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集会場は不信と不安がない交ぜになった奇妙な空気に満たされていた。
人狼なんて本当にいるのだろうか。
もしいるとすれば、あの旅のよそ者か。まさか、以前からの住人であるあいつが……
どうやらこの中には、村人が5人、人狼が2人、占い師が1人、霊能者が1人、狂人が2人、守護者が1人、聖痕者が1人含まれているようだ。
あー、諸君、聞いてくれ。もう噂になっているようだが、まずいことになった。
この間の旅人が殺された件、やはり人狼の仕業のようだ。
当日、現場に出入り出来たのは今ここにいる者で全部だ。
とにかく十分に注意してくれ。
[倒れた人には寄らないように気をつけて、電波塔へと向かって滑る。そこに――]
誰か、いる?
あーいや、ホログラムかな。
[電波塔の前、老人の姿に気づく]
[舞い降りたグリフォンの首に漆黒の腕を巻きつけ、上昇]
[何もないはずの空に漆黒のボディが浮かぶ]
電波塔ダ。行ケ。
[命令と共に、ストリートに影を落とさぬ漆黒が空を滑る]
[ホログラム発生装置の効果範囲から離れた瞬間]
[黒の姿は、現実世界<Mundane>から消えた]
「ん………。」
[自分以外に、この沈黙の世界を動く人影。]
≪これは。累々たる屍が如き人々の波間を、
君のような娘さんが歩んでくるとは。
また、絵画的な光景だ。実に良い。≫
[電気信号を用いて話しかける。]
――中央部・電波塔前――
[老人には臆することなく近づく]
ねーおじいちゃん。
あ、ホログラムならおじいちゃんじゃないのかな。
まあ、どっちでもいいわ。
[倒れ臥す人々を見渡す]
これって、どうなってるのか判らない?
あたしがここに来た途端に倒れ始めたんだけど。
おじいちゃんも判らないクチ?
[肩を竦めて、老人へ問う]
そうなの。是非一度行ってみたいと思ってるのよ。
昔のデータでみた見た火星人が居ないのは残念だけれど。
[くすくすと笑う間に、中央部の境界を越え南部へ入る]
― 現実世界<Mundane>/南部区域 La Mancha→繁華街 ―
とりあえず、一旦会社に報告に戻ろっか。
ほら、こいつの不調で事故ったらやだし。はだし。
[双子の顔はのっぺりとしたシートで覆われ、口は閉ざされたままだ。返答がないことに居心地の悪さを感じながら、KITTにUGVを出させた。
電脳世界の様子をメガネ型の端末で探索しながら、眼差しは窓外の町並や賑やかな三次元映像の広告を彷徨っている。
突然、なにかが引っかかり、メガネを外した。]
ちょ! 止まってくれ――KITT。
[UGVを急停車させると窓から顔を覗かせ、過ぎ去った人影を探す。]
なあ、お前たち見なかった!?
[双子は返事をしない。]
今さ、今さ、ピロスエが――
あーっ! いねえ――っ!!!
[敏捷な影は瞬く間に消え去っていた。]
[ゴーグルから電気信号が音声となって耳に送られてくる]
絵画的? そういうもの?
まあ、絵にはなるわよね。
[うんうんと頷く]
で、そんな呼びかけ方をするってことは、何かのAI?
声がないってことでしょ?
それとも、面倒なだけ?
―南部―
案内できるほど、詳しくは無いのですけれど。
家にずっといるので。
でも、もしいらっしゃるのでしたら、ご案内できるようにしておきますね。
お声をおかけくださいな。
[少女の笑いに、レベッカもつられたように笑いを零し]
もし昔の火星人がいたら、きっと研究されていることでしょう。
――動いている人は、もっと向こうかしら?
≪君が来た途端に?ほうほうほう。
ならば、君がこの災厄を持ち込んだのではないか?
いやはや、実に恐れ入ったよ。≫
[表情は柔和なアルカイックスマイル。]
≪私も永く生き過ぎた。人間は本来耐久消費財。
少しくらいガタが来てもおかしくはあるまい。≫
[ホログラムの胸元に、多層構造の地図。
いくつかの箇所に赤い点が存在する。]
≪この点は君だろう?無関係ではないのだろうな。
これを私に送りつけてきた者とこの災厄は。≫
ああ。聞いてばっかりでごめんね?
どうしてこうなったのか、皆目見当もつかない状態でさ。
まだ南部の方は人が動いてたけど、今はどうだかわからない。
こっちに来るにしたがって倒れてる人が多くなってきたし。
南部とここ意外はわからないけど、
Utopiaの芳だって、怪しい雰囲気だったし。
[老人の返事は待たずに一気に喋る]
―― 現実世界<Mundane>/電波塔 ――
[聳え立つ電波塔上部の外側で、唐突に像が結ばれる]
[空に捉まる漆黒の影は、それに何の感慨もなく中を覗き込む]
中ハ周辺同様。睡眠中カ。
3Dホログラム発生装置ハ機能中。
ダガ、他ニAIノ姿ハ――――在ル。
[揺れるローブ姿を視認]
[ガコン]
[エレベーターの駆動音/人影は、在る]
人間の姿も確認。
[最上階から下へ向かうエレベーターを空から眺める]
── 現世<Mundane> /西部・空中庭園──
[硬直する教師とは対照的に、信者たちとセシリアを眺めるマネキンのような子どもたちの様子は、それでも好奇心に満ちている。目隠しをし、ピンと背筋をのばした状態のセシリアは、五体満足なかわりに今の時代には存在しない「盲人」にでも見えるだろうか。]
「──死の乙女ッ!」
[子どもたちの向こう側、遠くの通路から別の観光客から悲鳴の様な声があがった。
それは硬直していた教師が、携帯連絡機で──おそらくは公共警察にコールを送った事を、セシリアが認識したのと、ほぼ同時だった。]
─ 現世 / 南部学術区域 ─
ええ、ありがとう。是非連絡させてもらうわ。
ええと──
[立ち止まり、"Luth"からのフィードバックを確認する]
あれ、増えてる?
[再度確認すると、南部には生体反応2の報告]
博物館の方と、電脳街の方。
こちらからだったら、電脳街の方が近いわね。
行ってみましょう?
[促しつつも返答は待たず]
≪実に溌剌。君には「沈静」が実によく似合いそうだ。≫
[地図の電波塔付近にあたる部分に、赤い点がもう1つ。]
≪おや、またお客さんのようだ。≫
― 現実世界<Mundane>/南部区域→中央部方面 ―
ちょ、待った待った。
――やっと私に来たチャンス
逃がせないの――♪
ってことじゃん。じゃんじゃかじゃん。
すぐ追っかけてくれ、KITT!
[最後に見た彼女の後ろ姿をパターンデータとしてKITTに送信。ナビゲーションシステムが街の地図を呼び出し、向かった方角からおよその目的地を立体視させる。時間が経ち、距離が隔たるごとにそこに表示されている確度は低く色分けされていた。]
行っけぇええぇえ――!!
[ギュギュギュとタイヤが鳴り、スピードメーターが上がる。]
あたしが持ち込んだ?
それならまだ判るんだけどね。
残念だけど、あたしにはここまでたくさんの人を昏倒させるようなウイルスは作れないわ。
作ろうと思えばできるのかもしれないけどね。
その地図って、ここの地図?
確かに、あたしの位置を示してるみたいね。
おじいちゃんに送られてきたんだ?
[ふと思い出して、自分へ送られてきたフィルムを取り出す。触れば、それは地図を映し出し、同じように赤い点がいくつか点灯している]
同じ、地図?
二人?
【コット/師匠/そして二人。
自分を含め、現在のところ五人。】
電気街の方が近いのね。
来たばかりだから、構造がわからないわ。
[苦笑して、彼女の行く方向へと足を進める。]
――すごい速さ?
どちらへ行くのかしら?
