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[車で出掛けるようにと手配するローズに、わたしは半ば懇願するような表情で制そうとする。]
まって、ローズ!わたしなら大丈夫だし…それに…若い男の人と二人っきりで狭い空間に閉じ込められるなんて…。
わたし…耐えられない――
[そんな恥じらいは、当の昔に投げ捨ててきているのだけど。でもわたしは彼女が思い描いている潔癖な女を演じ上げようと必死だった。ただ嫌われたくない。その一心で]
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197X年 X月 XX日(曇のち雨)
換気扇を回して随分時間が経つと言うのに、まだ部屋に『ネイ』の残して行ったおしろいと苺の甘ったるいフレイバーが残っているような気がする。
私は自分がまだ正常であるのか自信が持てない。
随分とおかしなことになってしまった。何がどうねじくれてこんな事になってしまったのだろう。
分からない。分からないからこそ、書かなくてはならない。
これが仕事で疲れた私が見る、くだらない悪夢だったらどんなに良いだろう。けれども、二重帳簿につけた『ネイ』に支払った代価の数字が、私が確信犯的に繰り返している現実なのだと教えてくれる。「帳簿が教えてくれる」なんて皮肉なのかしら。
帳簿の数字が示している問題は、『ネイ』との密会の頻度が上がって来ていると言うことだ。
最初から8ヶ月、次は3ヶ月、1月ちょっと、半月…。
あの暴風雨がなければもっとはやかったかもしれない。
ゾッとする。どうして私はこんな薄気味の悪い行為を繰り返しているのだろう。
でも止められない。止められないのだ。
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確認してみたところ、やはり。
後、二週間で『ネイ』に再会してちょうど一年目になるらしい。
当時の日記を読み返すと、ちょうど休日にこの事務所に来る用事があった事が分かる。
あの日も、私は私なりにいそがしく働いていた。経営の傾いた工場、事務所、たよりにならない叔父の養鶏所。実質の収入はバートの彫刻家としての成功に頼り切っていて、私がしているのはバンクロフト家の過去にしがみつく親族たちの心の慰み程度のことなのだろう。バートが成功するまでは、家計のやりくりには少し自信を持っていた。生活が苦しいにも関わらず、先代からいた使用人を解雇もせずにやってきたのだから。
今はきっと私が働く必要は無い。
むしろ、バートやロティは、私が働く事を止めヘイヴンを出て行く事の方を望むのでは無いかとすら思える。私にはここから出る事など、想像もつかないと言うのに。
…と、話が逸れてしまった。
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人気の無い休日の工場の近くで、私は『ネイ』に車をぶつけてしまったのだ。
かすり傷だという『ネイ』を慌ててこの事務所へ運び──。
何故。
何故なのか。
と私は私自身に問いたい。
「彼」がかつてのジュニアハイの下級生、ナサニエル・サイソンだと思い出すのに時間は掛からなかった。何故なら、ヘイヴンに戻ってきた最近のかれには奇妙な噂があったから。かつては、あの少人数のクラスでも印象に残らないような少年で、たしか祖母と暮らしていた。そして珍しくヘイヴンを出て行ったのだ。
随分と変わり果てた姿だった。
入墨をいれるような人間とは、顔見知りでもない限り私は口を利かないだろう。彼を轢いたと言う負い目がなかったら、知り合いであっても声すら掛けなかったかもしれない。
どうやら本当にかすり傷らしいと分かって、安心したことは当然のように記憶している。そこから何を話したのかは曖昧だ。ただ、冗談のような真剣なような顔で彼は「俺は天使なんだ」と言った。
一体、何が天使なのか──。
そして、
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[エリザは時計を見上げ、ハッとしたように立ち上がる。
窶れた顔と同様に、束ねたくすんだブロンドの髪が少しほつれている。
受話器を持ち上げる。]
マーティン。遅くなったけど今から帰るわ。
[受話器を置く音。
眼鏡のふちに指をかけ、一瞬立ち止まるエリザ。日記の続きは、また後で仕事の合間に*書く事に決める*。]
[ローズマリーは何かに思い当たったように]
…そうね。ごめんなさい、ステラ。
わたしが運転していくわ。
ソフィーの様子は落ち着いているようだし、なにかあったらギルバートに対応してもらうように言っておくわ。
ちょっと待っていて。
[ローズマリーは二階に上がると客室のギルバートに事情を説明してから降りてきた]
[考え直してくれたローズに、わたしほふっと溜息を吐き――]
ごめんなさい、難儀な性格で…。
でも…どうしても駄目なの。男の人は…苦手――
[二階に上がっていく姿をぼんやりと眺めながら、私は一人語ちた。もしわたし自身が車を運転出来たなら。こんな手を煩わせることもなかったのだろうかと、どうでもいい考えを巡らせる。]
えっと…ソフィーの話からだと…端座位も立位も一応取れるのよね。だったら玄関先に車を着けてもらえれば…わたし一人でも大丈夫…。
[まるで罪悪感から逃げるかのように移乗の手順を思い出しながら確認して。わたしはローズの姿を静かに待った。]
お待たせ。
行きましょう、ステラ。
あなたが来てくれて本当に助かったわ。
車を回してくるから入り口で待っていて。
[ローズマリーは車のキーをとると土砂降りの中飛び出して行った]
[姿を現したローズに、わたしはゆっくりと視線を上げ]
そんなこと…。
でもあなたの役に立てるなら…こんな嬉しい事はないわ。
[ふわりと微笑み。車の鍵を手に一足先に建物を飛び出していったローズの後姿を見送りつつ、わたしも店の入り口へと向かって歩き出した]
[声が聞こえると同時にわたしは雨の中に飛び出し、車内のシートへと身を埋めた]
えっと、玄関先ギリギリに車をつけて頂戴。えぇ、助手席側を…。
そしたらわたしが車椅子でお父様を連れて来るから。
――うん、一人で大丈夫。でも出来るだけ急いで…。雨が強い…。
わかったわ!
