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―― 現実世界/中央部周辺・通り ――
[何事も言わずとも補佐AIはわかっている。]
『......Closed領域 魔窟と呼称される空間を形成する基幹的AIです。Closed/Library及びAdministrative bureauに提出された事項に拠れば、製作者の意思を尊重し各領域へのAttackingが指定基準まで承認されており、B/U(バックアップ)は魔......』
[補佐AIの報告はトビーへだけのstill voice。流し聞きながらじっくりと深化させた義眼で観察しているようでもある。]
問いの答えを求めるなら、
回答者と同じ目線に立って頂きたいね。
こちらに来なさい。
[自らは動かず、漆黒のAIに教師のように言った。]
そう、気が急いては考えることも出来ないけれど、だけど。
[オレンジジュースのストローを銜えいつもの癖で思考]
わたしに師匠──レベッカさん──双子さんに──キャロおじさま──おじさまのお知り合いの方──
他にも──どうなのかしら──何故──共通項──不毛?──
─ 現世 / 南部学術区域 カフェ ─
≪「ゆっくりしてはいられない」……。
そう言いつつ、そこで怠惰を味わう矛盾。≫
[姿はない。機械音声のような電気信号は、
ウェンディの頭の中のみに響く。]
≪堕落……ッ!何という堕落……ッ!!
君には「勤勉」を与えよう。実に今この瞬間
君にとって一番必要なものだッ!!!≫
[唐突に頭に響く"音声"に思考は遮られる]
なに──?だれ?
声が……。
[辺りを見回すが特異な点は見あたらない]
[或いはすべてが特異とも]
そうね、――動いている
[視線を流すのは、カフェの外へ。]
わたくしたちに、"何か"があるはず。
ほぼ皆が、――あんな状態になっているのですから。
その"何か"を探すか、
それとも"原因"そのものを探すか、――
どちらも同じ場所に辿り着くのかしら。
[ポットからカップへ移すときに、ダージリンの香りがふわりと立ち上った。]
―― 現実世界<Mundane>/中央部周辺 ――
[キュルリ、キュルリ]
[瞳孔はストリートの上に立つ姿に焦点を合わせ、アナライズ]
[人間/電脳世界<Utopia>にもアクセスしている電子の流れ]
[召喚(呼び)つける声に漆赤の亀裂は深まる]
人間ハ面倒ダナ。
マアイイ。回答ガ、アルノナラ。
[軸などどうでもいい/必要なのは情報]
[瞬時に黒の姿は消え、ストリートで像が結ばれる]
――答エヲ聞コウ。
これは音声通信?
直接繋ぐなんて、どうやって──だれなのっ?
[左目に表示されたインジケータが酷く変動を繰り返している]
[組織のほぼすべてが生体であり、唯一の"窓"である義眼を通じて音声を伝えているのか]
≪逆に考えるんだ。「どうしてこの状況になったのか?」…。
それがわからなければ、「この状況をなぜ作り出したのか?」。
こう考えれば、答えは案外足もとに転がっているかもしれない。≫
≪とりあえず、落ち着いて考えることだ。≫
[ウェンディの目の前に、ホログラムの鏡。]
≪君の今の顔笑えるぞ?≫
― 現実世界<Mundane>/南部境 オープンカフェ ―
いやね、レベッカちゃん。
様づけなんかしちゃって、改まらなくっていンのよ?
ビンちゃんって呼んで。教師ビンビン。
そそ、ハックマン女史のハックションだいまおーは殺したって死なないタフネスなおねいちゃんだもんだからさ。きっとへーきへーき。メールくれてちょうどこのへんにいンの。もうちょっとで来るんじゃないかな?
[レベッカがお茶を煎れるため立ち上がった仕草にあわてて腰をあげる。コットという少女もレベッカを手伝いだした。]
あややん。
いーのいーの。そういうのはうちの子にやらせるのよ?
[そつのない仕草で、双子がレベッカやコットの所作の邪魔にならない程度に補佐をしていた。]
この状況──倒れた?残された?──誰かが作り出した──何者かの意図──
落ち着いてって言われてもっ!!
[ひときわ甲高い声で叫び、一転][ホログラムの鏡を凝視して]
──たしかに、変な顔。
[己を落ち着かせるように、一呼吸]
レベッカちゃんは火星から来たのね。『火星の女』ってば夢野久作。
俺もね、火星にプロモーションに行ったことあんのよ? 出張で。
びっくりしたね。タコチューはいないのね。クレクレタコランなアンドロイドを火星原住民シリーズって企画しようとしたらばさ、火星の色んな団体から怒られちった。
[思い出したように、レベッカとコットにプロモーション用の名刺大の小さなsonosheetを配った。]
そうそ、俺はね、こんなお仕事してんの。
ささ、コットちゃんにもあげる。キラキラ。
[SBY109が歌う、オンデマンドTVの子供向け番組『からだであそんで』挿入歌『くねくねマンボ』、『ミニスカ、ちらり』の三次元PVが入っているものだ。
どちらもホログラム再生で目の前に出現させて見ることができ、比較的ウケがよかった。それらは主に男性の評価だったが。]
[ホログラムといえば、と路上に視線を送った。
カフェにほど近い路肩のパーキングエリアに停車したままのUGVの傍らに、シスターのホログラムが浮かび上がっている。
あの宗派のAIやシステムは生き残っているのだろうかと考えながら、しばしその姿を見つめていた。
突如、グリフォンと共に漆黒のしなやかな女が現れる。]
ななな、なにこれ!
びっくらどっきり!! びっくりどんきー!
[グリフォンと対峙するシスター。派手に明滅しては砕け散るホログラムに愕きながら立ち上がった。
眼鏡は電脳世界でのデータの流れを二重に現実世界に重ねて見せる。
新たな魔獣キマイラが現れ、激しくなる力の拮抗はしかしやがて場所を中心部方面へと移していった。]
――南部・カフェ傍――
[陰に隠れてからさほど時間は経っていない。手元に地図を取り出し――一枚のフィルムだが――点の数を確認する]
【んまー、相手がこゆの持ってると、あたしがいるのも丸判りなんだけどね。雰囲気からすれば、危険はないと思うけど。どうしよっか】
[考える、間もなく、柱の影から出る。そしてカフェへと向かった]
―― 現実世界/中央部周辺 ――
未だだ。
初対面の者には挨拶をするという事をプログラムされていないのかな?
――僕から名乗ろうか。
[ヴェールの下の顔がにっこりと笑った。]
僕はトビー。
普段は指揮者として活動している。
交響楽、舞台劇、公演が求められれば何でもね――。
[パイプからホログラムの煙が揺らめいている。やや、苦笑いが混じるような微笑でもあった。]
この状況は、明らかに"誰か"の意図が存在している。
直接の原因がウィルスなら、当然散布した人が居るはずで。
その人が、わたしたちを残した、って。
そういうことを、仰っているのね。
だとするならば、問題は
Who──誰が
Why──何故
How──対応策は
何かみっつほど足りない気もするけれど。
[そこまで言ったところで、怪訝そうに己を見つめる視線に気付き]
……ごめんなさい。
誰か、親切な人──たぶんだけれど──が、わたしに助言をくれたのだけれど。
びっくりしちゃって。
[安心させるように、にこりと微笑んだ]
≪そうだ。焦燥は、解明への壁。
怠惰は、解明の天敵。冷静と標のみ味方。≫
[ホログラムの鏡に、老人のヴィジョンが映り
聳える男性器のヴィジョンが映る。]
≪答えさえ見つかれば、後は簡単…ッ!
ひどく簡単なことなんだ…ッ!!≫
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