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次の日の朝、自警団長 アーヴァイン が無残な姿で発見された。
……そして、その日、村には新たなルールが付け加えられた。
見分けの付かない人狼を排するため、1日1人ずつ疑わしい者を処刑する。誰を処刑するかは全員の投票によって決める……
無辜の者も犠牲になるが、やむを得ない……
そして、人間と人狼の暗く静かな戦いが始まった。
現在の生存者は、牧童 トビー、双子 ウェンディ、旅芸人 ドリス、雑貨屋 レベッカ、修道女 ステラ、文学少女 セシリア、のんだくれ ケネス、酒場の看板娘 ローズマリー、隠者 モーガン、学生 メイ、未亡人 オードリー、藪医者 ビンセントの12名。
―― South/Town (南部/繁華街) ――
『――あ、あと、ね。アーヴァインさんにも逢いましたよ。もちろん電脳空間(ウェブ)上でですけど。この都市(まち)がこんなになった原因を探り出す、って言ってました』
あのローマ被れの電脳廃人(ヒキオタ)に? 意外だな。
奴は情報を溜め込むだけが趣味で、まともに活用する気なんて無いと思ってたが。
『――それで、これ。なんか、急遽試作してみた、って言われて渡されたんですけど。何する物なのか、分かります?』
[そう言って少女は手の平を上に向けた。ホログラフ映像としてファイルのイメージが投影される。水晶で出来た青い六角柱のように、それは見えた]
あ……の、なあ……。どうしてそういう事するんだお前。
他人から迂闊に何か受け取るんじゃない、って。
基本中の基本だろうが?
[言葉としてはそう言ったものの、呆れの余り表情にも口調にも気迫は籠もっていなかった。少女の手の平の上で六角水晶は緩やかに回転する]
『――ええと…でも…ほら、"Nest"の常連さんだし、普段話しててもそんな悪い印象はなかったし、それにすごく必死な様子だったんですよ。俺の命が懸かってるんだ、って言ってました。
「このままじゃ次は自分だ、狙われてるに違いないんだ」って』
……いや、それは誇大妄想って奴だろJK(常識的に考えて)。
そりゃアイツの相棒(バディ)は確かにイカしてる。蓄積してる分量だけなら、そこらの情報会社にも引けは取らないだろ。
[言い返しながら男は水晶柱を見つめる。整った形状の透明な結晶体。外観からも判る、急場しのぎにしては洗練されすぎたコード構造に興味を惹かれた]
けどな。結局、都市全体が攻撃(アタック)されてるんだろう。
その中で、どうしてアーヴァインは無事だった?
あるいは、俺やお前、それに他の十数名は?
『――それは。ううん……敵性コードに捕捉されなかった?』
かもな。しかし、取りこぼしがあるとしても、一々そいつ等を潰す必要があるか、というと疑問符だね。
"Celia"だって見てきた通り、この巨大都市(メガロポリス)はとっくに機能停止してるんだから。人間で言えば脳死状態、AIなら完全凍結状態。放っとけば死んじまうんだ。
―現世/南部あたり・カフェ―
[音を止める。]
[洗った食器は置いておく/自動洗浄器は稼動していない。]
―― [人の名を呟く/整理] ―― 5。
[ホログラムを再び眺める。]
[幾つもの点]
――これは人と推測可能。付近に
[幾つかの色を見る。]
送られてきた/何らかの共通点があると推測//共通したもの/自覚症状は無――いものと思われる
通信不可能/何かある者だけ許される行動権/……
――何かとは何か。知る人は居るか。
[ホログラムの点が示す方向へ、*目を向けた。*]
『――でも、基盤設備はまだ稼動中ですよ? この都市の外へはアクセス不能になっちゃってますけど……まだ終了処理(オフ)されてはいないと思うんです』
そうだな。
まだ出来る事は――やるべき事柄は、残ってる。
『――ですよね! それじゃ、今からどうするか指示して下さい、マスター。あと、水晶(これ)の取り扱いに関しても』
[彼女の言葉に頷き、男は水晶柱に手を伸ばす。512ビットからなるハッシュ関数を受領、同時にファイルの格納座標(アドレス)を確認した]
奴(アーヴァイン)の狙いに乗るのは癪だが。
ひとまず何処かに腰を落ち着けて、解析から始めよう。上手くいったら今度たっぷり絞ってやる。
『――わたしも何か、せびった方がいいですか?』
……まったく。好きにすればいいさ。
── 現世<Mundane> / 西南部・事務所の外 ──
【すぐに追ってこないのは、あの“髑髏”を持っている余裕からか?】
[セシリアは顎を上向けにしたまま、オーキッドパープルに透ける睫毛を揺らした。
あの「訪問者」に渡された手紙を確認したい──と言う意識が強くなっている事の原因が分からずに、セシリアは自分自身に驚いていた。]
【否、優先順位が──】
[が。差し当たり、理由の探求よりも、魔獣と黒から距離を置かなくてはならない。
自己生命の保全──それは、安全を優先する機能ゆえではなく、元とされたPGMを本質とするAIであるセシリアにとっての最優先事項が、メガロポリスが現状に陥った理由を解明する事でも、手紙を読み返すことでもなく──教団本部および、Masterの元へもどり、両者の安全を守る事であるからだ。]
【繭(コクーン)に避難してきたはずの下層民の暴動は、サティアン内の非常扉の閉鎖と室内へのPGM散布で抑えたと聞いたわ。
第5Satyamなどは元々、肢体不自由の修行者ばかり。
さぞ、酷い殺され方をしたに違いない。
──嗚呼、地上だけではなく、下層にも粛正が必要だ。】
[時間差で、強化ガラスの破片と共にシャロンのコートが地面に落ちてきた。
コートのポケットから、様々な物が転がる。
サプリメント、煙草、ミニアダルトグッズ、おそらく事務所の公用キーの束。]
[セシリアは、シャロンの車─ホットピンクのやたらに快速で陽気な─を思い出し、キーに手を伸ばす。
セシリアが伸ばした手のすぐ傍。
バサリ、滑り落ちたシャロンの手帳が開くと──のセクサロイドのミニフォトホログラムが、手帳のページから何体も何体も立ち上がった。それは、おそらくシャロンが最近保護し終えた案件の記録と、保護予定のセクサロイドたちだ。]
…・・あ。
[元々はカタログ用のフォトdataを転載したものだろう、上品な衣装を纏った少女に、分かりやすいポーズを取る全裸の青年、他にも利用者のニーズに合わせて老若男女のセクサロイドのフログラム達と、視線が合ってしまう。]
[──セシリアは一瞬、何とも言えない感情を抱かずにはいられなかった。]
【セクサロイド】
【私もこれらと変わらないのだ】
[キーを掴み、シャロンの車を拝借して、セシリアが事務所を後にするまでの動作には一切無駄が無かった。ただ一つ、その手帳を拾い、車に運んだ事を除いて。]
― 現実世界<Mundane>/西部区域:マーシュ邸 ―
まま、マーシュさん!
ここここいつァいったいなにがあったんですかァ――!!!
[さすがの俺も、思わず叫ばずにはいられないような室内の光景だった。ホログラム装置が作動したままで、彼の寝室は以前来訪した時とは異なった内装になっていた。
壁面は青空に雲。動物たちが舞い踊るファンシーな図柄。床にはふかふかしたウレタンマットが敷き詰められている。室内は積み木やおもちゃでところせましと埋め尽くされ、空中をバルーンアートがぷかぷか浮いていた。
吹き抜けになった高い天井からは、キラキラと輝く銀の星屑がゆるやかに舞い落ちてくるイリュージョン。]
[乳幼児のためのプレイルームそのままの姿と変じた室内の中央には、通常サイズより明らかに巨大につくられたベビーベッドが置かれている。そこに少女を押しつぶすように規格外にでかい赤ん坊が倒れていた。]
「……ヴィンセント君。…はやく……なんとかしてくれたまえ……。」
[そいつがマーシュだった。
資産家で大株主のアンドリュー・マーシュ。
俺は目を見開いたままたっぷり一呼吸絶句していたが、ようやく我にかえる。戸口のところで双子を待たせたまま、彼の元へと歩み寄った。]
[マーシュはご丁寧にも、自分の身体のサイズにぴったりとあわせてつくらせた、オーダーメイドのロンパースを身につけている。右手にPDAを握りしめ、苦しげに喘いでいた。一世代前のPDAは、ピンクの頭巾をかぶったウサギのマスコットのカバーで覆われている。
マーシュはこういうことに細部までこだわる男なのだ。
部屋のどこを見渡しても、彼の“夢”を妨げるような無粋なものは見あたらない。それらは、注意深く隠されていた。]
ううむ……
[俺は思わず呻いていた。series Matilda。俺たちが丹誠込めて創りあげたかわいこちゃんが、あられもない姿で汗だるまの下敷きになってるじゃないか! ショートボブの髪はくしゃくしゃに縒れ、その華奢な肢体はマーシュの巨体によって柔らかなスプリングのマットレスの中に半分以上めりこまされている。
Leon Suiteがちょいワルオヤジ向けのパッケージだなんてのは薄っぺらいキャッチコピーでしかなかったとしても――だからといってこいつはあんまりだ。俺はほんの一瞬だが、マーシュに殺意を抱いた。]
「イタイイタイ!」
[引っ張り起こそうとすると、マーシュは悲鳴を上げた。
ガイノイドのseries Matildaは細い足をマーシュの腰の上で交差させ抱きついたままだ。マーシュの肉づきのいい首筋には、爪のひっかき疵と真っ赤な指のあとがクッキリと残されていた。ガイノイドは意識を失う寸前、恐ろしいほどの力でマーシュの首を締め上げたという。
あやうく死ぬことだった――とマーシュは語った。
しかし、困った。
性的機能を有するガイノイドの膣痙による抜去不能事故というのは非常に珍しいケースだ。そんなものは都市伝説だとばかり思っていた。]
――マーシュさん
[絡み合った二人の身体をクッションを使ってわずかばかり持ち上げるようにしながら、彼に話す。]
これは言っておきますけど、うちの製品の不良ではないですよ。事故を起こせば顧客の命に関わる大問題ですからね。義体の暴走や不正規な運動が生じないよう、徹底的な試験が行われてるンです。
[性行為をしないという建前で売り出されるガイノイドも、数万回もの模擬性交による信頼性テストに合格しなければ出荷されない。それらの事実は“純潔”信仰を有する客層の心情に配慮して社外秘にされてはいたが。
わかってるわかってる、問題にはしない――と彼は言う。それよりも早くなんとかしてくれと。
俺は、別室の書斎からケーブルとハブを持って来た。]
[series Matildaの首筋、延髄にほど近い位置にあるコネクタを指でさぐりあてると、ケーブルを接続する。
原因を特定するため、有線でトラブル発生前後の記憶をダウンロードした。]
(うわ、こいつは――)
[思わず顔を蹙める。
マーシュが赤ん坊で、あやしていたお姉さんにイタズラをされているうちに事に及ぶという筋書きの遊技だったようだ。わけがわからない。俺はひどく頭が痛んだ。
マーシュの元にやってきたこの娘はまだ半年も経っていないというのに、実に様々なパターンの性的幻想につきあわされてきたらしい。膨大な記憶がそこには残されている。]
<ダウンロードを継続しますか?>
[俺は一瞬躊躇した。普段なら、客の秘め事を覗き見ようとはしない。職業的な倫理の上からも、個人的な信条からもだ。
だが……。
脳裏にマーシュの娘の姿が浮かぶ。エイミー・マーシュ。
俺は<Yes>を選択していた。
膨大な容量のデータが文字通り光の速さで流れ込んでくる。閲覧は先送りにし、それらをclosedのストレージへと避難させた。]
[――さて。
問題は、現実的な対処についてだ。
トラブルは俺自身には少々解決が困難な問題を含んでいる。
俺はコンダクターに助力を仰いでみることにした。
series Matildaのケーブルをマーシュの屋敷のサーバに接続し、series Matildaを経由してトビーにコールを送る。]
《コンダクター、今大丈夫かい?
――すまないが、少しばかり力を貸してもらえないだろうか
オンラインでの対処だけで済む。そう時間はかからないと思うんだが――》
[そうして、*返答を待った*。]
── 現世<Mundane> / 西南部→シャロンの車で移動中 ──
[ドリスから遠ざかるため、まずは教団本部との距離よりも、車を走らせやすい道路を優先的に選択し兎に角飛ばした。
静止したトラフィックを、障害物レースの様に避けて走る。
シャロンの車は持ち主の性格に似て、馬鹿馬鹿しくて笑いがこみ上げてくるほどにスピードが出る。車に同期して、直接運転モードにすると、運転に使用しない手足が(何時ものように)疼いた。
今の──セシリアの中で渦巻いているのは、]
【安否のみしか確認の出来なかったMasterの容態。】
【──元々、最近は病状が芳しくなかった。】
【粛正に似た──電脳ふくむメガロポリスの機能停止】
【Masterがこの事態──先刻のAIの召還をふくめて──に関与しているのか?】
【信者たちの状態および、本部の損傷と修復については、メガロポリス停止に関与した者の攻撃がない限り、ある程度予測がつくので──今は置く。】
【嗚呼、手帳を持って来てしまった所為で、以前にシャロンがセクサロイドについて話していた事を思い出す──嫌だわ。】
[シャロンの声がリアルに再生される。]
「大昔の動物愛護団体とわたしって似てるなって思う事があるのよ。
過去の法律では、誰かのペットを殺すと器物破損罪になったの。
同時期の世論に、イルカやクジラは哺乳類だから食べるのは野蛮だと言う団体もあったらしいわ。
ねえ、似てるでしょ?