速いのならば、先回りはきっと無理でしょうけれど。
[音を捉えようと、耳を凝らす。]
[それでも、言葉はちゃんと耳に入ってきたようで]
沈静って。
ちょっと喋りすぎたわね。
またお客さんって、ここに他にも動いてる人がいるんだ。
ああ。確かに点がもう一つ……。
[フィルムに映し出される点は3つ。自身と、恐らく老人と"お客さん"であろう。そしてもう一つ]
なんか。遠くからすごい速さの点が近づいてきてる?
≪ほう。君もその地図をねえ。≫
[サンスクリットの刻まれたローブが、
風に靡くようなヴィジョン。]
≪どうやら、赤い点はこの沈黙の世界で
動くことのできる連中を示しているようだ。≫
[モーガンの背後に、脈動する男性器のヴィジョン。]
≪私はメガロポリス。上と下を貫く天地の理。
何せ、”手紙”は私に危害を加えると明言している。
君やこの接近中の反応が私―メガロポリス―を
侵そうとする者であれば、排除せねば。
それに―――≫
[周囲を指し示して。]
≪こうして、すでに私の一部が侵されている。≫
それじゃあ、もう一人の方に向かうといいのかしら。
それとも、かするのを期待して向かいます?
――何でそんなスピードで、中央部の方に向かうのかしら。
[UGVはまっすぐに中央部へ向けて疾走してゆく。
奇妙なことに対向車ひとつなく、そればかりか街は静まりかえっていた。]
妙だ。妙だねェ――?
[突然、双子が沈黙を破った。]
「ボス。その後の話を知ってますか?」
「――しってますか?」
[平板で無機質で、それでいて氷を削ぎ落とすような冷ややかな響き。熱を帯びた意識に、薄片は冷たく滑り込む。]
な、なんの“その後”だってェばさ――?
[二人はたっぷりと一呼吸押し黙って――]
《ゆめの》
《――おわりの》
[その言葉を合図にしたように、突然UGVが制御を失い横滑りをはじめた。]
うわぁああぁああ――!!!
[絶叫が車中にワンワンと反響する。
無表情な双子の口許が、なぜか微笑をたたえているように見えた。
二人は、怖れてはいなかった。
先に広がる死の深淵を――]
[老人の背後に移るものをみながら、老人の言葉には首を傾げ]
おじいちゃんがメガロポリスそのものってこと?
で、これに対して怒ってるってこと――。
[動かない人に目を向ける]
メガロポリスを侵すって、具体的に言うとどういうことなのかよくわかんないけど。
あたしはこの手紙に書かれてることが知りたくてここに来た。それだけ。
知的好奇心ってやつかな。
でも、この様子じゃ自力で調べるしかなさそうだし、下に戻ろうにも戻れなさそうだし。
あたしがおじいちゃんの排除対象になるかどうか、あたしにもわかんないよ。
[拡大し捉えた姿はフェミニンな容姿をしていた]
[容姿に興味はないが、"中心部"で動く人間として記録する]
[腕を組み唇の端を持ち上げた、自信と笑みの感情予測と共に]
関係者カ。
手掛カリガ出来タナ。行ケ。
[命令が発せられると同時に姿は電波塔へ近づき/すり抜ける]
[ホログラムが塔にぶつかる事はない]
[内部に降り立ち、手を離し下がれと振る]
[黒の瞳孔が捉えるのは風に靡くローブのヴィジョン]
掠ったとしても接触は無理でしょうね。
もう一点へ向かいましょうか、──。
[言葉を切り、右目に集中。補足していたUGVが横滑りしているのが見える]
事故?……だいじょうぶかしら。
ここから──行ける距離──侵食された?──どちらにせよ──接触してみるべき──
さっきの車。事故を起こしちゃったみたい。
行ってみたいんだけれど、いいかしら?
[レベッカを見上げ、問うてみる]
博物館の方――ですね。
[しかし次いだ言葉に、レベッカはくるりと頭を巡らせ]
事故なら、無事かどうかも。
助けが必要ならば、助けにならなければ。
ましてこんなときですし。
[コットの視線に、頷いて、笑う。]
コットお嬢様の望むように。
《ヴィーッヴィーッヴィーッ!》
[しきりにURVのコンソールの警告灯が明滅する。]
《オペレーティングシステム、強制終了――》
《――制御不能――》
[取り乱し、メガネを取り落とす。]
たた、たァすけてくれェ――
《汎用AI“Mannequin”へアクセス権を委譲しますか?》
[絶望に真っ暗になった俺は藁にも縋る心地で、KITTへの最後の指令に希望を見いだす。]
たた、頼む!
マノン、カノン――
[透明フィルムの奥で光が明滅した。]
《わかりました》
《――コントロールを受け継ぎます》
[やがて、UGVは安定をとりもどし、路肩に緩やかに停車した。]
≪ほーう。君は下から来た者なのか。
ならば、本来は私の排除する対象ではない。≫
[男性器のヴィジョンは、次第にメイの方へ。
ホログラムなので、干渉はしないまでも眼前に。]
≪この状況の原因は、私にも何とも言い難い。
だが、目的は明白といったところか。≫
[男性器のヴィジョンを眼前に突き付けたまま
ニコリと笑い、誘うような声。]
≪君が、排除対象かどうかは今は判断がつかない。
ならば、ちょっと遊ぼうか………
それなら、どっちであっても恨みっこなしだ。≫
―現実世界/電波塔内部―
[目の前に現れたヴィジョン。]
≪いらっしゃい。ようこそ”輪廻”の世界へ。
と言っても、まだここは入口だけれどもね。≫
[やはり背後には脈動する男性器のヴィジョン。]
―― 現実世界/中央部・電波塔(下降エレベーター) ――
[滑らかなシルバーの床に降り立つ漆黒のホログラム。
双眸を細め目尻を吊り上げ、背が高いAIであろうものを見上げる。]
[走り出す少女を追い抜かぬようにスピードを調整]
[どちらの方向か]
――あれ、かしら?
[コットの動きを追い、そちらへと近づく。]
[路肩へと寄せられた、UGV]
本来なら、ね。
つまり対象にはなり得るってこと。
[目の前に迫ってきたそれに一瞬眉を潜めた、が]
遊ぶ?
あたし程度の頭脳で、"メガロポリス"には勝てそうな気は余りしないんだけど。
遊びの内容に寄るわよね。受けるかどうかは。
[地図に浮かんでいた、猛進する点、は動きを止め、それを不思議そうにみた]
何かにでもぶつかったのかな、これ。
―現実世界/電波塔前―
≪君は、何故だか人々が動かぬ街を歩いていた。
すると、君は1人の老人に出会った。≫
[にやりと微笑みながら。]
≪老人は、こう言った。
「君が、私の考えていることを言い当てなければ、
私は君にATTACKをかける………。」≫
[脈動する男性器のヴィジョン]
≪もし君が老人と戦いたくなければ、
君は、老人に何を言うべきだろうか?≫
おい、KITT…… いったいなにがあった。
[無駄とは思いながらも、UGVのAIに話しかける。]
《私はもうダメです……ムゥワィケル……》
[意外にも、返答があった。ひび割れたマシンボイスが小さくなりながらも答えを返す。]
おい、俺はそんな名前じゃないってぇば。
メガネが外れてるけんども。
《…muuuu…wa…ィケル……》
《…ィケ…………ル…………》
[やがて、コンソールは沈黙した。
それが、本当にAI、KITTの断末魔だったのか、管理権を受け継いだseries Mannequinの一種の悪ふざけだったのか、俺には知るよしもない。
ただたしかなのは、双子のAIを除いては俺の近くで作動しているAIは存在しないということだった。]
[ホログラムの老人は目の前に/背後には男性器のヴィジョン]
[PGMである黒がそれに抱くのは、挑発されたとの認識のみ]
召喚(呼ビ出シ)タノハ、オ前カ?
[顔と手以外漆黒のボディースーツに包まれた肢体が前に出る]
[チョコレートブラウンの掌には、握り潰された手紙(メール)]
[黒目ばかりの瞳孔が開き、奥に光が煌く]
[笑みに似てうっすらと開かれた口は、漆赤の裂け目]
[やれやれ、と深く溜息をついた時だった。
小さな少女と女性の姿が目に入った。街は静寂に包まれ、他に動くものの姿が見あたらない。]
や、やあ?
