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[背中に手を回されるが、力無く倒れていた男には抵抗することができない。]
俺は……ええと、何だっけ。
ナサニエル……メラーズ。
倒れていた理由………?
えーと……酒飲んで頭痛ェから。
それと……アスピリン。
意外と味しねぇのな、アレって。
ネリーは僕より5つほど年上だったっけ。じゃあ、もう大人だよね?
[クスクスと笑い声が零れる。身体に満ちた衝動と力は収まらないどころか、一層僕を駆り立てた]
だったら、僕に教えてよ。
玩んじゃいけないっていうのは、どんな事をしちゃいけないのか。
そうだ、そうだそうだ。
[ヒューバートの言葉とともに、ニーナに目を向ける。]
キミは、どこかへ向かう途中だったのかい?
この難儀な目のおかげで、迷惑をかけてしまって。
ダンナたちにも、本当に申し訳ない。
[ヒューバートらにも、謝罪の言葉。]
良ければ、乗せていってあげるけど?
こんな雨だし。それに、私のアルファなら飛ぶようだぜ。
[崖の辺りに止まったアルファロメオを指さして。]
嗚呼…あれだけ純潔を重んじるようにと教え続けてきたのに…。わたしの教え方は、果たして間違っていたというの――?
[未だ込上げてくる嘔吐感に涙目になりながらも、わたしは服の内ポケットからカードケースを取り出そうとした。
いつも身に着けている教師としての証。それを見ることによって、少しでも安堵を得ようとしたのだが――]
――え?…あれ…?無い…?カードケースが…無い?
[もしもの為と思ってここ数日肌身離さず持ち歩いていた事が、逆に今自分の首を絞めようとしていることに気付かず、わたしはもう一度ポケットの中を漁ってみた。]
やっぱり…ないわ…。おかしいわね…一体何処に落としたのかしら…?
[少なくても家庭訪問自前までは所在の確認は出来ていた。その後行った場所といえば、ソフィーとローズ、そしてリックの店――]
ナゼ、チカラガナイトオモウ?
[再度の問いかけ。ラジオの周波数が合うように、徐々に伝わってくる声が明瞭になっていく。]
…別に、望んでこの組み合わせになったわけではないのですけれど。
[小さく肩を竦めて伯父を見やるも泥水だらけの自分といい勝負といった様子にあきれたようにため息をひとつ]
伯父様も、シャーリィも無事で何よりです。
…そういえば、伯母様は?
相変わらず、お仕事お忙しいのかしら。
[見上げるようにしなふがら、自分の記憶や過去の写真の中にある母−ミッシェル−の風貌よりも暗い髪ときつい顔立ちの伯母の姿を思い出して軽く首をひねる]
年齢以前に…人として解るでしょうっ…あんっ。
[リックがさらに被せてくる論理に戸惑う。論破も出きるかもしれないが本題はそれでは無い。
足か、どこかで本気で抵抗すれば糸口はあるかもしれない。しかしリックは傷つけたくない、という心がまた仇になった。
乱暴に衣服を引き裂かれ、リックに無理に引っ張られる。]
――雑貨屋・店内→倉庫――
[下着だけを身体に残した獲物を小突き、僕は勝手口を指し示した]
……さ、そこから出て?