あくまで機能のために存在するロボットAIと動物。
動物愛護って言っても、都市に居る全部の野良犬や猫が保護出来るわけもなし。動物達は処理場で薬殺ののちに焼却されるの。
人格の付与されたセクサロイドと、知的な動物であるクジラやイルカ。知的なものとして扱うべきだと主張すると、やっぱり似てるじゃない?」
【事務所の地下には、ビルの高さよりも深い倉庫があって、行き場の無い人形たちがメンテナンスされながら、待機してる──。
シャロンは彼等をプロデュースする。
過激にして陽気なショーにして、世間に問題提起を行う。
…・・それは知ってるわ。】
[その話の続きは、セシリアがシャロンに対してある種の親密さを感じさせる内容ではあったのだが。]
【今は、考えたくない──。】
嗚呼、Master・・…
[身体にぴたりと寄り添うように設計された流線型のシートに背を押し付け、セシリアは息をつく。薄く開いたくちびるから零れた言葉は、]
ただ、私は
MasterのAIでさえ有れば──良いのです。
[何が一体、セシリアには堪え難いのか。
混乱を解決する手がかりを求め、セシリアはあの日の訪問者から渡された手紙を開いた。当然のごとく、走行上の障害物を除いて、周囲の静寂と安全を*確認してから後に*。]
── 現世<Mundane> / 西南部→シャロンの車で移動中 ──
―― South/Webcafe"BruteForce" (南部/電脳喫茶) ――
[受付嬢こそ昏倒していたものの、座席の確保には何ら障害は無かった。むしろ下層住民だと明かさずに済んだ分、手間が省けたかもしれない――そう考えながら男は接続を開始する]
状態良好――全没入(フル・ダイヴ)、開始(オン)。
[首筋に設置されたジャック=イン端子を通じ、一マイクロ秒毎に何千億の電子が行き来する。交換される情報に交歓する意識]
―― Public/White Mist (解放領域/白の靄) ――
[接続処理を完了して降り立った空間は一面の白。
認識可能な対象はただ己自身だけだった。手探りのごとく周囲に探査コマンドを送出するも、大半が応答が無い]
何だ、こりゃ。これもあの影響か……?
[眉を寄せたものの、靄の彼方で黄色い光が点った]
『――マスター! 探しましたよ? っていうか……さっきよりも濃くなってますね、これ。まるで蜘蛛の大群が巣を張り巡らせてるみたい』
領域そのものが侵蝕されている、という事か……。
『――半時間前にはまだかすみ(haze)だったんですよ。この分だと、次に来たときは霧(fog)ですね。それも極め付きの濃霧』
そうか。なら、急がないとな。
[アーヴァインの個人空間に対象座標を設定、門(ポータル)を呼び出してノックする。Mainとして使用している"Gateway 2.0"本来のものに手を加えた覗き孔(ドアスコープ)機能で転移先を確めた]
―→Closed/"the Inquistion" (専用領域/"審問所")
―― Closed/"the Inquistion" ――
[遷移を終えて回復した意識が把握した場は、さながら大地震に見舞われた書庫のようだった。変数空間だけでなく定義領域にまでぶちまけられた屑(トラッシュ)データが至る所で誤作動を誘発し、保管していたファイル群は今にも溢れ出しそうになっていた]
ヒュウ。野郎、ここまで適当なデータ管理してやがるとは思いもしなかったな。まるで聳え立つクソの山だ。
『――マスター。何か、変ですよ…管理者(root)権限の破片が、ほら。あそこ』
[幾度か目をしばたたかせて見つめると、細長い直方体の鍵が半ば砕けているのが見て取れた]
おいおい。まさか……だよな?
[思わず呟いて、慎重な足取りで近寄っていく。二本の指で摘み上げた鍵には、紛れもない【アーヴァイン】の個人認証サインが刻まれていた]
……はぁ。じゃあ奴の言ってた事もあながち妄想じゃなかった、てこと、か。オーケイ。奴は狙われた。そしてここに死んでいる。
だがよ、"Celia"。それで俺はどうすればいいんだ?
例のファイル自体が残ってなきゃ、手がかりも何も無いんだぞ?
[八つ当たりに近い軽口を叩きながら、データの残骸を脇へ寄せる。右胸の辺りから斜めに引き千切られたような男性のアイコンが現れた]
……なあ、アーヴァイン?
『――ええっと…でも、たしか…ここらへん、に』
[中空を掴むような手つきで幾度も探す少女の様子を、男は気のりしなさげに眺める。その間にも指先から、アーヴァインの受けたと思しき攻撃の様相(タイプ)を知ろうと試みた]
【どこの攻撃PGMだ…基幹構造としては…自壊命令? 或いは期限誤認? web上の実体を阻害したり破壊する形式ではないように見える、が……?】
『――あ! あった、ありましたよ!』
[悩み込んだ思考を遮るように、"Celia"の弾んだ声が響く。見れば彼女は、先ほどと同じ形状の、青く半透明な六角柱の水晶を手にしていた]
[512ビットのハッシュ関数を照合し、同一性を確認する。無記名だった所有権に個人認証サインを書き込み、専用化を行った]
オーケー、お手柄だな"Celia"。
それが見つかれば用は無い。引き上げるとしよう。
『――え。でも、アーヴァインさんは……このまま?』
仕方ないさ、こんな事情じゃな。それにもうじき、此処は壊れるだろ。定義領域の虫食いがこれだけ進んでちゃ立て直しようが無い。自分で集めたファイルに埋もれるなら奴も本望だろうさ。
[乾いた口調で言い切って、退出のための門を開く。円形に描き出されたゲートに乗って一瞥を投げ、彼と少女はその場から姿を*消した*]
―→ Mundane/South Ward/Webcafe"Brute Force" ――
── 現世<Mundane> / 西南部→シャロンの車で移動中 ──
[ハイスピードで運転を続けながら、手紙を開く。
セシリアが、調査員を名乗る訪問者から受け取った“手紙”は、いわゆるアナログ形式で送られる公的な重要書類の様な、素っ気ない外見のものだった。
書類の外見に反して内容は、教団の幹部ですら知り得ないセシリアの特殊な成り立ちに関連した緻密なもので、(セシリアも知っているが一般には公開されていない)Masterの過去、“スクール”について、またセシリアの知らぬ事──例えば“S2”や“Alchemist”と言う単語をふくめ、随分と挑発的な印象を受けるものだった。
調査員は、当然のように尋問のため監房へ放り込んだが、それも送付者には想定内の出来事であったのか、翌朝には調査員は氷が溶けるように──あるいは魔法のように──消えていた。
セシリアは手紙を誰にも、Masterにも見せる事無く、ボディスーツの内ポケットに忍ばせ持ち歩いていた。]
これは──、な
[白い紙片は発光し、メガロポリスを3D化したホログラムの地図に変化した。
地図上には、何かまるで人の存在を表すかのような点滅するドット。高速で西南部から移動している球形が、車に乗っている自分だと言う事に気付くのに、何秒もかからない。数えてみると12個の球体が動いたり、静止したりしている。
指先でドットに触れると、IDのようなものが薄く浮かび上がって来た。いくつか触れてみたIDはどれもおぼえないものばかりだったが、そのうちの──南部に向かって移動している1つのドットが、先刻遭遇した“黒(ドリス)”に思えた。]
【では、Masterでは無い。】
[セシリアは顔の上部をすっぽりと覆う漆黒のシールドの奥で、オーキッドカラーの瞳を大きく見開き、地図を凝視しながらそう呟いた。地図とMasterの事に気を取られ、道路上で横転し停止したまま車に危うくぶつかりそうになる。]
──ッ!
[プラグ接続の状態で、無茶なドリフトをすると全身に衝撃が走った。]
[西南部周辺でも、街中のAIが停止しある程度の時間が経過した。
運転者の昏倒あるいはAIの消失によって失った乗用車は、オート走行車もすでに軒並みクラッシュ、横転、建物に激突した後で酷い有様だった。それでも、シャロンの事務所にセシリアが向かった時刻には、昏倒した市民を乗せたままオート走行する車の姿も多く有ったのだから、障害物だらけのドライブも数刻前よりは*容易になっているのだろう*。]
── 現世<Mundane> / 西南部→シャロンの車で移動中 ──
── 現世・西部と南部境界 ──
[トビーに問われると少し間をおいて答える]
この地図に映ってる点が、あたし含む手紙を受け取った人たちだとするなら、この手紙を出した人がいるんじゃないのかなって思うよ。
この点がどういう仕組で表示されてるのか、解析すればわかるかもしれないけど、もし”手紙”に反応してるのだったら、手紙を出した人は持ってないかもしれないし。
こんな状況を作り出してどうしたいのかはよくわかんないけど、どんなに自分に自信があったとしても、残りがみんな協力してやってくれば、わかんないじゃない?
ああ。でも協力者とか、賛同者とか、そういう人はいるかもしれない。この点の中にね。
だから、いるかもしれないしいないかもしれない。あたしが犯人なら、映らないようにしたい、かな。
あのおじいちゃんはどうなんだろう。可能性はあると思うけど。
[言い終わると、再び歩き始める]
[地図の一点で目を留める]
確かこの区画って空中庭園ってあったよね。
あんまり上に来ることってないから、今度来たときは行ってみたい、とか思ってたんだけど。
[地図上のそこには点は見あたらなかったが]
行っちゃ駄目?
情報得られるかわかんないけど。その後あの辺のクソ高い建物とかに人がいるか見に行くってことで。
[振り返り、トビーの同意を得ようと彼を*見た*]
―現実世界/中央部電波塔―
「……蹂躙されておる。メガロポリスが。」
[電波塔内、その周囲、メガロポリス全体から
喧騒が消えた。そのような感覚に襲われる。]
「これ以上。これ以上、メガロポリスが
侵されるのは耐えられん。そして許せん。」
[多層地図には複数の赤い点。柱の下部の
ランプが赤く光る。赤は怒りの色。]
「やられる前にやる。どの道、私が簡単に
始末されるようでは……………。」
[装置がグオングオンと*稼動する*。]
「もういい。私が出る。」
── 現実世界/西部と南部境界 ──
地図に映っているなら、よっぽどの馬鹿かよっぽど自信があるのかのどちらかだね……。
[くすっと振り返った少女に、]
あははっ。
いいよ、行ってみよう。
空中庭園に行くには、こっちから行った方が早い。徒歩でも行けなくはないけれど時間がかかりすぎるから、乗り物を使おう。
[快く頷き、先導する。]
―― 現実<Mundane>/南部大通り ――
[ガーゴイルを街角の装飾品の一つと化し、黒は動き出す]
[純粋なUtopiaの存在である黒に虚像は必要不可欠ではない]
[あえて姿をMundaneの人物に見せたい場合を除いては]
サァテ、ドウ動クツモリダ。
[電脳世界<Utopia>から現実世界<Mundane>を覗き見る]
[金の髪の少女AIに気付かれるか気付かれないかの距離で観察]
[気付かれたなら少女AIの性能が予想より上との試金石も兼ねて]
[双眸を半眼に細める。]
≪――V.Cかい。
時は金なり。
こちらは可愛い少女とデート中だよ、五体投地した者共群れる空中庭園に向かってね。≫
[視界の中に映る多層地図が一瞬揺らめく。]
≪――何用だい?≫
[そう問い返した時、
視界に映っている多層地図へ、何処からともなく、柔らかく仄かに光る粒子が集まってきた。]
【何ラカノ、ファイルト推測。内部構造ハ不明】
[ホログラムを示し少女は懸命に説明している様子だ]
[メモリの大半を目の前の男に割いていると認識/距離を詰める]
[都市全体/攻撃/アーヴァイン/Celia/マスター]
[電脳世界通信ではない掠め取ったキーワードを演算していく]
【アノ男ガ、セリアのマスターダナ。
アーヴァイントハ誰ダ。新タナ関係者カ?】
[動き出す姿をしばらく見つめ、掌の髑髏に黒目を向ける]
[こちらもあちらも映っている地図/見れば存在は気付かれる]
[情報を得て気付かれるか/情報を得られず気付かれるかの二択]
『指揮者。手紙に組み込まれた共有Systemが作動し始めました。』
――メイ!
[手紙を取り出すと、そこにも凝結しゆく粒子達――Data。Blankだった手紙の中に宿る。
同時に――Irvineの名前が浮かび上がるが、瞬く間に彼の名前は霞のように消えゆく。
後には緻密な、しかし何らかの断片としか分からないDataの欠片が残されているだけだった。]
これは……
[光点の1つは消え、永遠に光る事はなかった。]
[男が電脳喫茶へ消えたのを見届け、再び髑髏を眺める]
[男を示す光点とは別の一つが、濃霧に沈むように光を弱める]
[Irvine/アーヴァイン/先ほど耳にした名が浮かび消えていく]
[やがて光点は完全に消えた]
確カメル必要ガ、アルナ。
[瞳孔をキュルリ絞り、漆黒の腕を伸ばす/0と1の光砂が渦巻く]
―――サモン、キマイラ
―――サモン、グリフォン
[呼び出したのはUtopia用PGM二体/消された点に対する警戒]
[電脳魔獣を従え、最初の目的通り移動する光点を追いClosedへ]
[離れて降り立った廊下に相当する空間は、白く霞んでいた]
急ガナイト、危険ダ。
Closedマデ攻撃サレ始メテイルナラ―――時間ガナイ。
[黒の専用領域/魔窟を壊される訳にはいかない]
[髑髏の光点から、男の目的の個人空間の*座標を割り出す*]
― 現実世界<Mundane>/西部区域:マーシュ邸 ―
[series Matildaを抱き起こすように抱えながら、彼女の電脳を介してネットワークの海に潜る。]
《やァや。トンビちゃんはデートかい? 俺っちはチート。なんつて。
空中庭園か。いいねェ――。理想的なデートコースじゃないの。》
[空中庭園に備えられた風景観賞用の定点カメラにアクセスすれば、そこに倒れ伏している人々の姿が目に入った。とりわけ、ブルーの色彩が目を惹く。
公立学校の生徒たちだった。
大方、校外学習の時間にでもこの異変に遭遇したのだろうか。]
《ん? どうした!? コンダクター…――》
[突如緊張の色を帯びた彼の声音に耳を欹てる。
視界の端に小さく配置しておいたスタンドつきの万華鏡が光を帯び、警告メッセージが現れた。
拡大し覗き込めば、光点が一つ消えてゆく。]
(これは一体――)
[思わず、マーシュを振り返る。
この男がこの事件に関わっている可能性があるのだろうか。]
ねえ、マーシュさん。
あなた最近、社に俺宛ての手紙を出したりしましたかねェ?
[マーシュはきょとんとした顔をしている。
どうやら、彼ではないようだった。
少しばかり引っかかる心当たりがないとはいえなかったのだが、どうやら取り越し苦労だったようだ。]
《ねえね、トンビちゃん。君さ、なにか知ってるの?