[俺は声をかけた。]
―― 現実世界/電波塔(下降エレベーター) ――
[銀色のタクトを振る。
今は未だ 黒 という名すら聞いていないホログラムが消える。]
先ず先ずの再現度かな。
[肩を竦め、ロビーに到着すると、
そこもまた、人のざわめきすらない場所。
倒れ伏したもの達をゆっくりと見回し、双眸を上げる。
ロビーを越えた向こう電波塔の前に対峙する者達が居た。]
[義眼の倍率と電脳世界への深化度を上げる。]
[音をたててローラーで滑る。老人のホログラムの周りをくるくると。
白いTシャツの七部袖からでた部分は風に当たり、それでも体温のないそこは冷えることはない。足も同様に、生身の部分を服で覆うように、ショートパンツと膝までのスパッツだけで、そこから出た部分には血が通ってはいなかった。
人工皮膚の貼られた手足の色は、生身である顔と色も同一で、一見するとそうとは見えなかった。
スニーカーからでていたローラーが消えて、足元を安定させると今度は歩いてぐるぐると――回り始めた]
―現実世界/電波塔内部―
≪おやおや。君もこの状況で動ける者だね?
その件に関しては、想像に任せるよ。≫
[老人の背後に聳える「それ」は、
脈動しながらそそり立っている。]
≪逆に質問させてもらおう。この沈黙の中、
動けるということは、君も”手紙”を?≫
[胸元に現れる多層地図。
この場の老人の点は、薄い赤が点滅している。
そして、それに対峙する赤い点は目の前の。]
≪君かね?この沈黙を生み出したのは。≫
――大丈夫ですか?
[声をかけられ、レベッカはそばへと近づく。]
このようなときに事故とは大変でしょう。
……怪我などはなさっておりませんか?
[おぼつかない様子に、手を差し出す。]
つかまって下さいな。
治療もある程度ならば出来ますから。
―現実世界/研究室―
[PCからアラームが聞こえる。仮眠を取っていたローズが目覚めるには充分な音量だった]
何・・・・・・
[目をこすりながらディスプレイを覗き込む。そこに広がっているのは”connection error”の文字]
Upper以外にアクセス出来ない・・・・・・?
どういう事?
ネットワークにエラーがあるわけじゃなさそうだし、だとしたらサーバに異常があるって事なんでしょうけど、そんなのありえないわ。
[仮想世界を構成しているサーバ群および中央ネットワーク装置が幾重のバックアップで構成されている事くらい承知している。ならばこれは人為的なネットワーク切断になる。
原因を究明すべく、寝ぼけた頭を覚醒させながらPCへと向かう]
―現実世界/電波塔前―
[目まぐるしく自分の周りを回る少女に
向かって、電気信号を送信する。
それは、電脳世界における老人本体が
位置している位相のPASSCODE。]
≪答えがわからないかね?ならば、来たまえ。≫
[老人の謎かけとも取れる問いかけには、首を捻る]
考えていること、ね。
あたしには、今おじいちゃんが考えてることもよくわからないけど。
そうね、――。
[暫し沈黙する。脈打つそれは邪魔に思えたが、気にしないことにした]
駄目ね、ここの施設でも私の力でも解析出来ないわ。
[手持ちの暗号解読ツール”riris”が何度もエラーをはじき出す。これは悪戯のレベルではない、高度なハッキング]
しょうがないわね・・・
[他の手段を考えたが、少なくとも現状が一体どうなっているのかをもう少し情報収集する必要があると判断し、外へ出かける準備をする]
[わからない、と答えたくはなかったが]
答え教えてくれるの?
だったら、行くわ。
[素直に老人についていくことにした。わからない以上、自身で判断して動くことが、危険なようにも思え、一番安全と思われる行動を]
── 現世<Mundane> /西部・空中庭園──
[子どもの視線は大人たちよりも不躾ではあったが、信者たちに遭遇した時の一般市民の反応としてはごく慣れたものだった。異端に対する嘲笑、無理解──それだけだ。
普段のセシリアはその視線に体する信者たちの反応を踏み絵にする。
動揺する信者が居れば、我々こそが選ばれた特別な者たちである証、俗世の穢れ、カルマを背負うが故、耐えることも修行であると説く。
教師の対応も慣れたものだった。
異端と危険の排除──。
メガロポリスに住む一般的な成人であれば、セシリアのマスターが教祖であるその新興宗教組織に入信した何人もの市民たちが、
「病院治療の拒否」にはじまり、
「義体、機械パーツの解除」
「自主的に、バックアップデータの削除依頼を出す」
と言う信じられないような行動を取っているのだという事をニュースで認識しているはずだった。当然のように
「高所得者に限っては全財産を教団に寄付ののち、出家=行方不明」と言う図式も。]
[不死のシステムを当然のものとするメガロポリス市民にとって、自分自身のバックアップデータの削除は、正気の沙汰ではない。
信者たちは教祖と教祖を支える特殊なAIに洗脳されているのだ、と言う話にはじまり、──バックアップデータを削除or凍結した信者たちは順に殺され、教団が行っている下層民に対する《施し》、シチューにされて煮込まれてしまうと言う、ばかばかしいような噂までもあった。
噂はさておき、ある拉致事件がニュースで有名になってからは、教団は危険なものだと市民たちには認識されていた。
センセーショナルに報道される以前は、農業で自給自足の生活をするだけではなく、農作物をナチュラリストたちに売ると言う事も出来たのだが。]
── 現世<Mundane> /西部・空中庭園──
【先刻の保険会社調査員の肩には、穏便に、丁寧にお引き取りいただきましたが。調査員が派遣された経緯はネットワークで、何処かに報告されているでしょう。ここで公共警察を呼ばれると、教団本部に監査が入りかねません──
否、そろそろ。
Masterの聖域に──ウジ虫どもの監査が入る事自体は想定内なのですが。
それには、まだ時期が…悪い。
マスターのコンディションがもう少し回復してからで無いと。
騒ぎになる前に、こちらの市民「教師」にも穏便に立ち去っていただくしかありませんね。】
── 現世<Mundane> /西部・空中庭園──
[セシリアは無言で素早く教師に近づく。
コールのパネルを押した教師の指先を、白く細い少女自身の指でつまんだ。
セシリアの目元を覆うシールドが、薄い昆虫の羽根が動くような音とともに解除され、セシリアの眼球の光彩が、あり得ない蛍光オレンジカラーに染まるまでは秒速。]
──…
[Orange Fluorescent]
[セシリアは歌うように何かを囁いた。
教師の脳内に再生されるのは、複雑でエキゾチカルな宗教音楽。]
―現実世界/電波塔前―
≪PASSはREINCARNATION…退出も自由だ。≫
[老人の背後に、揺らめきを止めた大木
―Closedの個人スペースの風景らしい。
どうやら風景はすべて硬直しているよう―
が一瞬見え、ホログラムが消える。]
≪正解は「あなたは私と戦うつもりですね?」だ。≫
[Morgan to Morgan's Space in Closed ]
[電脳を介しての声は、問いに対する答えを返さない]
答エヲ返サナイ者ニ、答エル必要ハナイ。
[黒目は多層地図を捉え、瞳孔の奥で光が走る/アナライズ]
[掌に握りこまれたモノと酷似した構造]
["手紙"に対する答えの代わりに、潰れた手紙を漆赤の裂け目に]
[0と1の煌く舌が絡め取り、口内に消える]
["沈黙"の問いに返す様に出す舌には、*透明な髑髏が赤く光った*]
── 現世<Mundane> /西部・空中庭園──
[教師はセシリアに指を掴まれても、セシリアの指先から滑った透明な針に突き刺されてても、声を上げる事も出来なかった。教師は急に虚ろになった目でスローモションで、パネルに緊急コールが間違いであった事を入力し直した。]
《──コール。ポリスへの緊急要請取り消し? 判断ミス?》
《....YES》
《教師として減点ptになります。ネットワーク経由で、教育委員会に報告がなされます。》
《....YES》
[セシリアは、教師に使用した洗脳PGMの効果を確認することもなく、今度は遠くにいるはずの観光客「死の乙女」と言う言葉を口にした市民に顔を向けていた。]
【身長170cm前後、女性】
【生身準拠─バイオロイド─脆弱─が、視覚強化型。】
【メガロポリスでは、めずらしいタイプでは無いが。】
【嗚呼、3ヶ月と3週間、3時間46分22秒前に「葬儀」を行わせていただいた信者さまの所の──者か。それで「死の乙女」等、そのような呼び方を。】
― 現実世界<Mundane>/南部、中央部境界 博物館付近 ―
やや、みっともないね、俺。
だいじょぶなのよ?
