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[目の前で慌てふためく男。随分とお人よしなのだろうかと少し動揺したが、そのまま言葉を続けた。]
いえ、教会はダメですわ。
私は実は、由緒ある家柄を背負った魔術師なのです。ギブアップをしたなどとあっては末代までの恥。そんな事をすれば、お父様がどんなにお怒りになる事か……。ですから、私は討たれて死なねばならないのです。お判りになって。
女に手を掛けるのが躊躇われると言うのならば、正当防衛をなさればいいですわ!
[そう言うや、シャルロットの右手には水の揺らめきを纏った美麗なナイフが現れる。そのまま、目の前の男の首筋にナイフの刃を当てようと右手を伸ばす……。]
私のマスターが結んだ事とは言え、約束は約束だ。
あまり驚いてはいないようだな。
先に悟ったか。
[ランサーはぬばたまの髪をかきあげた。]
[アレから残された言葉の奥にあるものを考えつつも、アサシン達の会話を聞いていた。
まぁ、途中までは会話の方は聞き流していたようなものだったが…ある一言が聞こえてからは、キャスターは思いっきり不機嫌になっていた。
あまりの不機嫌オーラに周りの人たちが危機感を感じ取り心なしか避けられてさえいる。
そして、自分に近づいてきたソフィーに口を開いた。]
なぁ、アイツらココで倒してもいいか?
[キャスターの所までいくと、着くなり告げられた言葉にわずかに目を見開く]
何か、不都合でもありましたか?
彼らは彼らなりに必死なのだろうとは思いますが。
[宥める風でもなく問いかける]
悟る?
…いいや。知ったからだ。
貴公の纏う"世界の闇"の力を。
[きろりと。
硬質の光帯びた瞳が槍兵を睨む。
ちらり、と。
クレープを奢ってくれた女を見る]
…ご馳走様。美味しかった、ありがとう。
[その瞳は微かに訴える。
早く、できるだけ遠くへ逃げるように]
…だってあの野郎、マリアちゃんを戦力にならねぇとか言いやがった。
そんな奴、しかも男なんかと俺は仲良くできねーな。
[あの一言を聞いた瞬間、どれだけ水の刃を飛ばしてやろうと思ったか。]
そもそも、同盟相手を戦力と見ないなんて言う奴と手なんか組めるか?
[何かを訴えるような少年の視線。
大気の濃度が高まったような緊張感が周囲を覆う。]
なんだか取り込み中みたいね。
アタシ、お邪魔かしら……。
それじゃ、アタシは行くから。
またどこかで会えたらいいねー。
[少年達に手を振り、その場を後にした。
向かう先は中央ブロック。]
…否定はしない。
闇があるから光は輝き、光があるから闇は暗く沈む。
[白いマフラーが、ぶわり強く吹いた風に煽られ]
…何故。
何故、貴方なんだ。
……どうして…。
[白い手袋、手の内に握りこんで、強く強く]
……。
[雑踏のざわめきが遠く聞こえる中、ぱたぱたと足音が去ってゆく。双眸を開く。]
私はどう足掻いても、大いなるものの意志の代行者。
反対に問おう。
どうやって、知ったのかを。
[キャスターの言葉を聞き、なるほど、と相槌を打つ]
戦力、にも色々あります。バーサーカーの言葉は純粋に戦えるかどうか、背中を預けて戦えるかを指しているのかとも思いましたが。
マスターの考えは違うようですし、少しお静まり下さい。回りの方が引いていますから。
[今度は若干諭すように告げた]
…もし、あえたらな。
[去り行く女のこえ、微かに分かれ告げる声は小さく]
神に祈り捧げ、神を慕う者の声無き声によって。
……体無き声と、神が俺に授けた声によって。
[それは、スキル表記するならこう表現される。
───"霊視:A"]
[ 由緒ある家柄――。
そんな言葉が熱を帯びていた久仁彦の脳を一気に冷ました。冷ややかになる眼差しに、嘲笑うような色が映える。
そして首へと突き出された刃を右手で掴み。]
知らないよ、そんなユイショとかイエガラとかハジだなんてものは。
君の事情なんか僕には関係ない。死にたければどこかのサーヴァントに戦いを挑めばいい。
[ じわりと、右手から切っ先へと血が滲む。]
[男の表情の変化に狼狽した。
軟派をされていた時、助けに入った時、そして先ほどとは、明らかに目の色が変わっている。
こちらを、見下して来る射るような視線に、シャルロットの唇の端も上がった。]
私のようなか弱い女1人を殺す事も出来ないのですか……?