今回の事件についてさァ――》
[電脳上の万華鏡の上にふわりと浮かんで掻き消える鍵を見つめながら、ぽそりと呟いた。]
溯る事、3時間48分08秒前。
電波塔を中心とし広まった正体不明のProgram。
未だ知らぬものも多いが、そのProgram――此処では眠りの神= Hypnos と呼称しよう――は、特定時間に発動された。
発動前のそれは、電波塔を中心とし広まったのではなく、
また、境界(エンダー)へと向けて広まったものでもない。
発動の条件指定は未だ明らかにさえされていない。
広まる様を喩えるならば、湖面に発生した霧。
冷たい穹窿より舞い降りる白き結晶。
天使の羽で包まれる聖者。
メガロポリスの基幹システムに這入り、彼のメガロポリス外には影響を及ぼさぬという限定的効果を齎した。同域、現実/電脳両世界に置いて、相互関係する全ての環境へ侵食してゆく様はVirus的様相を思わせる。
即ち、彼のPGM、Hypnosの元に臥したもの、既にHypnosの影響を受けた物理的/仮想的領域に接触すれば、同PGMの影響を受けるという事である。
仮に、眠りの神が羽ばたき外部に出る事があれば、
電脳世界は、瞬く間に麻糸の如く乱れた事だろう。
人の為に作られ、人の為に動き続ける都市は今や沈黙。
人が居なくても整然と動き続ける機巧。
上層と存在を認められない下層は分断され、
下層の人々の混乱は目を覆うものもあったかもしれない。
本来の機能遂行能力は失われ麻痺している。
人々は倒れ目を覚ます事はなく、
人々を助ける為に作られた存在達とて動く事はない。
両者は見紛う程に。
人形の物置だとこの都市を嘲笑したとて、誰が否定するだろうか。
―現世/南部と中央部の間のカフェ―
――?
[一瞬、ホログラムが乱れた、ように見えた。]
[否、違う。薄い。]
光源の変化を確認。
情報の変化を確認。
"Irvine"
[一瞬の視覚情報。]
――――光源の消失を確認。
――マンデイン ;East-Area ;
カテドラルΩ;――
[どれほどの間、祈るようにしていたのか。
実際には、そこを訪れてからどれだけの時間が経過したのかを、stellaは正確に認知していた。
尤も、衛星との通信も遮断されているから、内臓された時刻表示が狂っていてもそれを修正する術は無いので正しく時を数えることが出来ているか否かを確めることは出来ないが、stellaにとっては問題では無かった。
stellaの意識を現実へ引き戻したのは、絶えず視界の片隅に表示されている光点の消失だった。それは単なる視覚情報としてではなく、システム上で個数を計測されて表示されている。視る事をしなくても即座に知れた。]
【光源が動ける"人"であることはほぼ確実な事実】
――消失する=……動けなくなる?
動けたものが動けなくなる=この影響を受ける?
[倒れている人たちを視界に入れる。]
[思考]
[いつしか空の太陽は、斜めに傾く頃になっていた。]
[まだ明るいが、そのうちに太陽が赤く染まりだすのだろう。]
[レベッカはそれを見てはいないものの、知識として持っていた。]
――影響を受けなかったのが突然影響を受ける?
ウィルスであるのならば、変質したか。
ごく少数の"動ける者"たちのために?
意思を持って、"光源を消"そうとしたか。
そうであるのならば、――
[光源を見つめた。]
[表情は変わらない/見る人が(見せる人が)いないから。]
光の無い者には不可能。
外部からの影響は――恐らくは受け付けない。
可能性として最も高いのは、
この光の中の誰か。
[恐るべきは感情モジュールの働きである。
≪輪廻≫によって備え付けられたPGM自体は、珍しいものではない。凡庸とすら言って良い。
ただ、そうして得た感情はあまりに深かった。
それは悲しみと分類されるもののようだった。
そしてこれまで、時間の経過とは、絶対のものだった。
都市中の時計が、各々衛星からの信号を受信し、等しく正しい時を刻み続けるのと同じくして、AIの内臓時計も在った。今でもそれは変わらない。だが、時が経過していることを認識出来ないでいた。感情というものはそこまで大きなものであるのか。
カテドラルの床へ長く伸びるようになった器物、または身じろぎすらせぬ人の落とす影を見つめた。相も変らぬ静寂。自動演奏ですら鳴りを潜めて居る。]
─ 理想郷<Utopia> / UNDER・裏通り ─
[人影の一切ない最下層領域を歩いている]
一応、目的は果たしたとしてもいいのかしら。
だったら次は、どうするべきか。
[独り言]["地図"を眺め]
この領域にはだれも居られないみたいね。
大半は、現世に集中してる。
ルーサーお兄さんのラボに遊びに行ってもいいのだけれど
[万が一、彼らが"倒れて"いたりしたら]
やっぱり一度、上がるべきかも。
――南部と西部の境――
[トビーの先導に従って、後をついていく]
トビーってば、話がわかるじゃない。
やっぱりね、一度は憧れるわけじゃない?
Utopiaで情報だけなら集めてみたけど、実際に行くとなると違うし。
バーチャルでもあったけど、直接風を肌で感じてみたいっていうのかな。
[半分妄想の域に入っていきそうな頭を現実に引き戻したのは、視界に映った地図と、トビーの自分を呼ぶ声]
今の?
[消えた点は一つ。消える前に見えたIrvineの文字。点が消えた後に、違和感も感じたが、それは長続きすることはなく]
――まだ結論を出すには情報が足りませんね。
[しばらくホログラムを見つめていた。]
[その後、そう口にすると、立ち上がる。]
行っていない場所へ行きましょうか。
話していない人に会いに。
[光を指でなぞるように動かす。]
[近場の距離を*算出中*]
["浮上"プロセスの途中][意識に何かが引っかかる]
──目的──SSSの鍵──お爺様がお持ちで──それじゃあ"何故"──他に残された人──わたしの手紙──"かけら"──何の?──血の中──何が?──
[仮想のボディ、薄い胸に手をあてる]
[すべてを組み上げるには、まだ情報が足りない]
なんか、痛い────。
[呟く間に、プロセスの終了が告げられる]
……点が消えたってことは、動かなくなったってこと? だよね。
表示されたのが名前、かな。
――Irvine。
どこかで聞いたことある名前なんだけど。聞いたっていうか、見た、かな。なら、Utopiaのどこか。情報屋のとこかもしれないけど。
[立ち止まり、考え込むように視線を巡らせる]
何で、消えたんだろ。
他の人と同じように意識を失った、ってことだよね。誰かの襲撃を受けたのかな。
―― 南部と西部の境 ――
≪いや――…V.C、ああ…Irvineという名前が一瞬。
それに…≫
≪事件の前に、用とは一体何だい?
先にその用件で呼び出したのだから、先ずはそれを聞かせてもらおうか。
必要があればそちらに潜る。≫
[ヴィンセントに返答すると、]
有名な人物、かい?
………襲撃……だって?
この点灯してる誰かが、Irvineをやった。
それとも映ってない誰か?
映ってるかどうかよりも。
どうしてやられてしまったのかが問題よね。
実際は後からこの変な事態に巻き込まれたのかもしれないけど。
もし誰かにやられてしまったのなら、今こうやって表示されてるあたしたちもやられる可能性があるってことか。
なら。
この表示されてるのってやばくない?
ここにいますっていってるようなものだもん。
[考えを聞きたいというようにトビーを見る]
─ 現世<Mundane> / 電脳街"戎克" ─
[遠く近くで、触媒を排出する音が聞こえる]
痛……。
[実際には痛みは感じていない]
[理想郷での知覚が、現実の知覚と混同]
[ポッドの中に留まったまま][薄い胸に手をあてる]
……どこへ、行こうかしら。
とにかく、人のあつまるところに。
[ポッドを降りて、衣服を身に着ける]
──あれ?
[ワンピースの前ボタンを留める手がはたと止まる]
なんだろう、これ。
[左胸][紫色の]
……痣?
こんなところを打った覚えはないんだけど。
[ぽたりと落ちた血痕に似た歪な形]
有名っていうか……Utopiaのどこかで名前を見たんだと思う。
上の人間との関わりなんてないし。
あたしが関われるっていったらUtopiaのどこかで、だもん。
襲撃って思ったのは、他の人と同じようにばたばた倒れただけなら、彼の周囲にももっと点があっても良かったんじゃないかなって思うのよ。
エリアごとに倒れていってるみたいだし。
彼の周辺はまだ無事だったってことになるでしょ?
でも、Irvineの点は消えたのに気づいたくらいだから他に点なんてなかったし。
なら、同じように手紙を持ってたと考えた方が自然。どうしていきなり消えてしまったのかはここでこうやって立ってるだけじゃ判らないけど。
―― 南部と西部の境 ――
その可能性は充分にあるね。
それに、この共有System――…。
Irvineの点がなくなったと同時に、何らかのDataが送り込まれてきた。
[前方には真っ白い巨大な機体が待っていた。空中庭園へ行く為の乗物で、両側に羽のような推進器がある。]
それに……犯人でなくとも、僕達が犯人だと思って襲いかかってくるものも居るかもしれないな。
手紙か。
[深く頷きメイを見て、]
現実/電脳の2つの位置は記憶しているかい?
僕はUtopiaから、Irvineの様子を探ってみたいと思うけれど。
― 現実世界<Mundane>/西部区域:マーシュ邸 ―
[事件の話の前に要件をと問われ、本来の事情を話した。]
《そうそ。お願いしたいのはねぇ――
コンダクターとしてのおしごとなの。おとなの。
そっからちょちょいとこの娘の電脳にアクセスして、筋弛緩PGMを流し込んで欲しいのよ。
俺っちができないこともないんだけども、うちの会社の義体だったりしてさ。社の人間は触っちゃまずいとこなの、これが。》
[異常動作があったのは、不随意運動に関わる部位だ。人間でいえば無意識下の運動にあたるこれら不随意運動を司るモジュールを初期状態に戻したりファームウェアの書き換えに社の人間が関わる時には、登録されてる認証キーが照会される仕組みになっていた。義体側に技術者の行動が記録され、不正はすべて証拠に残ってしまう。]
《頼むよゥ。規定以上のお代は払えると思うかンら。》
[金銭的には申し分のない額を支払える人物のハズだ。俺はマーシュを振り返る。]
《まあ、そのことがさっきの疑問にも関わりがあるんだけどね。
チェックをしてみたらコードの中に妙ちくりんなものがあってさ。トンビちゃんなら色んなプログラムを扱い慣れてるから、なんか似たものを見たことがあンのかもって思ったのよ。
それで聞いてみたわけ。》
[大きな白い機体を見上げ、軽く口笛を吹く]
これで空中庭園まで行くんだ?
ん? 二つの場所ってIrvineの? 現実の方なら…たぶん記録がゴーグルに残ってると思う。
でも、どして?
[改めて、現在表示されている光点――恐らく、現在活動をしているものの所在を表示している。ドリスとの邂逅の際、ドリスの位置と光点の表示が重なったことからそれをほぼ確信/確定――の数を確めた。10―ten―、11―elven―……]
――Mundane South-Area 電脳街――
[カテドラルを離れ、光点のひとつがある位置へアクセスした。通りにホログラムが現出する。
目指す店内へ現れることは難しいと見えて、店の入り口で佇んだ。]
── 現世<Mundane> / 西部(車中) ──
この……地図上のドットの場所に誰かが居る、のか。
[車を走らせていても、廃墟と化したハイウェイは気味が悪いほどの静寂。ドリスから遠ざかるために、距離を稼ぎやすい大通りを選んで来た所為で、セシリアは、出発地点になった西部の空中庭園の近くに戻って来てしまっていた。
ふと見覚えのあるマークを大きく陥没した道路に見つけて、セシリアは急ブレーキをかけた。素早く、車外に降りたセシリアがそこに見つけたものは──]
≪分かった。
痕跡を残さずにそちらの仕事を請負うよ。≫
[軽くどのような状況なのかDataを求め、]
≪こちらも少し用件があってね。
10分程待って欲しいが……妙なCODEだって?
妙なCODEなら、……調べられないのかい?≫
[口にしない何か。]
少しUtopiaに潜る必要が出来てね。
潜りがてら、Irvineの様子も見ようと思ったけれど。
――…やっぱり、空中庭園に行くつもりかい。
[少し呆れたように。その機体は、周囲の展望を眺め易いように、乗客が乗れば真っ白い機体の表面はクリアになる仕様だった。]
[機体の体積が3分の1ほどに減少するほどはげしく変形し、赤黒く染まった白の大型ワゴン。空中庭園前のステーションで別れた、信者たちだった。]
生身の身体は、壊れやすいですから──ね。
[セシリアの声が掠れる。
白いボディスーツ姿のセシリアが道路断面の際に立つと、小さな瓦礫がパラパラと地上に落下した。]
[とりあえず気を取り直して服を着け、"Luth"を伴い店へ戻る]
["地図"を表示させ][表面をなぞっていた指が止まる]
お店の前?
どなたかしら。
[まるで警戒することもなく、店から裏通りへ]
─ 現世<<Mundane> / 南部学術区域 電脳街 ─
― 現実世界<Mundane>/西部区域:マーシュ邸 ―
[コンダクターの了承の声に、喜色満面で口笛を吹く。]
《あんがとトンビちゃん。大好きよ☆
俺っちもAIの開発に関わってるかんら、解析できなくもないんだけどサ――》
[このコードはやはり今の異変の主原因かもしれない――と基本構成を切り出し、検疫措置しながら隔離コピーした。
トビーにファームウェアの仕様を転送する。]
《十分ほどね。じゃあ、待ってるばい。》
[そうして、一旦彼の元から意識を戻した。]
ん。問題ある?
あたしも観光に来たわけじゃないし、できればここに来た目的を何とかしたいんだけど。
どーも、UpperもPublicも反応がないんだよね。
[ゴーグルのレンズに一瞬移るのは、白]
Underは行ってないからわかんないけど。
トビーがUtopiaに用があるなら、それ済ませてきたらどうかな。
その間に、後のこと考えとく。
【観光だけじゃなくて一帯を見渡せるのもあったんだけど。西部に映る点は……4つ。かな。二つはあたし達、一つは恐らくおじさんで、後一つが誰か。Irvineが消えたのはどこだったっけ】
─ 現世<Mundane> / 南部学術区域 電脳街 ─
[南部の光点を選んで接近した理由は、単に単独行動をしているようだったからだった。
現れた姿が、Utopia上で遭遇した少女のものだったので、少し驚いたような表情を作った。
それから、頭を下げた。]
──問うことをお許し下さるのなら、答えを下さい。あなたは、何故MAP上に表示されているのでしょう。
── 現世<Mundane> / 西部・廃墟ハイウェイ ──
[セシリアは迷いの無い動作で、クラッシュした教団のワゴンの元に飛び込んだ。
手元には、PGMを付与した透明な針。
生存者が居たならば──セシリアはその針でトドメを。
けれども、ワゴン車に乗っていた信者全員が、すでに数刻前に死亡していた事を確認すると、何時もの──完璧な微笑を口元に浮かべ、車に戻った。]
[セシリアが再び車にもどり、何気なく地図上を動くドットに目を向けた瞬間、1つの点が消えた────“ID:Irvine”*]
[男が向かった座標と、消えた光点の座標は一致した]
ヤハリ、ソウカ。
―――行クゾ。
[キマイラに跨り座標へと飛ぶ/男が門から移転するのと同時]
―― 電脳世界<Utopia>/Closed・Irvine space ――
ついていってもいいなら、ついて行こうかな。
考えるだけなら、Utopiaにいっても大丈夫だし。
Closed? 行こうとしてるの。
[ゴーグルを被り、フィルムをウエストポーチの中に仕舞って、Utopiaへとアクセスを開始する]
いや、ちょっと弟子を思い出して。
[肩を竦め、機体に乗り込む。]
じゃあ、後の事は宜しく頼むよ。
着いたら空中庭園まで歩きは出来るけれど…そうだなあ、芝生にでも寝転がっていようか。
[後半になるにつれ、呟くように。]
――っと、何だ。着いてくるのかい。
ああ。Closedに。
少し困った事態が起こっているようでね。
副業の力を貸して欲しいようなんだ。でも、邪魔はしないで欲しいし、他言は無用だよ。
[双眸を細めて目尻が吊り上がった様は、微笑が漂う。]
―― 電脳世界<Utopia>/Closed・"the Inquistion" ――
[アーヴァインの個人空間前、黒は魔獣の上から黒目を向ける]
[瞳孔がキュルリ開き、アナライズ]
"the Inquistion"/審問所ネ。
何ガ出テクルカナ。
[ドアに刻まれた暗号を分析し、口が薄く開く]
[漆赤の裂け目の奥で光がちらつく]
―――カカレ。
[中に誰がいようと関係ないと、攻撃(アタック)]
MAPってこれのことかしら。
あなた確かお爺様の所で会ったAI、よね?
