉えず]
[部屋で流石に煙草を吸う気にもなれず、今は体力の温存も大事だから睡眠の邪魔をしないよう出てみたものの]
えーっと?
とりあえず出たけど、どうしようかな。
[などとさして興味もなさそうに呟いてみる。
減った人間を考えるよりも居る人間を認識した方がもはや早いくらいにはなっていて、ふと煙草嫌いな同僚はまだいるだろうか――いるだろう――と、時折遊びに行くオペレーションルームに足を運んで。
減った人通りを考えつつ、部屋の前までくると何の確認もなしに入り、彼女を見つければ一言。]
退屈そうだな。
[どのくらいの間、宙を見上げていたろうか。気づけば同僚がシートの後ろに立っていて。首を反らし見上げるように]
…見て分かるでしょ。すること、ないの。
そっちも暇ね。ここが暇なんだから。
[すん、と鼻を鳴らし、元の姿勢に戻る。今度は振り返って]
―――煙草臭い。
まーな。
こっちが暇なら俺が暇なのも当たり前か。
[ふー、と息を吐いて、紡がれた言葉に]
ああ、さっきまで吸ってたから。
[悪びれた様子もなくしれっと。]
そう、当たり前。
[眼鏡のブリッジを持ち上げながらやや上目遣いに軽く睨み]
非常識だって、言わなかった?
食料と同じでいつ空気清浄機が壊れるかわからないのに、無駄に空気を汚すなんて。あなたが排出したケムリまみれの空気を清浄にするのにどれだけの時間とエネルギーがかかるか、今度計算してみたら良い。
それと、依存性・体に及ぼす影響は多大。呼吸器系に問題が出たら宇宙(そと)に出られなくなるのはあなた。もっと自分の仕事に対して、責任と管理意識を持つべき。
[淡々と言葉を紡ぐ。淀みなく言い放って視線をそらした]
[上目遣いに睨まれても平然と相手を見据えて]
非常識だって、言われたな。
でも生憎と常識なんてのはその場の環境が作るものであって
喫煙スペースや個人の部屋があるという時点で俺が吸うことに一応の正義はあるわけだ。
吸ってはならない区画で吸ったこともないし。
――計算なんて面倒くさい。
[別段怒った様子も何もなく、理屈を並べて返す。
続いた言葉には僅かに瞳の色が揺れて]
依存性……わかってて吸い始めたんだから仕方ないだろう。
ニコチンがきれたらそれこそきっと手元が狂うかもな。
仕事が出来なくなったら――その時はその時。
どのみちもう、そんなにたくさん残ってないんだけどさ。
[長い長い旅の復路。
彼の部屋の棚がすかすかなのは殆ど煙草だったのかもしれない。]
[軽く伸びをして、もしかしたら更なる反論もあったかもしれないけれど、其の件でお互いに理解しあうことは不可能だろうから、適当に返事をするか軽く流して]
まあなんだ。
俺が退屈なことは船にとっては良いことだけど……
こっちが良い意味で退屈じゃなくなるといいな。
[そうしていつものように頭に手をぽん、と一度だけ置いてから後ろ手に手を振って――とはいえ正面を見て座ったままでは見えないだろうけど――部屋を後にする。]
この船に喫煙スペースが在ること自体非常識。
有限な資源である空気を何だと思ってるのかしら。
……面倒なら今度計算してあげる。
[真っ直ぐにモニタを見つめる。眼鏡にはモニタの光が映りこむ]
手元が狂った時のフォローには限りがあるんだから、自己管理意識を持って、と言ったの。
それに、信頼できる船外活動員は今のところナサ一人。他はアテにならない。技術はいいんだからもったいない。ナサのオペレーションをできなくなる日が来ないことを願うわ。
[ぽん、と頭に置かれた手はあたたかかった]
……―――そうね。
その時用にそっちも準備だけはしておいて。
[振り返らず、気配が去っていくのを感じていた]
[眠った儘に伸ばした手は何かを探す様にふらりと彷徨い、重力装置のスイッチを手に取ると――常の癖なのか――電源をオフにし、一度だけゆっくりと息を吐くと宙に漂うスイッチを気に留める事も無く、何事も無かったかの様に変わらぬ規則正しい*寝息を立て*]
[去り際の声を頭で反芻しつつ、少し瞳は楽しげで。]
煙草がある方が効率上がるってヤツも多いけど
最初から吸わなければそうでもなかったかな――?
[呟きは静かな通路に溶けて。
以降の言葉は妙に頭に残って、ふぅ、と溜息。
彼女の頭に置いた手を一拍見つめてから部屋に戻る。]
……――ただい……ま?
[部屋に戻った直後の自分は多分今までにないくらいにきょとん顔で、彼が起きていたならまた不思議そうにか見つめられたかもしれないけれど、数度瞬いて違和感に気付く。]
[船外活動が仕事の主なせいか、船内ではなるべく重力が在る空間にいるため、船内で無重力空間にいることは極々稀。だから部屋の違和感の原因に一瞬気付かなかったけれど、浮遊する感覚に一瞬顔を顰めて]
もしかして、いつもこういう空間で寝てるのか?
[小さく呟きギルバートを見るけれど。部屋を出る前と変わらぬ顔で寝息を立てているものだから、仕方がないかと息をつく。
煙草のせいで具合を悪くさせたのなら病人――ではないけれど――に合わせる意思はあるらしく。]
俺も寝るか……。
[することがないのだからじっとしているのが本来は得策なのだろうから。素直に眠ろうとするけれど。浮遊感が落ち着かなくて、ギルバートがいるのも気に留めず、己がベッドにふわりと横になり、暫くは目を開けていたけれど、徐々に眠りに*落ちて*]
[無意識ながらも人の気配を察知はしたのだろうけれど、身の危険を感じ無い事は本能的に判っているのか目を覚ます事は無く、気を遣い起こさずおいて貰ったとも――寧ろ当人は眠いから眠っただけで煙草のせいで寝た訳でも無いだろう――知らない。
ブランケットを手繰ろうと伸ばした骨ばった手は傍らで眠るナサニエルを掴み、宙に舞うブランケットの変わりに抱き寄せて、感触の違いにゆっくりと――瞬きの続きをする如く――目蓋を持ち上げ、暫くは腕の中に納まる彼の寝顔を不思議そうに見詰めるひと時もあるか]
――…
[口唇は微か何かを囁くけれど眠る相手を前に声にはせず、緩やかに瞬くも消える事も無く矢張り其処でナサニエルは眠っているから、彼をベットに押し付け――無重力状態ではさしたる負荷もかからなかっただろう――ふわりと床に降り立つ]
おやすみ。
[囁く声は小さく殆ど空気を振るわせる事も無く、漂うブランケットをナサニエルにかけて、無重力状態にも慣れた様子で扉へと向かい、殆ど物音も立てず静かに部屋を出た]
―保管庫→廊下―
[中身は減って行く一方だと云うのに警備は日増しに厳重に成っている気がする程に、一種殺気立った雰囲気さえ醸す保管庫へと足を運び、配給担当の船員に自身のコードを告げる]
レーションも他の携帯食も要らない。
水と、塩を少し多目に欲しい。
[保管物が減り閑散としだした中を覗いて告げ、驚く船員の様子を気に留める様子も無く、差し出される配給品――ボトルの水と塩だけだが――を受け取り、塩の包みは胸元のポケットに仕舞い、水のボトルを三本程片手に持って保管庫を後にする]
――…
[通路の所々にある闇を移し込む透明な板の向こう側を眺めて、不意に足を止め思案気に首を傾げた]
低重力障害でも起しそう…。
還ったら……還れたら、身体検査、しなきゃ。
[相変わらず動きの無いモニタを眺めるのを諦めて伸びをする。還れる見込みは果たしてどれほどあるのだろうか]
…砂粒ほど、ね。
[そのようにも思える。見込みは無いに等しく、自分の命さえ危ういというのに、のんびりとシートを離れ食堂へ向かおうか]
[その途中。通路にギルバートの姿を認めて]
ギル。………何を見ているの?
