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―車内→アンゼリカ―
ネリーはいい娘だなあ。うちにもネリーみたいなかわいくていい娘が手伝いに来てくれてたら助かるんだが、なにしろうちの家政婦ときたら……
[それなりの年数勤めてはいるものの、一向に物覚えのよくない我が家の家政婦を思い出して苦笑いした。
ネリーが離職した時に我が家で雇い入れたかったものの、ノーマンと我が家の縁戚関係を考えると角が立ちそうで遠慮した経緯を思い出す。今の主人がよい主人なら、それにこしたことはないのだが。
そこで、ニーナのボブへの先程の反応を思い出し僅かに表情が曇った。
ソフィーを運び入れやすいように、アンゼリカの玄関側に一時車を停める。その音は通常なら中にも聞こえたことだろう]
ギルは居るかな。
おーい、ローズ……
[ステップを上がり、扉から中を覗き込んだ]
[ステラの懇願にローズマリーは自分の下腹部が暑くなるのを覚えた。
ステラの胸の頂きをそっとつまんだり全体をやわやわ揉みしだいたりとステラに柔らかな刺激を与え続ける]
ステラ…ここじゃ…。
[店を覗き込んだヒューバートには二人の背中が見えただろうか]
そんな、やですよ。
誉められても軽い夕食ぐらいしか出ませんよ。
[ネリーはヒューバートやシャーロットと明るい会話を交わした。
ややもすればアンゼリカが見えてくる。ヒューバートが先に降り、ネリーは車から降りた所でアンゼリカの方を見た。]
それが「天使のお仕事」ってヤツか?
[椅子を引き寄せて座ると、ククク、と愉しそうな嗤い声を上げた。]
……奇遇だな。俺も似たような仕事をしてンのさ。
ただし俺は天使じゃないけどな……。
『なな、なななっ なんだーっ!?』
[ローズに向けかけた声は発せられる間もなく、尻つぼみに消えた。扉の中がチラリと見えた刹那、慌てて扉を閉める。
扉を背にしながら、そのまま中の人物に気づかれないよう、じりじりとカニ歩きで扉を離れようとする]
[『叶えてやる』
そのコトバがずしりと自分の心に落ちてきた。
今自分は何を願った?町を消す?ありえない。願える訳がない。
自分が生まれ育った町を、今の自分を作り上げた過去を消すとは。
しかし『あの』瞬間、自分の心は何かを失ってしまった。
それは恐らく『人』を形づくる何かだったのだろう。
代わりに受け入れたものは──]
…頼む……
[そのまま、再びこの場所での意識は途絶えた。
恐らく、表面へと浮上していったのだろう。
それが以前と同じ自分かどうかはわからないが──…]
少なくともそこの天使に願うよりは確実に。
[と目の前の男を見ながら付け加えた。
ただし、「会話」の相手にはそれは見えないし、何のことか分からないだろう。]
ふぅん……
ま、世の中には似たようなことを考えるヤツはごまんといるわけだ。
[紫煙を吐き出しながら、喉の奥から搾るような声を上げてわらう、琥珀色の男の目をじぃっと見つめた。]
[きっと怪訝な表情を向けているであろうそこの皆に、苦笑いした。なんと説明したものか。
(おとりこみ中だ)と唇は形作ったかもしれない]
『ステラとローズが……』
[それだけでも充分に衝撃だったが、ステラの体は私の知らぬ紋様で彩られていた。
ステラはあのように刺青を体に彫るような女性だっただろうか。
私は改めて、彼女のことを何も知らないのだと、悟った]
[椅子の背もたれに両手を乗せ、座面を跨ぐようにして座り、ナサニエルの視線を真っ向から受け止める。]
どうしようか……
生憎と俺には特に叶えて欲しい願望はない。「会いたい相手」も居ないじゃないが、アンタじゃそれは役不足だ。
──俺はそれより、アンタ自身が欲しいな。
[琥珀色の瞳の奥に、黄金の光輝が瞬いた。]
[ローズの細くしなやかな指が、わたしの素肌を行き来する。
それは何かを奏でるかのように弾いたり宥めたり。形を変えしかし止まる事無く繰り返される。]
[夢にまで見たローズの手管。嗚呼何度契約の内容に組み込もうかと考えた事だろう。でも出来なかったのは、ナサニエルが幾ら常軌を逸脱していたとしても、この村の人間である事には変わりが無い事が、どうしても引っ掛かったからだった。]
…ぅ……
[時間の流れなど忘れたように眠っていた瞼が開く。
どれだけ時が経ったのかまるで分からないが、先程はソフィーだけだったのに反対隣に誰かいたような様子]
…俺…は……
[青い顔はやや血色を取り戻したか、前の座席にいるシャーロットがこちらを心配そうに見ている]
…大丈夫だよ、ありがとう。
先生は?
[シャロが指差す先はアンゼリカ]
……?
[わたしはいつも恐れていた。ローズへの密かなる思いから全ての破綻が起きることを。一度は捨てた表世界での平穏な日常。しかし運命の悪戯によってわたしは再びこの世界に足を踏み入れる事ができた。だから守り通したかった。胸に咲いた百合の如く芳香(かお)る恋情なんて踏みにじってでも。]
[しかしそれは先の契約時、ナサニエル自身に嗅ぎつけられ。そして今――ローズ本人にも暴かれてしまっていた。
でも良いと思った。何もかも投げ出してしまっても。それ程までにローズの誘惑はわたしを満たしてくれる。
ほら、いまだって…。
わたしの躰は彼女の指先によって溶かされる。]
ここじゃ…なに…?わたしもう…我慢できないの…。
ローズが欲しいの。だから頂戴?あなたの指を。わたしの中に――
[オクターブ高い上擦る声は、嬌態を滲ませる。我慢できなかった。中断される事も…ソフィーが寝ている二階へと移動する無駄な時間も、そして、彼女に聞かれてしまうかもしれない危惧も併せて。
しかしわたしは失念していた。ここは人の外来する酒場。いつ来訪者の訪れがあってもおかしくはない場所ということを]
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