["地図"をひらりと示し、ステラを見る]
[またしても無遠慮な視線。AIを見るAI製作者としての目]
どうして、って言えば"手紙"……地図ね。
これをもっているから、らしいわ。
だからわたしはここに示されている。
それじゃあ──
あなたはどうして、"地図"に表示されてるのかしら?
[ごく僅かな変容が口調に表れている][気づかない]
― 現実世界<Mundane>/西部区域:マーシュ邸 ―
[気晴らしに空中庭園の定点カメラ映像を覗くと、少し隔たった脇の道路をホットピンクの車が通り過ぎてゆくのが見えた。
目に鮮やかで印象に残りやすい車だ。]
(あの車は確か――)
[今は確認している時ではない。一旦、その画像データを保存しておき後で検証することにした。
トビーを待つ間の空白の時間に、様々なことが思い出される。
圧力団体の来訪。ヒューマノイドの窃盗事件――]
[人工子宮-artificial uterus-による分娩が、母体への安全性や出産の確実性、効率、時期のコントロール等々、様々な合理的観点から優位な手段であることは社会的合意となっていった。
多くの女性が妊娠と出産から解放される一方で、性行為不要論が現実的な議論として為されるようになった。
自然妊娠を信奉するフェミニスト団体の一派と、性行為不要論を唱える勢力。相反する政治的立場のグループが、性産業の規制に関しては立場を同じくしているのは皮肉なことだった。
その中でも、子供を管理したいという要求は合意を得やすいものだっただろう。
誕生してから十八年未満の“未成熟”な人格が性的接触を持つことに反対する立場から、児童に供与する義体に性機能をつけるべきではないという主張がなされた。そうでなければ、親の管理下に置くことができるよう“鍵”がかけられるべきだと。
大昔にアフリカで行われていた女性器割礼や、去勢を思い出させる話だった。]
[“未成熟”な人格を“保護”するためだったはずの要求は、やがて完全な人工物であるヒューマノイドへの規制をも求めるようになっていった。彼らは十八歳以下の外見に見えるヒューマノイドを“準児童”であると定義し、これらの性機能に対しても法的な規制が必要であるとした。
どのような定義をもって“十八歳以下に見える”とするのかは議論が絶えない問題だ。行政区域によっては条例によってセクサロイド所持が非合法化された地域もあるが、全面的な規制を巡っての議論には未だ決着がついていない。
とはいえ、激しくなる世論の風当たりを前に、業界団体も一定の自主規制を要するようになった。]
[Kotのひらめかした地図、また彼女の言葉に、頷く。]
──私が貴方の所持するMAPに示されているとすれば、現在断定できることは「活動を維持しているから」であると思います。
[ようやく、少女の視線が不躾であるという事に気付いたか、少し苛立った風に。]
MAPが共通因子であるということは、興味深い発見です。
大丈夫よ、邪魔なんかしないし、あたしだって言っていいことと悪いことの区別はついてるつもり。
[機体へと乗り込むトビーの後を追う]
ただ。若いゆえに好奇心旺盛なの。
[指をキーボードへと走らせる]
[本来なら数回の攻撃が必要なはずの扉は、一撃で壊れた]
[門への攻撃に反応し出てくる門番もない]
ドウイウコトダ。
罠カ?
[ガルル]
[唸るキマイラを促し中へ/グリフォンは外へ猛禽の目を向ける]
―――ナルホドナ。
脆イワケダ。
[今の一撃のみを原因とするには崩壊が進みすぎた室内を確認]
[キマイラから降り、床に転がるデータやファイルを避けて奥へ]
―― 現実世界・空中庭園へ ――
あはははっ。
メイが猫からきっと殺されていただろうね。
[機体の中は、ポリフォーム・リクライニングに似た質感と弾力性を持つ真っ白い椅子があった。座れば、各客人にとって最適な吸いつきを見せてくれる。求めれば飲食物も普段はサービスされる。
そこに靠れ掛けながら眸を閉じる。扉が閉まる直前に這入ってきた風が、頭部の花を揺らした。]
先に行くよ。
[――Dive.]
[沈んでゆく意識。繋がる大海のImage。
ふわふわと上下に揺れる種々の光を見ると不思議な感慨が胸に去来した。
柔軟性なく今は硬化しているが、様々なAttackとVirusに耐性のある領域――Closed. 領域を解析してゆけば、仮想的空間から、整然としたGrid…そして基本的な01要素が視えてくるが、今その行為は不要だ。]
― 現実世界<Mundane>/西部区域:マーシュ邸 ―
――確認するけェどね。
[俺はマーシュに向き直る。
実際に対処が行われる前に念押しが必要だと思われた。]
俺はこいつを売り渡す時、言いましたよね。
これは日常生活のサポートをするためのガイノイドで、性愛用のセクサロイドではない――と。
こうした使用方法は想定外だし、違法にプロテクトを解除した時点でサポート対象にはならないですよ、と。
[マーシュは、なにを今更という顔をして眉を蹙める。]
ネットワークのアングラサイトで解除キーをダウンロードしたり、電脳街のジャンクショップで改造ツールを買ってくる悪い人も中にはいる。
けど、それは違法だし危ないことだから絶対やっちゃいけないですよ――と何度も念を押したじゃないスか。
[わかっているさ、とマーシュは言った。]
「楽器演奏ソフトのインストール方法がわからなくて、セットアップを代行業者に頼んだんだ。――たぶん、その時だ。
初期設定がどう変わったかなんて、私にはさっぱりわからん。」
[ありふれた言い訳だが、こんなやりとり自体様式化されたものだ。]
俺は今日、個人的につきあいのあるマーシュさんのことが心配になり、お宅にお邪魔した。
[マーシュがそういうことでいい、と頷くのを確認しseries Matildaの防壁にルートを開いた。
Kosha Cyberneticsの規程では建前上、十八歳以下の外観と解釈されうるヒューマノイドに性的機能を付与してユーザーに提供することを禁じている。
こうした対応を社の人間として行うわけにはいかない。
下手をすればクビだ。
マーシュにとっても、このことは表沙汰になって嬉しいことであるハズがない。
そのことをもう一度思い出してもらい、報酬について充分な額を引き出せるよう裏書きをとったのだった。]
[僅かな違和感──街頭AIは不快を表すことはしない]
[手紙よりもそちらが気になる、とばかりに目を覗き込み]
そうね。手紙はこの光点をすべて繋いでいるのだわ。
だれが何のためにこんなことをしているのかしらね。
(鍵がほしければお爺様から奪えば良いのに)
[心の声は、心の声のままにして]
ねえ、あなたはだれが何故こんなことをしているのだと思う?
[シートに腰掛けてUtopiaへと感覚ごとinする。トビーの後をトレースしてClosedへと入り]
ほんと。Closedって様々だよね。あたしも個人で持ってるけど。倉庫にしか使ってないからすっごい殺風景だし。
……黙っといた方がいいなら、黙っとく。
[ようやく口を噤んだ]
―現世/南部の中央部に近いカフェ―
ですが、
[触れた場所に文字が浮かんだ。]
[出会った人の名前。]
……他の光は、どうなのかしら。
とりあえず、まずは、中央部に戻って――
[目を閉じる。]
――何が起きても問題のよ無いように、整えましょうか。
…イタ。オ前ガ、アーヴァインダナ。
[乱暴な訪問が崩壊を促したか、目的人物は半ば埋もれていた]
[結晶状に硬化した男性アイコンを引きずり出す/現れる裂け目]
[直前に訪れたケネスがしたのとよく似た動作で傷口に触れる]
[データの残滓がチョコレートブラウンの指先に絡みつく]
眠リハ眠リデモ、永遠ノ眠リカ。
マア、イズレ再生(ロード)サレルダロウガ。
[残滓を薄く開いた裂け目へと運ぶ/漆赤の舌が残滓を攫う]
[舌が消えた裂け目の奥、0と1の光砂で描かれた魔法陣が煌く]
私には分かりません。
[覗き込まれた目は「分からない」と言う時に少しげな風をした。]
人はどのような時に、こういったマーカーを記しますか?
―― 電脳世界<Utopia>/Closed ――
ClosedにSpaceを持っているなんてGJだね。
いやいや、さっきのも冗談だよ。相手と会った時は不用意に安売りしない方がいいと思うけれど。
『指揮者<コンダクター>。』
[――と、普段は姿を現さない補佐AIが、降り立った地面の半ばから、蒼黒(そうこく)の布に巻かれた先端――膨らんだごつごつした円錐の形に少し似ている――を覗かせて、指摘した。]
88の黒鍵と白鍵。
[汎用PGMを周囲に発現させ、地図の拡大表示を矩形型に無数に表示させる。]
分かってる。
メイ。
位置はあちらだけれど――…補佐AI…――が丁寧に教えてくれた事には、どうやら以前僕が会った生き残りAIが、Irvineの占有Space "the Inquistion"に居るらしい。
[トビーの様子に首をかしげる]
そんなにご大層なものじゃないよ?
やってる商売上、必要に迫られて、だしね。
[現れた黒いAIをじっと見つめ、その後のトビーの言葉に、地図を手元に展開させる。先程まで記録させていたデータ。Irvineのいた位置へと向かう、点が一つ]
ほんとだ。少し遠い、かな。
以前会ったなら、どんなAIだったか憶えてる?
たとえば、好戦的そうに見えたとか、そういうの。
相手がどんなかわからないのに行くのは無謀だし。
[つまり。わかるのなら行ってみようと]
[黒目がアーヴァインの傷口を見、キュルリ瞳孔が絞られる]
[得られた残滓はかなり複雑らしい]
[黒は門番などを狩り、残骸からも召喚用基礎動物データを得る]
[だが今回の解析終了予測時間は、通常と比べ格段に長い]
―――解析ニハ時間ガ、必要ダナ。
行クゾ。
[魔獣を促し、現実世界<Mundane>へ戻る]
[まだ光点の人物の多くと接触できていない]
["死んでもすぐ生き返る"認識の人間は崩れかけの空間に放置で]
― 電脳世界<Utopia>/closed:tower garden ―
<<<ピ〜ろロロろ〜ロ〜ろ〜ロ〜♪ ロロロ〜ロ
ピィ〜ロ ロロロ〜ロ〜ろロ〜♪>>>
[聳え立つ塔の上の空中庭園で、ストリートオルガンを演奏している。
指揮者の来訪を待ちながら。
アバターは“座長”のものではなく、現実世界にほぼ類似したものだ。
隣には、少女が眠りながら立っている。その身体は、音楽に僅かに反応するようにゆらゆらと時折揺れた。]
―南部→中央部―
[カフェを離れ、中央部のホテルへと向かう。]
[もしも/確率としてそう低くないと予想できるが、]
【この中の誰かが攻撃をしかけ、行動不能にしたのならば。】
丸腰――というわけではありませんが、少々心許ないですからね。
[光源は別のところに見える。]
[名前を見ても誰だかわからない。]
[レベッカは中央部へ、ホテルへ戻り、一つ――馴染んだ武器を手に取り付けた。]
攻撃の手段がないと。
そうね。
基本的にはマーカーの示す人物を把握・管理したい場合じゃないかしら。
大昔のGPSっていうシステムも、"だれが・どこにいるか"を"管理"するために利用されていたと聞くわ。
だけど、この"地図"はわたしたち自身にも与えられてる。管理したいなら、それは管理する人だけでいいはずよね。
その辺りを考えた場合、この"地図"により何かをさせたがっているとうのはどうかしら。
だからわざわざ"地図"で互いの位置を把握させて。
[言う傍らで思考]
(狙いは鍵──妙──何をさせたがって──何を?──鍵以外──)
わけがわかんない。
── 現世<Mundane> / 西部・空中庭園付近ハイウェイ ──
[再び乗り込んだセシリアの運転する車は、空中庭園付近にある大きな透明なカタツムリのような螺旋系を描く分岐点に差し掛かった。分岐点から、閑静なエリアに向かうルートを選択した為か、クラッシュカーの台数が減り、随分と運転が楽になる。]
最寄りのドットは、ずっと静止している──
なら、今ならは大丈夫だろうか。
[セシリアは、車の運転に同期させるためのプラグの数を一本減らし、かわりにジャックイン用のプラグを繋いだ。Underの教団の架空事務所(普段は教団で作成した違法PGMの販売に利用される)経由で、帰還予定の信者数名が全員死亡した事を報告し、逆に教団通信部の幹部──と言ってもどうやら1名しか残っていないようだったが──から、元々、容態が芳しくないはずのMasterの情報を得る事にした──。
ボディスーツをはだけた首筋に、プラグを差し込む。
──ダイヴした瞬間、独特の酩酊感。]
―現実世界/中央部―
「さてさて。どうしたものか。」
[昏倒する人々を尻目に、大型スピーカーのある
一角にホログラムが現れる。梵のローブ。]
「このまま黙って過ごすわけにもいくまいて。
こちらも積極的に動かねば………。」
――電脳世界<Utopia>/Closed――
[現実での指がフィルムを抜き取り、ゴーグルへと"接続"させる。
Utopia上でそれを読み取り、今の地図を映し出した。Utopia上、Irvineの位置――と思われる場所――から、消えていく赤い点。現世での地図に切り替えれば、新たに点が映り]
あーあ。いなくなったみたい、だね。
現世に戻ったっぽ。
ん、決定。トビーの後ついていこっと。
元からそのつもりだったけど。
[悲しみは映像の奥へ沈み、思案するような瞬きが浮かび上がる。]
管理者権限がUSERにも与えられているというのは不可思議なことです。オープンソースであるという事とも、少し意味が違うように思います。
我々に何を求めて……
[感情という”あそび”の存在は、決断を保留しながらのifの思考を可能にする。副産物ともいえるその作用に自覚は無いが。]
では、我々が何らかの役割を与えられていると仮定した場合に、そこから”DELETE”されたものが居るということはどういった意味合いを持つのでしょう。
役目を終えたからDELETEされたのでしょうか。
それとも、『誰がどこにいるか』を把握する理由はDELETEを行うことにあるのでしょうか。
――さて。
[再びホログラムを広げる。]
[近くの光点を見て、それからベッドに眠らせた姿を見た。]
坊ちゃんはお守りいたしますから、
――いってまいりますね。
[踵を返し、エレベーターへ。外へ。]
― 電脳世界<Utopia>/closed:tower garden ―
[曲が流れるに従い、眠っている少女の頭から光が枝のかたちをとりながら立ちのぼってゆく。
ストリートオルガンの上には、ドーム上の水槽のついた機械が載っていて、ホースのついたノズルが伸びていた。
俺は今は“枝”の形状をとっているそれに、ノズルの先を近づける。
瞬きながら、光は水槽の中へと消えていった。]
[補佐AIは沈んでゆき、その先端は視えなくなる。]
――Give and Take.
