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[天には、眼球の裏に存在がこびり付き仁科を強迫して止まないあの赤い月。
其の月の傍を、翡翠色の鳥が一瞬だけ──横切った様に見えた。]
『…翠さん?』
―二階廊下・来海遺体そば
[そこには、今よりも随分若々しい来海洋右の姿があった。
彼の妻らしき女性を抱き寄せ、子供と寄り添うように佇む彼の表情には此処で見たような刺々しさや傲岸さの一片たりとも浮かんではいなかった。
ただ、幸福そうに柔和な笑みを浮かべる彼の姿に、私は絶句した。]
ああ……
貴方は此処から、ただ出たかったのか?
ただ……還りたかったんだろうか。
その場所に――
[彼の事をそれ程知ることのなかった私も、その中にある平安と安寧にただ一瞬思いを寄せ――手にとった小さな記憶は僅かに滲んだ。]
[何処か手慣れたとも見える動作で、夜桜が来海の首を落とす。転がって来た其の首と視線が合った。]
──…ヒッ。
[おぞましい、恐ろしい。
と咄嗟に感じる事が出来る言う事は、自分は未だ此処に居ると言う事でもある。]
いいえ、いいえ。
望月様は護ろうとしてくださいました。
[見上げて大丈夫、だというように頷いて、
転がる首に気付いて眼を遣る]
……ッ!!
[まだ光があるようにさえ見える眼。
来海が此方を見ている。
血の流れが彼岸へと繋がる。
対岸に咲き乱れる曼珠沙華]
――……来海様。
[その空はずっと黄昏のように紅い。
黒い、大柄な影が居る。
真っ直ぐに、立っていた。
遠くを見据える目、転がった首と重なる]
[その一瞬の平穏は瞬時に打ち砕かれた。
顔を上げると、夜桜が妖しく光る白刃を手に――]
『夜桜さん……や……め……』
[止めるいとまは僅かほどもなかった。無情にも、来海の首はゴロゴロと床を転がってゆく。]
………………。
[夜桜の背に向けられた眼差しは青白い光を帯びていた。高温で燃え盛る炎が温度を高める程に青く冷たく見えるように。]
―二階廊下―
[枚坂の言葉がじんと滲んだ]
還りたかった、か……。
[首を持ったまま、そのまぶたを撫でる。何度か撫でるうちに、どうにか閉じさせることに成功した]
ああ…。
[瞑目して頭を垂れた]
[夜桜が来海の首を落とす様子を、幾らか賞賛するように眺めていたが、彼女が振り返る前に視線を逸らした。
その先に、枚坂の手から滑り落ちた何かがある。
格闘の間に、胸ポケットからでも落ちたのだろうか。
今にも血に浸されそうな、写真。
それを眼にした瞬間、酢でも含んだ様な表情を浮かべた。
ほんの一瞬だったが。]
もはや……喪われたか――。
[自制するように、あるいは来海の冥福を祈るため、僅かな間目を閉じる。
「この方の首も、彼岸に」
[人である、と翠の言葉が耳に届いた。]
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