それとも、何を見ようとしないの?
[普段なら声を掛けもしなかった筈だが気が向いたとでも言うべきか]
[気配の近づいて来るのに緩やかに視線は移り]
居た。
[殆ど口唇だけが呟きセシリアへと歩み寄り]
セシリア。
[呼び掛けと云うよりは寧ろ挨拶に近い声音で声をかけ、漸く彼女の問い掛けに対する回答を探すべく思案気に首を傾げ、先程まで見ていた透明な板の向こう側へと視線を戻し]
色を――…
[探してた、と何時かラッセルにも告げた言の葉を小さく囁き]
将棋、知ってる?
[身体ごと向き直り唐突に問い掛けた]
…した?
[生憎読唇術には長けていない。誤解をしたまま名を呼ばれて頷く。数歩の距離まで歩み寄って]
いろ…?宇宙の色?…紺、黒、あるいは漆黒。
じゃなくて?
[嗚呼、と溜息をつく。唐突な問い掛けに、こういう同僚だったんだと検めて思い知らされてこめかみに指を当てる]
基本的なルールくらいは、知ってる。
どうして?
[船首での作業を終えるとリモートコンソールは相変わらず小脇に抱えてぐうっと大きく上に伸びをひとつ。
うっかり勢いをつけすぎてこの軽重力空間で上に発射してしまわぬよう気をつけながら、シートを軸にくるりと足を来た方へとむける。
ふんふんと小気味よい鼻歌はこの非常事態にもかかわらずのんびりとした雰囲気をまとい、そして通路の先にニコルとセシリアを見つけて、おや、と小さく呟いただろうか]
セシリアを、探そうと思ってた。
[誤解を訂正する心算なのか一応は添えて頷く様子を見守り、宇宙の色に明確な答えをあげていく言葉の一つ一つを無言で聴いて、問い掛けに緩やかに被りを振り別物だと――其れだけで意味合いが伝わるかは不明だが――告げる]
プログラムを、組む。
[将棋の、と暫くの間の後に小さく添えたのは、こめかみに指を添える様子を見詰め一応は彼女に伝えようと試みらしく、首を傾げ]
教えて貰える?
私を?
[意外すぎる返答。彼から自分の名を聞くとは思っていなかった]
ああ、…将棋のプログラムね。
それで私を探してたのか。
[船内でアナログな趣味を持つ者は少ない、故にお鉢が回ってきたのだろうと結論付けた]
いいよ、教える。…というか、そのものがあるから持って行っていい。ルールは教える。
[いいでしょ?と首を傾げ]
[二人の視線がこちらに向いたので少しだけきょとんとしたけれどそれは笑顔へと変わり、指を握ったり開いたりして、手を振る代わりの挨拶をしながら二人の傍へ]
ハーイ、二人とも。
何かの相談中だった?それとも…逢引?
[少しだけいたずらっぽく笑ったがそれがこの二人に限ってまずありえないだろうとそんな高を括っているかのような冗談でも話す口ぶりで]
[小さく片手を挙げて挨拶に応える。表情は変えずにグレイの瞳を見据え]
……言っていい冗談と悪い冗談がある。
相談中。ギルが将棋のプログラムを組みたいんだって。
で、アナログ人間の私に相談が来た。
[眼鏡のブリッジを持ち上げ、コーネリアスを軽く睨む]
それだけ。
[意外そうな様子と其の後に続く問いにも瞬き一つで肯定を示し、実物を持って来て呉れるらしきにも再び緩やかに瞬いて]
助かる。
[首を傾げる彼女へと三度瞬いて謝辞ともつかぬ一言を紡いで、此方へと向かって来るコーネリアスの問いに、冗談だと判っているのかいないのか不思議そうに――元はと云えば彼の一言からセシリアを探していたくらいだ――彼とセシリアを見比べ]
将棋のプログラムの話。
じゃあ、ちょっと取ってくるから待ってて。ここで。
[どこか浮き草のようなギルバートに念を押してその場を離れる]
[急ぎ足で自室に戻りコレクションの中から将棋のセットを取り出して軽くほこりを払う。
程なくして、正方形の半分に折りたたまれて表面には桝目が彫られたモノ―駒の収納要素も備えている―を小脇に抱えて戻ってくる]
…これ。チェスと似たようなもの。チェスが出来ればすぐに飲み込める筈。
[ソレをギルバートに差し出して]
やーだーなー、冗談なんて所詮冗談よ?
そこまで真に受けなくっても。
[小さく肩を竦めながらも、ニコルからも将棋の話が出ればきょとんとして]
…ああ、将棋。
それでセスとニコルがお話してたわけか、なるほどねー。
…ん?
…じゃあニコル、本当に将棋プログラム作ってくれるんだー?
あーりがとっ。
[まさかそこまでしてもらえるとは思っていなかったがゆえにでてきた感謝の言葉には嬉しい感情が少しばかり上乗せになるだろうか]
よしよし、じゃあプログラムが完成したら一緒にやろうなー?
[子供を撫でるかのようにニコルの頭をわしわしと撫でようと手を肩より上へと持ち上げて]
真に受けるのは他人の仕事。私じゃない。
そこから誤解が生まれる可能性がある。
………事実としてはありえないけど。
[軽く溜息をついて陽気な同僚と浮き草のような同僚のじゃれあいを眺めている]
[待って居る様に念を押されるも常と変わらぬ瞬き一つ返すだけで、早々に立ち去るセシリアの後姿を見詰めて、コーネリアスの声に視線を移し冗談だと繰り返すのに緩やかに瞬くも、将棋のプログラムに嬉しそうな様子を見て取れば微か目許を和らげる]
やった事は、無いけど。
[伸ばされる手に抗う事も無く大人しく頭を撫でられ、彼の指の隙間からは癖のある褐色の髪が緋色の煌きと共に零れるだろう]
セシリアも、する?
[戻って来たセシリアから差し出された将棋盤を受け取り、問い掛けと共に緩やかに首を傾げる]
あらいやだ。
セスはそういうとこ本当クールだよね。
[小さく肩を竦めて苦笑がひとつ薄い唇から零れるだろう。
そして将棋道具一式を持って戻ってくるアナログの女王に思わず小さな拍手を。
ニコルを撫でていた手を下ろしながら]
大丈夫大丈夫。
駒と盤さえあれば普通の将棋も、ついでに崩し将棋も出来るなー。
よしよし、これはいい。
[浅い眠り――けれど眠っている間に寝顔の観察をされていただとか、そんなことは知る由もなく、されてたところで何とも思わないが、落ち着かなさに目を開けて]
……寝にくい。
[上体を起こし、室内にギルバートがいないのを確認すると起きたのかと思って早々に重力装置の電源を入れようとスイッチを探す。]
……どこだよ。
[半ば眠る前より疲れた様子で立ち上がり、船外の活動で一応無重力には慣れているものの少し進みにくそうに室内を探して。]
あった。
[漸く見つけるとスイッチを入れる。
と、上から降ってきたブランケットが見事に被さり、溜息と共に手に取り、乱雑に椅子に投げる。]
そう、崩し将棋。積み将棋とも言うのかな。
盤上に、箱に入ったままの将棋の駒を伏せて出して、箱を外すと駒はつみあがった状態で盤上に残るだろ?
それをひとつづつとっていって崩したら負け、複数なら取った駒の持ち点によって勝敗が決まるドキワクバランスゲームだ。
[ピン、と人差し指を立ててメトロノームのように指を振りながらニコルに対して崩し将棋の説明をする]
私も?一人余るよ。
[ギルバートの問いに、指差し人数を確認して]
ああ……じゃ…観戦でもしようかな。
人のを見るのなんて久しぶり。
詰め将棋ばっかりだったから。
[コーネリアスの苦笑には肩をすくめるのみ]
駒もきちんとそろってる。
一応コレクションだから無くさないで。
って…コーネリアスがルール知ってるなら、
私が教える必要ないね。のんびり観戦させてもらう。
食堂にでも行く?