折角メイから何かもらえると思ったのだけれど。
とはいえ、それは貸しにしておこうか。
一言で言うなら好戦的としか言えないな。
美しくも残酷な黒き女神の姿――…‥
[トビーの側面にある矩形内の地図は、
移動し去ってゆくIconが表示されている。]
さてと……コールサインがTower Garden、電脳世界側の空中庭園の方から放たれている。
さ、移動するよ。
[――→Tower Gardenへ転移先を指示。]
[中央部の外を歩く。]
[コットと歩いたのとは反対へ。]
[やがてホログラムの姿を捉え、]
【"動ける人"】
[静かに足を踏み出した。声はいつもと同じように、]
――こんにちは。
ん……失礼。私には声がないものでな。
ヴォリュームが高いかもしれぬが、
機械音声で失礼するよ……………。
[スピーカーを通して、無機質な機械音声。]
そうか。君も我々と同じくというわけか。
貸しを返せるかわかんないけど、ね。
そっか、好戦的、ね。
うん、戦いたくないタイプ。正面きって戦うのは苦手なんだ。
[トビーの声と指示した先へと移動を始める。何かあった時のために、防御用のPGMがすぐに発動するよう、ショートカットに指を乗せて]
―現世/中央部・外―
そこまで大きな音とは思いませんし、大丈夫ですわ。
――ええ。
[音声に返すは、人間のように感情を持つような声。]
おじいさま…でよろしいでしょうか?
この状況について、何かご存知のことはございませんか?
もし何かありましたら、教えていただきたいのですが…
[首を傾げる。]
幾人かにお会いしましたが、まだわからないのです。
― 電脳世界<Utopia>/closed:tower garden ―
[マーシュの屋敷にあるサーバーとseries Matildaの防壁はトビーの来訪を拒むことなく招き入れる。]
(あれ? 他にも――)
[ストリートオルガンの上に載った万華鏡には、トビーのすぐ近くに光点が見える。ID表示はメイのものだ。]
やあ、いらっしゃい。
[空中に姿を現した扉から現れた二人に、恭しく一揖する。
メイにだけは、その場の状況がモザイクをかけられたように見えていることだろう。]
”手紙”……もらったろう?
[老人の胸元に展開する多層地図。
それは、老人も”手紙”の持ち主と示している。]
ならば、読んでみてくれないか。
君のものと私のもの。同一というわけでは
ないようだからな……話はそれからだ。
── 電脳世界<Utopia>/Under ──
[垂直に奈落へ落下するようにセシリアは一直線にダイヴした。
視界の半分はは半透明のフィルタで覆われたように、現実世界の道路を映し、半分は電脳世界で降り続けるデータ断片の雨とのを接触を認識する。暗いグリッドの空間で、地図上で点滅する12の赤いドット。]
──地図は、Utopiaも併用か。
良く出来ているが、配布された目的が分からないだけに、不気味だ。
[呟いた声が、反響する。
淡く透けるセシリアの指先が、赤く点滅する光を付いた。]
西部の居住エリアで停止していたIDと、同じIDがClosedに在る。
──きっと富裕層だろうな。
"DELETE"?誰かが消されてしまったの?
[初めて知った、と目をまんまるに見開く]
新しい要素ね。消えちゃうのか。
何故消えちゃったのかしら。
あなたの言うとおり"役目を終えたから消えた"のならば、その人は"役目"を知っていたのかしら。
その人の果たした役目ってなんなのかしら。
そして、"消した人"がいるなら、何故消したのかしら。
"役目"を"終えた"から消したのかしら。
そして、"消した人"はだれなのかしら。
今ここにはわたしたち、"地図"の所有者しか、たぶん居ない。
それとも、それ以外に"消した人"も存在してる?
それとも"地図"の所有者の中に、消した人がいるのかしら──。
[後半はAIに聞かせるわけでもなく、彼女の癖の独り言]
[そこまで考えて、はたと]
だれが消されてしまったのかしら。
師匠は別としても、カフェで知り合った誰かだったとしたら、いやな気分だわ。
― 電脳世界<Utopia>/closed:tower garden ―
メイちゃん、ごみんね。
こいつってェば、色んな大人の事情のぱいあーる二乗ってヤツな・の☆
十八禁の上腕二頭筋。モザイクかけちゃうエッチスケッチワンタッチ。
大人の世界の秘密の出来事なのよん。
手紙、
というか、くじのあたりの知らせだったのですが。
[その地図を見て、レベッカは首を捻る。]
もしかしてその中に重要なことが書いてあるのですか?
[何の変哲もない当選通知だった、と、記憶している。]
……よろしければ、ご覧になりますか?
[認識の差の可能性もある。]
[ホログラムを開いた。]
サインは一つ消失しました。
Irvineという表示を確認したように思います。
[捲くし立てるような少女の言葉──普通の人間に対してであれば聞かせるためのものとは思えないが、AIの処理能力を上回るほどの速度ではない。
果たして、少女の小さな頭脳の中では更に高速で思考が展開していないとも限らないのだが。]
MAP自体が消去を行っている可能性もあります。その場合、所有者の現在地を把握する必要は無いわけですが。
Irvineは、あなたとつながりのある存在ですか。
― 電脳世界<Utopia>/closed:tower garden ―
さあさ、トンビちゃん。
この子に筋弛緩PGMをさくっとお注射してあげてちょぅ。
[トビーに、隣に立っているショートボブの少女を指し示す。]
この子ってェばずっとこうして緊張しっぱなしで可哀想なのよ。ぐっすり寝かせてあげて。なんで筋弛緩PGMが必要かって話を詳しくし出すと色々あぶない大人の事情。立つんだジョー。
いや、立ったらいけないんだけれども――。
[彼の方へとレベッカは近づき、データを渡す。]
[中に書かれているのは、確かに当選通知。]
[このメガロポリスへの宿泊が当たったという。]
――何か、特別なものはございますか?
[自分では理解できない事。]
[それでも他には何か意味があるかもしれないと、尋ねる。]
── 電脳世界<Utopia>/Under ──
[セシリアはUnderを落下しながら、慣れたURLを複数呼び出し、その空間を“montage”──パズルのように再構成する。
Utopia特有のアクロバティックな施設や建造物が、再構成されることによって、更にドギツイ奇妙な空間に変容した。セシリアは躊躇することなく、“montage”で作り上げた空間に入り込んで行く。
Underから、一時的な暗号化に教団本部の通信部への秘密裏にアクセスする。]
アレックス──悪いニュースがあるのです。
―― 現実世界<Mundane>/南部・大通り ――
[黒が姿を現したのはガーゴイルが動きを止めた場所]
[結ばれたホログラムは指先まで覆われた漆黒の腕を伸ばす]
[頭上を掠めた瞬間、ガーゴイルは再びガシャリ重い音を響かせた]
処理ガ重イナ。
―――戻レ、キマイラ。
[解析にメモリが喰われていると判断]
[電脳魔獣3体の内1体を戻す/Utopia・Mundaneに各1体を残す]
アーヴァイン。知らない名前。
知らない人だわ。
地図自体が光点を消去しているとしても、自動的な行いであるのなら削除フラグを立てる条件が必要だわ。
そしてそのフラグを設定するのはやっぱり、地図の作成者。
いずれにせよ、誰かの意思が絡んでいるのね。
[気持ちが悪い、と*眉を顰めた*]
やれやれ。寄る年波に、暗号解読は酷というもの。
[首を捻りながら、今度は自分のもとに届いた
手紙のデータをまとめ、渡す。]
私のを見た方が早いか。ホシの目的が。
「不可侵領域」という言葉がはっきり書かれている。
―― 電脳世界/Closed・Tower Garden ――
[マーシュ邸の電脳空間。空中に出現した扉から、ふわりと塔の上へと降り立つ。電脳空間では重力などない。無言でショートボブの少女を眺めると、その顎をくいっと持ち上げた。
自身の顔をやや斜めに逸らして、検分するように。]
ありがとうございます。
ごめんなさい、暗号には弱いのです。
――でも、暗号あるのかしら。
[困ったように首をかしげ。]
[受け取ったデータに目を通す。]
不可侵領域?
――まさか、本当にあると?
あ、いえ。ホシ?
そうなると、やはりこれは人為的になされた事態なのでしょうか。
私も、Irvineという名前に覚えはありません。
[少し目を伏せた]
つながりのあるものが消えてゆくのは非常な哀しみを齎します。
それが何者かの意思に基づくとすれば――
[言葉を切った。]
……MAPはpointすべてを繋いでいる
と仰いましたね。
絶たれるために繋がれたのでは、それはあまりに哀れなことです。
[感じ入るような仕草を見せ、
ホログラムは消えた。
居た堪れなくなり、逃げ出したかのようでもあり、単に情報収集を終えて姿を消したようでもあった。]
あるも何も。あの領域は、大多数の
凡庸なる者どもには干渉するところに非ず。
それ故、あれは遠ざけられて然るべき。
[眼光鋭く睨み付ける。]
仮に、君がこれを送りつけてきた張本人で
私が何者か知っていながら、恍けているのだとしたら……。
容赦せん。あれを開くなど、実に愚かしい。
[眼光は、誘うように。]
ところで……君はなぜそのようなひどく
頑丈な手錠をぶら下げているのかね?
好き好んで、そのような枷を?
[暗に「何かに縛られている」とでも言いたいのか。]
――申し訳ありません、よくわかりません。
[困ったように眉を下げた。]
["主"にかかわりのないS級についての知識など、ないに等しい。]
…張本人ってこの中にいるのですか?
だとしたら、わたくしはその人を探したい。否、さがさなければ。
元に戻らないなどということは、あっては――
……手錠、枷?
[自分の手を見下ろす。]
[視覚情報から弾き出す結果。]
何もついていません。
[トビーの周囲に円のように浮かぶ鍵盤達を、右手で一撫ですると心地良い音楽が辺りに響いた。
奏でられる楽曲は、先程送られたDataのフォーマットが音楽に変換されて流れ、必要な動作を行うPGMが音として加わる。]
≪都市全域で倒れているAI達と同様だ。
弛緩させる事は……恐らくこれで可能だろう。≫
[旋律がその少女の周りを取り囲み、包み込んでゆく。]
[キマイラが消えるのを見送り、黒目は髑髏へと向かう]
[漆黒の右腕に今は光の螺旋――魔法陣はない]
ダイブ移動シタナ。
アノ男ハ、マダアノ場所カ。
[薄く漆赤の裂け目が開く/奥の煌きは消えない]
解析ガ済ンデカラダナ。
コレガアノ男モシクハ、セリアノ物ナラ対策ガイル。
[漆黒の指先を髑髏になぞらせる/浮かびあがる文字列]
IDカ?
フゥン。
[次々となぞり、場所と会った人物の記憶とリンクさせていく]
やれやれ。私の言葉の意味が分からぬか。
その手枷も、気づかずに受け入れる愚昧。
[蔑み。翻るサンスクリットのローブ。]
その意味が知りたくば、Closedの私のところを訪ねよ。
PASSはREAINCARNATION。
君によく似合う、土産を用意しておく。
そう、君に似合う「自由」を…。
── 電脳世界<Utopia>/Under ──
[“montage”は、Closedの空間とはまた異なる。いわば、無法地帯のUnder内に一時的に作成者には開閉時代の個人空間を作り出すPGMだ。
通常は捕獲やトラップの為のボックスとして使用するものなのだが、ドリスの侵入によってダイヴを切断された際、セシリアは仮処置的にアレックスとの伝言ボックスに使用したのだ。
セシリアがこの空間に戻れば、アレックスがアクセスしてくるはずだったが──、]
・・…アレックス、お前も倒れたか?
― 現実世界<Mundane>/西部区域:マーシュ邸 ―
「は、早く…… 痛くてしょうがない。」
[責め苦を味わわされ続けているマーシュから、幾度目かの哀訴を耳にした頃――。
少女の唇が一瞬戦慄き、くたりと弛緩した。]
「ぬ、抜けた!
助かったァ――」
[脂汗を滴らせながら、ぐったりとマーシュもベビーベッドの上に仰向けになったまま崩れ落ちる。青紫に変色しかかったおぞましいそれを、キルティングの掛け物を被せて隠した。]
― 電脳世界<Utopia>/closed:tower garden ―
[旋律に洗われ、かすかに震えた少女はくたりと崩れ落ちる。その背中を抱きとめた。電脳空間で重力は感じない。その身体は羽のように軽く、花々の中に静かに横たわった。]
ブラーヴォ♪
いつもながら、素晴らしい演奏だよゥ。
[俺は喜色満面で拍手をし、指揮者の労をねぎらう。]
――? はい、かしこまりました。
[内容は矢張りわからず、手を持ち上げる。]
[何もついてはいないのは当然のこと。]
[言われたpassを記録して、(それは)]
――自由、ですか?
