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[珍しくmapping機能を使わないまま端末を携え船内をうろつく。目的はあって無いような物で、特定の個人を探しているのではあるが、じっとしているのも退屈だからという理由で]
…ギル、部屋には居ない………。
[次は、どこへいこうか。読めない同僚の事だからか逡巡]
成る程…えらく短絡的なものでしかなかったわけだ。
〔束の間伏せる視線が、幾許かの落胆を滲ませる。相手の唇に乗せられた意図は辛うじて拾えたようで…伸ばした手が一度宙へ留まる。元々愛想の欠片もない面持ちが険しさを帯び〕
…ヒトも獣だ。
忘れたふりならともかく――
本気で忘れているから始末に終えん。
〔短く吐き出した怒気は彼に対してのものではないらしく、すぐに何事もなかったように表情を戻す。くいと彼の下瞼を押し下げて目を眇め――笑みに酷似した形に細める〕
軽度の栄養失調、な。…申告は正確らしい。
―通路―
[誰も居ない広い通路に出る。透明な壁からは外の闇がよく見て取れた。数々の恒星もちりばめられていて、足を止める]
…………。
物質的なもののほうが恐ろしくない。
[ぽつり。弱音にも聞こえる呟きを一つ]
〔真似て伸ばされる指があると、興味深そうに眺めていたが――触れる直前に視線を彼の瞳へ転じる。対するギルバートが指を留めるかどうかには気を置かずに〕
呼ばれたい名があるときは言え。
記録して記憶しよう。
〔そして、あまり広くない自らの知覚範囲に人の気配を感じてかギルバートの肩越しに通路を眺め遣り〕
ではな。僕は他を診て来る。
近くミーティングも必要になるだろうが…
―メンテナンスルーム―
星は死ぬとき大きな爆発を起こすという。
それに比べたら我々の死は枯れ果てゆくだけなのだから……地味だな。
[寄って来たウサギの鼻先を撫でる。]
そう……
君のためにこだわると決めたけれど最も重要なことが出来そうにない。
……生命を維持するために必要なものを探せる?
[判ったのか判ってないのか。
きょときょとと首を傾げた後、ウサギは*通路へと。*]
[窓辺へ歩み寄って透明なそこを指でなぞる]
正体がわからないから恐れる――。
イコル、宇宙は既に恐怖ではない。
人間は分からないもの―blackbox―に怯える。
内なるblackboxは誰にも存在するもの…私にも?
[つつつ、となぞった指を重力に逆らわせず下ろしてゆき]
[脱出艇に乗った副船長と、どこか遠い船長と。]
……逆の方がよかったな。
[などと独り言を呟きつつやはり人のいない通路を歩む。]
………――こんなの、ガラじゃない。
こういうのは、ギルの分野。
[頭を軽く振る。
端末に視線を落としてmapping機能を呼び出そうと]
[ハーヴェイの言葉に同意を示す如く緩やかに瞬き、眼差しの途切れに滲む気配の変化を静かに見守り、其れが怒気に染められていく様子を、黙した儘に不思議そうに彼を見詰め]
人だけが、忘れられる。
[淡々と事実を述べる口調は常と変わらずに、目許を押される違和感に幾度か瞬き]
自分の事は、幾らか判る。
[手を伸ばしたハーヴェイの意図を理解し、自身の伸ばした手は触れられたのと似た位置を、押すでもなく労わる様にそっとなぞり手を下ろす]
[呼称に関しては緩やかに被りを振り、言葉通りの意思を伝えるもあり、ハーヴェイの視線が背後に注がれるも振り返る事は無く、緩やかな瞬き一つで了解を示し]
端末は開いておく。
何かあれば、連絡して。
[放られたタブレットを将棋盤を持って無い方の手で受け取り、脇を通り抜けるハーヴェイを見送るでもなく、暫くは手の中の其れを眺めて居たけれど、其の内にセシリアの部屋へと向かい歩き始める]
[一番近い生体反応への接触を試みるべく、端末に視線を落としたまま歩む。自室の近くだった為なんら支障はなかった。
一番近い生体反応が見える位置まで来るとようやく視線を持ち上げて―]
…ギル。探してた。
〔涙を拭うようなギルバートの指は、此方の目元へ暫く感触を残した。少しばかりむずつくが自分で後追いに触れるのも何故か癪な気がして果たせず―唇を引き結ぶ〕
……。
〔先刻の気配を勘に任せて辿り、やがてナサニエルの後ろ姿を見つける。…態とかつりと足音を立てて、此方の存在を知らせてから声をかけ〕
――回診だ、Nathaniel Regel.
方便だがな。
―通路/セシリアの部屋の傍―
[気配に歩みを止め其処にセシリアを見止めるも、如何やら端末に意識を集中しているらしき様子に声をかけるでもなく、また彼女へ向かい歩み始め、漸く眼差しが向けられるのと同時にかけられる言葉に不思議そうに瞬く]
セシリア。
[挨拶めいた温かみのある響きで名を紡ぎ]
俺も、探してた。
[助かった、と謝辞ともつかない言葉と共に、手にしていた将棋盤を軽く掲げ見せてから差し出し、セシリアの用件を問う如く緩やかに首を傾けた]
[明らかに意図を持たせた靴音。
振り向かぬまままず立ち止まり、かけられた声に状態をひねり相手を確認してくすりと笑う。]
久々に顔を見た気がするけど……回診?
珍しいな。
[体ごと向きを彼に変えて首を傾げてみせる]
[呼ばれると微かに頷く。も、と言う音が聞こえると珍しいものを見るような目で相手を見遣り]
………何?
私の話は優先順位が低い。ギルからいいよ。
探してた、なんてこと前にもあった。用なんでしょ?
[助かった等と口にする相手を、ますます珍しいものを見る視線で眺め、首を傾ける様子にかぶりを振って。
ごく小さな手の動きだけで話を促す]
[話を促されているらしきにきょとりと瞬き]
是を、返しに来た。
[差し出した将棋盤を再度軽く掲げ、将棋盤を返す為にセシリアを探していたと、本人なりに意思表示を試みて、伝わっただろうかと確認する様に彼女を見詰める]
…ああ、それか。
[見つめる視線に瞬いて肯定の意を示す。差し出された将棋盤を受け取って、一振り。駒の音を確かめて]
将棋のプログラムは組めた?
[将棋盤を軽く持ち上げてみせその後を問う]
〔聞こえても聞こえていなくても構わないといった声量で、青年の反応に対する感想を置く。一度緩めた歩を進めてナサニエルの傍へ寄り―顔色を確かめ〕
ああ。ヒトは好きじゃない。
…だが生きものは嫌いじゃない。
他に医師がいないとも言うな。
…要らざる段階を踏みがちという点では、
お前と僕は似ているかもしれん。
〔聞こえても聞こえていなくても構わないといった声量で、青年の反応に対する感想を置く。一度緩めた歩を進めてナサニエルの傍へ寄り―顔色を確かめ〕
ああ。ヒトは好きじゃない。
…だが生きものは嫌いじゃない。
他に医師がいないとも言うな。
[セシリアの手へと戻る将棋盤を見送り、控えめな駒の音色には微かに目許が和らぐもあり、問い掛けには頷く代わりに瞬き一つ返すも、聊か思案気に将棋盤を見詰め首を傾け]
崩し将棋は、別物に成った。
[小さく添えてからセシリアへと視線を戻し]
セシリアの、用は?
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