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…俺はもう少しここに。
一寸自分も調べたいことがあるんで。
何か一人じゃ持ちきれないものとかあるのならいきますけど。
それと、先生。
[少し神妙な顔をして]
…先生は、お化けとかって信じますか…?
人間以外のものって…
あふう…
[ボールギャグからヒュウッと音が出る吸う音か吐く音なのか。四つん這いの姿勢になると鎖の長さが足りないのか、少しお尻を突き上げる形になってしまう。]
――そうか
[ラルフの写真をポケットにしまうと、残るというハーヴェイに頷いた。]
お化けか……
――信じたくはなかったが……
[「死体が生き返って――」 あの言葉が頭蓋で反響する。]
――いや
今はわからないな。
信じたいような、はたまた確信しているような……
……やはり信じたくないような…
…そんな心境さ。
[自分で巧く説明できないんだが、と笑った]
……ん?
どうした?可愛い雌犬サン?
ほら、こんなに尻が欲しがってる。
[雌犬の涎がダラダラとナサニエルの身体に垂れ落ちる。]
………なぁ?
俺のヤツ、ブチ込んで欲しい?
─町を囲む森の中─
[鬱蒼と生い茂る樹々は深い闇を宿し、雲間より出ずる月の明かりもここには届かない。
そこは夜の領域。人ならざるものの棲む世界。
虫達の合唱と夜鳥の啼き声に、湿った落ち葉を踏み締める微かな物音が混じる。
男は闇の奥を見通し、*ゆっくりと歩いて行く。*]
―地下―
[地下に降りていく。永い時に置き去りにされたようなその空間はひんやりとした冷気に満たされ、幽かに黴臭かった。
薄靄の中の底知れぬ沼に足を浸していくように、闇の中を降りてゆく。
階段の底まで降り行くと、突き当たりには青錆の浮いた扉が立ちふさがっていた。
錆びた金属の耳障りな擦過音を伴って古びた錠が開く。]
――うわっ
[扉を開いた私は、思わず小さな叫声を漏らしていた。
眼前には暗澹たる冥暗の中よりおぞましい怪物の姿が浮かび上がっていた。
それが一枚の絵画であることにはすぐに気がついたが、それでも深閑とした夜に地下の暗黒の中で対峙するには怖気を震うほどの禍々しい迫力がその絵には籠もっていた。]
はぅ………
[ネリーは少しでもナサニエルから離れようとしつつ、顔をベッドにうずめた。覚悟を決めているのか。
じらし上手のナサニエルだからまだ何かあるのか。期待の心を持ちつつ、ネリーは一言だけ鳴いた。]
わん…
………ん?
声が小さくて聞こえないんだけど。
欲しくないの?ふぅん……
[自分から離れた雌犬を観察して、ニヤニヤと笑っている。]
じゃ、おしまいにしようか。
[ゴヤの『我が子を喰らうサトゥルヌス』
おぞましい表情の巨神が一杯に目を見開き、両手で握りつぶさんばかりに抱えた人間を喰い千切っている。おそらくは、複製画なのだろう。
サトゥルヌスは、鎌で父ウラノスを去勢させ権力を奪う。
予言で、自分がしたのと同じように我が子に支配力を奪われると言われ、次々と我が子を喰らって殺した。
それは、おそらく複製画だったのだろう。だが、大事なことにはそれは一般的に知られている“修正”がほどこされたものではなかった。通常塗りつぶされている陰部は、我が子を喰らう恍惚に呪わしいまでに激しく屹立していたのだ。
私は僅かに感じた嘔吐感を怺えながら、壁際のスイッチに触れた。
地下の書庫の奥深くまでやや頼りない電灯の燭がともっていった。]
[これだけ自らがたかぶっているのに、あの「声」が何かをかきわけて届いた。私は何処へと言うこともなく小さく叫ぶ]
ああ…
はへ…はえ…
ああう…!
はっ…はっ…
[身体が軽くなった。人の力で自分を抑えつけるものがなくなったからだ。どことなく視姦されてると思う。]
あん…わん…
[まだ小さい呟きを見せる。]
ハーヴ、待たせてすまない。
あらかたの用は済んだよ。
今日はこれで充分だ。
[後片付けを済ませ、オーディオセットの電源を切る。
図書館の外へとハーヴェイをいざなった。]
[ヒューバートと別れた後、再び本を探し始める。それは伝説、神話の類の本だった。
先程問うた「化け物」について調べるにはあまりにも参考にならない本だったが。
ペラペラとページを捲る。
何故こんな御伽噺のような本を手にしてしまったのかは分からなかったがふと捲ったページで手は止まる]
……ぁ…!
[恐らく、ヒューバートに呼び掛けられるまでそのページを瞬きもせずに見つめていただろう]
[悔しい、ボールギャグがなければ言いたい事が言えるのに。
ネリーは起きあがって声の出る方向を向いた。
涎や胸を責める金属が悩ましい。]
あ…ん…わ、わん。わ…わんっ、わん!
[開いたページは「人狼」。
そして先程響いた「声」
脳裏にシャーロット、ニーナの…自分が手にかけた死体がよぎった]
…………
[ほんの僅かな時間の忘却。恐らく最後の一瞬の為のささやかな贈り物だったのだろう。
一度忘れ、戻ってきたこの「感覚」は…以前よりも確りとした形を伴って再び脳を支配する]
…人…狼……
俺は……人…じゃ…
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