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[―――ドクン]
[ドクン]
[ドクン]
[トトトトトトトトト―――] [トクッ]
神。神なる身ならば――この嘆きを知り得るはず… 否… 未だ知らぬか ……
[ランサーの声は、迫る三種の力の轟音に掻き消される。]
[パンッ!]
[大波が弾けた。
向ける穂先は、球の形で大波を抉る。向かい来る水の槍は、幾ら砕いても、その端から再生をする無限の槍。
無数の槍を、視認出来ぬ速度で砕き続けるランサーの槍。散っては再生を繰り返す水の槍の中。真空の鎌が牙を剥く。]
[ギギ。]
[シャクティに包まれ、青い肌をしたランサーは退かずに、嵐へと槍の先を向ける。]
― 帰途? ―
[ 帰り道、と呼んでいいものか否か。すたすたと先行するライダーについて行くのが精一杯だ。]
だから、おい、本当に帰り道判って歩いているのか。それともどこか目的持って歩いているのか、どっちなんだ。
ていうかまず僕の話をちゃんと聞こえているのかよ!
[ 苛立ちを露わに話し続けるも返答は貰えない。どちらかというとそんな口調で喋り続けるから余計に相手にされないのではと思わないでもないが久仁彦の思考がそこに辿り着くわけもなかった。]
【大した力だ…ああ、正直感心したね。
だけどなー、この"場所"で俺に勝てると思ってしまった点だけは…笑っちまうね!】
[残りの魔力を惜しむつもりは無い。
この場所なら攻めと守りどころか、逃げすら自由自在となる。
地の利は完全に此方が上、そしてその地の利こそがキャスターの何よりの力となる。]
『I-KIRJAIN olen kuningas. Valli -lta kyyneltya Kakkonen palvella sotamiehena joka puoltaa patoluukku Se on kalpa -lta leimata etta has kotona antaa.』
[歌声と共に召喚されしは二人の水の騎士、手に持つは封印の剣。
相手の力を封じ込める剣を携え、迫りくるランサーへと嵐と共に追撃する。]
[ギ。ギギ。]
[人間には聞こえぬ異音がする。扉を開ける軋む音にも似る。]
[ギギギギギ。]
[何時の間にか、大気はそよとも動かず、怯えるように停止していた。]
[ギギギギギギギ。]
[ランサーはこの異音に気づいているのかいないのか、反応なく、いまだ戦い続けるのみ。
その双眸に表情はなく、嵐を、槍先に灯すシャクティだけで切り裂き、横一文字に切断。その向こう、封印の剣を携える二体の騎士が現れる。水で出来た騎士の身体は、更に向こうの、不敵そうに笑むキャスターを透かしていた。
頭上より球形に降り注ぐ水の槍。前方から向かう二体の騎士。ランサーは槍先を上に構え、水の棘を突破しながら空へ高く跳躍した。]
それにしても…。
ランサーだったか。あのサーヴァント、気になることを言っていたな。
聖杯戦争に介入するものがいるって? それと…沖田敬一郎って言ったよな。
沖田敬一郎って教会にいた管理者の名前じゃなかったか? 管理者って中立の立場なんじゃないのか。ああもういったいなんなんだってんだよ。
[ ジャンヌに話しかけることを諦め、とりあえず先程に得た情報を反芻する。
反芻してみても余計に頭がこんがらがっちゃかこんがらコネクションだったりするのだが本人なりに情報の整理をしなければ以降の展開についていけない気がひしひしと感じられる。]
そしてあれだ。あの馬鹿げた戦い。あんなのアリエナイザーだ。勘弁しろよサーヴァント同士の戦いってあんなのばかりか?
…そういやあの二人はどうなったんだろう。なんだか一応戦いは収縮したみたいだったけれど…。
【…上に飛んだ?】
[飛べぬ者が空へと昇る。
しかし、それは落下運動という縛りによって軌道は読みやすく、迎撃にさほど苦労はしないだろう。]
【つまり、ここからなにかやらかすって事か?】
[だが、今退治してる相手はその程度で油断できる相手ではないだろう。
たとえ自分にこの上ない地の利があろうとも、油断すればその時点で終わりかねない。
水の城壁を横だけでなく上にも展開し、頭上の相手をじっと見据えていた。]
[ランサーが持つ、鋭き槍が変形する。否。その姿は周囲に溶け込むように。色を喪い、形さえも喪う。変わって手にしたのは、今ランサーが持つ部分だけが克明に実体化した槍。]
ああああああああーー?!
[ と、目撃した戦闘について思い返してふと気がついた。]
なんだ、なんて愚かなんだ。あれだけの戦闘をして消耗をしていないなんて幾らなんでもそれはないだろう?
つまりどっちが勝っていたにしろ引き分けだったにしろ格好の仕掛け時だったんじゃないか。なんであの場を立ち去ったんだ僕たちは!
ああもう、千載一遇のチャンスを逃しちゃったじゃないか!
[ 大袈裟に両手を広げ、天を仰ぐ。]
ああもう、さすがにもうどっか退散しているよな。本当に愚かだ。なんてことだ。
、、、、て、あれ?
[ 未練がましく河原の方を振り返る。と、何故いままで気付かなかったのか。また河原で大きな魔力がぶつかりあっているじゃないか。]
また、戦いが始まっているのか? いったい誰…なんて、考えるまでもないか。
片方はさっきと同じだ。もう片方は判らないけれど、あのランサーが攻撃でも仕掛けたか?
うん、なんて好都合だ。よし、行くぞライダー。決着がついたところを狙えば一気に二人倒せるかも知れな…なんだよその目は。
[ ギロリと睨まれ、びくびくする。]
ひ、卑怯とかそういうもんじゃないだろう。如何に効率よく敵を倒すか、それが戦略ってもんじゃないのか?