ちょいとばかしびっくらしただけだかんら。
[女性に手を差し伸べられ、ばつが悪そうに頭を掻きながら謝した。]
いやね、中央部に向かった途端、急にUGVのAIが死んじゃったのよ。
なにが起きてるかしんない?
[身に降りかかったばかりの出来事を話ながら周囲を見渡す。街は眠りについているようだった。]
[目元のシールドは元通り。
白のボディスーツ姿の少女は、黒のアイマスクを被ったような姿で佇んでいる。おそらく、洗脳を受けた教師本人以外はセシリアの瞳を目撃していない。
シールドの奥の眼光は、まだ──Orange Fluorescent。
オーキッドと蛍光オレンジの間で警鐘のように点滅している。]
── 現世<Mundane> /西部・空中庭園──
[セシリアが該当市民をスキャンする間に、先刻の教師は生徒たちを振り返り、空中庭園から撤退するよう、信者たちに近づかないように引率を続けていた。
教師の目は、減点報告にも無感動、空ろなままで引率を続けながら、何故か通信終えたパネル型連絡機を、みずから割って破壊した。キラキラと破片が周囲に舞い散り、子どもたちは、セシリアたちを見つけた時とはまた別の*奇異の声をあげた*──。]
―現世/南部(ヴィンセント・コットと同じ場所)―
あら、仕方ないですよ。
大丈夫なら、良いのですが――
[コットの顔を見る。]
[そして再び彼を見、口を開く。]
何が起きているか、詳しいことはわたくしにもわかりません。
少なくとも、今のところ五人が動いているということは確認できましたが、それ以上、AIも人間も――まったく動きません。
わたくしが出会った「動いている人」は、あなたで三人目ですが。
中央部へ向かう時、ということは――やはり原因は中央部なのでしょうか。
[ゴーグルをはめて、片目だけレンズはそのままに、老人から聞いたPASSを入力する。ログインIDは―guest_KUNOICHI -A girl-―]
それが正解なんだ。じゃあ、言わなくて良かった。
【考えた答えは別のものだったから】
[片目でみる老人のClosedSpaceでは大木がまず目に入る。そして、動かない、背景。ゴーグルの性能によるものではないことに気づく]
[必要ないようだからと手を引いた。]
[細い女の手――まるで非力なようにもみえる。]
[しかしそれは、本気を出せば、生身の人ならば腕の一本でも簡単に折れるほどの力を持つ。]
[長い金の髪を耳の後ろにかけ、レベッカはもう一つ、口にした。]
あとは、通信が――外部への通信なのか、それとも火星だけかは試みておりませんが、届きませんでした。
Utopiaについては、存じませんが。
["坊ちゃん"のことを除き、この状況で知ることはすべて*話す*]
[動かない青空。揺らめかない葉。
硬直した平原の中心には宇宙樹が如き大木。]
≪生きとし生ける者、始まりあれば終わりあり。
君は人間と見受けられる。そんな体になってまで
浪費するだけの生を過ごして楽しいかね?≫
[男性器を水平に構える。さながら槍。
側面にはVishnuと刻まれている。]
≪私は嘆かわしい。自分がこうして、
終わりのない生を強いられていることが。
だから、私に与えてくれ。”真実の終焉”を。≫
[「槍」を構えたまま、体勢を低くする。]
≪君への対価は…そうだな。
君へは「叡智」を与えよう。
きっと気に入ってもらえると思う。≫
そんな体って、手足?
でもこれは、生きていく為に必要なものだもの。
いつか人は死ぬ。昔なら当たり前だったことが、今は違う。
下じゃ死ぬ人もそれなりだけどね。
真実の終焉って、おじいちゃんを破壊するってこと?
[構えられた"槍"をじっと見る]
そんなもの構えてるって事は違うのかな。
見返りが叡智だと言ってもね。
それは、自分で掴んでこそのものじゃない?
あたしは、与えられる答えよりも、自分で探して、自分の力で得たい。その過程まで含めて大事にしたいの。
≪それを当り前と思って疑わぬか。
ツールが次第にツールでなくなる感覚。
利用すべきものに、逆に縛られて生きる生。≫
[”槍”を構えて少女に向かって一直線。]
≪ならばつかんで見せよ、「叡智」を!
私という障壁に”真実の終焉”を与え、
その手でつかんでみることだッ!!≫
[スピードは並といったところ。]
≪仮に。仮にだが、君が純潔なら申し訳ない。≫
―― 現実世界/中央部・電波塔(ロビー) ――
[倒れているヒューマノイド達の傍らに座ると、
硬質だが弾力を持たせた指で接続場所を探す。]
我は汝を殺し
汝は余剰の生命を得るやもしれぬが、
汝の頭を隠すゆえ、世界は汝を見ることなく
土中にて汝を滅ぼすであろう。
汝の体は我が葬るゆえ、腐敗して成長し、
夥しい実を結ぶであろう。
____ Aureum Vellus.
[それは誰に対してのものか。]
― 現実世界<Mundane>/南部、中央部境界
博物館付近 オープンカフェ ―
「移動を継続する場合は、指示を」
「――コントロールを受け継ぎました。問題ありません。」
[後ろに、いつのまにか双子が立っている。俺は深く溜息をついた。すぐにあの車に乗る気持ちにはあまりなれない。
俺が彼女たちに名前を名乗ると双子も名を告げ挨拶をする。
地図データを読み出すと、すぐ近くにオープンカフェがあった。
その女性と小さな少女をそこへといざなう。店のスタッフのヒューマノイドは床に昏倒していた。
俺の知ることはそう多くはなかったが、ここへ来るまであった出来事を簡単に話した。]
[二人と話をするうち、俺と双子の三者に装備されているチューリングテストプログラムは女性がAIで、少女は人間だろうと一定の確度の検証結果を導き出す。
それらは直感に近い感覚と共有される。
人間かAIであるかは今生じている出来事の影響を受ける条件ではないようだった。UGVのAI、KITTがシステムダウンしても、双子には影響がなかったように。]
……うーん。
中央部ねェ――
[レベッカの言葉に、中央部を仰ぎ見る。警告灯の明滅する電波塔。不穏な気配が漂っている。
このメガロポリスが周囲から断絶されたなら、どのようになるのだろうか。そうして、市況について訊ねようと先ほど連絡をとろうとしたハックマン女史の事が思い出された**。]
あたしは下で生きてる。下で生きるには、動ける手足が必要なの。ただ寝てるだけじゃ、誰もご飯なんてくれないのよ
[迫るそれを凝視。スピードは速くはない。十分に、避けられると認識する]
純潔? 下で、そんな状態でいられると、思う?
