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[――静かな祈りの声が聞こえる。
小さな教会に足を踏み入れたオレを、牧師が振り返って言う。
『ナサニエル、一年ぶりになりますか』
手の中で、弟から届いた遺書の入った便箋は握り潰されたまま。
牧師からの教育のおかげでそれを読むことができたオレが尋ねる。
「ナイジェルを、バルビローリの家に売ったというのは本当ですか?」
まだナイジェルの死を知らぬだろう育ての親が、せめて苦痛に顔を歪めて、弟と自分に対して許しを乞うのをオレは待った。
召し上げた者への奇行で知られるバルビローリ家、慰み者になると知りつつ金と引き換えに弟を渡したのは、院や教会の建て直しにどうしてもどうしても必要だったと。どうか許して欲しいと――
『…あなたももう院を出て、大人になったんですから』
しかし牧師は弟のための悔恨の涙ひとつ流さない。
世界一優しいと、信じたいつもの笑顔で言うのだ。
『ナイジェル、あの子にもすぐにわかる。
僅かな犠牲で院と教会を救えた喜び、それがどんなに幸せな事か』
>>365
……ぅ。
そ、そうですよね、タイミング逃しちゃっても再チャレンジすればいいんですよね!うん、そこで諦めてたからいけなかったんだ。何度でも何度でも、挫折しながらも……あー、えーと。うん、行きます。
[やたら逡巡は長かったようだが
ステラの言葉に意を決したように立ち上がり、
彼女の後ろをついていくように厨房へ向かった]
[青の少女の様子に不思議そうに瞬いて頷き、牧師の微笑みを一拍見詰め]
「ルーサーも、やっぱり、少し、寂しい、気が、する」
[柔らかな微笑みを返し、厨房へと向かう所で少女と出会い一つ頷いて]
「運ぶの、手伝う」
[厨房へと入れば女が悩んでいる様子に瞬き]
「其れ、運ぶ、みたい」
[不快な汗がいくつも玉になって髪の間から滑り落ちては、首を抜けてシャツの中へと消えていく。
...は荒い息だけがくり返される喉を手で押さえた。
紫水晶のあの色を思い出す。声が出ないなんてまるで――]
…名前なんてやるんじゃ、
[……なかった?
抱えた膝に顔を埋めても、自室の中で呟きは音となって、確かに耳に届く。本当にそう思っているのか、もう一度声に出そうとしてみても答は出ない。
もうずっと長く、あの少女は呻き声と同じに、苦しさも痛みも外へ洩らさずにいるんだろうか?]
それでいて、人には優しい…。
謝らないと。
[表し方がどうあれ…
自分に敵意がないと、傷つける気もなく、怖いことなんてないと表してくれた少女に対するものとして、自分の態度はあんまりだった]
…八つ当たりなんて、格好悪い。
[...は壁に支えられながら立ち上がると、重い足を広間へと向けた]
[ネリーは少女が自分に気づきこちらのほうへ歩み寄ってくるのを見て、思わず声をあげた。]
あ、まだ無理はしては駄目よ。座ったままでいいのよ。
私が運ぶから。
皆様、まだ小腹がすいているのならばごはんなどいかがですか。
[追って来た青の少女にふわと微笑むも、緑の少女には座っていろと言われてしまい、心配をかけてしまうだろうかと逡巡するもふわと微笑み]
「運ぶ、くらいは、出来る、から
みんなで、運べば、早い」
[傍らの青の少女と厨房で佇む女も当然手伝うのだろうと視線を投げ]
[シャーロットと共に厨房へ向かおうとすれば、入り口でネリーが様子を見ているのを見つけ]
出来ましたの?
料理のためにお腹は空かせてありますわ。
運ぶの、手伝いますよ。
私も?
ふふ、牧師様にはそう見えるのかしら。
女はミステリアスな方が良いとは思わない?
[いつもとは違う妖艶な笑みを湛えて]
ええ、あるわね。
わざわざ表に出すものでも無いし。
詮索する気もないわ。
[どうしようかと佇む自分にナイジェルが声をかけるのに]
……そう。
戻るついでだし、いくつか運ぶわ。
[――自主的に物を運ぶということ自体が初めてなことに
本人は気づいているだろうか。]
[皆の注目が自分に少しからずとも集まったことにネリーはほっとした。 このまま置いてきぼりになってしまってはどうしようかと地団駄を踏みそうになっていたからだ。]
ありがとう、手伝っていただけると嬉しいですわ。
料理運ぶのも、大人数の分だと結構大変ですしね。
分担して運びましょう?
それならナイジェルもそんなに負担にならないし。
[ね。とネリーに軽い笑みを投げかけ、
料理が盛られた皿を両手で持ち、広間へと運び始めた]
…今日は給仕に恵まれてる。
オレの出る幕はなさそうだな。
[甲斐甲斐しくネリーの手伝いを始める女達を静かに見守りつつ、自分は大人しく空いている席に座る]
[取り皿やシルバーを抱えて広間に戻れば男が居るのに気付き瞬き、運んできた取り皿やシルバーを席へと並べてから、男の座る席にも取り皿とシルバーを運び、座れば目線はそんなに変わらぬ男の瞳を見詰め]
「昨日は、厭な事、して、ごめんなさい
普通は、しないって、シャーロットに、聴いた」
ううん、大変といっても大所帯ではありませんから、そうでもないですよ。
ただお皿だけ持ってみなの目の前に現れるのがこわかっただけなの。 でも、こうして気づいてくれて嬉しいわ。ね。
[ネリーはシャーロット達と共に広間へ向かいテーブルに彩をひろげていった。]
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