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ネリーが結婚するとか、そういうことがあったら、
泣くんだろうなあ。私、身よりないからさ。
……娘みたいなもんだと思ってるんだよ。
娘を押し倒す親が、どこにいるんだよ。
[母親が亡くなって、わかっている血を分けた
人間はもういなくなってしまった。
結婚も、機会に恵まれなかった。]
ネリーのハピネスは、私のハピネス。
苦しみも、私の苦しみも同じことだよ。
何かあったら、言えることは私に言ってくれると
それは、私のハピネスになるから。
これからもよろしくね。
[ボブは時折暴力を振るったりするのかもしれないと思った。
シャーロットが犬に噛まれたのも、犬に何か怯えの要素があったからではないだろうか。
バンクロフト家ではあり得なかったけれど、使用人に手を付ける主人も居ると聞いた事が無い訳でもない。ボブがニーナを強姦したのでないのだとしても、ネリーにはそう言った行為があるのかもしれない。
シャーロットが以前からネリーに苛立ちを感じる理由に、そう言えば、ネリーが殴られたり襲われたりと言った事があっても、それを受け入れてしまいそうなところがあるから、と言うものがあるような気がした。勿論、口や態度で抵抗はするかもしれないが、最終的には許容していると言うのか…。]
…そんなの受け入れていいわけないじゃない。
馬鹿じゃないの……。
そんなのネリーだって不潔だわ…。
[ネリーの柔らかで大きなバスト。無数の擦り傷。口にさし込まれたネリーの指の感触。ネリーのあやしげな声色。
シャーロットは首を横に振った。]
──車内(現在)──
[ボブの出現で読む事を断念した母親の日記。ハーヴェイとヒューバートが車内に戻って来る直前に日記を隠した。ネリーとボブの事、日記の内容──、ぶっきらぼうだが優しいニーナの顔。(並ぶとシャーロットと面差しが何処か似ている)
それに何時か、自分とヒューバートが……。
様々な事が渦巻きすぎて、頭痛を覚えた。
常のシャーロットらしくない態度で、ハーヴェイとヒューバートの会話には上の空で相づちを打っていた。]
[ネリーのクラスメイトは早い人は既に結婚をぽつぽつとはじめている。けれどネリー自身にはまだまだ遠い先のように思われた。]
そんな、旦那様、今更な事はおっしゃらないで。
旦那様は光が見えないかもしれません。けれど光を感じることができる、その事が素晴らしいんじゃないですか。
私、どれだけハピネスになれるか…解りません。
けれどハピネスになるのは私だけではないですよ、ほら。旦那様も。
[アルファロメオの中でなければ飛びついているのは間違いなかった。]
──車内・自宅近く──
[ヒューバートに声を掛けられてハッとしたように]
ううん、何でも無いの。
色んな事がありすぎて…疲れちゃったみたい。
犬の噛み傷は──たぶん、熱も無いし大丈夫だと思うんだけど…。でもまだ、潜伏期間すぎてないから用心しなきゃね。
ネリー…嬉しいこと言ってくれるじゃあない。
[ネリーに、ニコっと笑いかけて見せた。
その笑顔は、ニーナに向けられたものとは
性質がまったく異なっていた。
ニーナを使って、ハピネスを感じていたときとは。]
そうだなあ…まず、帰ったら何か食べようか。
ちょっと疲れちゃうことがあったからさあ。
悪いけど、何か作ってくれないかな?
そして、一緒に食べよう。
ネリーの料理で、ハピネス感じようじゃあないか。
[アルファロメオのアクセルを踏む彼は、
非常に嬉しそうな*表情をしていた。*]
そうですね旦那様、じゃあ、今日は腕によりをかけて素敵なディナーにしましょう。
今日は素敵な日。毎日素敵な日。それはなんてハッピーな事なんでしょう。
[ネリーはボブのいろいろな種類の笑みを知っていたが、今浮かべている笑みこそが、ネリーを幸せにさせる笑顔に違いなかった。
それは今はグラスで目を隠していても言うまでもない事であり、今は水害に見舞われていてもきっと未来は楽しいものなのだ、と思った。]
―アトリエ―
[トランクからハーヴェイの荷物を取りだし、鞄の一つを肩に担ぐ。
疲れた、というシャーロットに肯いた。]
今日は色んなことがあったからね。
疲れているなら、早めに休みなさい。
ああ、怪我のことだが……
[ブレザーのポケットから、幾つかの薬瓶を取り出す]
牧師のところから抗生剤を持ってきている。
あとで処置しよう。
[抗生剤の処置と言う言葉に頷いてから、ハーヴェイに、]
…ハーヴ。
なんだか何もかもが非現実的すぎて。
[首を傾ける。]
ねえ、ハーヴ。
ニーナの事どう思う?