人がいなくてゆっくり出来る。
[二人を促してみた]
[重力が戻ったことで色々と弊害は出ているが(浮いていたものが床に落ちたなど)気にした様子もなく、ベッドに深く腰掛ける。
きしむスプリングに漸く重力を感じて満足したのか立ち上がり、簡単に……落ちたものを拾う程度に部屋を片づけて伸び。]
だるい――……歩くか。
[そう言って、結局外へ出るのだから眠ったことに意味があったかは不明なわけで。]
[視線は揺れるコーネリアスの指を律儀に追い続けて、説明の終わるのに理解したのを伝えるべく瞬き、傍らに抱えた盤面へと視線を落とし]
其れは、プログラムだと難しい。
[セシリアの言葉に緩やかに被りを振り]
俺が、観戦する。
[観て覚える、と観戦の間にプログラムを組み始める心算らしく、歩き始めるセシリアに従い食堂へと向かい始め、向かいから向かって来る気配を捉え、ナサニエルを見止めて挨拶の代わりに緩やかに瞬く]
まあ、プログラムで組むには不便だけど、賭けをするときにはいい手段だよ。
[小さく肩を竦めてから笑うと]
んー、どっちでもいいよ。
別に強いわけじゃないけど、ニコルがプログラムに組み込む程度の基礎の動きぐらいは見せられるだろうしね。
場所はセスに任せるー。
[結局食堂で開戦と決まれば二人とともに食堂へと向かい、ナサニエルを見つければひらひらと*手を振った*]
……あれ?
何か賑やかだな。
[3人の姿を見つけて目を細めて。
挨拶代わりに上げた片手はいつもより若干低い位置でダルそうで。]
ああ、将棋?
[中核部で話していた内容と各々が手にしたものを組み合わせて導く結論。]
ギルが観戦?それじゃあ意味が―――あるのね。
[何かしら思うところはあるのだろうと]
コーネルが良いなら、私はいいよ。
ん、行こう。
[と、歩き始めた所でナサニエルが向かってくるのを認める]
―――ナサだ。低重力障害でも起してない?
そんな歩き方してる。
そんな訳無いか。EVA(船外活動)スペシャリストが低重力障害なんて冗談にもならない。
そ。将棋。
食堂で一戦やろうって話になったの。
観戦する?それとも私と代わる?
[ギルバートの持つ盤面を兼ねた収納箱を示し]
ちなみに相手はコーネル。
定員に達しなかったため、村の更新日時が24時間延長されました。
[コーネリアスの言葉に不思議そうに瞬き]
賭け?
[ナサニエルの問いに顔を向け肯定の意味で瞬くも、聊かダルそうな様子には――コーネリアスに対してと同じく――不思議そうな瞬きもし、セシリアのナサニエルにかける言葉を聴くも、重力スイッチを切って寝たからだと思い当たる事も無く首を傾げ]
如何か、した?
[セシリアの言葉には緩やかに頷き]
覚えたら、遊ぶ。
低重力障害ではないけど、ちょっと仮眠取ったら疲れた。
[と、ぱっと聞いたら理解出来ないようなことを言う。
疲れたと言っても、変な眠り方をして寝違えた程度のニュアンスなのだけど。]
ふーん……今からやるんだ。
なら、観戦しようかな。
起きたとこだし、ルール詳しくないしな。
[と言って食堂へ一緒に行くことに。]
おぼえたら…ね。チェスが出来るならすぐの筈。
[緩やかに首を傾げて歩を進める]
………わからない。業務に支障が出ないなら良いけど。
[要領を得ない説明を切り捨てて、結論だけ]
観戦にする?…わかった。
見ればおぼえる。簡単だから。
……簡単だから複雑なんだけど。
[ほどなくして食堂に到着。相変わらずひとけはない]
ああ、そだ。
[コーネリアスに振り向き]
負けた。
[何に負けたかは言わずともわかるだろうコーネリアスには結果だけ伝えて。ギルバートの視線に気付けば、頭をぽん、と撫でるだけで原因を伝えることはなく。]
ああ、業務に支障はないよ。
寝違えたくらいに思っておいてくれたら充分。
[そうして、前は賑わっていただろう食堂に着き、室内を見つめる]
[食料の無い空腹時に好んで食事を連想させる様な場所へ足を運ぶ物好きは居ないらしく、しんと静まり返った食堂内をぐるりと見回し、適当な席にセシリアから預かった将棋盤を机の真ん中に置き、椅子に座り保管庫から貰い受けてきた水のボトル三本も無造作に自身の傍に置く]
そう。
[直ぐ覚えられるらしいのに、操作を始めた腕の端末から将棋盤へと静かに視線を移し、ナサニエルがコーネリアスに伝える結果が自身との勝負の話だと判っているのかいないのか、何故か判らないが疲労しているらしきナサニエルに無言で撫でられ、益々不思議そうに彼を見詰める間もあり]
医務室は?
[セシリアが手招きするのに従い、座った席の後ろあたりにある壁に腕を組んで背を凭せ掛け、準備されていく様子を目で追う。]
実際やるのを見るのは初めてだ。
[小さくもらした感想。ますます不思議そうに見つめられても小さく苦笑をもらしただけで、彼の口から出た意外な言葉に2,3度瞬き]
医務室?
……ああ、そんなたいそうなもんじゃない。
大丈夫。ちょっとしたら治る。
[盤面が広げられセシリアとコーネリアスの手で駒が並べられて行く様子を時折眺め、端末を操作しながらも視界の端には疲れているらしき割には立っているナサニエルを捉えていたが、幾度か瞬き其の内に治ると云う彼へ作業の手を止め顔を向け暫く見詰め此方も緩やかに瞬き]
…そう。
[端末へと視線を戻しかけ不意にボトルを一本手に取り、ナサニエルの方へと大きく弧を描く様に――先程部屋で水を出して貰ったのを思い出したのか――放り、盤面と端末を交互に見詰めては片手間に作業を始め]
[話してる間にも盤面は徐々に出来上がっていくのがわかり、初期配置などは知っていたけれど興味深げに眺める。
盤面を見ながらの会話だったために、水が飛んできていることには気付いてなくて、視界の端に何かがうつったことで慌ててそれをキャッチ。]
……サンキュ。
[一瞬びっくりはしたものの、とりあえずの礼は言い。]
注意力散漫……
案外弱ってるか、俺も。
[小さくもらした独り言。
椅子をひいて腰掛ければ足を組んで作業の続きを*眺めた*]
[盤面と端末を交互に見詰める直前に慌てるナサニエルを視界の端に捉え、作業の合間に其方へと顔を向けボトルを手にした様子を暫く見詰め、微かな独り言も耳に届いたらしく緩やかに瞬き]
――…ごめん。
[口唇だけが微か――盤面に向かっているセシリアとコーネリアスは気付かなかっただろうけれど、注意力散漫で弱っているナサニエルにも見て取れたかは不明だが――謝罪の言葉を*紡いだ*]
[空気が震えた気がして視線をギルバートに戻したけれど言葉までは聞き取れず、小さく息をつく。ただ、何となくそうしたかったから頭をぽふりと撫で、また視線を盤面に*戻した*]
[コーネリアスとの勝負は長引いて。久しぶりの対人戦に熱中し、ギルバートへの説明は忘れていた。長考型である故に駒の進みも遅く、コーネリアスはどうだか一手一手を確実に返してくる]
………負ける。
[大体先は読めた。詰め将棋で鍛えている頭は、既に負けを悟ったようだ。盤上を眺めて片手を顎に当てる。今までの手を最初からリプレイし]
ああしなければよかった。
[後悔の言葉を口にする]
[悔しそうに溜息をつく。眼鏡を持ち上げつつ]
コーネル、強いんなら強いって言って。
それでも負けただろうけど…。
[視線を転じ]
ギル、基本的な動きはわかった?
それだけ憶えて置けばできる。
今度はコーネルとやったらいい。私は見てるから。
でも、コーネルは難物。トラップ張っても引っかかってくれない。そうとう捻くれてるんじゃないの?