店の中じゃ、いつお客さんが来るか分からないからね。
ほら、歩けよ、ネリー。
[ボブがムッとしている様子なのに、硬直したまま瞬きを繰り返す。
のん気にしっぽを振る犬が自分に噛み付いたらどうしよう…と考えながら。ハーヴェイは平気でああ言う風に言い返せるものだ。結構、度胸があるのでは──とシャーロットは思った。
ヒューバートがさりげなく間にはいってくれたことに、心臓の鼓動はやや落ち着く。無意識に父の影に隠れ、その父の言葉ではじめてニーナが泥だらけで立っていることに気付いた。]
いいえ、お気になさらず。
私は──家へと帰る途中だっただけですから。
大して遠くもありませんし、気持ちだけ頂きます。
[雨ですっかりぼさついた紙を手櫛で直してからようやく肩の荷が下りたとばかりにゆるゆると雨の中で息を吐く。
スカートもシャツも外套も、背面やら袖口やら裾やらは既に茶色く染まり]
[露わになっていくネリーの素肌。ノーマンが踏みにじったと同様に、リックもまたその優越感を、ノーマンと同じ快感をトレースするか。]
ハーヴ、無事で良かったっていうのはこっちのセリフだよ。
[思わず苦笑いする。]
娘をデートに連れ出すなら、もう少し安全運転してくれよ?
気が気じゃない。
[冗談まじりに微笑みながらも、声色に混じっていたのは心の底からの安堵だった。娘の咄嗟の危険に、エリザの遭難を確かめに行って垂れ籠めていた鬱然とした気持ちが刹那に遠のいたことに無自覚でいた。
「伯母様は?」とのニーナの問いかけに、エリザのことが意識にのぼる。
曇った表情で微かに首を振った。]
実は……地滑りに呑み込まれたのか行方不明のままなんだ。
[ぐんにゃりとした男の身体を支えて立たせようとしながら、眉を顰める。]
アスピリンだぁ?酒と一緒に飲んだってか?
幾ら頭痛いからってムチャクチャだな……。
…何てこと…!
[ヒューバートから告げられたエリザの現在に息を呑んで]
…そんな、この間レベッカ叔母様が亡くなったばかりなのに…!
[ああ、と小さく泣きそうな呟きだけこぼして両の手で顔を覆ってしまう。
間違いなく、自分の家族が事故にあったときのことを思い出していて、肩は雨の中小刻みに揺れて]
とりあえず…ローズの店へ…行ってみて…それからソフィーのお店に…。
多分そこで…無くしたと思うから――
[真っ先にリックの店と言葉が出なかったのは、やはり今戻るとあの行為の続き――今度はもっと激しいもの――を目の当たりにしなければならないという危惧からかも知れなかった。]
そうと決まったら…戻らなきゃ…。ローズのお店に…戻らなきゃ――
[まだ戻しそうになる胃を宥めるように擦り。わたしは再び泥濘へと足を進める。縺れる足許に苛立ちを隠せないように荒々しく*泥を蹴飛ばしながら*――]
いたいッ!
[白い下着だけになったネリーはリックに引っ立てられておぼつかない足取りで移動する。]
お…お店に人がいなくなっても、あそこに私の服があるわよ…あれを見て何も思わない人はいないと思うけどっ!
[実際は黙殺される――いやされたようだがネリーには知る由もない。]
『ボブ──、あの人が怖いと思ってるのは、私だけ?
でも、ママは近付いちゃいけませんってずっと…──。
もっと怒っても良さそうなのに…謝罪も丁寧だし、「良ければ、乗せていってあげるけど?」……なんて良い人みたい。
でも……。』
[ヘイヴンにただ一人しかいない黒い肌と、年は取っているもののアメリカンアフリカン特有のたくましい身体つきに、不穏そうにチラリチラリと視線を投げる…──。
シャーロットは、店で何度か遭遇しているニーナや、ボブがローズマリーのお店に定着している事がすでに自然となっている大人達とは違うのだ。]
[ニーナが、申し出を断ると残念そうな顔をする。
何か別の狙いが、背後にあったようである。]
え、ダンナの奥さんが?
[自分より10歳以上年下なのに、ダンナと呼んでしまう。
50過ぎて、こんな自分とは大違いと見ているのだ。]
それ俺の心配は入ってるんですか?
こんな名誉の負傷までしてるのに。
まぁ安全運転すればデートOKってことですよね、それ。
[恩師の笑顔にま肩をすくめ言い返す。
そしてヒューバートの曇り顔をみやり]
…奥様は…やはり…
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