ニーナ?
さぁ。俺彼女とそう親しいわけでもないし。
少し気が強いだけで普通の子じゃないか?
[親族であるシャロが何故ニーナについて意見を聞いてくるか、特に接点のない自分には不思議だったがとりあえず返答を返す]
―自宅―
[ネリーは自宅へ戻り、ニーナからもらった服を着替え、シャワーを浴びようと思った。あの時以来、いい汗は流していなかった。ネリーはボブに伝えるとシャワールームに入り、コックを捻った。]
―アトリエ―
[アトリエに入ると、話をする二人から少し離れて家庭用の医療辞書をめくりながら持ってきた抗生剤の種類と投与方法を確認した。
シャーロットに投与を済ませると、やっと一大事を解決した安らぎが訪れた。
言われてみれば確かに、色んなことがあった日だった。私自身も様々な出来事を前に心に重い倦怠がまとわりついているのを感じる。
ひどく、酒が呑みたくなった]
ハーヴ、君はもう呑めるよな。
できたらつきあってくれよ。
なにがいい?
[リビング脇の小型のバーカウンターにある冷蔵庫を覗き込む]
そうよね、ニーナはニーナ。
ヘンな事聞いてごめんなさい。
──非現実は。
……何もかもよ。
地下倉庫にネリーが閉じ込められていた事も、ルーサーさんやママの死も、山崩れも、……何もかも。
何時ものように遠慮なく客室を使ってね、ハーヴ。
ロティはあまり強くないものなら……っと、傷にさわりそうだな。
[シャーロットには、彼女のマグカップにミルクティを注いだ]
[ネリーが?
彼女のことについては預かり知らなかったことだが、よもやそんなことが]
…大丈夫だよ。
少なくともこの家の今は現実。
君の一番大事な場所はちゃんと現実どおりだよ。
[不安と疲れが入り混じった表情をするシャーロットの頬に触れ]
俺は何もできないけど…そばにいてあげることならできるから。
君のお父さんじゃないけど、頼ってくれてもいいよ。
[勿論ヒューバートには見えない角度…いや、見えていてもかまわない。額に優しいキスを落とすと、そのまま荷物を部屋へ入れに行く。
リビングに戻り、ヒューバートの自棄酒にこれからどれだけ飲まされるか分からないが、とりあえず死んでも良い様、付いたばかりの部屋で身辺整理をしなければならないのは勘弁だったが]
え〜っと…俺はビールくらいでいいですよ。
あんまり飲めないし。
──アトリエ──
[抗生剤の投与を受けるシャーロットの頬は赤く、態度はいつもより少しだけ、ぎこちなかったかもしれない。
日記の続きが気になる──と思いながらも、同時に読みたく無い、これ以上何か現実が変質してしまうのが怖い──と言う相反する気持ちもあり、その場を立ち去り難く、頬笑んでお気に入りのマグを受けとった。]
パパったら、怪我が無くてもお酒なんてママがなんていうか──。
[いや、母親は事故で死んだのだ。
目を伏せて言葉を止め、ソファに並んで座った父親に一瞬だけそっと首をもたせかけた。]
[シャーロットが客室の扉を開けた時に、ハーヴェイが額にキスをしてくれた。それは別の意味──で、シャーロットには夢のように感じられた。荷物を入れるため、部屋へ入って行くハーヴェイの腕を軽く引いて、頬にキスを返したのだった。]
──ありがとう、ハーヴ。
[今は、ちょうどヒューバートの隣りがシャーロット、彼女の向かいがハーヴェイと言った構図でソファに座っている。車の移動であまり意識はしなかったが、また、軽く雨が降ったのか、外は濡れていた。]
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