[ちらりとコーネリアスに対して軽い悪態を一言漏らす。
席を立って譲り、自分はナサニエルが寄りかかっていた柱に入れ替わりで寄りかかる]
[二人が対戦を進めるのを、ルールに明るくないためか駒の動きを把握する程度に留めてどこか楽しそうに眺める。]
確かにチェスに似てる。
[熱中している者達には届かないだろうけれど小さく呟いて。
セシリアの様子に一拍彼女を見つめ、また盤面に視線を戻す。
後悔の言葉を口にするのには何も言わず。其の中でも最善の一手を探すことは恐らくチェスも将棋も同じなのだろう。
対戦が終わって人が入れ替わるのもただ見つめて、ふいに煙草が吸いたくなったけれど持ち出していないことに気付いてぼんやりと。]
[ぼんやりするナサニエルに視線を向けて]
どうかした?………煙草でも吸いたくなったの?
生憎、ここは禁煙スペース。残念ね。
[皮肉ったような口調]
全く、イイ性格してるよホント。
[溜息をつきながら吐き出した言葉。
けれど気分を害していない様子で向けた表情は目元に笑み。]
残念ながら今持ってないんだよな。
[部屋に戻ろうかと思考を巡らせつつ足を組み替えて]
[プログラムを組む合間にナサニエルより伸ばされた手に褐色の髪を攫われ、視線をあげるも彼は観戦に夢中な様子に直ぐにまた盤面と端末に視線を戻し、セシリアの呟きやコーネリアスの様子にも幾らかの注意は向けているのかも知れないけれど、言葉も無く試合の終了を見届ける]
ルールは、覚えた。
[セシリアに答えるもコーネリアスとの対戦には緩やかに被りを振り]
そろそろ、行かないと。
[相変わらず言葉足らずながら中核部へと様子を見に行く心算らしく、誘いは断り端末の操作を終了して立ち上がり、将棋盤を指し示しセシリアに首を傾げ]
借りて、良い?
……誰が?主語がない。
[突付くのはそこ。いつもどおりしれっと返ってくる言葉には慣れた様子で、端的に問うた]
それは、幸い持ってない、の間違いでしょ。
………ナサ、チェスしよう。
ここならプログラム置いてた筈。
[ナサニエルの正面に座り、テーブルと一体型のパネルを操作する。チェスのプログラムを呼び出して]
白?黒?
[有無を言わせない様子]
お前だよ、お前。
[わかりやすく指も差し。ちょうど立ち上がった直後]
は、チェス……?
将棋も終わったみたいだし部屋に戻ろうかと思ってた――
[彼女の様子には拒否権がないことを察して、
くすくす笑って座りなおし]
んじゃ、白。
[と言って彼女を*見つめた*]
[セシリアの言葉に緩やかに瞬き肯定を示し、駒を片付け二つ折りにした盤面を小脇に抱え、勝負の終わったコーネリアスへ向き直り]
崩し将棋のプログラム、組んでみる。
[今度はチェスを始めるらしき様子を一瞥し、残りのボトル二本を片手に持ち、何時も通り足音の無い夢遊病者の如き足取りで*中核部へと向かう*]
流れ者 ギルバートが村を出て行きました。
私…。そうね、どうせ捻くれてるから。
[皮肉の意を汲んで、肩をすくめる]
白?じゃ、私は黒。
[戻ろうと思っていたという言葉も気にせずにマイペースに初期位置に駒を配置する。ホロのそれらは時折揺らぎながら動かされるのを待って*いる*]
定員に達しなかったため、村の更新日時が24時間延長されました。
どうかな?
ある意味まっすぐなだけだと思うけど。
[そう言った時にはもう視線は盤上で、駒を動かし始める。
元々が長考をしないタイプなのか、返す手にはあまり間を置かずにまた一手。
暫くそうして盤上の駆け引きを繰り広げれば、最後に]
――チェックメイト。
[告げて、彼女を見つめる。口許は僅かに笑みをひき]
楽しかった。
また相手してくれ。
[そう言って*食堂を後にした*]
学生 ラッセルが村を出て行きました。
定員に達しなかったため、村の更新日時が24時間延長されました。
吟遊詩人 コーネリアスが村を出て行きました。
定員に達しなかったため、村の更新日時が24時間延長されました。
4人目、学生 ラッセル がやってきました。
―自室―
[疲れた体を癒すため水とレーションを一口ずつ口にしただけでベッドに潜り込む。
この数日多少勤務時間が変わっただけ―何も正の方向への変化は無い]
…そろそろシャワーも危ない?
[生活用水の分も飲み水に回される頃だろう、と小さく溜息を吐いた]
学生 ラッセルが村を出て行きました。
4人目、学生 ラッセル がやってきました。
[照明を切り目を閉じる。―ふとギルバートの言葉を思い出し、寝返りを打つ]
…父は言った。闇よりも無の方が恐ろしいと。
[全てを覆い隠す闇よりも、全てを飲み込み消滅させる無の方が、ずっと―]
5人目、酒場の看板娘 ローズマリー がやってきました。
[うつらうつらと――
オペレーターシートの上でふらふらと緩く波打つ髪が揺れて。
その横では何か場違いなうさぎのぬいぐるみのようなものが
起きろ、といわんばかりに女の手を叩いている。]
――……あと5分。
[間の抜けた小さな呟きと共にうさぎは女の腕にホールディング。
じたばたともがくように短い手足を振り回していた。]
[――やがて。
腕の中で動き回るうさぎに観念したのか渋々目を開ける。
わかったわかった、と軽くうさぎの頭を叩くと、欠伸一つ。]
……。
こんなに荒っぽいアラーム機能にした覚えは無いんだけどな?
うーくんはいつからこんなに暴れることを覚えた?
[おまえのせいだろ。
うーくんと言われたうさぎはそういわんばかりに両手を上げて。]
[ゆっくりと上げられた手に両手を添えて。
ぷらりとうさぎを宙吊りにするように持ち上げる。
白い物体ごしに見える闇は何処までも深く。]
……光が届かないから闇は生まれる。
闇があるから光が生まれる。
……闇と光はどちらが先に存在しただろうね?
[じたばたと手足を動かしてもがくうさぎを膝に下ろし。
インカムを流れる航行員への連絡も右から左に聞き流した侭。]
6人目、流れ者 ギルバート がやってきました。
―中核部―
[同僚に声をかけられモニタから顔をあげると、脱出艇に乗る船員の選出――脱走ではなく――の話らしく、遠回しな要領を得ぬ物言いに暫く其の貌を見詰めるうちに、船に残る気はあるかと問われ緩やかに瞬く]
システムを組み直しても、作業員は必要。
[構わない、と小さく添えると、同僚の貌に安堵と後ろめたさの混じる笑みが浮かぶのを見守り、労う様に肩を叩かれれば其の行動をなぞってか同僚の肩を軽く叩き]
一つ、頼める?
[怪訝な貌をする同僚を気に留める事無く希望を告げ、不思議そうな様子には珍しく目許を――尤も同僚は気付きもしなかったが――和らげ、システムの動作確認が終了を告げる頃には席を立った]
[インカムを飛び交う幾つかの情報。
――バイオームの封鎖、スリープカプセルの故障。
食料を巡る騒がしさは遠く聴こえているのかいないのか。]
……脳は1日に500kcalものエネルギーを消費するという。
だから考えるのはうーくんに任せよう。
[こてりとシートに頭を預けたまま。
そんなの困るといいたげなうさぎの仕草には目もくれず。]
―廊下―
[保管庫で貰い受けた水のボトル二本を片手に、反対の手にはセシリアから借り受けた二つ折りの将棋盤を持ち、自室へと向かう途中で廊下の少し広くなった所で立ち止まり、闇を透かす透明な板へと緩やかに顔を向け暫く後に其方へと歩み寄る]
[――闇に点在する那由他の光]
――…
[微か震えかけた口唇を引き結ぶ瞬間、口許はまるで薄い笑みを引いたかの様に歪んだけれど、廊下に背を向けて居て誰からも――既に人通りもまばらな上に周囲を気にする余裕のある者も少なそうだけれど――見えなかっただろう]
[セシリアとの勝負が終わってからゆったりと自室へと戻り、戻るや否やテーブルにおいてある煙草に目がいったけれど。
少女の顔を思い出してか目元に笑みを浮かべて吸うのはやめた。]
……――もう一眠り。
[そう言ってベッドへと向かい、一拍、硝子板の向こうにある宙を見つめる。その後先日の無重力の寝苦しさでとれていない疲れを取る為にベッドに横になり、腕を枕にして*目を閉じた*]
7人目、吟遊詩人 コーネリアス がやってきました。
[セシリアと勝負を終えればのほんとした笑みうかべて]
別に強くなんてナイナイー。
もっと強い人が世の中たくさんいるよー?