[何か仕掛けてくる。
キャスターは直感的に感じ取った。
もしそれが相手の奥の手なら、今展開している水の城壁など防御の意味を成さないだろう…なら。]
『Erinomainen Muurata Ei varustukset ainoastaan jarjestyksessa oleva on. Kurimus -lta kyyneltya etta kytata model after sisalta Se on ainoa katu johon kuningas elinikainen on puoltaa.』
[城壁を広く、広範囲を覆うものへと変化させる。
さらに城壁とキャスターの距離も数メートルは開き、足元には水の渦が蠢き始めた。]
ト リ シ ュ ー ラ
還れ 我らが世界
[ランサーは放つ宝具の真名。それは、世界を滅ぼすシヴァの槍の名だった。刹那、川は深く抉れ、蒸発した。]
ああもういいよ! 幾らサーヴァントでも弱っているところなら僕でも倒せるだろう。ふん、嫌ならいいさ、僕独りで行って、、、。
[ 思い返してしまった、天災の如き先程の戦闘。]
………うん、やめよう。やっぱ戦いにもマナーはあるよな。
今日のところはいいだろう。またチャンスはあるさ。
[ 結論を出した時には、既にジャンヌの姿はなかった。]
ああーっ
完全に置いていったー!!!!
[名を紡がれた槍が水の城壁に触れた瞬間、その周辺が瞬時に蒸発する。
その威力に、防ぐ事など到底無理だと悟る。
だったらとる手段は一つ。
足元の渦がキャスターの足元を包む。
城壁を広げたのは、どんな速度の攻撃にも反応するセンサーの役割を持たせるため。
足元に展開する渦は安全なる逃走経路。]
迂闊だなランサー!空間転移の術がある事は目の前で見せたはずだぞ?
[曰く、不滅の賢者は最後に大渦へと消え去った。
彼の伝承でもあるカレワラの最後の一節である。
そう、水による身を包むほどの渦が発生させられる状況ならば、彼は瞬時に転移することが出来る。
近くで水の城壁で守っていたマスターも、同時に水で包み込み渦の中へと引き入れる。
そして着弾する槍、それは全てを消し去る破壊の象徴…だが、その場には既にキャスターの姿は無かった。]
[戦闘場所から離れた川の上流、キャスターとそのマスターは水の中から姿を現した。]
ま、ある程度ストレス発散できたしあんなもんだろー。
[大暴れして幾許かの気は晴れていたキャスターだった。
地の利があったにも拘らず仕留められなかったのが心残りだが、まぁ相手にだけ宝具を使わせたのだから収穫は大きかったといえる。
むしろ、今日戦った2人と川原以外で戦闘になっていたならば、正直負けていた可能性が高い。]
てかもうホント勘弁して欲しいねー。
え、なにがって男を女と思ったことに決まってるじゃないか。
[横でフラフラになっているマスターに普段の調子で話しかけるキャスター。
まぁ、マスターから吸い上げる魔力を抑えていたとは言え、もう魔力はスッカラカンだろう。
それはキャスター自身にも言える事ではあったが…。]
あー…もう全部使い切った。
とりあえず帰って寝させてくれ…このままじゃぶっ倒れちまう。
[魔力量がケタ外れに高いとはいえ、全力での二連戦は流石に無理があったのだろう。
てかセイバーと戦った後さっさと帰ればよかったなーなんて思いながら、キャスターは*帰路へとついた*]
[地形は更に変わっていた。川の流れは寸断され、もうもうと周囲からは蒸気があがっていた。クレーターの中心に、先端と柄が視えない槍が突き刺さっている。
今のランサーに、キャスターの声は聞こえない。目の前の敵を殺戮するサーヴァント。それが今のランサーだ。
キャスターの目が節穴でなければ、ランサーの表情は歓喜に満ちていたのが見えた事だ。
ランサーは、槍を引き抜くため、*熱砂の大地を歩いてゆく。*]
[槍を引き抜き、どれくらいの時間が経ったか。ランサーは我にかえると、久子の姿を探し始めた。]
居ない。
魔力は流れてきているし危険な目に合ってもいないのは分かるけれど、何処に行ったんだろう。
[ランサーは、己が破壊の爪痕を振り返った。心を痛める。この一帯に、正常に水が流れ始めるのには時間がかかるだろう。神々に祈りを捧げる。この地が、より早く回復する事を。
ランサーは、商店街に向かう事にした。]
― 樹那商店街 ―
[午後、有閑マダムがお喋りをしていたり、学校をずる休みした学生が居る他は、夕食の買出しをする人間も居らず、混んでいなかった。
ランサーは、物珍しげに、ウィンドウに飾られている「NEW」という文字で引き立てられた冬のブランド服を眺めたり、花屋の前で足を止めたりしていた。
と、横断歩道で道を渡れずに困っている様子のお婆ちゃんに気づき、向こう側まで背におぶる。大袈裟に感謝するお婆ちゃんと別れると、*また歩き始めた。*]
−ランサーとキャスターの戦闘中 樹那町西ブロック−
[川原を戦闘方向とは逆に走り土手を駆け上り道路に出てしばらく走ると、何かを情けなく叫ぶ男の姿が目に入る。
先程分かれたライダーのマスターだ。ライダーらしきサーヴァントに気配は大分離れたところに感じる。
先ほどの態度から恐怖心は感じない。立ち止まり話かける。]
ちょっとあんた、こんなとこで一人何してるの?
川原の方は今ランサーとキャスターのお爺ちゃんがデート中だよ。
いかない方がいいと思うよ。
あ、もしかしてライダーを呼び戻して残った方をやっつけようとか考えてない?
そんな野暮な真似するもんじゃないよ。
しばらく見張らせてもらおうかな。
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