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[ルーサーの声に気づけば、神妙な面持ちで。
声のトーンを落として紡ぐ。]
ルーサーさんは昨日のこと、知らないんですね。
わたしも詳しくはわかりません。
ただ、ナイジェルにはもう一つの人格がある……
それが、セシリアという存在なんじゃないか、って。
……でもナイジェルは、
……セシリアは死んだ、とも前に言っていた。
[わからない。零すような呟きが残響のように。]
一人のところを狙うのが、妥当かしら?
シャーロットさんやナイジェルさん、ナサニエルさん辺りは固まって居そうだもの。
夜になってもそれが難しいなら…私の香水を使うけれど。
更に罪を重ねて、実際に与えられる刑が変わらないとしても
――でも神様は違うと思う。
そうですよね、ルーサーさん。
罪を重ねれば重ねるほど、その罰は重くなると……思うんです。
[違いますか?と話題をルーサーに振っては、再度ローズマリーに目を戻し]
って、冗談?……もぅ。
わたしはそんなぬかるみ、やです。
[ぷぅ、と無意識に頬を膨らませて。
解放されて、小さく息を吐き]
嫌いじゃない――ですか。
……なんていうか、えと……ありがとうございます。
あ……おかえり、ナイジェル。
[その様子はいつもの少女の其れで。
どこか安堵した様子で微笑み、頷いて薬箱を受け取った。
テーブルに箱を置いて、消毒薬と包帯を取り出し]
えっと、ちょっと沁みるかもしれないけど、
我慢してね。
[片手でナイジェルの手を取り、もう一方の手で消毒液を滑らせていく。痛くない?と相手の様子を窺いつつ]
包帯は薄く巻いておくね、あまり厚くすると不便だし、
通気性も悪くなっちゃうし。
[言って、くるり、くるりと彼女の手に包帯を巻いていく。
手当ての知識はあるようだ。唯、実際に巻いていく包帯は、少々不器用さを感じさせるが。]
……これで、よしっ。
[神様……神様がもし本当にいるのなら、
こんなことをし続けている自分はとうに見放されているだろう。]
人が人を裁く――これも権力と正義を纏った人殺し。
死して尚罰が下るなら、神様はどんな罰を与えるんでしょうね。
[誰にともなく、呟いて。]
ぬかるみが嫌なら、精々這い上がるといい。
[――私みたいになる前に。
そうして席を立つと、水を飲みに一旦厨房へと足を運ぶ]
[ソファに戻っている女へと向き直り]
「さっきは、ごめんなさい」
[青の少女に促され席へと落ち着き、消毒されている間も薬は沁みているのか眉一つ動かさぬ侭に、気遣う様に問われればふるふる首を振って、大人しく治療されていくのを見詰め、少々いびつに包帯の巻かれた手を握って開いて確認し、青の少女へと向き直りふわと微笑み]
「ありがとう」
……さぁ。
教会にはあんまり、行った事がなくて。
[ローズマリーの呟きに、何処か的外れな言葉を。
神。――縋ることはあったけれど、実際に信心深いわけでもなく、聖書すら流し読みした程度でイエスの教えも多くは知らない。唯、神という虚像を作り上げ、自ら歓びや戒めを見出しているだけなのかもしれない。]
ぬかるみは、一人で這い上がるのはきっと難しい。
でも嵌ってしまった人に手を伸ばしていれば
きっと自分がそうなった時にも
誰かが手を伸ばしてくれる。
[厨房へ向かう彼女の背。届かなくても良い。
自分に言い聞かせるように、紡いだものだから]
…いつごろ衝動が起きるかによるのかしら。
面倒だわ。
皆が起きてる間に起こるようなら、考えておかないといけないわね。
[ホルダーから空の小瓶を取り出し手で玩ぶ。少し力を入れるとそれた容易く割れてしまい。手の中で粉々になってしまう]
…まぁ、追々考えようかしら。
[破片をホルダーの小さなスペースに仕舞い込むと、ゆっくりと紅茶に口を*つけた*]
[厨房へと向かうところでナイジェルの視線を感じれば
謝罪の言葉が窺えて。]
……別に。あなたがしたわけでもあるまいし。
それに、不愉快でもなかったわ……案外素直ね、彼女。
私こそ、素敵なティータイムを邪魔してごめんなさい?