[くるくると長い髪を一筋指先に絡めて微笑むと、ニコルを見送ってから自分も*席をたつ*]
俺も煙草ふかしてくるわー。
[チェックメイトの言葉とともに身動きの取れなくなった王]
あーあ…負け続け。
[追い詰められた王を突付いて倒し]
将棋で負けてチェスで負けて。
腕がなまったみたい。はやく基地に戻ってもっとたくさんの相手とさしたい。こんな閉鎖空間じゃ相手もたかが知れてるし、手がバラエティに欠けて思考が偏向する。
……帰れるかどうかもまだ分からないんだけどね。
[そう言って、のろのろとチェスプログラムを*閉じた*]
定員に達しなかったため、村の更新日時が24時間延長されました。
[目を覚まし、端末を確認した後部屋を出て中核部へと]
…ローズマリー?…了解。
[そこで副航行員同士と言う理由で用事を押し付けられメンテナンスルームへと]
―中核部→メンテナンスルーム―
[調整器具や工具の散乱した部屋の中。
シートの上の草色の髪は一定のリズムでふらふらと揺れている。
うさぎは所在なさげに部屋の中をうろちょろと――
訪問者が来ると足を止めてぺこりとお辞儀。]
[きょとりと首を傾げたうさぎはとてとてと女の元へ。
むいむいと手を掴んで引っ張ると、ずるりと体勢は崩れる。
肘掛にもたれる格好になったまま数度瞬かれて。]
……覚醒はしているが極力頭を使わないようにしている。
そんな状況を起きている、というのなら、起きているかな?
[だらりとしなびた野菜にような姿で。
うさぎはラッセルと女をきょときょと見比べている。
――こんなんですみません、とでもいいたげに。]
……。
[同僚の顔を低い位置から見上げて。
考えているのか否か、暫しの沈黙。]
――……どちらでも?
というと残ることになるのだろうね。
じゃあ私の答えは残る、だ。
[出ても残っても結果は同じ気がする、と。
足元でうろうろするうーくんに手を伸ばすと膝に乗せて姿勢を戻す。]
Good Luck?
[出ていく背中に掛けた言葉と共に緩く首を傾げ。]
酔狂なことだね。
そのようなことを聞くなんて。
ライプニッツの言うところの予定調和だろうに。
[ねぇ?と問い掛けるうさぎはぴょこりぴょこりとラッセルの後を追い。
お見送りの様子。]
―そう願う。
[勤務の席につきながら小さく呟いた。
『Good Luck』―直訳すれば『幸運』―
この船の未来にどうかGood Luck(幸運)を―]
[緩やかな覚醒。見えたのは天井。
起きているのかいないのかわからないような静けさ。
視線を硝子の向こうにうつすけど
――変わらぬ闇に変わらぬ光。]
いつまでこうなのか、
いつまでもこうなのか。
[呟き、暫くは見つめていたけれど。
体を起こし、テーブルに手を伸ばすと水を一口飲んだ。]
[煙草を口にくわえ、少しの間。
残りを携帯しつつくわえたままに外へ出る。
アテがあるわけではない。
けれど船員は減る一方だから、何かしらその分の負担が生じるわけで。
自分にも何かがまわってくるならば受け持つつもりはある様子*で*]
定員に達しなかったため、村の更新日時が24時間延長されました。
−通路−
[人の気配が減っていく前から人通りのなかった通路は船の中の喫煙家の中ではちょっとしたスモーキングスポットで、一時禁煙を掲げていた船長ですら隠れてここで吸ったという噂もあった。
壁にもたれながら、現代ではひどく需要の少ない燐寸をすって火をつければごみは携帯のアッシュトレイへと捨てる]
…要するに大人の作った逃げ道ってやつだよなぁ。
[ぷか、とほのかにスミレの香りの混じる煙で輪を作ると城っぽいわっかが空気に徐々に解けていくのをぼんやりと眺めた]
[相変わらず人気はない。
吸っていても、煙たがって遙か昔の健康増進法を掲げて禁煙を促すような人間ももはやセシリアだけなのかもしれない。
ちりちりとゆっくり焦がされた名残の灰を眺めながら]
…飢えて死ぬのと、肺を病んで死ぬのとどっちが綺麗だろ。
[死に様なんて死んでしまえば変わらないような気もしたけれど。
何となくつぶやいて、もうひとつ深く*フレーバーを吸い込む*]
[ラッセルを見送ったうさぎはそのまま通路をぴょこぴょこと。
女が居なくともある程度は自立して動くらしく。
いつもより人気のない通路をぴょこりぴょこり。
流れる紫煙に気づくと吸い過ぎ注意、と喫煙者にジェスチャーでもして。]
―通路―
[いつの間にか部屋から消えたうさぎに瞬いて。
通路へと一歩踏み出すと先をいく白い姿。]
……おまえはいいな。
光さえあれば半永久的に動ける。
腹が減らないというのは素晴らしい。
[いっそ食べれるように作ればよかった、と。
製作者の呟きを耳にしたのか、慌てたようにじたばた。]
定員に達しなかったため、村の更新日時が24時間延長されました。
[煙草を咥えたままにダルそうに歩いていれば、
白いうさぎの姿が見えて。
立ち止まり、其の姿を暫く見つめる。]
――うーくんだっけ。
[常盤色の髪を思い出し、くすりと笑い、
方向をうさぎに変えて、ゆっくりと歩き出す。]
……そのうさぎの名前を問うているのならYes。
[食べられる、と思っているのか、蒼い姿を見るとうさぎはそっちへ一目散。
助けでも求めるように後ろに回りこむ。]
……君は私よりもそっちの男のがいいのか。
[現れた主に視線を向け、軽く手を振る。そうして後ろに回りこんだうさぎにきょとりと瞬き、うさぎを一拍見つめた。]
おいおい、主人を嫌がるなんて……
[言いつつ、瞳は笑んでいるようで。
うーくんの頭をぽふりと撫でてローズマリーに視線を向ける。]
何かろくでもないことでも言ったんじゃないか?
うーくんの所有権は私にある。
私がどんな扱いしようと、構わないだろう?
[ねぇ?と問いかける視線の先。
うさぎはやっぱりふるふるふるふると首を振っている。]
食べられるようにすればよかった、と言っただけだ。
因幡の白兎という話もあることだし。
ま、否定はしない。
[うーくんに助け舟を出すつもりはないらしい口調で告げる。]
なるほど。確かにうーくんは食べられないな。
まあ、食べられるようになっていたらいたで所有権の侵害を
されていた可能性の否定は出来んが。
[助けてはくれない様子にうさぎはショックを受けたらしく。
大げさにのけぞるとナサニエルの足をぽかぽか。]
……人のものを勝手に取るとは。
脱出の前に基本的な躾だな。
[どこまで本気かわからない口調で呟いて。
ナサニエルの後ろに回るとうーくんを抱き上げる。]
別に侵害されたところで怒りはしないけど。
[足をぽかぽか叩かれれて、視線を再びうーくんへ。]
食べられるようにしたらよかった、って仮定の話だろ?