い く じ な し
[水の短剣の切っ先に、男の血液が吸い込まれていく。わざと挑発するように、単語を区切って発音しながら右手を振り払う。]
そりゃもちろん、得手不得手はあるけどなー。
それでも、これから共に戦おうって相手に言う言葉じゃない。
同盟って言うのは危ういバランスの上に立つ砂の塔みたいなもんだ。
ちょっとした事からでも、容易く崩壊しちまう。
それを解ってて言ってるのか解らずに言ってるのかは知らねーけど、少なくともああいう言葉をあの場で平気で言える奴に俺は"信用"も"信頼"もできないね。
[腕を組んで吼えるキャスター。
最初と比べ少し冷静になってはいるが、印象的には確実に奈落の底へと行ってしまっている。]
[双眸が細められた。足を踏み出す。]
貴方は、何かを感じとっていた……その力があったが故か。
……なら、私が言った通りに、先ず真っ先に「沖田敬一郎」を殺すべきだったんだ。
[歩み。]
何故、貴方は動かなかった!
今ある生を、守ろうとは思わなかったのか。
滅んでも、
かまわないと…………思っていたのか。
[ランサーは怒っているようだった。]
[ 右手から鮮血が飛び散る。ざっくりと斬れた痛みに一瞬顔をしかめるも。]
カヨワイとかイクジとかホイクジョとか全然関係ないね。君が逃げるためのツケを僕に払わせるなといっているんだ。
大体、死にたがる意味が判らないね。
それがどんな結末になるのか、それを自分で確認できない自殺になんの価値があるってんだい。全く愚かだね。
それともユイショ正しいイエガラのお人は、自分の死後さえ見えるのかい?
[ ずけずけと、思ったことをまるごとぶつける。目の前の人物が、既に死したるサーヴァントであるとも知らずに。]
[じりと踏み出した相手をまっすぐに見返す。
その怒っている顔に怯えることなく、小さな英霊は両の足で対峙する]
…理由もなく、己の目ですべてを確かめることなく刃を向けるのは卑怯者のすることだ。
俺は、そういうのは、嫌いだ。
だから、自分の目ですべてを確かめる。
滅びるのも、滅ぼすのも御免だ。
裏切るのも裏切られるのも、疑うのも疑われるのも全部───!!
[強く叫んだ言葉は、コンクリートの谷の中で響いた]
そう、ですか。
[シャルロットでもなければ、この御仁の説得は難しいだろう、と考え]
では、停戦協定を結んでこようかと思います。少なくとも、マスターの方は信じて良いように思います。バーサーカーのことは抑えられる、と仰っていましたが、ともすれば無駄にあちらの令呪を使うことになるでしょう。
こちらとしてはその方が都合良いでしょうが、余り好むところではありません。
バーサーカー達の戦いに手は出さない。彼らにも手を出させない、これを三者で結ぶのはいかがでしょうか。
人の命を代償としても、その先にあるのが"正義"であるならば、神の御心に沿うのならば……。
[強い語気の男に対峙し、シャルロットの口調も僅かに強まる。]
死には、相当の価値が存在するのですわ!
[刹那、およそ人とは思えぬ速度で久仁彦との間合いを詰め、背後に回りこむと手にした水の短剣を首筋に当てがった。]
さあ……楽園へ還りなさい!!
[そのまま、ナイフに力を込め……。]
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