[やんわりと笑みを称えてそう告げると、あぁそうだ、と言ってナイジェルの耳元へ口を寄せ彼女にしか聴こえない小さな声で]
私は、シャーロットを、殺さない――
[いつか誰かが言ったように、少し真似をして、くすりと妖艶な笑みで彼女を見れば、口を離し、*厨房へと*]
[牧師の視線に気付き僅か俯いて]
「私は、セシリアじゃ、無い
セシリアは、あの日、死んだ」
[女の寄って来るのに僅か身を竦ませるも、耳元で囁かれた言の葉に瞬き、問うより先に厨房へと消える女の後姿を見詰め、訳の判らぬ侭に青の少女の隣へと落ち着き少しだけ其の横顔を見詰め、冷め始めたパンケーキを取り分けティカップに唇を寄せる]
[セシリアは死んだという本人。
けれど、セシリアの名を呼んだ少女。
どっちが正しいのだと視線を二人へ向けた挙句、小さく首を振り。]
考えても詮無いですね。
二人目の人格が薬による影響で出てきたのでなけりゃ――
[渋い顔で紅茶を啜り。]
神様とか、罪と罰とか、
そういうのは難しくて……
解離性障害――か。
[神学よりも医学に詳しいのは自らがその当事者であるからか。
思考の深みへ入りかけようとした所で、カタリ、隣の椅子が引かれ菫色の少女を瞳に映せば、そんな小難しい考えも何処かへ行ってしまう様だ。]
ステラさん、いただきます。
[微笑んで、両手を合わせ、パンケーキにシロップを垂らしフォークを動かす。夕刻の食事、寧ろおやつに近いだろうか。昨日の障害が残って多くは食べられないけれど、少しずつ咀嚼した。
食べ終えた後は、広間に残って、緊張と退屈と少しの安堵が入り混じる時を*過ごすのだろう*]
[牧師の言葉にふるふる首を振り]
「薬が、どんなものか、判らない、けど
セシリアは、無差別に、傷つけたりは、しない
そうで、なければ、ローズマリーを、傷つけてた」
[周囲の視線に更に俯けば口許も隠れるか]
……他人を傷つけない、ということは……
薬で出てきた、というわけではないんですね?
[ふるりと首を振って。空になった皿を置いて。]
無作為に誰かを傷つけるのでなければ……
とりあえずは置いておきましょう。
……すぐにどうこうできる問題ではありませんし、ね。
[空になった皿とカップを持つと、厨房へ片付けに行き]
「セシリアは、此処へ、来る、前に、死んだ、から
私が、傷つけ、られそうな、事態で、起きて、しまった」
[あくまでも内なるもう一人の自身を死人として淡々と言葉を紡ぎ、牧師の言葉に頷いて顔をあげ、一拍見詰めてから瞬き首を傾げ]
「ルーサーは、大丈夫」
[使った食器を洗い、片付け。
ちらりと垣間見えたセシリアの言葉に首を傾げ]
……私ですか?
別に問題ありませんよ。
[少女を見遣り]
……自己防衛、なんですかね。
私はその手のことには明るくないですから、わかりませんが。
[牧師の言葉に微か口許を緩め]
「良かった」
[視線を受け止め紫水晶は静かに瞬き、思案気に彷徨う]
「良く、判らない、けど
誰も、傷つけたく、無い」
……私などより余程心配なのがごろごろしてるでしょうに。
[ちらりと寝たままの青年を見て苦笑し]
好んで誰かを傷つけようとする人は――
ここには居ないと思いますよ。
貴方も、誰かが貴方を傷つけるのでなければ、振り上げる刃は無いでしょう?
なら、誰も傷つけずに済むんじゃ……ないですかね。
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