怒るな怒るな。
[再び頭をぽふぽふと。最期におでこあたりをツンとつついて。]
まあ、レーションと水だけでこんだけもたしてりゃ
よからぬことを考えるヤツもいるだろ。
[抱き上げられたうーくんを一拍見つめ、視線を彼女に。
相変わらずの調子に少し表情は柔らかく。]
まったくだ。
そんなに飢えるのが嫌なら私が消化器官丸ごと機械と取り替えてやるのに。
[抱き上げたうーくんの頭に半分顔を埋め、僅か口角を上げる。]
君もこの異常事態だ。
よからぬことの一つも考えるかね?
今なら証拠はすべて隠滅されて君の罪状は無かったことにできるかもしれない。
消化器官丸ごと機械に、か。
提案すれば喜ぶヤツもいるかもな?
[通路の壁に背を持たせかけ、煙草は咥えたままに星を見る。]
よからぬこと、ね。
考えてないよ――今のところは。
だからまだ、罪状は生まれてない。
面倒だから麻酔無しでの作業だけどな。
それでもいいならいつでも。
[薄く笑む。
それからふと首を傾げて。]
……そんなことしたら私の腹が減る。
止めだ。どうしてもというならうーくんにやらせる。
[いやだ、とでもいうように首を振るうさぎの頭を己の顎で抑えて。]
今のところ、ね。
暴虐の徒と成り果てて食料独り占めしようが私の預かり知るところではないが。
[かつり、と興味を失ったように踵を返しかけて、振り向く。]
――……ああ、バイオームはもう入れないのだっけ?
冒険家 ナサニエルが村を出て行きました。
7人目、冒険家 ナサニエル がやってきました。
それは怖いな。
痛みで気が狂いそうだ。
[視線の笑みを返して、続いた言葉にくすくす笑う。]
麻酔のない施術とやる気のない執刀医。
どっちが怖いかな?
[勿論本気の質問ではなく、ただの言葉遊び。]
暴虐の徒、か。
自分がそうなったときの自分の行動なんてなってみなきゃわからん。誰がいつまでまともで居られるかもわからない。
――そう、バイオームはもう封鎖されてる。
[と答え、暫くは通路に背を凭せ掛けた*まま*]
誰しも今正気である保証などできないのだから。
気が狂ったと思って実は正常に戻るのかもしれん。
[うーくんを抱いたまま、バイオームへと続く通路をちらりと見て。]
そうか。ならいい。
生物厄災の後なら何か面白いものでも生えてるかと思ったが。
[かつん、と硬質な音が一つ響いて。]
――……ほんとに怖いのは施術を希望する患者。
[望まれていない答えは、無人の廊下に*反響する。*]
―廊下―
[気配自体が減っている中で煙草を吸う者も其れを嗜める者もどれだけ残っているのかは定かで無いが、貧しい国の子供の如く口寂しさと空腹を紛らわす為に煙草を吸っている者も居るかも知れず、通路の奥からほんの微か煙草の香りが漂う]
――…
[話し声と人の気配にゆっくりと顔を向け、其処にナサニエルとローズマリーとローズマリーの腕の中の白いウサギを遠目に捉え、随分と長く透明な板の前に立ち尽くして居たが、漸く足音も無い常の歩調で彼等の方へ――自室が其の先と云うだけだが――歩き始め]
生えても食べても拙いから、処分した。
[反響するローズマリーの声に二人から幾らか距離を取った辺りで立ち止まり、バイオームへと続く通路へと視線を投げてから、各人へと視線を投げ緩やかに瞬き挨拶の代わりとした後に、ローズマリーの貌を見詰めゆっくりともう一度瞬く]
正気と狂気の境界は何処?
[新手の声にふむ、と軽く顎を擦る仕草。
うさぎは少し離れて立つ男にぴょこぴょこと手を振っている。]
……ふむ。
歩く人参とか踊るキャベツを見られるかもしれなかったのにな。
残念至極。
[実際そうとは思っている様子もなく。
問われた言葉には肩眉を僅か上げて。]
コップの中に水を満たしてインクを一滴垂らしてみるといい。
[ローズマリーの腕の中でウサギが白くふわふわとした手を振る仕草に、二人にしたのと同じく瞬き一つ返し挨拶に代え、踊る野菜と云い出す主の言葉を如何思っているのか確かめる様に暫く見詰め]
踊り食い?
[呟きに近い問いは思いついた単語を其の侭口にしただけかも知れず、ローズマリーの表情が微かに変わるのを視界の端に捉え、其の言葉にかほんの僅か口の端に笑みらしきものを乗せる]
混ざるけど――…
[薄まる、と小さく囁く頃には口許から表情は消え]
直径20cmばかりのキャベツを丸呑みするのは人体の構造的に無理だ。
踊り食いは諦めたほうがいい。
無論そのキャベツが切り分けてもまだ踊っているのなら話は別だ。
[一寸ずれた指摘。
抱き上げたうさぎに軽く頬を寄せて、笑う。]
Exactly.
その混ざった状態でインクと水の境目の説明をするといい。
狂気と正気の境目はそこにあるだろう。
――……そして。
水の中にインクを垂らしつづければやがて薄まるのは水となる。
君が問うているものの性質はそういうものだ。
其れは、丸呑み。
齧れば良い。
[ずれた指摘にまたずれた指摘が返る]
――…
[ローズマリーの笑みを見詰め思案気に瞬き]
器がいっぱいに成れば、溢れる。
でも混ざって無いどちらも、見た事が無い。
キャベツを丸齧りにするのは結構骨が折れると思う。
事前に切り分けるのを推奨しよう。
[ふむ、と一つ頷いてうーくんの頭を軽くぽんぽんと叩く。
理由無く叩かれたうさぎはやや抗議の眼差し。]
溢れたものは他のものを侵食する。
何事も行き過ぎはよくない。
インクと水を見たことがないならオレンジジュースと林檎ジュースでも
珈琲と紅茶でも何でも構わん。
ああ、水と油で試すのはやめた方がいい。あれは混ざらんからな。
――…?
[開きかけた口は声を漏らす前に閉じられ、ローズマリーが頷きウサギを叩くのに不思議そうに瞬き、主を見上げるウサギの様子を見詰め、続く言葉には緩やかに被りを振り]
其の水は、ある。
[片手に持った二本のペットボトルを軽く掲げ見せた]
[男の持つボトルを見て数度瞬き。
うーくんを下に降ろしてやると、ポケットを探る。
此処では使うことのない万年筆が一つ。]
インクはこの中。
[おろされたうーくんは横暴な主から逃げるように。
二人の男の間をいったりきたり。]
ただしそれが飲用目的なら試すのは推奨しない。
否――
人が減るほうがありがたい状況か?今は。
[差し出される万年筆を暫く見詰めるも、忙しなく動き回るウサギへと視線を落とし、将棋番を小脇に抱え直し片膝をついて、寄ってくるウサギへと手を伸ばす]
狂気と正気の話。
[柔らかな毛並みが指先を掠めれば微か目を細めるもあり、人が減るほうがありがたいかと云うローズマリーを見上げる様に、緩やかに顔を上げると其処に浮かぶのは――元々殆ど表情など無いに等しいが――静かな無表情]
未だ――…
[早い、と口唇だけが音も無く囁く]
[麻酔と執刀医の会話の後のローズマリーの答えにはただ口許だけに笑みを浮かべただけで、ギルバートと合流して以後は時折視線をうーくんに移しつつ、会話に耳を傾けて。
火のない煙草は変わらず有り、それが口許から手元に移動しているくらいの動きはあったようで。]
まだ早い……でも、そろそろか。
[誰にともない呟き。視線は外の星々に。]
I see.
――……気付いてないだけかもしれん。
君の言う境目が知りたければ何時でも貸そう。
[くるりと万年筆を手の中でまわす。
触れられたうさぎはぴるぴると耳を震わせて。]
苦痛を先延ばしにされるのは果たして幸せなことだろうかね?
