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─天賀谷の寝室─
[微かに震えて、雲井の腕を抱く碧子の頭上に、赫い渦が生じる。
それは黒の色彩を加え、やがては白も入り混じり、徐々にひとつの形を形作っていく。
と同時に、碧子の存在感が次第に薄れていき、薄黒い翳りに覆われていく。
やがて、頭上の渦が黒髪を靡かせた女の白い貌へと完全に変化し終わる頃には、碧子の全身はうっすらと透けて見える半透明の黒い影へと変わっていた。
そしてその代わりに、宙に浮かぶ白い貌は凄艶な艶を滲ませて、生き生きと輝いた。]
[白い貌は半眼に目を見開いて、室内に居る人間達を睥睨する。
いきなり出現したこの怪異にも、やはり人々は注意を払わない。其処には存在していない物、として全員が見もしなければ、感じもしない。
影の様になってしまった碧子でさえも気が付かず、雲井は顔色ひとつ変えずに側に居る。
紅い唇が開き、白炎と共に言葉を吐き出す。]
あの子に向かう筈が、何故だかあの女に引き寄せられた。
わたしが開こうとした道は開かず、あの女へと逸れて、その道もまた。
あれは──…
―外庭→屋敷へ―
[翠は壁に手をつきながら、歩いていた。
既に飽和するほど血を吸った絨毯を踏みしめる。唇を噛んだ。]
『……何て、甘い―――決意なの』
[憎いと思った。
遣える主を殺した屍鬼が憎いと思った。
だから、刀を振るおうと思ったのに。]
――私は。
[だが現実はどうだ。
人が、人を殺した。死んだ。
その現実に打ちのめされて、体が重い。]
殺さないと、わからない……。
[どこか虚ろに呟き、それでも刀は離さない。]
[遠い昔、仲間と初めて出会った時の事。
“こちら”と“あちら”を繋ぐ道は、近ければ干渉しあって一つになる……
狙った獲物と違う方へと引き寄せられる事もある。]
誰ぞ居るのか──……
此処に、
わたしのほかに。
[その瞳が更に細められ、何かに集中する顔付きとなった。
唇を窄め、細い細い息を吐けば、それは白い靄となって流れて漂う。白い靄は網の様に拡がって部屋中を満たしていく。室内のあらゆるものはその触手じみた靄の探索を逃れることは出来なかった。……天賀谷の書付も。
靄の網はまた階下へも拡がり、血文字の描かれた壁を舐める様に撫でた。]
―由良の部屋―
[心臓の真上の皮膚から血がじわじわ滲んでくる。]
由良は、俺を殺そうと胸を…。
[心臓を狙っていた?
屍鬼は首を斬られるか、心臓を貫けば死ぬ、と]
あ、あ、あ…!
[…気が付いた。由良は望月をこそ屍鬼と考えたのだと]
では、俺たちはお互いを疑いあって…!?
[由良が屍鬼ならば求めるは屍肉のはず。屍鬼を殺しても何の益もない]
由良、…由良、さん。
[呻く声に応えはない]
[その瞳がカッと見開かれた。]
…──見つけた。
[ぎらぎらと歓喜の色を湛えた黒い瞳が、暗黒の光を放つ。
黒い髪を蛇の様にのた打たせ、白い貌はニィと形の良い唇の両端を持ち上げて哂った。]
「望月さまが問い詰めた」
「でも掴み掛かったのは由良さまだ」
「だからって刀まで抜かなくても」
[はじめから目撃していた使用人たちのそんな囁きが聞こえてくる。]
ゆら、さ、ん。
[声に答えることもできぬまま、血に染まって立ちつくしている]
……伝えない、と。
[独白。
由良は違った。
由良は。]
―――ッ……!
[声にならない声を上げ、
翠は自分の胸元を握り締めた。]
―三階へ―
―三階、天賀谷自室―
[声が聞こえた。
喧騒、怒声、或いは恐怖の。
翠は藤峰の姿を見つけると、ついとその服の裾を引いた。]
違った。
[翠のか細い声が彼岸の声を伝える。]
……由良様は
……違った。
[ゆるゆると首を振った。
そうして、また歩き出す。由良の部屋へ。]
──三階・十三の寝室──
『血文字に刻まれた中で、誰かを殺すなら…。
──…さつき様。
否、あたしが愚かなだけか。』
一度思うとそうとしか…。
[金黒の両の目を見開いたまま、ぐるぐると思案する。
さつきを見送った。
──そして、ハッとした様に夜桜の傷口に視線を落とす。濡れた布越しに触れている其の肌は熱を孕んでしまって居るでは無いか。]
申し訳ない、夜桜さん。
使用人用の部屋へ…行きましょう。
真に安静にしなくては。
『其れにあたしも水でも浴びた方が良い。』
[翠は此処に居ない。
他の使用人を呼び寄せ、傷口に触らないように支えながら、*夜桜を運びだした*。]
―三階、由良の部屋―
[部屋の前、使用人たちがさざめいている。
「掴みかかった」
「でも先に斬ったのは」
翠は扉に手をついて、
立ち尽くす望月の背を見つめた。
謂わなければ。
静かに望月に歩み寄った。]
……彼岸を、見ました。
[望月はただ由良の名を呼んでいる。]
彼は、屍鬼ではない。
[翠は、横たわる由良を見下ろして、
*祈るように瞑目した。*]
[夜桜を支えて出て行こうとする仁科と入れ違いに、翠が入ってくる。
藤峰によれば翠は殺された由良の霊を見に行ったと言う。
声を掛けたいと思ったが、翠の表情と仕草だけで結果が分かってしまい、何も言えなくなってしまった。翠はまた出て行く。]
『望月様が切った由良様は、只の人だったと…翠さんは。
其れが本当なら。
あたしは、さつき様を……やはりまだ殺そうと思っているけれど。
此れも間違いなのか。
……分からない。』
[兎も角、夜桜を部屋へ。
炊事部屋に居た使用人に、常より更に白く西洋人形のめいて見えた翠に、暖かい飲み物を*運ぶ様にと言付けた*。]
[現実の仁科は十三の部屋を何の苦も無く出て行った。夜桜を支えて使用人の部屋へ…。今度は夜桜の熱を帯びた白い肌を見ても、痛ましく申し訳なく、また銃と言う凶器の重みを思い出すだけだった。
其の常と変わらぬ自分に安堵していたと言っても良いかもしれない。]
[──…ところが。一体どうした事か。
赤黒く冷たい闇の中、揺れる夜桜と自らの指先を交互に見つめ乍ら、沸き上がる飢えに戸惑って居たはずの仁科は、異界の仁科は…──]
…ァアアアアアア!!
ウワァアアアアアア…──!
誰か、誰か。
墜ちる、墜ちる。
──…誰か。
助けて、助けてくださ…
[見えざる恐るべき力に──背中から全身を絡み取られ、一層深い…闇の方へ引き摺られて行く。]
[ぐしゃりと挽肉を潰す様な音を立てて、仁科は真暗な地面に転がった。手を付き、立ち上がり逃れようと…──]
──…っ!
[虚空にメデューサの如く壮艶な、
白く濡れて光る女の首が。
女が。
仁科を見降ろして居るでは無いか…──。]
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