[現実世界の指はせわしなく動き、PGMを一つ発動させる。"SHINOBI-GATANA _have a sword"発動と共に、腕だったものが手首から先だけ、鋭利な刃物へと変わる]
[舌なめずりを一つ]
いきなりはないと思うのよね。
[相手の空間であることを考えても分が悪い、とわかる。避けるように動くが、その目は相手の動きを捉えようと、見つめたまま]
― 現実世界<Mundane>/南部、中央部境界
博物館付近 オープンカフェ ―
あれあれ。ハックマン女史からメッセージが来てるってェばさ。
この近くっぽい――
[若干のタイムラグが生じたのか、メッセージの確認が遅れた。
急いで返信をする。
現在地を伝え、発信した。お茶はセルフサービスになりそうだと皮肉をつけ加えはしたが。
そうして、彼女の訪れを*待った*。]
≪それを聞いて安心した。濫りに年頃の
お嬢さんの膜を破る趣味はないんでな。≫
[少女の腕が、鋭利な刃物へと変化。]
≪笑止!剣が槍に勝てるとでも?≫
[リーチ差を生かして、相手の間合いの外から
腹部に向かって槍を突き出す。]
[指があらぬ方向へ歪み、ぐねりと捩れ、ユリ科の花のように細長く伸び、ユニットが再構築された。]
[ヒューマノイドの頭部がカパリと開き顕になると、他の機体からもSample Dataを蒐集。目ぼしいDataをcopyすると、痕跡一つ残さず立ち去った。]
≪"Kot" 今は何処を歩いているんだい。≫
[一つウェンディに投げかけ、視界の片隅に展開されている多層地図を*見つめる*]
[槍の動きは目で追わない、相手の動作を見る]
これは、傷つけるために出した物じゃないもん。
[突き出された槍を受け止めるように刃で返す。そして自身は体を引いて、避けた]
あー、ちょっとまってよ。
あたしだって、おじいちゃんとやるつもりはないの!
[もう一つ、PGMを発動させる
"MAKIBISHI_splinter to surround"左の手で巻くのは数十の種。老人の足元に。触れば破裂し、またはウイルスが触れたものへと侵食する]
≪ぬおおおっ……。≫
[一直線。勢いは、老人の体を弄ぶ。
直線運動に身をゆだねたまま、槍を下方に。]
≪ぬうんッ!!≫
[槍を地面に突き立て、棒高跳びよろしく跳躍。]
[体は避けた勢いのまま後方に。現世での指は、ログアウトを試みる為に動き]
そりゃあ、おじいちゃんの期待する答えを言えなかったはあたしだけど!
[Utopiaでの姿が薄れていく]
いきなりそんなもので襲ってくるのもどうかと思うのよ?
[指か、esckeyに触れる]
[構えを解いてにっこりと笑う。]
≪私が如き老骨…これぐらいしか
生きる実感を得られる活動はないわ。≫
[背を向けて。]
≪気が向いたらまた来なさい。≫
あたしが、ここですることは二つよ。
一つは、手紙に書いてあった情報を得ること。
そのために来たんだもん。
もう一つは、この状況を解明すること。
多分、二つは繋がってる気がするんだけど。
それらがおじいちゃんにとって不利益なら、また今度、ね。
[老人の言葉には少しだけむくれたように]
そりゃ、この都市がおじいちゃんだって言うのなら、実感はないかもしれないけどさ。
仮にもladyにむかって出すものでもないわね。
気が向くか判らないけど、判らなかったらまた来ると思う。
[それだけ口にして、Utopiaでの姿は消失する]
「……ふむ。彼女は通称S級空間の情報を御所望か。」
[リンガの槍は、すうっと*消える*。]
「ならば、再び私のもとに来るだろう。」
――現世・電波塔――
[ゴーグルをはずし、息をつく。老人のホログラムは消えていて、けれど地図に記された点は未だ電波塔にあり]
この中、か。
動けないってことよね。他にも点が見えるけど。
そういえばさっきの点、どうなったんだろ?
[猛進していたと思ったら止まってしまった点。その場所にはもう点はなく。縮尺を大きくすると南部の方に赤い点を見つけ]
これ、かな?
同じ人かはわからないけど。
[シュ、と音をたててローラーが足に出てくると、地を蹴って*南部へと向かった*]
―― 現実世界<Mundane>/電波塔内・上部 ――
[舌を出した黒の姿に老人のホログラムは笑むのみ]
[乗るクリスタルな髑髏には赤い点が幾つ]
[蠢くそれは老人の胸部にある多層地図と呼応している]
[目の前のホログラムへ流れ込む電子に微弱な変化が起こった]
[人間で言うなら"少し気が逸れた"状態と認識]
[Closedで交戦中とまではわからないが、何かがあったと判断する]
謎カケニ付キ合ウ暇ハナイ。
行クゾ。
[老人へではなく電脳<Utopia>に存在する魔獣に告げ、動く]
[Upperと同じくClosedが侵される前に、対処が必要だ]
[答えを返さぬものと問答する時間はない]
[赤い点は電波塔内に複数あった]
[黒の居る位置にも一つある/目の前の老人のものはない]
[エレベーターの終着点予測から、一つは先程見た影と判断]
[髑髏の地図と動く者の関連をシュミレート]
[魔獣の首に腕が絡んだ瞬間、3Dホログラムは*塔内から消えた*]
―現世/南部・中央部境界・オープンカフェ―
[挨拶には挨拶を、名には名を。]
[双子にも微笑みを向け、誘われる場所へと共に行く。]
――ここも、駄目ですね。
[崩れているスタッフの姿に、呟く。]
やはり、メガロポリス全域なのかしら。
ヴィンセント様のAIが"狂った"――誤作動を起こすまでの時間を考えると、南部よりも中央部の方が早いのは確かでしょう。
【やはり原因は、中央部?/もしくは南部以外の何処か。
広がり始めた場所の要因はないが、映像との関係性を考慮に加えると、中央部の可能性が高い。】
――――ハックマン女史?
[返信の作業を難なく終えたその後、尋ねる。]
その方も、動いていらっしゃる方なのですね。
でも、手紙――
[メールのチェックを。]
[だが矢張り届いていない。そして再送もされる気配がない。]
[ため息を吐いたが、すぐに*気を取り直した。*]
もしよろしければ、お茶でもご用意しましょうか?
すべての機械が止まっているのでなければ、良いのですけれど。
――南部・繁華街――
[地図を見ながら、また南部の方へと足を踏み入れる。途中で停車したUGVを見かけたが、そのまま通り過ぎる]
ひょっとして、この点ってこのまま行くとカフェの辺り?
にしても。さっきは人が動いてたのに。
[倒れた人々。先ほどは歩いていた顔も見える]
中央部から除々にってことかな。
おじいちゃんが怒る気持ちもわからなくないけど。
["槍"を思い出し肩を竦める]
あれは間近で見たくない。うん。
[人を避けながら滑り、カフェに近づいていく。拡大された地図には、3つの点]
3つ? 固まってたから一つに見えたのかな。
でも3人は動いてるってことよね。
[電波塔にあった自分以外の3つの点。そしてここの3つの点]
7人、かな。他にもいるのかも。
[ようやくたどり着いた場所。よく地図を見れば、南部と中央部との境界で]
ぐるっと回ってきたんだ。
あー、と。カフェに人がいる。あれかな。
親子? まさかね。
[男が一人に、女性と、自分よりは明らかに年下に見える少女の姿。
柱の影に隠れて、*様子をうかがった*]
あら。昔ながらのポット。アンティークではなく、使っているみたい。
[持ち上げると、しっかりと重みがあり、中で水(湯)が跳ねた。]
何をお飲みになりますか?
