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…相手を憎むのは不毛過ぎるから、
というのが実際のところではあるな。
お前の身勝手もそういう性質のものかもしれん。
〔褒めとも貶しともつかず悪友への評価を加え〕
…成る程。
僕が1人生き延びる無意味は承知しているが
帰還条件は矢張りシビアだな――
出来れば、この船には僕の患者たちを
巻き添えにせず無事帰還して貰いたいものだ。
[旨かった、という言葉には小さく黙祷を捧げて。
作った人間と、食べられた人間への礼儀として小さく頷いた。]
自殺は確かにいただけない。
[ラッセルに返す肯定の言葉。
――そういえば船長がこうなった経緯は事故死だったのか餓死だったのかそれ以外の理由だったのか、ふと頭を過ぎったけれど。]
そんなはずないか。
[セシリアが生きているものの命を摘み取って調理するというのはどうにも想像できず、第一発見者が誰であるかも知らず。]
皆が皆生きなきゃならないなら、自分だって同じになる。
自分が殺されることで憎むなんてことはしない。
でも、確かにハーヴェイの言う通りな部分は思い当たる。
[評価には喜びも怒りもせず至極真面目な顔で]
ハーヴェイが一人じゃそれこそ運任せ、か?
奇跡が起これば帰れるかもしれんぞ。
[と、気休めにもならない――冗談。]
お前の患者が巻き添えにならんことを俺も祈っておこうか。
今そう言えるお前はなかなかのものだ、Russel Saul.
僕などはこの騒ぎが起きる前から…
Captainが自殺でもしてくれないだろうかと
密かな願望を抱えていたというのに。
〔自らの言葉で語るラッセルを見遣る眼差しは、
何処か懐かしいものを眺めるような其れ。〕
[ラッセルとハーヴェイの言葉にくすくす笑って]
ハーヴェイの考え方もまた有る意味では正しい。
生きるがためだ。
けれど生者の命を刈り取るのも難しい。
[矛盾、と小さく呟く。]
[嘘を嘘だと認める言葉はなく、言葉はただ真実として受け入れることを求められ。
乾いた笑い声が小さく響いた。
膝が笑って、ぺたんと、崩れる。
食べれる、と訪ねる言葉に、声もなく首をただ横に]
[崩れ落ちるコーネリアスへとスープを持たぬ腕を伸ばし、彼の前に片膝をつきしゃがみこんで]
食べないと――…死ぬ。
コーネリアスの体力では、長くもたない。
[冷めていくスープへと一旦視線を落として後に、再びコーネリアスの貌を覗き込んで]
其れでも、食べない?
…無理だ。
食べられない。食べられるわけ、ない───
[声が震えるのは怯えでも悲しみでもなく、具茶混ぜの感情の行き場の末]
長く持たなくてもいい…ここまで生きてられた、それだけでもう、充分だ──
[ゆるゆると俯いたまま首を横に降り]
そう――…
[零れる溜息に混じり小さく囁かれる声音には、ほんの僅か悲哀と安堵とが綯交ぜにされた感情が滲み、コーネリアスを見詰める紫苑の双眸は揺れる]
コーネリアス。
[大切な友人の名を静かに紡ぐ]
〔捧げられる黙祷に、しく、と痛むのは胃か胸だったか。曖昧な箇所をてのひらで摩り〕
ん…お前の身勝手は不快じゃないという話だ。
奇跡な。絶望はいつでも出来ると思っておこう。
お前にとっての奇跡も実は大差ないか?
〔実験動物たちの無事を祈ると言うナサニエルへ、深い頷きで感謝を示す。船さえ無事ならば、彼らは保菌状態ながら恙無く生命を維持できるのだが〕
成果は上げたし、データも送信済み。
――だが、命は送れん。侭ならんものだ。
[ハーヴェイの手が動くのを静かに見守り]
不快でないのなら光栄だ。
[ハーヴェイが避けなければ髪を一撫でくらいはしたかもしれない]
いつでも出来ることは今日しなくていい。
――頭の片隅には入れておくべきでもあるが。
[大差ないかと言われればくすりと笑って頷いた。]
ホント、ままならない。
[溜息をつきいながら肯定を返して]
死神でもあるまいし――
人が刈り取った命に人生の味感じようとするのは傲慢だ……。
[死神が命を刈り取ってくれるならそれは幸せなことで。
人が人の命を刈り取るのはただの――]
[呼びかけに応えぬコーネリアスを見詰め]
俺は、他の誰を殺して食べても構わない。
でもコーネリアスが死ぬのは見たく無い。
だから――…
[緩やかに瞬く紫苑の双眸は伽羅色の光を零し]
俺を――…
[一瞬の空白。
何をいっているのかわけがわからなくて]
…何で?
そんなこと、できるわけないじゃん。
何で、俺が食べられないのにニコルを殺すの?!
…そんなの、狡い……っ…
[首を横に降る。
自分の狡さと、彼の優しさとで訳が分からなくなっていた]
――……船長を、食べたのが引き金になるかな。
[今後のことをぼんやりと考える姿は外見には投げやりに見えて。]
もし、ラズが殺されるようなことがあったら
――俺が殺してやるから。
すぐ呼べ。
[殺すのは殺そうとした相手か殺されそうな相手なのか。
恐らく彼がその時に望む方を。]
[被りを振るコーネリアスを見詰め、常と同じ様に緩やかに瞬き、開きかけた口を一旦は引き結び]
――…ごめん。
[でも、と小さく続け]
其れだけは、厭だ。
[静かながらはっきりと言い放ち、ゆっくりと立ち上がり、床にへたり込んだ儘のコーネリアスも起こそうと手を伸ばす]
[外の会話など露知らず
ただ、コーネリアスが入ってこないことだけを認識し]
生きる意志は、あるのかな?
[と、小さく*零した*]
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