[首を傾げる。]
わたくしは今でも自由ですが……かしこまりました、ありがとうございます。
[よくわからぬまでも礼を口にし、]
――他にも何かわかったら、教えてくださると助かります。この状況を起こしたのが誰とか…。
[この目の前の人がそうかもしれないのだと考える。]
[だがそれだけは口にした。]
[そうしてレベッカは、*元来た方向へ*]
― 電脳世界<Utopia>/closed:tower garden ―
報酬は例の口座に振り込んでおくよゥ。
まあ、こんな状況だもんだから、別のものがよければ言っておくんなまし。
そうそ、コットちゃんとは会えたの?
カフェの前で探してたじゃないってぇばさ。
[中央に2点/モーガンは電波塔の老人と認識、レベッカは未明]
[西に4点/トビー確認、ヴィンセントとメイとセシリアは未明]
[南に3点/例の男はケネスと認識、ウェンディとステラは未明]
[移動中のオードリー、ローズマリーの光点を追い掛けて静止]
待テ、セリアハ光点ニ出テイナイナ。
紫の少女AIは出テイタ。生身ノ所属者ハ出テイナカッタ。
生身ノモノハ出ナイ、AIハ出ル者ト出ナイ者ガイル?
[現状と認識を入力/メモリの一部を割いて演算]
[黒が召喚した電脳魔獣(AI)ガーゴイルも光点に出ていない]
[幾つかのパターン分析/一番可能性の高い回答は]
―――光点ニ映ルノガ、ヒュノプスデ眠ラナイ者。
リンクシテイルAIモ眠ラナイ。
ナラバ、紫の少女AIハ? 完全独立カ?
それにしてもね。見つけた変なコードがウイルスみたいなものだったらァばさ? なんか、昔の事件を思い出しちゃうわけよ。
ハナエモリとかなんつって噂になったじゃなァい?
数年前のこと。
トンビちゃんかメイちゃんはアンダーでゲームやったりなんかする? 危険があぶないア・レ。
―― 電脳世界/Closed・Tower Garden ――
ああ。
コットの所在は分かっているからね。
あの子は聡いし賢い。しばらくはこの混乱の中を一人で乗り切る事だろう。
[独り言のように呟き、]
V.C __ その別のものだが、何でも良いのかい?
[淡く透き通るような笑みを浮かべる。]
── 電脳世界<Utopia>/Under・“montage”内 ──
[極彩色の“montage”の内部。セシリアが目を凝らすと、空間の隅にアレックスのシャドウが残っていた。不吉なほどスローな速度で、シャドウから伝言dataがセシリアに流れ込む。]
《頭を打ッタr し い。
手足が動かなくなってき、た
console を 舌でタイプ》
《下層へのゲート 粛正用PGM 散 布
繭(コクーン)内、第4、5、7、8、10サティアン閉鎖
お よび、死亡者確定のための原始分解PGM 散布
死
2,6サティアンのみ、セキュアモード継続 教祖様からは指示応答無シ が、無事────────、》
[他は、繭(コクーン)内の惨状の簡易映像が添付されているのみ。]
・・…Masterが生きていれば、私はそれで…、
[言葉は0101の配列となり、降り注ぐデータ断片の雨に溶け込む。
口に出してから、教義を最優先とするPGM機能に付与された部分の人格が、アイデンティティの危機を緩和するために、最優先事項を入れ替える言葉をセシリアに紡がせたのだとを理解出来た。
つまり、その言葉は嘘だと言う事だ。
目的が終了したダイヴを止めるために、セシリアは接続を切りプラグを抜く。]
― 電脳世界<Utopia>/closed:tower garden ―
そうそ。心配ないならいンのよ。コットちゃん。
なんでもいい?っつっておいちゃんに渡せそうなものならね。
[ぐるりと目をまわしておどけてみせる。
義体やAIに関することなら仕事柄いくらでも便宜が図れるだろう。だが、この状況下では、かれがより切実に必要とするものは別にあるのだろうか?]
[地図をしらない様子だった少女AI/今は知っているとは知らず]
光点ガ眠ラナイ者ヲ映スノナラ。
映ラナイ起キテイル者ヲ壊セバ、破壊ハ止マル。
ソレヲ恐レテ――犯人モ己ヲ映スカ?
[犯人を壊し(倒し/殺し)てもUtopiaの崩壊が止まる保証はない]
[だが]
魔窟ヲ脅カス者ニハ、報復ヲ。
["黒"の人格が選択するのは、破壊と報復]
[ヒュノプスの解除と同レベルのはずのそれが、*優先される*]
Underに行くなんていけない者がする事だよ。
V.Cには、Underとは無縁だろうけれど、ね。
セキュリティ上、企業の者がUnder領域の情報を得る事は大切だろうけれど。
[ちらりとメイを見る。]
少しビジネスの話をしようと思う。
[ヴィンセントに微笑み、]
Vincent Caroなら可能な事だよ。
[当たり前だが、何らかの必要に応じてPGMを促進して作製する為の、汎用PGMは未だ顕在したままだ。]
― 電脳世界<Utopia>/closed:tower garden ―
内緒の話かい?
[トビーの言葉に、好奇心に瞳が瞬いた。]
ビジネスの話ってことはいい子紹介してとかそんなうふんあはんな話じゃないってことだァね。
[先ほど収集した光の枝は、二重の蛇となり絡まっては枝となり、花を咲かせてはまた散るビジョンとなって水槽の中を泳いでいる。]
── 現世<Mundane> / 西部・マーシュ邸近く ──
[Utopiaから戻ったセシリアは、運転を続けながらも虚脱したようにシートに倒れ込んだ。
目元を覆うシールドを手動で解除し、両手で目元を覆う。
無力感とこみ上げる笑いの衝動に身体が震えた。
両手はすぐに滴る透明な液体に濡れ、ボディースーツにも水滴を散らせた。]
まるで集団自殺だ、アレックス。
──何故、私が戻るのを待てない。
[それでも、セシリアはすぐに、ダウンロードした映像データを手元で開いた。だが、そのデータは繭(コクーン)内の惨状を伝えるばかりで、肝心の下層領域への集団殺戮用のPGMに何が選ばれたのか、またそれがMasterの指示なのが、自殺前の信者たちの自爆行為なのかが分からない。]
おそらく、Masterは──ベッドから起き上がれないのだろうな。
指示も出していない。
否、そうだと私は信じたい。
嗚呼、Masterの元へもどるのが、恐ろしい。
私は、彼の死期が近い事も知っている。
― 電脳世界<Utopia>/closed:tower garden ―
さてさて、トンビちゃん?
おいちゃん、かわいこちゃんを二人待たせてるぅのよ。
実は、あんまり長居したいとこじゃねェの、ここってものはさ。
汗だるまの酢臭がするのね。
[すん、と鼻の頭には皺が入る。現実世界の匂いを嗅いだようだ。]
楽園からはいつか追放されるのよぅ。失楽園てね。
そろそろ話の本筋を切り出してちょぅ。ちょうちょう。お蝶婦人。
[水槽の中は、いつしかゴボゴボと泡を吹き、澱みが上がってきている。
傍らに倒れ伏した少女をマリオネットのように抱き上げた。]
── 現世<Mundane> / 西部・マーシュ邸近く ──
[くぐもった嗚咽の声は、歌うようにうつくしい小さな笑い声に変化する。
そして、セシリアの身体が震えるのに合わせて、オーキッドパープルに透ける髪から、徐々に色素が抜けて行った。髪と同様、光彩の色も無くなって行き──血のルビーが透けてみえはじめる。
セシリアの外見は、1分とかからずまるで元からアルビノであったかのような色合いに変化した。]
…──
[心無しか、しろさを増した指先で、セシリアは地図の赤いドットをなぞり。
教団を最優先するPGMから成立しているはずのセシリアは、何故か、車の行き先を、東部にある教団のゲートへ向かう大きな道路から、最寄りのドットが示す場所──マーシュ邸に変えた。]
― 電脳世界<Utopia>/closed:tower garden ―
そいつは随分と高いお代だ。
お代は見てのお帰りよぅ?
まったく、ぼったくりのボッタクル商店ってものはさ――
[肩を竦める。]
冗談はよしこちゃんよぅー おやつあげないわよ!
ああ。全くね――僕は俗物だから。
[これは、メイにも聞こえるように。]
あのシガレットは悪くなかったけれど、
香りにスパイシーさを加えた方が好みだった。
── 現世<Mundane> / 西部・マーシュ邸 ──
[マーシュ邸のうつくしいガラスの庭に、
透けるような白色の髪、ルビーの瞳の少女が、白いボディスーツの上に褪せた赤色のマントを風にたなびかせ──たたずむ。
解放された小さな窓から、器用に身体を折り曲げ──セシリアは容易に中に滑り込んだ。]
― 電脳世界<Utopia>/closed:tower garden ―
本気かい?
[心底可笑しそうに笑って、少女を抱いているのとは反対側の左手を大きく開いた。
好きなようにすればいいとでもいうように。]
だが――
君が本当の本気なら、今の状況がわかるというものだろうけれどね。
― 電脳世界<Utopia>/closed:tower garden ―
タネを全部明かしちゃ、マジックショーの意味がないよ?
[それを、トビーがハッタリと受けとめるのか、真実と受けとめるのかはどちらでも構わなかった。
ふと常とは異なる一面を覗かせたかれが次になにを為そうとするのかに興味が注がれている。]
かわいこちゃんを二人部屋に入れずに待たせてある。
二人はどこでどうしているのだろうね――?
おいちゃんに黙ってえっちなことしてたりして。いやんばかん。
― 現実世界<Mundane>/西部区域:マーシュ邸:書斎 ―
[マーシュ邸のサーバーの前に双子が行儀良く並んで座っている。電脳での状態をモニタ上で確認してはいるが、ケーブルを接続してはいない。非常時にはすぐに接続できるように、準備が整えられていた。]
そのタネを明かす為にも、どうにかしなくてはいけないな。さしあたって、Irvineが最後に地図上に記された場所に行くつもりだけれど。
[すぅっと顎に手をあて]
そーねそーね。
トンビちゃんも気をつけるのよ。
[襲いかかってくる殺気のような気配は今は遠のいているように感じられた。]
俺っちはアレがでっかいじっさまのところにでも行ってみようかとね。気になってンのよ。アレが。
[にっこりと微笑む。
となれば、長居は無用だった。
そろそろ接続を切っていいかとかれに問う。]
≪ 仮にもしも ≫
≪ 僕が犯人だとしたら? ≫
[耳にあてた左手とヴェールの影から覗く眸。]
≪ 汝が内に秘めるもの。 ≫
≪ 汝、熟せし果実をもぎ取りたい。 ≫
[手は下に。影は消え、にこやかな視線が注がれる。]
― 電脳世界<Utopia>/closed:tower garden ―
《 なになに? 》
《 トンビちゃんは果物がいるって? 》
[うーんと少し考え込む。
まあいいか、とごそごそと懐から金色に輝く林檎を取り出した。]
《 かじったら血が出たらいやぁよ。しそーのーろーなんつて 》
[ぽーいと彼に林檎を放り投げる。]
ご忠告ありがとン――
[そうして、うやうやしく一揖した。]
― 電脳世界<Utopia>/closed:tower garden ―
トンビちゃんも気をつけてねン。バイバイキーン♪
[大きく手を振る。接続が切れ、視界はブラックアウトした。]
── 現実世界<Mundane>/西部区域:マーシュ邸 ──
[セシリアはマーシュ邸の意匠を凝らした建築には感興をおぼえないのか、淡々とした様子でいる。持って来たシャロンの手帳をパラリ──。]
Eris. _____ 黄金の林檎とは洒落ているね。
[双眸を細め、受け取った林檎を一度宙に放り投げた。その向こう側で、一瞬にしてヴィンセント達の姿が消える。]
メイ、この林檎食べるかい?
[トビーはメイへと林檎を*差し出した。*]
― 現実世界<Mundane>/西部区域:マーシュ邸 ―
ふひ〜
びっくりしたわァ。トンビちゃん、情緒不安定なのかすィら。
ケサラセラ。
あやうくジャイアンリサイタルってところだったァのよ。
[不穏な気配の漂う先ほどのやりとりを思い出しながら肩を竦め、ベッドから降りた。]
そんなわけでマーシュさん。
俺は長居無用の長井無用。まちがいない!っつってそろそろとんずらのおさらばって寸法? いい?
[マーシュはああ……と頷いた。]
マノン、カノン!
[名を呼べば、戸口に双子が姿を現す。]
「屋敷に他に活動中の人間、ヒューマノイド、」
「――AIは存在しません。」
[二人から、屋敷の状況について簡単に報告を受ける。]
そういえば――
お嬢さんはまだ……戻ってませんか?
[さりげなさを装ってマーシュになされた問いかけ。だが無意識的にか、その声はひそめられていた。
ああ……と掠れた声を漏らし頷くマーシュ。横顔は憔悴しきっている。]
「公共警察があてにならんから、探偵や調査会社にも頼んだのだがな――」
[彼の娘、エミリー・マーシュは七ヶ月前に行方不明になった。正確には、“魂”をどこかに奪い去られたのだ。
麓の電脳街のネットカフェで電脳に接続し、アンダーでのゲームに興じていたことが残されたログからは判明している。彼女の“魂”はその時から現実世界に戻ってこれなくなった。代わりに電脳に侵入した単純なルーチンPGMが、彼女の日常生活をトレースし続けた。
マーシュが異変に気づいたのは、四ヶ月前のこと。
実に、三ヶ月ほども娘の異変に気づかなかったことになる。
まったく同じ日常を反復し、簡単な挨拶程度のことしか話さない“人形”と化した彼女に――。]
[マーシュは、彼女が自分に断りなくネットワークにアカウントを取得しアンダーでのゲームに参加していたことを後から知り、激怒したという。
――もはや後の祭りだったが。
マーシュはどこかで手がかりを見つけたなら連絡を頼むと言い、俺は無言で頷いた。
気をつけた方がいい――という先ほどのトビーの言葉を思い出し、マーシュから護身用のハンドガンを一挺借り受けることにする。双子はそれを書斎から持ってきた。ジャケットの内側にしまう。]
ねえ、マーシュさん――
[部屋を出る時、戸口で立ち止まった。
一瞬の逡巡のあと、口を開く。]
――案外……お嬢さんはすぐそばに戻ってきていたりするかも知れませんよ?
あなたはネットワークを忌避しているが――それはどこにでも繋がっている――。
[肩越しに振り返れば、細い首筋をのけぞらせたまま横たわるseries Matildaの虚ろな瞳が目に入った。なにものをも捉えていない筈のその眼差しから逃れるように、その場を*あとにした*。]
―― 電脳世界<Utopia>/Closed・Tower Garden ――
[辿り着いた先にはヴィンセントとモザイクのかかった何か、がいて手を振る。
意図的にそこの画像処理が止められているのだということに気づき]
何をしてるのかは予想つくけどー?