珈琲もいれられる――みたい? 紅茶も、ポットがあるわ。氷は使えるのかしら。ジュースもありますね。
お調べして――
[感知する動作]
[一度視線を投げるも、まだその姿は少し遠いようだ。]
[レベッカは再び、二人を見る。]
――お入れしますわ。
[用意するコップは*5つ。*]
――UTOPIA CLOSED-Space――
[AIの所持する3つのPGMのうち、3つ目にあたる”Ite Missa Est”のcopyと、AIの行動記録、メガロポリス/電脳上における他者との接触記録、全てのDATA-copyは、かなりの時間を要してようやく終了した。
硝子質の海のようなgrid。
やわらかく蛍光を放つようなテクスチャが構成される。]
[メガロポリスには、世界宗教の設置したAIが無数に存在していたが、現在そのどれもが応答していないようだ。また、メガロポリスの外と連絡を取ることも不可能である。
行動の指針は無い。
状況解決へ向けて積極的に活動すべきであるか、それともこの状況こそが正常であり解決すべき問題ではないのか、AI単独では判断する事が出来ない。また、指示を仰ぐことの出来る存在も確認できてはいない。]
[ネットワーク上における現状は、外部へアクセスすることの出来る回線が悉く遮断されているようだった。
通信を行おうとしても、ある一定の区域から先へは信号が届かない――というよりは寧ろ、そこから先の世界が消失していた。消失を敢えて形容すれば虚無だった。
AIの持つ長いデータバンク――現在へ至るまでの宗教に関する、習合以前へ及ぶテクスト――から、幾つかの物語が現状に対して引用される。
世界は滅びた。一部の選ばれしものが生き残った。
だが一方で、世界から見れば、このメガロポリスの側が滅びている可能性も存在する。]
……。
[活動停止したメガロポリス内で、活動を継続していたもの――リーインカーネイションについても、データを頼る。
現在では既に生と一体化し、その中で忘却されつつある概念的な”輪廻”との関りは現時点では判断することが出来ない。
それとは別に電波塔に存在したものに関して――NO DATA]
[認識系統に居座る、赤い光点が移動して集合、解散を繰り返す。
こういった事態に陥る以前に受信したMAILが、データコピーの際にシステムに食い込んだようだ。表示される位相はメガロポリスのものと合致する。]
――Mundane South-Area/STREET――
[ホログラムが出現する。
間接照明のような色合いのテクスチャは、電脳世界に在るときのそれよりは輝度を落としている。
先ごろにあったようなノイズは見られない。]
[メガロポリスは依然として静まり返って居る。
決まった区画を決まった速度で走行し、乗客を運ぶ無人走行車両が音も無く現れた。車両は定められたポイントへ停車し、定められた秒数だけその扉を開放し、再び次の停車ポイントへ向けて走り去った。
車内の乗客は全て床や座席の上で昏倒していた。]
[ホログラムは、乗り捨てられたUGVの側に佇んでいる。そこだけには、意識を失った乗り手の姿は*無い。*]
―― 電脳世界<Utopia>/Closed ――
[個人所有の空間を部屋とするなら廊下に相当する場所]
[黒はグリフォンにしな垂れ、掌の髑髏を眺める]
[クリスタルな光沢の中には赤い点が複数存在している]
[―――それは、Closedの中にも]
フゥン……?
[不意に光点が消える/再び現れた先は現実世界<Mundane>]
追エ。
[確実に活動している個体と認識]
[グリフォンに腕を絡め、電子の流れを飛ぶ]
[光点の一つが移動――CLOSEDからのルートをトレースしているようだ。認識/視界の中で、赤い光点と黒いヴィジョンが重なる。]
≪なにゆえあなたは私の後を追い、また何故にあなたの所在地が私の目に表示されているのでしょう。≫
―― 現実世界<Mundane>/南部エリア ――
[ストリートの上空でグリフォンを放す]
[XYZ軸を変換/ホログラムに重力など意味は無い]
[街灯に足裏を当てた逆さ姿で白と黒のホログラムを見下ろす]
召喚(呼ンダ)ノハ、オ前カ?
[弄ぶ透明な髑髏は掌から離れる事なく光を反射する]
[電脳通信で投げられる問いに、漆赤の裂け目が薄く開く]
[奥で光がちらちらと零れる]
問ウ為ニ/聞ク為ニ。
[トレース以外にも所在地が確認されている様子]
[電脳世界のみでグリフォンが唸り、上空を旋回する]
≪この身へ何を問い、
何を求められましょう。≫
[髑髏の弾いた光はホログラムを透過して映像に穴を空ける。メガロポリスのホログラムは虚像。CLOSED上のシステムは、グリフォンの唸りを遠雷のように聞いた。]
[PGMである黒にとりホログラムは虚像/だが本体も位相にある]
[目の前の存在が同じかどうかはわからない]
呼ンダノハ、オ前カト問ウタ。
Yesナラ対価ヲ、Noナラ情報ヲ。
[対価なき対話(交渉)は本質に近くも遠い/僅かにストレス]
[黒目の瞳孔が開き、"表示されている"らしい目をアナライズ]
―― 現実世界/中央部周辺 ――
[東部にのみ聖堂が存在する訳ではない――。
トビーは、歩きながら、聖堂の扉――奥行きがないのが見える――から人々が倒れているのを一瞥し、感慨深げに頷く。]
南に集まっている。
[視界の片隅に在る多層地図は、限りなく詳細であり、UtopiaとMudaneの結びつきを顕にしていた。
多層地図は仄か発光する輪郭のみで構成されており、簡易的な表示時には球状になっていたが、展開され始めると補佐AIとの連動もあり何処に行動可能なものが居るのかが、手に取るように分かった。
情報(Data)を識る=補佐AIとの連動――この事を喩えるなら、何もない場所に書庫にある本全てを入れたのであれば、それらの情報を読まずして知る事が出来るという事でもあり、これは、過去の旧時代の人類が持ち得なかったものでもあろう。――その為の代償があったとしても。]
―――虚像カ、
[ストレス上昇/漆黒に包まれた腕がしなる]
散レ!
[呼応したグリフォンが電脳世界<Utopia>に響く雄たけび]
[電撃を纏う嘴と爪がステラの虚像へと襲い掛かる]
[ドリスを見上げる視線は映像。CLOSEDからドリスの辿った道をなぞる視線がある。]
≪私はあなたを喚んではいません。
しかし怒りは忌むべきもの。
安息を与えられるべき存在との巡り合わせは必定≫
[的確な位置への、ネットワーク上からの攻撃。
先ずは回避。
魔獣の爪が景観構成DATAを音高く引き裂き、クラスタ片は高く舞い上がる。]
[二人がホログラム/現実<Mundane>ではないのは市民には幸い]
[眠り/接続の途絶えた人々にクラスタ片が刺さる事はない]
呼バヌ者モ、虚像モ用ハナイ。
[避けられたグリフォンは衝撃で放電/クラスタ片は輝く機雷に]
[一筋の春雷が落ちたかのよう]
≪怒れるものには安息を≫
[機雷を避けながら、奔る雷から逃れゆく。ホログラムは、プロジェクタを次々に経由し、人々をすり抜けながら眠れる街の中心へ向けて移動する。
いまは、ネットワーク上の位相と現実の座標のリンクした動き。]
汝の心に平安を
[プロジェクタと共に設置されたスピーカーが歌うように唱える。
平安=鎮静を齎すための”Benedictus”が起動。音波の広がる如く、機雷を揺らしながらドリスへ向けて効果を広げてゆく。鎮静は即ち、緩やかなPGMパフォーマンスの低下を意味する。]
[左腕の魔法陣が完成/召喚]
[魔窟から光(データ)が幾つか消え、ケルベロスが首をもたげた]
―――サモン、キマイラ
[現れた背に瞬時に移動、地上から追撃にかかる]
[グリフォンは上空に羽ばたき先導]
[先に音波に触れたグリフォンが困惑し追撃が緩まる]
[体勢を崩した翼が街灯を構成するテクスチャにぶつかった]
[ギャアァ/悲鳴と同時に右腕に浮かんだ魔法陣の光砂が零れる]
何ヲ――
[キマイラは四つ足を緩め、力を溜める]
恐れることはありません。
[幾つかの乗り物のコンソール画面を、黒白二色の影が駆け抜けた。]
[上空にグリフォン、地にキマイラ。魔獣の咆哮。
大衆向け娯楽フィルムの映像が如き光景だが、人々は眠りの中にあってそれを見て居ない。]
怒りは身を滅ぼします。
汝に、平安を。
[音波の出所はホログラムが移動すると共に移動する。電波塔を背に、路面の中央で移動を止めた。
即効性の高いPGMではないが、触れ続ければいずれ一時的な機能停止に近い状態まで追い込まれることもあるだろう。
映像/AIは落ちかかるグリフォンを抱きとめるように、両腕を伸ばした。]
[都市の高層建築の間に幻想的な光景が広がっている。グリフォン――精巧に描写される雷。
荒れ狂う魔獣を従えたAIの姿が一瞬、ミえた。
視覚素子の電脳世界への深化を高くする。]
[現実世界<Mundane>で逃げる白黒を追う影は一つ]
[電脳世界<Utopia>で追う影は三つ]
[現実だけを見れば座す黒が追うだけの静かなチェイス]
[電脳で舞い散るクラスタと咆哮は堪える事がない]
恐レナドナイ。
[黒目が捉える中心点は、電波塔を背に止まる白黒と重なる]
[グリフォンはパフォーマンスが低下していく]
[慣性のまま、伸ばされる腕を打ち据えようと羽ばたく]
ヤッカイダ。カカレ。
[キマイラは四肢に準備終えたモーションを展開]
[天地関係なくグリッドを蹴り、多角的動きで中心点を狙う]
[ビルとビルの間、瞬時に黒が現れては消える]
―――逃ゲラレタカ。
[電波塔の中に消えたホログラムに、瞳孔がキュルリ開く]
[老人のエリアである情報もあり、踏み込むか演算/答えは否]
[PGMの効果が切れ、グリフォンが翼を閉じて唸った]
イイ。追ウナ。
[壁に着地した姿でキマイラを留める]
[掌で水晶光が煌いた]
―― 現実世界<Mundane>/電波塔付近 ――
[パイプを持ち上げてみせる花とヴェールを戴く頭を見下ろす]
[エレベーターで見た姿と記憶(メモリ)で照合した]
……フゥン。余裕ダナ。
召喚(呼ビ出シ)タノハ、オ前カ?
