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藤峰君、可能性はあるんだよ。
屍鬼になってしまう、そんな話はさておいても。
それをなんて呼ぶかは、意味のないことだ。
一度死んだかに思えた人が、戻ってくる――それは決してありえないことではない。
土葬した棺を掘り起こすとね、その棺の蓋の裏には、幾筋もの爪の後が残されていた――そんな話は聞いたことがないかい?
埋葬した後、息を吹き返した事例はいくつも記録されている。
[雲井を見ぬまま、哀しそうな声で]
不慮の死、非業の死、苦しみの多い死を遂げた人は鬼になりやすいと聞く。戦場には、そんな死が満ち満ちていた。…屍鬼を産む母胎として、あれ以上の場はないだろうな。
[短い期間だが戦場を見た望月には、少し判る気がした]
[さつき様は、屍鬼ではない。]
……ぇ?
[眼を丸く見開く。
夜桜の囁きを反芻する。
口を開こうとして、夜桜の指に制された。
小さく頷く。
そうか、彼女は伝承の―――?
雲井たちの言葉が続く。
水鏡は今も揺れているだろうか。]
[さながら夢遊病者の様に…否、ある意味そうであるのかも知れないが…寝台から起き上がると、ゆらゆらと覚束無い足取りで扉へと歩いて行く。]
惨めだって…?
[望月の自分の思いを量り、そして諭そうとするかのような目付き。
だが望月が言わんとすることが、万次郎にはわからない。
行き場の思いを己の頭をかきむしるようにぶつけ、それは乱れゆく]
旦那様を死なせないということは、あの方を生きられない身にすること…
……何を言ってんです?
りんねてんせい…、それが、それが何ですか。
その輪から弾かれるということが、一体どれほどのことだと言うんです?
旦那様が再び動き、物を言い、また俺を…俺達をその目に映す。
叶うというのなら、それの何が惨めだ?
[藤峰に向ける声は優しいまでの響きを帯びている]
それでも、生まれたものはいつか死ぬ。
それが定めだ。いつまでも中有を彷徨っていては、本当に逝けなくなる。業が深まれば、いっそう悪い。
[なまじ、天賀谷の亡骸があればこそ藤峰がこんなにも揺れるのだ。それも一つの業ではないか]
藤峰君、間違っていない。
間違っているものか。
脳梗塞などの病に倒れ、意識を失った者はたとえ命をとりとめたとしても、後に重い障害を負っていることはしばしばだ。
言葉が通じなくなったり、以前と違った人となってしまったように思えることだってあるだろうさ。
それでも、家族がその者を愛していれば、見捨てることはできるものじゃない。
[目の前では、不老不死に関する研究のおぞましい話が現実に有った事として語られ始めた。
しかし、その話が無かったとしても、]
…──藤峰君。
あたしは麓の村で屍鬼の話を聞いたよ。
屍鬼は生きた人間の肉を求めて彷徨うのだと……。戦争ならば、敵兵を殺して其の肉を喰らってくれれば良いが。
[枚坂に、]
アァ、麓の村も──土葬でしたねえ。
…だから、屍鬼が。
俺は、斬らねばならない。
[藤峰に、というより己に向けたかのような言葉]
どこに屍鬼がいようとも、それで少なくとも天賀谷さんは終われるんだ。
[大きな声ではないのに、その声が奇妙に余韻を残す]
[翠が頷いたのを見、こちらも小さく頷き返す。
夜桜は、彼らの話に集中する事にした。]
藤峰さん。
──世の理は。
黄泉還りを否定するのです。
それこそ、神代の世より。
国生みの夫婦神の話は知っていますでしょう。
醜く浅ましい姿と堕ちた天賀谷さまの姿を、藤峰さんは見たいのですか。不死者となろうと、屍鬼は生きた人間の肉を好むと──…
[ちらと、仁科を見て]
天賀谷さまも、屍鬼の話を
………。
[雲井の言葉が耳に届くと、頭をかきむしる手が止まる]
屍鬼は人を襲う……
…そんなことなら、俺だって聞いた事がある。
いいなんて、思っちゃいないんだ。
だってその屍鬼が旦那様を襲って、あんなふうにしたに違いないとわかった。
あんなふうに人を襲う者に…したいだなんて俺は、思ってないです。
でも、だけど、旦那様なら…
天賀谷様なら?
あの方なら、たとえ鬼の力なんぞを借りてこの世に戻ったとして、そんなことしないんじゃないかと…
そう…
[――思っているのではない。
思いたいのだ。
だから万次郎の声は最後に近付くにつれ、小さくなっていった]
……俺は、天賀谷さんの首を落とす。
[小さな呟き。しかし聴こうと思うものの耳には届くだろう。
踵を返すと、血に染まった廊下を歩んで天賀谷の部屋を目指す]
――仁科さん。
天賀谷さんが、どれだけのことを識っていてこの場所を選んだのかは判らない。
でもね――
[「――振り返ってはいけない。振り返ると……」 村人たちの囁きがザワザワと耳の奥を擽る。]
この場所なら、ありえないことではないと――そう天賀谷さんが考えたとしても不思議はないよ。
此処では時々……死んだ人が帰ってくるというからね。
……枚坂先生。
[...は力なく悲しい目で、それでも笑んだ]
そういう意味でおっしゃっていたんですね?
つまり死んだと思っていた者が実は、本当には死んでいなかった。
息は止まったが、実は生きる力をまだその身に残していた。
そういう人達が埋葬した土のした、棺の中で息を吹き返すことがあるという、そういう意味で…。
だけど旦那様ははらわただって、血だってあれほど吹き出してしまわれていた…。
それでも…形さえ整えれば戻る可能性があると…
先生はそのように?
…俺は馬鹿だし、人間は陶器の壷でないと分かっちゃいます。
でもすっかり粉々になったものは、もうどう頑張っても元の形には戻せなかった…。
天賀谷様も…あれはまるで粉々のそれでした…よね。
[「振り返ると――死人が……」 私は部屋を出ようと踵をかえす望月青年を振り返った。その視線の先には階上の扉。]
天賀谷さんはそこにいる!
眠ってはいるが、以前とは変わらぬ姿で!!
貴方は二度も彼を“殺す”のか――
―廊下―
[枚坂の声が聞こえる。答えながらも歩みは止めない]
……眠らせてやりたいんだよ。
あのまんまじゃ、天賀谷さんはどこへもいけない……。
定めなんてどうでもいいじゃないか!?
少しは想像してみたらいいんだ!
あんたにとってちょっとでも大事な人が、死んでしまった時のことでも!
[望月の優しいまでの響きが逆に悔しいのだ。
叫びにも似た声量で言葉を向けてしまっていることにも、後悔の気持ちが生まれる余裕がない]
いつか死ぬとして…それが今じゃなくたって、良かったじゃないか。
本当に逝けなくなる…どこに。
教えてくれ、どこに?
大事な唯一の全部は、俺達が生きている、ここ…
ここだけじゃあ、ないんですか。
藤峰君、私は医者だ。
医者の努めは、患者をその家族が見放さない限り、元通りになる可能性を追い求めることだと思っているよ。
[私は藤峰青年にできる限りの真摯さで答えた。]
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