腹上死は男の浪漫とか言わない?
ま、いっか。
[それに興味は失ってしまったのか、辺りを検分でもするかの様に歩き始める]
[第三者の声。モザイク部分から発せられたのには僅かに眉を顰める。
ヴィンセントから投げられた問いには首を振る]
Underでゲームはするなって、止められたからね。そういうのには手を出してないよ。
PublicでのMMOくらいなら、少しやったこともあるけどね。
[仕事の話をすると聞くと、ならば自分は立ち入らない方がいいだろうと、辺りを探ることに集中する。
広げられた地図。UtopiaではなくMundaneのものを拡大する]
[Mundaneでのここに、近づく点があることに気づく。先程はもっと南部よりにあった点が消えていて記録画像とあわせれば、同一のものであることが知れる]
誰?
まだ、会ってない誰か――。
[「林檎はいるかい?」名を呼ばれて振り向くと、ヴィンセントの姿はなく、代わりにとビーが林檎を差し出していて]
いらなーい。
食べるなら、現実での林檎がいい。
[地図に映る点を指差し]
"ここ"に誰かが着たみたいだけど。接触してみる?
空中庭園はまた後でも来られるし、今は情報集めの方が先よね、やっぱり。
[トビーへと笑みを浮かべて*尋ねた*]
―― 現実世界<Mundane>/南部・大通り ――
[紫の少女AIの名を黒は知らない]
[地図上の女性名をピックアップする]
[製作者の趣味により、かのAIが男性/中性の可能性もあるが]
一番近イノハ、ステラダナ。
[電脳世界<Utopia>側のみの魔獣、グリフォンの首に手を回す]
[バサリ[ギィィ]]
[グリフォンの上昇と共に黒の虚像は空へ/ガーゴイルが続く]
―― 現実世界<Mundane>/南部・電脳街 ――
[髑髏の地図と同じ座標/電脳街の一角白黒の女性AIが佇む]
フゥン。オ前ガ、ステラ。
地図ノ意味ハ、ワカッタノカ?
[黒の声に女性AIは応えない/街角建造物のように]
[伏せられた瞼の裏に映るものを黒は知らない]
[ストレス値が上昇/人間ならば苛立ちに相当する反応が起こる]
マアイイ。用ガアルノハ、オ前デハナイ。
[次の光点―――ウェンディに電脳側から座標をあわせる]
[グリフォンとホログラムは消え、瞬時に小さな少女の元へ向かう]
[ガーゴイルが唸りながらステラを見、遅れて空へ*飛び立った*]
―― 現実世界/中央部 ... 都市銀行 ――
[物音一つしないフロア ... AIが店舗管理するこの店はまるで廃墟 ...]
今なら、億万長者になれるかしらね、フフフ。
[オードリーは、富裕層向けの打ち合わせスペースに腰掛けると、トビーから受け取ったデータの読み取りを開始する ...]
ふうん。
[痛し、痒し、といった面持ち。]
―― 現実世界/中央部 ... 都市銀行 ――
まあ、こんなものね。
それより ...
[彼女は銀行のデータベースを開くと、サーから渡された紙幣の照合を始めた。]
さて、何か分かるかしらね ...
[黒の背景にライムグリーンの文字で * ゙NOW LOADING ... PLEASE WAIT ...゙ *]
―― 現実世界/中央部周辺 ――
一体、どういう事・・・・・・
[無機質な物ばかり稼動し、生命は全て停止した町並み]
信じられない。こんなことが起こるなんて。
[ネットワークの異常。町の停止。この風景はもしかしたらこの世界の”終末”に最も近いのかもしれない]
・・・・・・
[立ち止まり、思考を整理する。
自分が最も効率よく、核心に触れる事が出来る方法を]
研究室に戻って、アクセスしてみるしかないか。
[非力な現実よりも、ネットワークの中のほうがバハムートを所持している分有利。
そのまま急ぎ足で*研究室へ引き返した*]
―― 電脳世界<Utopia>/Closed・Tower Garden ――
ま。"ここ"にはおじさんがいるから、後で情報を融通して貰うって手もあるどね。
二人が、組んでなければだけど。
[地図を展開して西部区域を眺める。無機質なラインと僅かな色で形成されたそれは、ポイントすればそこに名前を映し出した]
ここが、空中庭園。
ここが、マーシュって人のとこ。マーシュの点は映ってないのよね。動いてるのに。
おじさんの連れてたAIの二人もなかったけど。
[復唱しながら、ポイントして確認する]
やっぱり、手紙の持ち主だけ映ってるみたいだし、映る理由としては"手紙"が一番納得は行くけど、"手紙"がそもそも選ばれて出されたものなら、その選ぶ要因になったものが理由かもしんない。
[不可侵領域――。少しだけ聞こえたトビーの言葉を思い出し]
関係あるの、かな。
[小さく*呟いた*]
―― 電脳世界/Closed・Tower Garden ――
選ぶ要因か――。
[メイが自分自身へ問いかけるように漏らした言葉を、トビーはリピート。]
となれば――各人の事を調査し尽くしている可能性があるという事だね。
困ったな。
僕の副業の事はあまり知られたくないのだけれど。
[メイから断られた林檎を少し掲げ、ぐるりと手首を捻るようにすると、無数の黄金の燐光/噴水から落ちる流線型の飛沫と化して消えた。地に落ちる前に、薄れ、消える。]
そう言えば、嘗て聞いた事がある――。
僕は御伽噺だと思っているけれど。
このUtopiaの創成期、黎明期。今では忘れられ喪われ剥奪された不可侵領域へのアクセス方法があったと。尤も、その内容なんて誰も知っちゃいない。
不老不死が可能ではなかった時代――知識は当時の長老(エルダー)から死と共に忘れられる。
遠い遠い過去の、伝説のような話だ――。
情報を記録出来なかった時代、旧き良き時代の記憶というのは過去人々の記憶の中でしか保存出来なかった。
或いは、遺伝子の中に保存されて、特定条件/特定年齢時に特定動作をさせるという事があったとしても、遺伝子を齎した両親が経験した事実や言語というのは再生不可能だった。
[人の事を話しているのに、それは何処か無機質なAIの事を話しているようだった。]
喪われた民族/喪われた言語は戻る事はない。
だからこそ、本来の人間の寿命で換算してたった2世代前の事であったとしても、人はその時代を神話と呼んでいた。
今では考えられない事だよ。
隠匿の時代ではあるけれど、
今は喪われる事というのはないのにね。
ああ。では、一度Irvineの塒を見に行ってから、
マーシュ邸へ行ってみよう。
―― Closed/Tower Garden→*the Inquistion* ――
―― Utopia/Closed・Tower Garden ――
[トビーの話を聞くと]
ふうん……。
不可侵領域へのアクセス方法を、今わかってる人はいない、のよね。
昔ならわかってたのかもしれない。
今は、わからない。
その方法が、あたしたちに遺伝として残ってるかもしれない。その情報を取り出すことが出来れば、それらを組み合わせて不可侵領域に入ることも可能?
でも――。
遺伝とか持ってなさそうなAIも手紙は受け取ってるわけか。
それか、AIの中にもその情報が何らかの意図によって欠片が埋もれてるとか。
うーんうーん。
[頭を抱え、数瞬後には顔を上げた]
やめた! そういう難しいのはまだ考えない。
じゃ、Irvineのとこ、行ってみよっか。
── 現実世界<Mundane>/西部・マーシュ邸 ──
…相手が、資産家アンドリュー・マーシュとは言え、こんな非常事態にお仕事なんて、さすがはKosha Cybernetics社の社員ね。
即刻、この屋敷のバイオロイドを回収対象にしなきゃ。
[ハスキーだが艶のある女の声が、UGVに乗り込もうとするヴィンセント・キャロの背中に投げかけられる。それは、ほぼ完璧に再現されたシャロンの口調と音声だった。]
──と、シャロン・ロックならきっとそう言うわ。
友人から見せてもらったばかりのドキュメンタリー番組用のデータに映っていた人に、遭遇するとは思いませんでした。──ヴィンセント・キャロ。
[白いボディスーツ姿のセシリアは、地図を仕舞いながら無表情のまま首を傾けた。]
遺伝子に――…だって!?
ああ、その事は考えていなかったけれど…もしかすればもしかするのか。
[双眸を細め目尻を吊り上げ、ぶつぶつと呟く。]
可能性としてないとは言い難い。
僕が先程話していたのは、単に過去どのように人類の形質が後世に残されて行くのか、
そして、言葉や言葉の代わりになるようなものが残されていないのであれば、後世に伝わらないという事を話していただけだったのだけれど。
旧世界の非効率的とも言える時代の事を。
もし今メイが言った事がそうなら、
僕達が集められたという理由に繋がる。
[メイの促しに頷き、揃って"the Inquistion"――IrvineのClosed spaceに転移した。]
[瞬時][二人の目に現れた光景とは]
―― Closed/"the Inquistion" ――
[半壊し今にも空間が崩壊しData屑と化していきそうな危うい、"審問所"がそこにあった。]
酷い有様だ――…。
ここに探すべきものはなく、精妙たる存在はいずこかに消えている。
[口元を緩い「ω」に緩ませる笑み。細めた双眸の所為もあり、皮肉的な笑みに見えなくもない。]
扉が瓦解している。
もうもたない…――早く中に入って調べよう。
[扉の脇を通り過ぎると、硝子のようにはらはらとクラスタが零れ落ちる。中に入ると、無数の書類が破損したまま床に投げ出されている。茶色く変じた(これは古い紙を演出するため、わざとなのだろうか?)書類の中に、結晶化した――右胸がパックリと開いた外装(アバター)の男が見つかった。]
……結晶。
[右胸の状態は正にそうだった。]
遺伝子に記憶が残ってる感じ?
まあ、生きていくうえでの「本能」の部分なら遺伝子に情報は蓄積されるんだと思うんだけど。
さすがにUtopiaって人間が生まれてからの歴史じゃ極浅い部分だし。
AIだけじゃなくて、人の遺伝子にもそういうのを強制的に憶えさせない限りは無理よねー。
[うんうんと頷きながら口にして。IrvineのClosed spaceへと転移する]
―― Closed/"the Inquistion" ――
[トビーの後から中へと入り、恐る恐るといった感じで落ちた書類を手にとり]
書類とか広がってるけど。
目的は別のもの、なのかな。
[ちらりと書類を見てすぐに投げると、Irvineへと近寄る]
まあ、姿が残ってる状態なだけでも、良かったのかな。
強制的に憶えさせる。
――…それが、例えば一人の人間として作られたとして。その後、誰かとの婚姻により、血の薄まり――があったとする。広まるもの達――…。
それでも、それらをかき集めれば元通りの一つの形となり得る。――馬鹿馬鹿しい話にも思えるな。
それなら、AIが集められた中に入っている理由にはならない。
それとも逆なのだろうか。
メイが今話したのが真実?
様々な要素を集める事により、一つの形を成り立たせようと?
[結晶を調べながらもぶつぶつと呟いていたが、]
だが――…"彼"は此処に居ない。
―― 現実世界/中央部 ... 都市銀行 ――
[紙幣の照合を行っていた端末がローディングを終え、結果を表示する。赤い WARNING の文字 ... アクセス権限がない、Classification には "S2" ... ]
あらあら、困ったわね ...
これって、平時だとセキュリティが飛んできて、囲まれたりするのかしら。フフフ
[億劫そうに ... ]
基幹システムをクラックするか、"あっち" にダイブするか ...
[ため息 ... ]
― 現実世界<Mundane>/西部区域:マーシュ邸→UGV車内 ―
あれが浪漫ねえ――
[マーシュ邸を出て駐車してあったUGVの前列シートに乗り込む。
あの格好のまま腹上死したなら、発見時の様子はきっと語りぐさになるだろう。
メイの口ぶりに思い出し笑いを浮かべ、隣の双子に行き先を指示しようとした時だった。
突然後部坐席から聞こえた声に、心臓が飛び上がりそうなほど驚く。]
なななななんだァ――っ!!?
[双子は俺の驚きをよそに、UGVを急発進させた。後ろを向きかけた不自然な体勢のままシートの背もたれにつんのめり、うひいと苦しげに声を漏らした。]
[右胸の結晶に触れる。触れても壊れはせずに]
もし襲われたのなら、Irvineの記憶に情報残ってるとかないのかな。
網膜は最後に見たものを映してるとかさ、昔のミステリーとかでなかったっけ?
ま、ここがこの状態じゃ無理、かな。
[立ち上がり、辺りを調べ始める。彼が集めていたらしい資料を見る。破損が激しく、読み取れる箇所は少ない]
やっぱり。ここに元々あったものじゃなくて、Irvine本人が目的だった、って見るほうが自然よね。
どうでも良さそうな書類ばっかだもん。
[聞き覚えのある声。そうだ、シャロン・ロックだ。
俺は完全に思い出していた。ホットピンクの車でKosha Cybernetics本社に乗り付け、俺っちを散々罵倒したあの女だ。こんちくしょー!
だが、振り返るとそこにいたのは透き通るほど真っ白な少女だった。]
(ゆ、幽霊――!?)
[俺はあわあわと言葉を喪う。
純白のシートに同化するように佇むそいつはとても現実に存在するもののようには思えなかった。
あれれ、だがなにか見たことがあるぞ、この感じは――]
[セシリアは自分の外見の印象がおよぼす効果、教団の衣装である白いボディスーツ──胸元に黒十字に赤い11の繭が配列されたマーク──を突然車に乗り込んだ事を気に留めた様子もなく、不可思議な現象を見るような目でヴィンセントを眺めた。]
…はじめまして、こんにちは?
―― Closed/"the Inquistion" ――
[少し、躊躇った後――…
右手で88の鍵盤を演奏しながら、左手をIrvineの頭部にひたりとあてた。ズブリ、と――手が入ってゆく。]
彼の防壁は生きている。
Styleは六重防御壁.....一般的なStyleだが、チリチリと灼ける感覚からもGoodJobな出来だ。
――。
[トビーの姿が半透明に揺れる。]
現実でも死んでいる。
――…だが、何だ、この違和感は。
[蹌踉めくように一歩、二歩と下がると同時に、姿は元通りに。]
―― 現実世界/中央部 ... 都市銀行 ――
[オードリーがその場を離れようとしたときだった。端末から突如、音声が ... ]
コノ .. ータ ... セス .. ヨウト .. ル キミ .. S級 .. 間 ... トメル .. カ?