[新たに動く者と邂逅する度に繰り返す問い]
[先頭の余韻か、漆赤の裂け目は薄く*開かれていた*]
─ 現世 / 南部学術区域 カフェ ─
[双子と紳士──であるかは不明だが──と挨拶を交わし]
[レベッカのときと同様。手持ちの情報を提供する]
(師匠の渋面が目に浮かぶわ)
[師は沈黙を善しとする傾向があると彼女は考えている]
[テーブルに用意される茶器に、目を輝かせ]
そんな場合ではないのでしょうけれど、お茶会みたいね。
[ぱたぱたとレベッカを手伝いつつ]
[視界の隅に通信を知らせるアイコン][発信者は師]
[通信に現在位置の返答を返し]
カップ、もう一つ用意しておいた方がいいかしら。
[はたりと思案]
もう一つ、用意します?
良い器がまだたくさんありますよ。
[手伝ってくれる少女には、ありがとうと、そんなことを尋ね。]
お茶会みたいに、ちゃんとお菓子もあれば良いのですけれど。
来られるのかどうかもわからないの。
来られればそのときに用意すればいいのかしら。
お気に召す珈琲豆があればいいけれど。
お菓子は残念だけれど、贅沢も言えないわね。
ゆっくりもしていられないだろうし……。
[目には見えないが、周囲を見る限り確実にタイムリミットは存在している]
["何の"リミットなのかは不明としても]
それならカップは伏せておきましょうか。
温めて。
珈琲豆……豆からこだわるなんて、とても珈琲が好きな師匠様なんですね。
[目で探すも、棚の中、どの袋が望まれるのかわかるわけもない。]
珈琲が好きなら、ご自分で淹れた方がきっと良いのでしょう。
そうね、ゆっくりはできないと思いますけれど。
だからといっても、急いてばかりでも、どうにもならないのではないかしら。
―― 現実世界/中央部周辺・通り ――
[何事も言わずとも補佐AIはわかっている。]
『......Closed領域 魔窟と呼称される空間を形成する基幹的AIです。Closed/Library及びAdministrative bureauに提出された事項に拠れば、製作者の意思を尊重し各領域へのAttackingが指定基準まで承認されており、B/U(バックアップ)は魔......』
[補佐AIの報告はトビーへだけのstill voice。流し聞きながらじっくりと深化させた義眼で観察しているようでもある。]
問いの答えを求めるなら、
回答者と同じ目線に立って頂きたいね。
こちらに来なさい。
[自らは動かず、漆黒のAIに教師のように言った。]
そう、気が急いては考えることも出来ないけれど、だけど。
[オレンジジュースのストローを銜えいつもの癖で思考]
わたしに師匠──レベッカさん──双子さんに──キャロおじさま──おじさまのお知り合いの方──
他にも──どうなのかしら──何故──共通項──不毛?──
─ 現世 / 南部学術区域 カフェ ─
≪「ゆっくりしてはいられない」……。
そう言いつつ、そこで怠惰を味わう矛盾。≫
[姿はない。機械音声のような電気信号は、
ウェンディの頭の中のみに響く。]
≪堕落……ッ!何という堕落……ッ!!
君には「勤勉」を与えよう。実に今この瞬間
君にとって一番必要なものだッ!!!≫
[唐突に頭に響く"音声"に思考は遮られる]
なに──?だれ?
声が……。
[辺りを見回すが特異な点は見あたらない]
[或いはすべてが特異とも]
そうね、――動いている
[視線を流すのは、カフェの外へ。]
わたくしたちに、"何か"があるはず。
ほぼ皆が、――あんな状態になっているのですから。
その"何か"を探すか、
それとも"原因"そのものを探すか、――
どちらも同じ場所に辿り着くのかしら。
[ポットからカップへ移すときに、ダージリンの香りがふわりと立ち上った。]
―― 現実世界<Mundane>/中央部周辺 ――
[キュルリ、キュルリ]
[瞳孔はストリートの上に立つ姿に焦点を合わせ、アナライズ]
[人間/電脳世界<Utopia>にもアクセスしている電子の流れ]
[召喚(呼び)つける声に漆赤の亀裂は深まる]
人間ハ面倒ダナ。
マアイイ。回答ガ、アルノナラ。
[軸などどうでもいい/必要なのは情報]
[瞬時に黒の姿は消え、ストリートで像が結ばれる]
――答エヲ聞コウ。
これは音声通信?
直接繋ぐなんて、どうやって──だれなのっ?
[左目に表示されたインジケータが酷く変動を繰り返している]
[組織のほぼすべてが生体であり、唯一の"窓"である義眼を通じて音声を伝えているのか]
≪逆に考えるんだ。「どうしてこの状況になったのか?」…。
それがわからなければ、「この状況をなぜ作り出したのか?」。
こう考えれば、答えは案外足もとに転がっているかもしれない。≫
≪とりあえず、落ち着いて考えることだ。≫
[ウェンディの目の前に、ホログラムの鏡。]
≪君の今の顔笑えるぞ?≫
― 現実世界<Mundane>/南部境 オープンカフェ ―
いやね、レベッカちゃん。
様づけなんかしちゃって、改まらなくっていンのよ?
ビンちゃんって呼んで。教師ビンビン。
そそ、ハックマン女史のハックションだいまおーは殺したって死なないタフネスなおねいちゃんだもんだからさ。きっとへーきへーき。メールくれてちょうどこのへんにいンの。もうちょっとで来るんじゃないかな?
[レベッカがお茶を煎れるため立ち上がった仕草にあわてて腰をあげる。コットという少女もレベッカを手伝いだした。]
あややん。
いーのいーの。そういうのはうちの子にやらせるのよ?
[そつのない仕草で、双子がレベッカやコットの所作の邪魔にならない程度に補佐をしていた。]
この状況──倒れた?残された?──誰かが作り出した──何者かの意図──
落ち着いてって言われてもっ!!
[ひときわ甲高い声で叫び、一転][ホログラムの鏡を凝視して]
──たしかに、変な顔。
[己を落ち着かせるように、一呼吸]
レベッカちゃんは火星から来たのね。『火星の女』ってば夢野久作。
俺もね、火星にプロモーションに行ったことあんのよ? 出張で。
びっくりしたね。タコチューはいないのね。クレクレタコランなアンドロイドを火星原住民シリーズって企画しようとしたらばさ、火星の色んな団体から怒られちった。
[思い出したように、レベッカとコットにプロモーション用の名刺大の小さなsonosheetを配った。]
そうそ、俺はね、こんなお仕事してんの。
ささ、コットちゃんにもあげる。キラキラ。
[SBY109が歌う、オンデマンドTVの子供向け番組『からだであそんで』挿入歌『くねくねマンボ』、『ミニスカ、ちらり』の三次元PVが入っているものだ。
どちらもホログラム再生で目の前に出現させて見ることができ、比較的ウケがよかった。それらは主に男性の評価だったが。]
[ホログラムといえば、と路上に視線を送った。
カフェにほど近い路肩のパーキングエリアに停車したままのUGVの傍らに、シスターのホログラムが浮かび上がっている。
あの宗派のAIやシステムは生き残っているのだろうかと考えながら、しばしその姿を見つめていた。
突如、グリフォンと共に漆黒のしなやかな女が現れる。]
ななな、なにこれ!
