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──自宅(早朝)──
───……ね。
気をつけないと、着替えたばかりのシャツが汚れてしまうわ。
[父の唇を掠めるようにスープを舐め取ったソフィーは、絞った布巾で跡を拭き、何事もなかったかのように食事を続けた。]
そうか、君が旅人の……
[ローズの言葉を思い出す。]
ああ……私はヒューバート・バンクロフト。
[手を差し出して、握手を求める。]
こんな町へわざわざ来るなんて、物好きだね。ここはなんにもないところだぜ。
[笑って肩を竦めかけ……その眼差しは彼の琥珀色の瞳に吸い寄せられた。]
…………。
[その瞳の色にはまるで、本物の琥珀のように長い時間が凝縮され閉じこめられているような深みがあった。]
―自宅(早朝)―
[雨は一向に衰える気配はない。ボブの屋敷は並大抵のものでは被害を被ることはないが、それでもネリーの気を揉むのには十分だった。]
動物ちゃん達もどこかしら心配そう。
どうしようかしら。外の様子を見に行こうかしら――
ようこそ、ヴァレンタイン・マイケル・スミス、地球へ。
[一瞬囚われかけた深淵から目をそらす。彼の瞳を見ないよう頬のあたりを見つめながら、ジョークで刹那の揺らぎを掻き消す。彼はどこか異世界の住人のように思えた]
……いや、この町以外の人にとっては、この町が火星みたいに見えるだろうな。
なんにしても、歓迎するよ。
生憎手が塞がってるんで…
[そう断ってから、紙袋をカウンターの端に置き、改めて差し出されたヒューバートの手を握る。]
ギルバート・ブレイクです。
いや。セドリック…ベアリングさんの弟さんと友達になったんで、興味を引かれて。
[と、目の前の男が急に口を噤んだのを、訝しげに見詰め、]
……どうかしました?何かヘンですかね?
──自宅 - 玄関(現在)──
それじゃお父さん、ちょっと行って来ます。
暗くならないうちに戻って来るわ。
[玄関先で傘を開きながら、いつもの通り声を掛ける。
向かう先は昨日用事を済ませ損ねたアンゼリカ。
道の端には流れきらない雨水が小さな川を作っていた。]
――居間――
[車のエンジン音が遠ざかっていく。さっきの彼が出て行ったんだな、と思いつつ、目をこすってようやく目覚めたらしい妹を見下ろした]
ちゃんと起きたか、ウェンディ?
「おはよう、リック。ギルバートは行っちゃったのね。呼んだのに、届かなかったのかしら」
『ギルバート?』
[しばらくの間、僕はその単語が何を意味するのか分からなかった。ヘイヴンにそんな名前の奴が居ただろうかと記憶を追いかける。ウェンディが可笑しそうに笑い声を上げた]
え――?
「あら、たった今まで店に居たでしょ? ローズマリーからのお使いで。マールボロを最後に買ってった、ほら」
……あ、あぁ。
いや、タバコの銘柄とか知らないけど。
でも、一体どうして――
「それより、私お腹空いたな。
朝ご飯なに? リック?」
[彼女が話す内容に混乱して僕は思考が纏まらない。やけに朗らかな表情といいテンションの高さといい、明らかに変だった。ウェンディは低血圧で朝食だって食べない事がしょっちゅうなのに]
『ウェンディはさっき起きたばかりのはず。声が聞こえてた? いや、まさか。いくらなんでも、店内の会話が居間にまで筒抜けになるような粗雑な作りじゃない。なぜ……?』
「お兄ちゃん?
そんな事で悩んでるとハゲちゃうよ?
アーヴァインさんみたいに。あはは!」
[再び、彼女は可笑しそうに笑った。その様子がどこか不気味で不自然に感じられ、僕は思わず後じさった]
[ギルバートを避けて車に乗り込み、ぐったりと車のハンドルに頭を押し付ける。収まってきた二日酔いの頭痛がまたぶり返してきたようだ]
はぁ…。頭…痛い…
何なんだよ、これ…。
[やまない雨、見上げるとふと思い出すのは昨日のソフィー。確か医者がいなくて大変だったと言っていたか]
あの人…大丈夫だったかな…
[我ながら尾を引いて人の心配をするのは珍しいが、あの大人しい人にそこまでつっぱねる理由がなかった。
ぐるぐると考えを巡らしている内、疲れが出たのか、車を止めたままにハンドルによりかかり、なんとはなしにうつらうつらと始めた*]
あっ……と。荷物もあるのに、呼び止めて悪かった。
これから行くところがあったんだ。
機会があったら旅の話でも聴かせてくれよ。
[そう言って軽くウインクすると、足早に車の方へと*向かった*]
[去っていくギルバートの車に何かを口にしようと唇が”i”の形に歪む。
けれどそれは言葉にはならずゆるゆると息を吐き出し。
そしてぼんやりとした表情で扉を閉めればふらふらとした足取りのまま電話を手に取る。
しばらくのコール音のあと、電話の向こうから返事があったなら、居住部には届かぬような小さな声で”希う”]
…お願い。
……お願い、助けて、”兄さん”──
[ローズマリーは奥からバスタオルをとってきて、ヒューバートとギルバートが親しげに話しているように見えるのをいぶかった]
あら、ヒューバートとギルバートはお知り合い?
[答えを聞く間もなく、ヒューバートはなにか叫んで外にでていってしまう]
まったく、あわただしい人。
[その口調には親しげな調子がこめられていた]
ギルバート、これで拭いてちょうだいな。
風邪ひくわよ。
……はぁ。
[我知らず溜息が零れる。
雨は嫌いだ。
母を土に還した日も、こんな冷たい雨が降っていたから。]
『「気の毒にねぇ」
「ソフィアさん、顔もわからない状態だったって」
「……が、炎上……て、娘の……だけ…」
「父親は何をしてるんだ?」
「娘一人に……て、どうな……んだい」』
[埋葬の終わった墓を見つめて言葉もなく立ち尽くすソフィーの耳に届いて来た、親戚達の心無い噂話が甦る。]
[空から流れる雨は人の心をも曇らせるのか。
雨にはいろいろな思い入れがある。
怒りのノーマンに髪を掴まれて乱暴されたのも雨だったし、
路頭に迷った時に救ってくれたボブとの出会いもこんなだったか。
シャーロットがどこか退廃的な顔をかつてネリーに向けたのも雨空の時だったか。]
雨…やむといいな…
[ヒューバートの「火星人」の言葉に苦笑し、]
まあ、俺みたいなのは何処に行っても火星人扱いですがね……。
何しろ「良識的な市民」の皆さんにとっちゃ、俺のやることなすことが神経逆撫でするみたいなんで。
――居間――
「やだな、お兄ちゃん。
どうしたの?変だよ?」
いや、……何処でその名前、聞いたんだ?
ギルバートって。
寝てた筈だろ、ウェンディ。
「寝てたけど、聞こえてきたの。夢に見たっていうのかな。よくは分からないけど。リックは感じなかった?」
……何をだよ。
[知らず、僕の表情は固くなる。昨日から何度も甦っていた記憶。あのすぐ後ならいざ知らず、それ以降十年近くも思い出す事なかった事件]
「……“あの時”と同じ雰囲気を、よ」
[そう言って口を閉ざしたウェンディの唇には、まぎれもない笑みが浮かんでいた。三日月のような、肉食獣のような笑みだった]
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