ソレ .. ラ ... pia ノ ...... ヘ .. キナサ ..... ネムリ ... ルナ ... コンダクター ... 殺セ .... 密 .. 求メ ..... 知 .....
[そこでメッセージは途切れた ... ]
どなたかしら? どうもご親切に ...
[罠か、それとも、トビーの顔が浮かぶ。]
それにしても、坊やには、まだ聞かなきゃならないことがありそうね ...
― 現実世界<Mundane>/西部区域:UGV車内→ ―
[真紅の双眸が異界への入り口のように心を吸い寄せる。
人間離れした容貌に、ぞわぞわと心が騒いだ。
突如ネットワーク接続でカーオーディオが作動し、古い音楽がスピーカーから流れる。]
――もしも 願い一つだけ叶うなら
君の側で眠らせて――
[そうだ、アレだ。俺が一時期はまった古いジャパニメーションのアヤナミだ。それも真っ白ででかくて怖い方。リリス――
俺のインスピレーションは危険な暴走をはじめる。ヒイイと正体のわからない感情に叫びを上げる。
いったいなにが起きているんだ!
でっかい赤ん坊のおもりをして車に帰ったらリリスが乗っていてそいつがシャロン・ロックの生き霊となって俺を脅している!
まったく悪夢だ。わけがわからない――。]
ははは、はじめましてっつって、
だだだ誰――っ!!?
あんた、あのこのなんなのさ――
現実でも、死んでる……つまり、両方同時に襲われたってこと?
現実で襲われて、それからこちらに犯人が着たのか。
うん、そっちのが可能性としてはありかも。
現実で死んでるなら、本体に目的があったってことかな。
……違和感?
――名称:"Blue Water"
――製作者:UNKNOWN
……しかし謎なのは、どうやって奴がこれを作り/見つけ出したか、だな。まあ、今となっちゃ知る術も無くなってるが。
さてと。
だが、『誰がそうなのか?』
それが一番の問題だな。
―― Closed/"the Inquistion" ――
いや。
Underでよく行われているGameで知られているように、此方<Utopia>での死は彼方<Mudane>での死ではあるのだけれど。
"彼"が何処か遠いところへ行ってしまったような……。いや、忘れて欲しい。
現実世界へ戻ろう。
[メイを見つめる。]
―― 現実世界<Mundane>/南部 ――
[電脳<Utopia>サイドに近い階層を一気に飛ぶ]
[黒が現れたのはウェンディ―――小さな少女の遥か頭上]
[ホログラムは影を落とす事はない]
[現実<Mundane>で見えぬ魔獣に腕を絡めた姿で空から見下ろす]
違ッタカ。
――次ダ。飛ベ。
[移動した光点は中央方面に集っていた]
[適当な女性名の座標を選び、飛ぶ]
[遅れてきたガーゴイルの影が路面に落ち、中央へと旋回した]
―― 現実世界/中央部 ... 都市銀行 ――
[オードリーは、再度、データベースを開こうとしたが、端末は自動的に作業を始めた ... ]
これは、何の冗談かしら。
[サスペンドを何度コマンドしても、フォーマットは止まらない。そして、銀行の入り口・防火壁が一斉に閉じだした。]
チッ ... 冗談じゃないわよ ...
[どうに転がり出ることに成功した ... 建物の外に]
[トビーの言葉を不思議そうに聞いていたが]
うん、じゃあ、今は忘れとく。
【あたしが、Utopiaで殺されたら、あたしはどうなるんだろ。
意識不明? 脳死?】
[考えた事は顔に出さずに、トビーの視線を受けて頷く]
― 現実世界<Mundane>/西部区域:UGV車内→ ―
[先ほどからずっと沈黙していた双子がゆっくりと振り返り、フィルムに覆われた顔のない貌を“リリス”に向ける。]
「お会いするのは初めてですね。」
「――お姉様。」
[そう言って、ゆっくりとフィルムを剥がした。目の前の少女よりは若干人肌に近い色ながら白皙のおもて。眼窩には、同じく真紅の瞳が輝いている。
そこには、整ってはいるが奇妙に印象に残らない凡庸な顔があった。]
[美人と評価される女性数千人からのサンプリングデータから算出した平均値を元にして立体化された無個性な平均顔。
表情筋が少しずつ微調整され、みるみるうちに目の前の少女と同じ顔へと変貌する。
なんだ? こいつら-双子-はなにを言っている?
series Mannequin以前のモデルにこの少女と類似したガイノイドは存在しない。俺は記憶違いを確認するため、瞬時にデータベースを検索しその事実を確認した。そもそも、こいつは人間なのか、義体なのか――?]
――Mundane South-Area 電脳街――
≪何故、私の”名前”を……≫
[ドリスへ向け、信号のかたちで。
目を開くモーション。
グリフォンの唸りは既に消え、辺りにはまた静寂が漂っている。
”地図の意味”
分かったとでも言うのだろうか。それとも、あのAIはそれをそもそもから知っていたのだろうか。どうやって名前を入手したと言うのだろう。そも、名前を呼ばれたことなど――
――ともすると、内へ内へと沈み込みかねない思考/推測行為を中断した。
――――複数の光点が存在する場所へ、移動する。]
――Mundane West-Area 空中庭園――
[ちらちらと、目を動かすようなモーション。
幾つかの光点を確認した。]
─ 現世<Mundane> / 南部学術区域電脳街 ─
[すうっとホログラムが消え、吐息]
消されるために、繋がれる。トリガーは──。
[と、はるか上空を見上げ言葉を切る]
なにかしら、あれ。
[翼持つ異形]
[しばらく見つめていると、やがてそれは飛び去って]
……魑魅魍魎?
あ、そうだ。
[連絡を忘れていた、と通信を開く]
≪師匠、聞こえますか?≫
―― 現実世界<Mundane>/中央部・都市銀行 ――
[指定した座標点にはオードリーという名が表示されていた]
[目的地である銀行内に侵入しようとして電脳側防壁に阻まれる]
――面倒ナ。
[ギャァァ]
[グリフォンの爪が防壁に襲い掛かる/透明な壁に刻まれる亀裂]
[硝子片が砕けるようにきらきらとクラスタが散る]
…フゥン、面白イ物ヲ見テイルナ。
[銀行内案内用AIホログラム装置を利用し、背後で像を結ぶ]
[黒目が見る先はディスプレイ/赤い WARNING と "S2" の文字列]
── 現実世界<Mundane>/西部・UGV車内 ──
[透明感と厚みの両方を合わせ持つ女性ヴォーカルの声をBGMに、すでに発進したUGVは、車内の異変を他所にハイウェイに向けてドライブをはじめる。
「誰」と言うごく当然の問いに、セシリアはゆっくりと白い睫毛で瞬きをした。]
地図を持っていないんですか?
[自分と同様に、少なくとも近隣に居る光点を、地図で確認しているものだと認識していた。動揺しているらしき相手には、「ごめんなさい。こんな時どんな顔を すれば良いのか分からないの。」とでも言うべきなのだろうか。]
Cecilia・Isdora
[それから、ふと思いついたように握手を求めてヴィンセントに手をのばした。]
こんにちは。
[自分と同じ顔に変化した双子にも、同様に。]
[既に電脳側には侵入口/出口が出来ている]
[黒のホログラムは防火壁も扉も難なく通り抜けて、表へ]
ナカナカ、スリリングナ冒険ヲシテイルナ。
……オ前ガ召喚(呼ビ出シ)タノカ?
[差し出すように掲げる掌には透明な髑髏/光点の泳ぐ地図]
―― 現実世界/中央部 ... 都市銀行 周辺 ――
[警戒しながらも、笑みを浮かべて]
あら、セキュリティ会社の方かしら?
怪しい者じゃないのよ。ちょっと、慌ててただけなの ...
[外套に手をかけ、いつでも離脱できる体勢を整える]
――Utopia→Mundane――
[指を動かしてログアウトする。夢から覚めたように、頭が重く感じられ、軽く振った]
三半規管やられたー
[だるそうにゴーグルをはずし、嵌めていたフィルムを確認する。マーシュ邸付近にあった光点は今はない。遠ざかる点が二つ。ほぼ、同じ場所]
んと。
おじさんの車に誰かいるのかな。この遠ざかってるのはおじさん、だよね。
≪これは関係あるのかどうか、わからないけど……≫
≪変な痣みたいなものが出来てたんです≫
≪Underからライズしたときに、気づいたんだけど≫
[一瞬の間]
≪あ、やっぱり関係ないですよね。ごめんなさい≫
[取り繕うように笑う]
≪とにかく、わたしは人と接触することを中心に動いていこうと思っています≫
≪それで何がわかるのか、わからないけれど……≫
≪また連絡しますね≫
[そう告げて、通信を閉じる]
―― 現実世界/中央部 ... 都市銀行 ――
[ドリスの言葉に]
召還? そうねえ、どちらかというと ...
お呼びではないわね。あなたこそ私に何か用かしら?
[かざされた掌から体の中心線を外すように位置を調整する]
―― 現実世界/空中庭園 ――
[双眸を開くと、既に空中庭園に着いていた。
ポリフォーム・リクライニングに似た質感と弾力性を持つ真っ白い椅子に座ったまま外を眺める。]
≪Yes, Your Master.≫
[ウェンディにそれだけを返答し、メイへ。]
恐らく、V.Cと誰か…だろうね。
もう一人……この近くに現れたようだけれど。
―― web cafe"Brute Force" ――
[これまでに幾つかの操作を試してみた結果、光点に割り振られているIDを表示させる事が可能だと彼は気づいていた。手首のデータ端子をホロ投影機に接続、映像を拡大する]
これが俺、だな。South Ward,Mundane――ID:07。
近くには03と05。とりあえずこの辺りから探ってみるか?
[地図に描かれた都市構造を見ながら呟く]
--現世/南部電脳街--
[どこかのスピーカーを通してだろうか。
無機質な機械音声が響く。]
やぁ、また会ったね。収穫はあったかな?
[稲穂を携えた老人のヴィジョンが現れる。]
――Mundane/空中庭園――
[白い機体はいつの間にか空中庭園へと到着していた。先へ行っててくれ、というトビーに少しだけ疑問符を浮かべ、頷いて外へ]
よぉっし、ついに来た! 憧れの空中庭園!!
[まずは一歩。そしてもう一歩]
なんて言ってみたけど、普通っぽい?
[広がる光景には肩を竦めた]
―現世/中央部・外―
[老人から離れ、レベッカは息を吐いた。]
不可侵領域…目的がそれならば、なぜ――
[開いた地図/ホログラム。]
[触れた場所に名前が出る/先ほどの老人の名前も入手。]
[光点はまばら。]
わたくしが?
[じっと見る。]
― 現実世界<Mundane>/西部区域:UGV車内 ―
いやさ、誰ってェのはそういうことじゃなくってェさ――
[地図を持っていないのか、という言葉に持っているけどねと返す。名乗られた名前に改めて自分の名を名乗り、さしのべられた手におずおずと手を差し出して握手をした。]
こンの中で動けるてェことはセシリアちゃんもなんかに選ばれた人なの? 手紙きたの?
[少しだけ眉を寄せて問う。]
――Mundane West-Area 空中庭園――
[同エリア内のとある二つの光点は、現在、一定の速度で移動を続けているようだ。何かの乗り物を利用していると考えられる。
また、移動を行っていない光点が二つ。]
[白い乗用機の影にホログラム。
溌剌とした声が遠ざかって行ったようだ。]
―― 現実世界<Mundane>/中央部・都市銀行前 ――
[お呼びではない=召喚(呼んで)いないと判断]
[中心線をずらす動きに、瞳孔がキュルリ音を立てて開く]
[交戦の動きか/否か]
[瞳孔の奥で光が煌き、アナライズ]
用。
オ前ガ眠リノ神ヲ扱ウモノカ否カ、知ル必要ガアル。
[召喚主ではない≒手紙の差出人ではない]
[だが目の前の赤毛の女は、何かを為そうとしている様子と認識]
[地図に映る空中庭園。その中に光点が増えているのを見つける]
誰か、いる。
[辺りを見回す。それらしき姿は見えず、けれど警戒態勢は保ったまま]
【チャージ量は満タン。だけど、襲ってこられるとまずいなぁ】
[慎重に足を進めた]
霊妙な、器?
師匠、それだけじゃさっぱりわからないわ……。
[最後に投げかけられた一言に、首を振る][そして]
[声に、僅かに肩を震わせ][振り返る]
お爺様。またお会いしましたね。
収穫は──多少は、ってところなのかしら。
お爺様のその稲穂のように、ひとつの茎からたくさんの実、ってわけには行かないけれど。
[一呼吸]
ねえ。お爺様に伺ってみたいことがあったの。
聞いてもいいのかしら。
[きょろりと大きな瞳で老人に尋ねる]
うわぉ、逆?
[来た道を振り返る。フィルムに映った点は自分を除けば二つ。そしてその二つは近い]
これって。
機体に貼りついてきた、とか?
ないか。そうよね。
うんうん。飛んでる時はなかったし。
― 現実世界<Mundane>/西部区域:UGV車内 ―
ありりのりの有明海苔?
[セシリアと名乗る少女との会話を先ほどから診断していたチューリングプログラムは、奇妙な結果をはじき出している。
俺、マノンとカノン、三者には別種のロジック回路を持つプログラムを動作させ結果を照らし合わせるのだが、マノンは彼女をAIと判断し、カノンは人間との結果を出していた。俺のPGMは判断不能と出ている。
結果が別れることも、大きな誤差が生じることもこれまでにないことだった。]
妙だなァ――
というか、「姉」っておまいらなにか知ってるのか?
[双子に問えば、そんなこと言いましたっけとばかりに二人は顔を見あわせ首を傾けた。]
あの人は、あの領域に詳しいようですが。もっと詳しい人も、いるのかしら?
そこへ行かせるのを拒否しているあの人が、この状況の原因と仮定するのも難しい。
また、わたくしにこの情報を渡すのも
[受け取ったデータを眺める。]
[AIでありながら目的は"現実世界"であるがゆえに疎い"彼方"。]
――不可侵領域に行きたいのであれば、不要な事か。
人間の感情/嗜好を考慮に入れても、第一目標への行動を妨げる事はありえるのか。
[0-"no"]
[現時点では、そう仮定した。]
[目ばたきで表示対象を切り替え。電脳世界の状況を映し出す]
アーヴァインは……もう消えた、か。奴のIDは【00】だった……「狙われる」と感じたのはそれに気づいてたから?
ならば、次――は。
[【01】のIDを検索。
一瞬の間のみを置いて、空中庭園の見取り図が現れた]
コイツだろうか。
――ALIAS NAME:指揮者<コンダクター>
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