[ローズマリーは車を発進させた。
雨がひどく、前方がかなりかすんでいる。
急いでとステラに言われたにもかかわらず、車は慎重にしか進めなかった]
雨がひどくて、前が見えにくいわ。
あまりスピードだせそうにないわね。
[やがてソフィーの家が見えてきた。
ローズマリーは玄関先に慎重に車を着け、ソフィーのバッグから借りてきた家の鍵らしきものをステラに渡した]
たぶん、これが家の鍵であってると思うの。
お願い。
[急ぎたい気持ちとそうは出来ない葛藤に、わたしは雨を恨んだ。]
そうね…ここで事故に遭ったら…。
[相槌を打っているうちに、ソフィーの自宅が視界に入る。
わたしはローズから家の鍵らしきものを受け取ると、彼女に一つ念を押した。]
お願いローズ。あなたは車から出ちゃ駄目…。わたしが来るまでここにいて。
[そう言ってわたしは車を飛び出し、家の中へと入っていった。]
――ソフィーの自宅――
[部屋に入るなりわたしの視界を捉えたのは、悪天候によって酷く動揺した初老の男の姿。
不安そうに辺りをきょろきょろと見渡し、恐怖に怯えている。]
おとうさん、ごめんなさいっ…こんな最中に一人にして…。
[わたしは混乱を避けようと、ソフィーの振りをして彼に近付いた。彼はわたしの姿を見るなり安堵からか酷く興奮をし、わたしの腕を掴み胸元へと手を伸ばしてきた。
その時わたしは思い出す。
彼女から聞かされていた、家族間で行われていた背徳の行為を――]
あっ――
おとうさん…待って――
[素早い動きで胸元を露にしようとしてきた「父親」を拒まない程度に制して、わたしはそっとおとうさんに身を寄せ、耳元で囁いた]
あのね、お父さん…。外は酷い雨なの。だからここで今、こんな事をしていたら危ないわ。だからこれで…我慢して――
[そう言ってわたしは一瞬身を離してから――
「父親」の頬を両手で包み込んで、自らの唇を重ねた。そして舌を滑り込ませて口内を思う存分弄るように、動きを強めた]
[淫らな粘着音が部屋に響き渡る。背筋に回される手の感触に、思わす声が漏れてしまって頬が紅潮する]
――んっ…ふ……う…ん…ぁ…ん…
[一通り満足するように与えた口付けを、唇を舐めるように舌でなぞり終わりの合図へと変え。]
さぁ、おとうさん…。この車椅子に乗って?
大丈夫、避難先はここより安全だし。第一私がいるから…安心して?
[納得させるように抱きしめ落ち着かせると。わたしは「父親」を車椅子に移乗させて、何事も無かったかのように車へと戻った。]
――ソフィー宅 玄関前――
ローズ!お待たせしたわ。ちょっと中から手伝って!
[わたしは車のドアを開け、中で待っていたローズに声を掛けた。
そして彼女の手を借りながらなんとかお父様を座席に座らせ――]
これで一安心…ね。助かったわ、ローズ…。
[室内での行為など微塵も感じさせないまま、微笑んで。
わたしは彼女にお礼を述べて再び酒場へと戻るように*願い出た*]
─酒場2階・ローズマリーの部屋─
[二人の女性が出て行った後、ローズマリーの部屋に入った。ベッドには、彼女が言った通り、ブロンドの若い女性が眠っている。
その上に屈み込み、じっと彼女の寝顔を見詰める。何処となく何かを耐え忍んでいるように見えるのは、気のせいだろうか。
指で前髪に触れ、湿った前髪を払う。指先はまた、その顔の上を彷徨い続け、目許、頬と来て、最後に唇で止まった。
しばらく、そのまま彼女を見詰めていた。]
[立ち上がり、部屋を出て行く。階下に居り、ローズマリー達がソフィーの父を連れて帰って来るのを*待った。*]
[ヒューバートとシャーロットに頼まれた商品について、リックの手伝いをしているさなか――また頭の中を突き抜けて来るものが。]
う・・・っ。
[思わず梱包を落としそうになる。しかしつとめて平静を装う。]
な、何よこれ・・・こんなの・・・いい加減にしてよ。
こんなのじゃ。これじゃ、
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