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−教会墓地−
[墓標に花を添える]
お父様、お母様。お久しぶりです、と言うべきなのでしょうか。
娘の、ソフィーです。
[表情は無。淡々と、言葉にしていく]
お爺様は、このお墓のことを教えてはくれませんでしたから、来るのがずいぶんと遅くなってしまいました。
今、お爺様の願いであった、聖杯戦争に参加しています。後ろにいるのは、マリアと言って、サーヴァントなのですけど、お父様ならその名前だけでわかるでしょうか。
―商店街―
[人ごみの中で知った顔を探して歩き回っていると、右手首がちくりと痛む。]
……腱鞘炎のようなこの痛み。ソフィーさん?
[周囲を見回してみる。と、ソフィーとは違う“知った顔”を見つけた。]
あれは、……露葉さん……?
[一緒にいるのは風体の上がらぬ男と眼鏡ッ子。
なにやらただならぬ気配を感じる。
これまでに得られた露葉の情報、現在の状況、全てを総合して推理。――――そして一つの結論に至った。]
露葉さん……、あれとは別にもう一人ヒモ、……と、……隠し子!?
[反射的に叫びながら駆け寄る。]
露葉さんっ!貴女にいったい何がっっ!?
お爺様は、始めナポレオンにいわれのある物を用意してたんです。私の力では、呼び出せなかったけど。
結局触媒になったものが見当たらないのですが、お父様が用意されていたもののように思います。
……でも。
[わずかに眉を寄せた]
私には、聖杯に願うものがありません。
何を願えばいいのかもわからない。
願いとは、自ら欲するもの。そうありたいと願うもの。
お父様がもし参加していらしたら、なんと願っていたのでしょうか。
[ふいに、死者を甦らせる事が出来るのだろうか、と疑問に思う。けれど、そうする事に意味はないような気がした。
過去は過去、今は今で、未来は見ない。過ぎ去ったものに興味はなく、これから来るものにも、同様に興味などなかった]
解ったよ、ここで派手にドンパチやる訳にも行かないからな。
店で話を聞かせてもらおうか。
それにしてもマスターってのは男子禁制だったかね。
俺の会うマスター全員女だぜ。
こちらの店ならテラス席があるから
何かが近づいてきたらわかると思うの。
[適当な店にはいろうとしたら
なぜかまた叫び声が。
自分の名前が呼ばれていたので思わず振り返る。]
美貴さん?
何って……何もありませんよ。
[近寄ってきた美貴に微笑み。]
ちょうどいいわ。
あなたもごいっしょにお話を聞きませんか?
[令呪が反応し、ケネスは美貴の方を見る。]
何?誰?また女マスターが増えたの?
やり難いなあ……
…ん?あんたは確かマリアに声掛けようとしてたよな。やっぱりマスターだったか。
……問うても、返事など、来ないのはわかっています。
いつか、願いが何かわかるのでしょうか。
[口を噤み、暫く墓標を眺め――]
[息を切らせて露葉達に駆け寄る。と、こちらの狼狽などお構いなしに冷静にさらっと返された。]
え、……あ、あの……。
そんな、込み入ったプライベートでデリケートな会話に、ついこないだ出会ったばかりのアタシなんかが同席しても、いいのかしら……。
[モジモジしている。]
[令呪の反応とひどく日常的?な反応。
声のした方に目をやる。
この場違い?な反応へのデジャヴを覚える。
見覚えのある顔だ。
キャスターのマスターらしき女性だ。]
(キャスターにはもう話したからもう必要はないけど、まいっか。)
[特に拒絶はしない。]
[先程まで泣いていた眸に、太陽の光は少し痛かった。]
― 教会墓地 ―
[気晴らしをするように外に出た。
当て所なく向かったのは、先日ライダーが歩いた道。
白い石の群れ並ぶ風景を見るともなしに見ながら、歩みを進める。]
……。
[遠く、墓標を前に佇む二人の女性が見える。
花束の香りが風に乗り、ふいにランサーの鼻腔を擽って驚かせた。]
−噴水前・朝−
[今回の事後処理は時間がかかった。
仮にも監督役としての立場である沖田は、その結果問題がない事をこっそりと確認していた。
世界はもうすぐ滅びる。だが最後の最後まで人間を苦しませるのに抵抗を持つのは、彼が生前人類種として他の亜麗百種と戦いを繰り広げ、結果彼自身が人間に対して強い同属感情を持っているからなのかも知れない。
この時代では国同士でいがみあっている。だが、遠い未来では人類種は外敵に対抗するために手と手を取り合って生きている。神に否定はされても。
それは皮肉めいた事実なのだろう、と彼は感じていた]
どんなお話かわたしも知りませんが
聞いて損をすることはないと思いますよ。
[そういうと店の中に入り、テラス席に着く。
注文をして、水を一口飲む。
先ほどよりずっと顔色はよくなっていた。]
わたしは香野露葉というの。
……まずは、あなたのお名前教えていただける?
[少女に微笑みかけた。]
[男の言葉を聞いてきょとんとする。]
……マリアちゃんを知ってる、アタシがマスターだって知ってる、……?
[小声でぼそりと呟いた。]
……ただのヒモじゃなさそうね。
[改めて、露葉達を見る。]
詳しく聞かせてもらいます。
[露葉に続いてテラスの一席に腰掛けた。]
[ケネスは令呪を使って宗冬を呼んだらどうなるのだろう、とふと考える。
当然他のマスターも黙ってはいまい。
次々サーヴァントが呼ばれて、この界隈は地獄絵図になる事だろう……とケネス自身はそう考えていた。
どうも敵意は無さそうだし、今はとにかく情報を増やすか。
やや揺れる気持を押さえ、そう心を決めた。
新たにやってきた女性は美貴というらしい。
目の前の少女の名前と、2人のクラスがケネスには気になっている。]
……。
…まるで、人形のような女性だ。
否。失礼な言葉だった。
[形式上であれ、花を故人に送る事が出来ているのだ。まさか感情がないという事もないだろう。]
[水を一口飲み話はじめる。]
まず、私のサーヴァントについて話すね。
クラスはランサー、真名はラーマ・チャンドラ、そして彼が聖杯に願うのは、人類の滅亡。
……人形、と言うのは近いようではずれているかもしれません。
ですが、本質は似たようなものですから。
ランサー、ですね。
ひとつ、お聞きしてよいでしょうか。
貴方はマスターだったな。
となると後ろに居る人物はサーヴァントだろうか。
――それにしてはサーヴァントたる気配も感じなければ、反対に私達に対して疑問の表情をも向けてはいないようだが。
まあいい。
問いを聞こう。
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