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[其処に在るのは異形の空。日は東に、月は西に。森を包む霧は揺らぎもせず重く白い。
詳しいというわけではないが、屍鬼の伝承は望月も知っている]
首を落とすか、心臓を抉らねば死ねぬモノ。
首を落とし続けて八代を重ねた山田浅右衛門の一族。
[屍鬼という存在そのものが、まるで望月を待っていたかのように思えたのは、己への買いかぶりなのだろうか]
……俺が首を落としてやれば、迷わずに逝けるのだろうか。
―水鏡前―
[水盆は圧倒的存在感を持って其処にある。]
……お前は何を知っているの?
旦那様を変えたのは、お前?
[器物が答えるはずもない。
鏡の様な水面を覗き込めば、自分が自分を見据えていた。]
お前を使う者が居るのかしらね……。
あの昔話のように。
[それでも、翠は話しかけるように独白を続けた。
それは昔話だ。
刀の部屋の記憶と共に、
口伝を喜悦さえ浮かべて語る、
天賀谷の声が甦る。]
───あんな真似はもう金輪際したくなかったんだけどな。あの頃ならともかく。
[なんて事だと頭を抱えて転がりまわりたい気分だ。こうなるとわかっていたならば、煙草を今の倍以上持って来ていただろうに。
再度水鏡のほうに目を走らせる。翠の姿。彼女はこちらを向いてはいなかったが、つい会釈してしまった。]
[影を見る者。
魂を見る者。
影を封じる者。
狂える魂の持ち主。
そして屍鬼。
異界と現世の狭間に落ち込んだ場所は鎖されてしまう。]
……。
[仁科とは未だ顔を合わせていないけれど、同僚が夜桜と共に居たよと教えてくれた。
外に居たということは、仁科も知っているのだろうか。鎖された此の屋敷の今を。]
『会えたら、聞いてみよう』
[頷いて、職務に戻ろうと顔を上げた翠の眼に、
会釈をする由良の姿が映った。]
由良様、昨晩はありがとうございました。
[丁寧にお辞儀を返した。]
―2F食堂─
[大河原の申し出を断り、食堂へ。
元軍人。そのような人間に印綬をぶら下げて
どんな顔をして会えばいいのかわからなかった。]
…………。
[見知った顔を見つける。戸口に立ったまま無言で鏡を見る。]
[天賀谷と出会ったのは、亡夫の大河原伯爵が─まだ華族制度は廃止されてはいなかった─目黒の屋敷を手放さざるを得なくなった頃であった。
碧子の持つコネを最大限に駆使した結果、小さいがそれなりの家を手に入れ、没落していった大多数の貴族─斜陽族などと呼ばれるようになっていた─に比べて何とか相応の暮らしを保つことが出来たが、それでも財産の大部分を処分しなければならなかったのは言うまでもない。
そんな中で、知人の一人が天賀谷を紹介してくれたのである。]
[礼を言われるほどの大層な事はしたつもりはなく、翠の謂いに苦笑しつつ言葉を返す]
いや、大した事は。
……あの、つかぬ事を伺いますけど、このお屋敷では、麻なんかを植えたりはして……ないですね。すみません。
[気がかりをつい聞いてしまったものの、そんな事はあるまい、と言った尻から打ち消してしまう。
第一、「あるが、どうするのだ」と聞かれた場合の返事に困るではないか]
[いろいろな型を試みて素振りを続けたことで、気持ちがようやく落ち着いた。汗を流して、己が少しだけ清くなったような心地がある]
……戻るか。
[先刻自分を散々迷わせた森に一瞥をくれて、屋敷に向かう]
→屋敷へ
………君にそんな嗜みがあったとは、知らなかったよ。
[思わず戸口から声をかける。]
戦地での恐怖を紛らわすため、あるいは頭を離れぬ
悪夢、纏わりつく血の感覚を忘れるため。
そんな理由でMELOW,MELOWと喚く連中を知っているが。
[溜息混じりに。]
君もそのクチかね?
いいえ、
由良様と枚坂様のお陰で
旦那様も大事なかったのですから……。
[と、続いた由良の問いに翠は首を傾げた。]
―――麻……ですか?
どうでしょう、私は存じ上げません。
強い植物ですから、
探せば生えているかもしれませんけれど。
[記憶を掘り起こしながら答える。
あれは育つのが早いから手入れが大変だと庭師がぼやいていた様な覚えがあった。]
……ぁ。
[たたずむ人影―江原様だろう―に気付き、翠はまたそちらを向き直り礼をした。]
……っ!……
[思わぬところで声をかけられ、危うく紅茶に噎せかける。]
江原……さんか。お前さんとここで会うとは思わなかったな。
[目顔で、麻の利用法についてこれ以上言及してくれるな、と江原に訴えてみる。]
――三階・自室――
[寝台から身を起こしたさつきは、分厚いカーテンを閉ざした窓を見遣った]
『まだ、夜なのかしら。それとも、朝――?』
[薄絹の寝間着の儘で窓辺に歩み寄ると、ゴブラン織の生地をサッと引き開けた。さつきの目に入った光景は――]
……其のどちらでもないと云うの、此れは……。
誰ぞ、彼ぞ……
彼は、誰ぞ……
[……その時既に天賀谷は、碧子に興味を持っていたのだと、思う。くだらない自慢ではなく客観的な事実としてそう思うのだ。
思い起こせば、初めて家を訪れた天賀谷に亡夫が妻として紹介した時の、あの笑みと見詰める眸には何か常の好奇心ではないものが込められてはいなかったか。]
[とまれ、伯爵が亡くなった後、天賀谷が何かにつけて不足しがちな日用品から甘い菓子や花、時には宝飾品の類まで贈ってくれた事は事実だ。]
―二階食堂へ―
[時間のほどはわからないが、随分長い間素振りをしていたのに今更気づく。……喉が渇いた]
……水。
[刀を手に提げたまま食堂へ入っていく]
[江原の胸の略綬に目を走らせる。]
……お前さん、国籍は今どうなってる?日本国籍に変えたかと思っていたが、
それを見るとそうでもなさそうなんだがね。
[江原と由良の遣り取りを見ていた翠は
眼を数度瞬かせて]
あの、お飲み物お淹れしましょうか?
[と、申し出てみた。
其処に新たな声が響いた。
手に刀。
あ、と思って一瞬刀を見つめるが、
失礼に当たると思ったのか直ぐに目を逸らして]
望月様、お疲れ様です。
今日も素振りを?お水、今御持ちしますね。
[と、厨房の方へと歩いていった。]
ふう、暑い暑い。
[いささか脳天気とも思われかねない明るい声。藤峰が気遣ってくれたのをつかまえて、水を頼む]
ああ、そうだ。水だけじゃなくて風呂も頼んでいいかな。
[そこから先はやや真顔になる]
身を、清めておかねばならんと思うんだ。
[そんな話をしているうちに、翠と由良、それからまだ言葉を交わしたことのない男(江原)の存在に気づく]
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