[未だ、は何れ、に。
手の中のペンをポケットに捻じ込む。]
零れた液体は、戻らない。
けど――…
[ナサニエルの視線を追い眼差しは透明な板の外へ]
溢れるのは、時間の問題。
[ローズマリーの声にゆっくりと被りを振り、震える耳が指先をなぞる感触に、緩やかに瞬き指先をすり合わせ]
純粋な狂気も、純粋な正気も、其れでは見えない。
狂乱の先に桃源郷でもあるなら、急ごう。
更なる苦痛しかないなら、今を足掻く。
[ギルバートの言葉に視線を彼を真っ直ぐに捕らえて]
急ぐ?
[問うてはみたけれど。俯き、手元の煙草で遊びつつ]
狂いたくはない、と言いつつも
最初に狂えたら楽だとも知っている。
狂乱の果てに桃源郷を見るならば
それが引き金になり我先にとなるや否や。
[僅かに浮かべた笑みは多分二人には見えないだろうけど。]
……まあ、足掻くのは悪いことじゃない。
―通路―
[勤務を終え自室に戻る途中見知った顔触れを見つけ]
…狂気の中で正気を保つのは困難。―正気と言う名の狂気が憑く。
[狂ってる奴等には何をやっても許される、と―それこそが狂気だとも気付かずに]
そもそも混ざり合わないそれなど存在するんだろうかね?
[うーくん、と大して大きくはないけれど、はっきりした声。
呼ばれたうさぎはぴょこりと主の下に戻る。
しゃがんで膝の上に抱き上げたまま、ゆっくりと耳をなぞり。]
狂乱の先にある桃源郷は本当にユートピア?
苦痛の世界も狂ってしまえば楽園かもしれない。
何がまっているかなんて。
[こつこつ、と自分の頭を指し示し。]
ここ次第。
溢れかけた器は、一滴の雫を落とせば零れる。
[ナサニエルの視線は視界の端に捉えたけれど、ウサギへと視線を落とした儘に、淡々と事実だけを延べる
ナサニエルへと一旦は顔を向けるも、気配と声に向き直る先にはラッセルの姿を捉え、瞬き一つを挨拶に代えて、ウサギへと呼びかけるローズマリーへと、順に視線を巡らせてまた透明な板の外へと眼差しを向け]
狂人は自身が狂って居る自覚なんて、無い。
最初から、狂ってる。
より狂えば――…
[漸く立ち上がり将棋盤を持ち直す]
帰還の可能性が下がる。
[その場に居る者達―うーくん含む―に目礼し]
―自覚があったら狂ってるとは言えない。狂い掛けているだけ。
[ギルバートの言葉に頷き―その手の中の物に気付き]
ギルバート。何を持ってる?
[ラッセルの声を聞きとめて顔をあげる。]
だから境界は難しい。
誰が正気で誰が狂気か、渦中にいればその判断も曖昧になる。
[長い瞬き。彼女の声に]
さぁな。ユートピアなんて所詮幻想だ。
狂うとも狂わなくとも辿り着く場所は同じだ。
[再び煙草を口にくわえて]
誰しもが、自分は正気だと思うだろう。
境界があったとしても、誰もそれを見ることは出来ない。
純粋な狂気も、見た事は無い。
[ラッセルの問いに抱え直した将棋盤を持ち直して、折り畳まれた状態の儘ラッセルへと掲げ見せ]
セシリアから借りた。
ラッセルも、打つ?
[生臭い会話の合間にも関わらず、常と変わらぬ口調で問い掛け、ラッセルへと首を傾けるも、ナサニエルの声に思案気に瞬き]
見えるのに、見えない。
ナサニエルの辿り着く場所は、何処?
[ギルバートの問いに思案気に宙を見て、少しの間。]
それが明確に見えたら狂気も正気も迷いなんて出ない。
各々が抱える目的地に進むためにただ在るだけ。
辿りつく場所は同じ。
けれど、それはバラバラだ。
[正気も狂気も各々の道を辿るための選択肢でしかない。]
俺はこれから場所を探すの。
[にっと笑う。]
[ラッセルの言葉に一呼吸の間を置き]
そうかも知れ無い。
[返される問いに緩やかに瞬き]
ルールだけなら。
俺も、打った事は無い。
[ナサニエルの言葉に不思議そうに彼を見詰め]
そう、かな?
[何に対する問い掛けなのか小さく呟き、ナサニエルの笑みを前に緩やかに瞬き、暫く彼の笑顔を物珍しそうに眺め]
見つかると、好い。
[何時かの全く違う会話と同じ言葉を紡いだ]
[小さな問いかけにはただ静かに視線を送り、瞬くだけ。]
見つかるといいけど――見つからなくていい気もする。
[と、微かに漏れた小さな言の葉。
其の頃にはもう笑みなど*消えて*]
最後にたどり着くのは何もない場所。
[ラッセルに手を振るうーくんの頭を撫で。]
……この非常時に狂気と正気について議論している我々は
既に狂気の渦中にあるのかもしれんがね。
[うーくんの無機質な瞳を覗き込む。
映る姿はやや虚ろな表情の女。]
帰還しようとしまいと辿る場所が同じなら。
私は帰ることに拘らないな。
[君がいればいいよ、とうさぎに頬を寄せる。
うさぎはよく判ってない様子できょときょとと辺りを見回して。]
[ローズマリーの言葉に]
究極的にはそう―
[でも。と言葉を一旦切って]
でも―自分はなるべく長い道程を歩みたい。
[そして皆にも歩んで欲しい、と―押し付けと取られる事を厭い口には出さなかったが]
[ラッセルの貌に微か微笑みが浮かぶのを見詰めてから、同意を示してか緩やかに一つ瞬き]
崩し将棋と云うのも、あるらしい。
どっちが好い?
[ナサニエルから漏れる小さな言の葉には眼差しだけを送り、ローズマリーとウサギの様子へと視線を移し]
みんな、狂気の中。
[最初から、と小さく呟きを添え]
其れと共に在る事を実感するには、生きてこそだと思う。
[其れに意味を見出すかは人次第とは言外に]
そう思えることが羨ましい。
[薄い笑みをラッセルに向ける。
ギルバートの言葉に数度瞬くと、ウサギを抱く腕に緩く力を込め]
……成る程。
なら私はもう少しだけ狂気の渦中に留まることに拘ろうか。
――……ああ。
もし後で暇ならその将棋とやらのルールを私にも教えてくれ。
うーくんに覚えさせる。
[ぽんぽんとうーくんの頭を軽く叩くと*メンテナンスルームへ。*]
[ラッセルの答えに思案気に彼の貌を見詰め]
崩す方。
[ローズマリーの声に顔を向け緩やかに一つ瞬いて肯定を示し、ウサギと共に去る其の背を見送り、ラッセルへと向き直り暫く思案の後に]
部屋、来る?
食堂でも好いけど。
[セシリアとコーネリアスの将棋を見る折に立ち寄った食堂を思い返し、厭でも食事を思い出すであろう場所へ足を踏み入れるのは余り好まれないのかもと、ラッセルの答えを待ち]
ナサニエルも、する?
[崩すだけなら人数も関係無いだろうと考えてか声を掛け、各々の回答に肯定を示す瞬きを返して、ラッセルの指定した場所へと常の足取りで*歩き出すだろう*]
何故?
[羨ましいと言われる理由が分からず首を傾げて]
そう。邪魔しても良い?
