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ランサー…
[身を案じながら木の陰ら様子を伺う。
カメラは水の拘束を受けた時に取り落としていた。
雨のように降り注ぐ弾丸、その激しさがますと、
それに比例しランサーの動きと、久子の魔力の消費の速度は増す。]
[再び教会の前まで来ると、わずかに令呪がうずく]
(…どこかにマスターがいる?)
[辺りを見回す。けれど、人の姿すらなく]
(でも、さすがにここで戦闘にはならないはず。何より、教会の前だ)
[マンションのドアを開けながら、ケネスは考え事をする。]
とりあえず、ガトリングの拠点は解ったわけだが、あんな住宅街でおっぱじめたらすぐに人だかりが出来ちまう……
やるんなら、呼び出してから…かね。
あんまり分が良くないんだよな……
[ケネスは、あの銃を使うサーヴァントと戦った日を思い出す。
向こうのマスターの魔力が尽きなければ、死んでいただろう。]
宗冬が勝つのは良い、殺されたら終わり、問題は勝ってもなく、殺されても無い場合か……。
[その場合、おそらく宗冬は倒れている。ケネスは、それを担いで逃げなければならないのだった。]
問題はそこか……
[たった3回しか使えない令呪をちらりと見る。]
これ使ってたらあっと言う間に使い切るだろうし、やっぱり効率良く撤退する方法を考えなきゃならんかね。
[ケネスはそうつぶやいた。]
……ふーん。
マリアちゃんがそう言うのなら、そうなのかな。
[リチャードという名前には聞き覚えがない。
全く悪びれず、マリアのォォォォ可愛さはァァァァ世界一ィィィィ!!だと思った。]
でも、全然普通の女の人と、結構変な男の人しかいなかったわよ。
あの人は男で苦労する感じだねっ!
[ビッ!と人差し指を立ててポーズを決める。]
えっと、……すれ違ったのは、ここから病院に行く途中よ。
ほら、聖杯戦争中は仕事もできそうにないし、休暇届を出しておかないといけないでしょ。
それで病院に行ったんだけど、その途中でマリアちゃんを見かけたの。
そう言えば、あの時も手首が痛んだのよねぇ。
最近、右手首が頻繁に痛むの。
利き手は外科医の命なのに。
[右手首を擦りながら、キャスターに昼間の出来事を語る。]
真殿、待ちなされ。
外に出るならば、これが必要でしょう。
これに乗るのです。
[宗冬は、手押し車を押して来た。しかし手押し車は大き過ぎてドアから出せないようだ。]
窓から出すので、真殿は外で待っててくだされ!
[手押し車を担ぎ上げ、窓から飛び降りる宗冬。今日の宗冬の動きはまことに素晴らしいものであった。]
真殿ー!早くーー!!
[手を止める事なく、ランサーは無機質な声を出した。声を立てずに笑いながら。]
パーシャヨ コガテキヲシバレ
[単なる敵を縛るロープ。アーチャーの足元から現れ、アーチャーの両腕に絡みついてきた。]
右手首って令呪のある場所だよな…。
…なぁ、"ボ・ケ"マスター?
[とにかくボケの部分を強調する。
というか、ボケだボケだとは思っていたが、ここまでボケとは思っていなかった。
むしろ、今の目の前の…認めたくないが自分のマスターの言った言葉から導き出された答えを否定したい。
でも否定できない悲しさ。
てかもう、確実にビンゴだろうなぁ。]
マスターとマスターが近くにいると、令呪が反応するって…
『 知 っ て る よ な ? 』
馬鹿野郎!ここは2階だ!
いや、確かに窓の下は花壇だから、そのアホみたいに頑丈そうなのは、落としても壊れはしないだろうが、だがそんなものに乗るのは断わる!
そんなのに乗って町を闊歩しろってか?!
俺に、恥ずかしくて死にたい気持にさせる気か!!
[ケネスは叫んだ。]
もうっ、ボケボケ言わないでよねっ!
お爺ちゃんじゃあるまいし……。
……。
…………。
………………。
そ、そんなの知ってるに、ききききまってるじゃ、ない……。
[忘れていた。]
…こっちを見て言え。
[どもりながら目線を逸らすマスターの頭を掴み、指先に力を込める。]
さぁ、言ってみようか…マイマスター。
いつ!
どこで!
令呪が反応したぁぁぁ!!!!
[キャスターに頭を鷲掴みにされても視線は泳いだまま。]
えっと、……魔女の館と、……マリアちゃんとすれ違った時……、です。
ごめん!
[拒絶されたと知るや否や宗冬は、突如刀の柄を真の鳩尾に突き刺す。泡を吹いて倒れる真。それを見て宗冬は満足そうに呟く。]
サーヴァントのいうことの聞けないマスターではこの厳しい戦いは生きていけないでしょう。ふふふ。
[宗冬は真を手押し車に押し込むと街に繰り出した。]
― 西ブロック・教会 ―
[気がつくと、ケネスは教会の尖塔を見ていた。
ガラガラと響く音で我に帰り、慌てて身を起こす。
見ると宗冬が楽しそうに、手押し車を押していた。]
……もしかして、俺……ここまでこいつに押されてきたの?
[ふとみると、教会の前の若い女性と目が合う。
腕の令呪が反応している。
マスターが1人でいる事も、それが始めて会う人物である事も今は関係ない。
今はただ――
恥ずかしくて死にたかった。]
…で、その令呪が反応する魔女の館とかいう店に一人で行って。
さらにそこが敵の本拠地だと気付かずに、のんびりとしてたわけだな?
…このボケェェェェ!
[叫びながら頭を思い切り引っぱたいた。]
わかってるのか!?
なんで襲われなかったかしらんが、本当に死ぬところだったんだぞお前!
しかも、そういう時に即座に使うべき令呪を、たかが掃除の為に使った!?
お前本当に魔術師なのかドアホ!
[教会の前で、警戒を怠ることなく立っていた、が]
……あれは、なんだろう。
[先日見た柳生宗冬、と、まるで乳母車のようにマスターらしき男が入った手押し車、のようなもの]
[ケネスはゆっくりと手押し車から降り、目の前にいる若い女性に声をかける。
今ならチャンスだとか、どこにサーヴァントがとか言うような気持ちは、こんな状態では思い浮かばない。
ケネスはただ「やあ……」とだけ言った。]
[相手のサーヴァントの目は明らかな狂気の色を称えている。
魔力の消費を考えないような銃弾の乱射、近づいていくランサーに対し離れるどころか近づいてくる。
対するランサーも、自分の傷、魔力の消費、どちらも考えていないかのような気づかないかのように戦闘をやめる気配がない。
戦闘に我を忘れているように見える。
このまま戦い続ければ既に傷を負ったランサーが先に力尽きるだろう。
相手サーヴァントからの攻撃を警戒しつつ罠の森から這い出し声を上げる。]
ランサーその怪我じゃ不利だよ!!
ここは引こう!!
だから叩いちゃダメなんだってば!
[キャスターの暴挙に抗議する。]
危険を感じたら令呪でお爺ちゃんを呼ぶつもりだったわよ!
でも、全然そんな雰囲気じゃなかったんだもん!
それに、散らかしておいて掃除しないお爺ちゃんが悪いんじゃない!!
もう、お爺ちゃんなんて知らないっ!!!
[不貞腐れて会話を打ち切り、寝室に向かった*]
[真の耳元で宗冬は囁く。]
ほうほう、あの女性に懸想したでござるか。美人でおられるな。真殿も運がいい。日に2度も美人と出会うとは!
今度こそはきちんと押し倒すのですぞ!
宗冬は見守っております!
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