[ローズマリーを見送った後それだけ言うとナサニエルの返事を待ちギルバートの部屋へと向かう]
文学少女 セシリアが村を出て行きました。
7人目、文学少女 セシリア がやってきました。
―自室―
[ここ二日ほどレーションを一齧りと水を少ししか飲んでいない。しかし特に空腹感はなく]
………将棋のリベンジにするか、チェスのリベンジにするか。
どっちも煙草臭いからいやだな。
まだ将棋の方がマシ…?ううん、同じ。
匂いがすることには変りない。
[そもそも将棋は貸し出し中で手元にないことを思い出す]
プログラムは、組めたかな…。
定員に達しなかったため、村の更新日時が24時間延長されました。
崩し将棋のプログラムなんて、暇人のやることね。
重力補正、重量補正、ランダムパターンの駒配置とその重量の相関関係………。でも、ギルならやるわ。
[きっと、と呟こうとした声は飲み込まれ。腕を伸ばして擦り切れた紙のカードケースに入ったタロットを取り出す]
暇潰し…みんなはどうやって暇潰してるんだろう。
[大アルカナだけをシャッフルしては一枚おき、シャッフルしては一枚置き、を五度繰り返す]
悪魔逆位置…確かに。通常業務も無いに等しいもの。束縛とまでは感じなかったけど案外当たってるのかも。審判逆位置――不本意なことって何かしら。罪の意識に心当たりはないし。出たわね、塔。予期せぬ出来事はもう起こってしまったわけだし、妥当なのは友情の決別?んー、可能性はあり。法王は…と。四面楚歌にならないように気をつけるべし。この船で四面楚歌も何も無いような気がするけど。ん?恋人が出た……。めでたしめでたしになるのかしら。
なりそうも無いと思うけど。
[ぱらり。並べたカードを崩して元の山に戻す]
[丁寧にカードを仕舞いこみ、元の場所へ。コレクションの詰まれた壁際を、撫でるように指先は彷徨っていたけれど力なく下ろされて]
今更、人恋しい筈もなかろうに…。
[煙草臭い同僚の顔を思い浮かべたが直ぐに振り払う]
―メンテナンスルーム―
[いくつかの工具と、いくつかの部品。
調整用の機器と、プログラミングに使う端末。
伸びるケーブルはうーくんの首の後ろあたりに繋がっている。]
――長く歩くのは面倒。でも歩くのを止めるのも面倒。
[ディスプレイに広がる英数字の羅列。
複雑なモジュールとルーチンの世界。]
H60%、O25%、C10.5%、N2.5%……――
ただの有機化合物じゃないか。
そのくせ複雑怪奇でわかりにくい。
[コードのコネクトを切るとディスプレイは暗転。]
君は単純でいい。
スイッチを切ってしまえば動かない。
[ギルバートの誘いには一拍考えたものの]
いや、やめとく。
[くわえた煙草を指差して]
コレ、どっかで吸ってくるわ。
[そう言って、ギルバートの部屋へと歩み出す二人を見送った。
自分はその足で自室より距離の近い喫煙室にゆっくり歩む。]
あと何本だっけ、残ってるの――
[歩きながら考えてみるけれど思い出すのも億劫で。]
イライラするのはもうすぐ無くなるからか退屈か……。
どちらもか……。
[ふぅ、と息をついてドアを開く]
―ギルバートの部屋―
[原色の家具の中、男2人で崩し将棋―ある種悪夢の様な光景だが本人(達)は全く気にしていない]
…………。
[慎重に、山を崩さない様に―息を呑み、些か緊張した様子でかなり際どい駒をそろそろと動かしていく]
…………次。
[どうにか無事に手番を終え僅かに*息を吐く*]
8人目、書生 ハーヴェイ がやってきました。
―生体実験室―
〔アクリルガラス越しに、忙しない動きを見せるラット達。眺める男は、端末のキーを叩いて個体毎の所見を記録する。〕
――病原体持ちの薬漬けじゃ、食料にはならんよな。
〔良かったな、等と独り言を吐く。いつも手離さないボイスレコーダーを胸ポケットに滑り込ませて立ち上がり〕
〔ラットの次は犬、鶏――その他諸々。新薬を投与された小動物達を診るルーチンワーク。
実験動物達のケージは、感染症予防の為に溶接されている。清掃も給餌も、薬物投与も半自動。其のための設定を済ませ、見詰め返してくる瞳の主達へと生真面目に浅く頷きを返す〕
では諸君、…また後程。
〔狭い実験室の足元には、銀色の医療キットが幾つか。煩わしげに足先で軽く蹴りを入れ、*廊下へと出る*〕
定員に達しなかったため、村の更新日時が24時間延長されました。
―自室―
[色鮮やかな極彩色の家具に囲まれた――壁や天井も其々に鉛丹色と群青色で塗装が施されている――部屋にラッセルを通し、臙脂色の椅子を彼に勧め自身は皺の寄った錆鼠色のブランケットの置かれたベットへ腰掛け、コーネリアスに教えられた通りの手順を説明し崩し将棋を開始する。
ラッセルが駒を動かすのを静かに見詰め、促され――自身の説明したルールをきちんと理解しているのか常と変わらぬ様子で、ラッセルと比べるならば聊かぞんざいに――指先は駒を動かし、危うく倒れかける駒をぎりぎりで引き出しては、骨ばった指先の感覚を確かめる如く視線を落とす]
――…
[将棋盤から月白色のテーブルに落ちる駒が、ぱちりと小さな音を立てる以外は静かだったけれど、盤上で崩れる駒の悲鳴を前に緩やかに瞬く]
倒壊。
[態々口にするまでも無い筈の事実を小さく囁く口唇には、刹那ほんの僅か笑みらしき弧を描くも、常の貌に戻り崩れた駒の山を静かに見詰めた儘]
人間みたい。
直ぐ――…
[壊れる、と口唇だけが*微かに囁いた*]
[何度の順が回ったろうか―音を立てて崩れるそれに瞬き一つし]
―自分の勝利。…で良い?
[首を傾げて真顔で問うのはルールを把握しきっていないからだけでは無く敗者であるはずのギルバートの常と変わらぬその調子故か]
―確かに。
[微かな動きを読み取ったか同じ感想を持っただけか―小さく頷き返して]
[すぅ、と深く吸い込んだ息は胸のうちへ支援を運び、仄かな菫の薫りをもたらす。
焼けた灰は携帯のアッシュトレイへと押し込めて]
…さて、どうしたもんか。
[煙草をはさんでいた指が髪を一筋絡めて壁から身を起こす]
定員に達しなかったため、村の更新日時が24時間延長されました。
〔無菌の持ち場から廊下へ出ると、微かに揺蕩い残る紫煙が香る。無意識に鼻がむずついて視線を先へ遣る―コーネリアスと目が合って〕
…死に方を念頭に置いて動く、…だな。
〔彼の呟きを拾ってか、歩みを緩め低く*応じた*〕
[問い掛けにゆっくりと首を傾け――細かいルールは判らないらしい――たのも束の間、崩れた駒の山からラッセルへと視線を移し、頷きの代わりに瞬き一つを返し敗北を認め]
ラッセルの、勝ち。
[賭けて無いけど、と勝敗に拘りは無いのか変わらぬ口調で告げ崩れた駒の一つを摘み、視線の高さに持ち上げて、黒い「歩」の駒から奥の頷くラッセルへと視線を移し]
裏と――…表。
[自身に紅い「と」の見える様に駒を裏返すと、ラッセルの瞳には逆の順で駒の絵が変わるのが映るだろう]
裏返ると、変わる。
人間みたい。
[ぱちりと盤に歩を置きながら同じ言葉を*繰り返した*]
既にこの旅に飽いていた者は多いと聞く。
モニターと首っ引きになる必要のない僕には、
幸いにしてわからんことだが――
〔言葉を途切れさせて、暗黒広がる窓方を見遣る。母なる蒼は幻にさえ現れず…結果、耐熱ガラスに映るコーネリアスの横顔を僅かばかりの間観察することとなり。得られたか得られずか、向かう先へと視線を転じる〕
……
医務室を見てくる。
〔無論報告の義務はないが、そう言い添えた〕
――廊下→医務室――
そう。
[頷いて]
確かに。人間は皆複数の自分がある。親しい相手にしか見せない面―それは本当に良い面?
[俗に言う『内弁慶』の様に身内にしか見せない悪い面もある―それでも気になる相手の裏を知りたいと思えるのが不思議だった]
[灯りをつけたまま眠ってしまった。
支障はないけれど、なんとなく体が重いような気がする]
闇は癒しでもある…?
[強化硝子を何枚か隔てた向こうに見える闇と光を見つめ]
ギルにでも聞けば答えの出る可能性はある。
訊いてみるべき……。
[伸びをして、着替えを始める。途中、ドアのロックがかかっていることを確認して]
うん。
[悠々と着替えを済ませると、自室を*出た*]
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