びっくらどっきり!! びっくりどんきー!
[グリフォンと対峙するシスター。派手に明滅しては砕け散るホログラムに愕きながら立ち上がった。
眼鏡は電脳世界でのデータの流れを二重に現実世界に重ねて見せる。
新たな魔獣キマイラが現れ、激しくなる力の拮抗はしかしやがて場所を中心部方面へと移していった。]
――南部・カフェ傍――
[陰に隠れてからさほど時間は経っていない。手元に地図を取り出し――一枚のフィルムだが――点の数を確認する]
【んまー、相手がこゆの持ってると、あたしがいるのも丸判りなんだけどね。雰囲気からすれば、危険はないと思うけど。どうしよっか】
[考える、間もなく、柱の影から出る。そしてカフェへと向かった]
―― 現実世界/中央部周辺 ――
未だだ。
初対面の者には挨拶をするという事をプログラムされていないのかな?
――僕から名乗ろうか。
[ヴェールの下の顔がにっこりと笑った。]
僕はトビー。
普段は指揮者として活動している。
交響楽、舞台劇、公演が求められれば何でもね――。
[パイプからホログラムの煙が揺らめいている。やや、苦笑いが混じるような微笑でもあった。]
この状況は、明らかに"誰か"の意図が存在している。
直接の原因がウィルスなら、当然散布した人が居るはずで。
その人が、わたしたちを残した、って。
そういうことを、仰っているのね。
だとするならば、問題は
Who──誰が
Why──何故
How──対応策は
何かみっつほど足りない気もするけれど。
[そこまで言ったところで、怪訝そうに己を見つめる視線に気付き]
……ごめんなさい。
誰か、親切な人──たぶんだけれど──が、わたしに助言をくれたのだけれど。
びっくりしちゃって。
[安心させるように、にこりと微笑んだ]
≪そうだ。焦燥は、解明への壁。
怠惰は、解明の天敵。冷静と標のみ味方。≫
[ホログラムの鏡に、老人のヴィジョンが映り
聳える男性器のヴィジョンが映る。]
≪答えさえ見つかれば、後は簡単…ッ!
ひどく簡単なことなんだ…ッ!!≫
[オープンカフェであるそこは、テラスにテーブルが並んでいて、そこから中へと入ろうとローラーを滑らせる]
ねーねー、ちょっとお尋ねしたいんですけど?
[見えた三人に声をかける。いや、点は3つだったが、姿は5つ]
【三人だと思ったけど。AI? なんだろ】
この状況、誰か説明できる人いる?
[通りに倒れる人を指して。男の叫びには首を傾げる]
いたって、何が?
≪私がこの場で与える標はここまでだ。
これ以上は、自ら見つけるか虎穴に入らずんば
得ることあたわずといったところだ。≫
[鏡に文字が浮かぶ。
「Closed Morgan's Space PASS:REINCARNATION」
そして、すべてのヴィジョンは消える。]
≪退路なき道を進む、勇敢な諸君を歓迎する。≫
[緩やかなωが示すものを解析]
[微笑/嘲笑/苦笑]
[いずれにせよ笑みを示す記号と認識する]
面倒ダナ。
[未だと言う少年にストレスが上昇し始める]
[答え返るなら交渉の範囲と微修正]
[同時に情報を記憶(メモリに蓄積)していく]
トビー、指揮者/指揮者(コンダクター)
ナルホド。
[Closedの図書館にもUnderにも侵入する黒に心当たりはある]
[速やかな交渉/隠しても意味は無いと判断]
嫁入り前の娘になんてものを見せるのかしら、お爺様。
……電波塔でもお会いしたわね。
そのヴィジョン、電波塔のスクリーンにも出ていたわ。そして人が続々と倒れだした。
映像のこと、調べてみたいと思っていたの。
お爺様、何かご存知みたいだけれど──
[言い終わる前に、"パス"を最後にホログラムは消える]
──簡単には、教えてもらえないみたい。
― 現実世界<Mundane>/南部境 オープンカフェ ―
ヘィ ヘェ〜イ♪
ヘヘヘのヘェ〜イ♪
おい、マノン、カノン!
[指をピンと立てて天を衝く仕草に、ダージリンティーのカップを傾けていた双子がすっくと立ち上がる。]
みゅみゅミュ、ミュージックスターツ!!――ってェばさ!
<<<ジャジャーン!>>>
[双子がカフェの有線を放送するスピーカーにネットワーク接続し、SBY109の楽曲を流し出す。
そこから先は完璧に段取り通り。
俺っちの右手後ろ側にマノン、左手側にカノンという立ち位置に定規で測ったように等間隔に正確に立つと、フリにあわせて歌い出した。]
――会いたかった♪ 会いたかった♪
会いたかった♪ Yes!
会いたかった♪ 会いたかった♪
会いたかった♪ Yes!
君に――♪
[ため息]
情報はただじゃないって、ことかしら。
──あれ。
[そこでようやく、新しく見かける顔に気付く]
[何かを言おうとして口を開いたところで]
────キャロ、おじさま?
[ヴィンセントの唐突なダンスに力いっぱい硬直]
―― 現実世界/中央部周辺 ――
人格の構築を優先されていない。
結果としての本質のみが特化されている。
[指を伸ばし、ドリスの口元に近づける。
観察者の双眸は細められ、伸ばした指はドリスのホログラムの中に沈む。勿論、何が起こるでもない。]
先程の質問の答えだけれど、
[突然歌いだした男に目を瞬かせる]
会いたかったって、あたしに?
何で、また? あたしもさすがにおじさんはちょっと。
おじいちゃんだってごめんだったけど。
じゃなくってさ。
来た途端にこんな惨状だったし、電波塔ではおじいちゃんにやられそうになるし。
情報を探ろうにもUtopia側も異変がおきてるっぽいしで困ってたんだよね。
[ひとしきり歌い終えると、現れたショートカットの少女に歩み寄り肩にぽむと手を置いた。]
むつかしい話はさておいての話よ。
おいちゃんと一緒に世界の頂上を目指さないかい?
☆★☆君こそ、明日のスターだっ☆★☆
[そして、にっかりと満面の笑みを浮かべた。歯がキラリと嘘くさいほどに輝く。
芸能人は歯が命。俺っちは歯だけは気をつけてたのよ。ほんとの話。]
ほらほら♪
オーラがピカピカ出てるじゃないか。
ローラースケートだって履いてる。
夢はフリーダムフリーダムしゃぼんのように♪だよ!
準備は万端さ。
そのまま未来まで走って行こうぜっ
[手を握って来た男を見上げ]
世界の頂上?
明日のスターって、まずはこうなってるのを何とかし内とやぱくない?
あー、待って。
[ようやく、男の言葉を理解したのか]
【つまりこれってスカウトってやつ? 顔が売れれば、上との行き来も楽にはなるけど……。あー。そうじゃなくって!
顔が売れてどうするのよ。下で馬鹿にされるだけだし】
その話は保留にしといてくれる?
あたしにも色々今までの暮らしってものがあるからさ。
[少年が語る言葉/黒に対する分析を記録していく]
[口元に近づく手に漆赤の亀裂が閉じる]
[指が沈む/もちろん痛みも何もない]
[電脳世界<Utopia>側でその指に漆赤の舌が纏わり着こうと蠢く]
[ホログラムの煙にキマイラが小さく唸った]
ん、あたしの準備が万端じゃないのよ。
それにほら、あたしの手、触って判ると思うけど、冷たいでしょ?
義体でもなくてただの機械だし。
それに、スターって笑顔が大切だって言うじゃない。
あたし、笑いたくない時に笑えないもん。
[出来れば断る方向に持って生きたいと首を振る]
僕も呼び出された口だ。
[肩を竦める。垂直に立てられた掌は、黒<カーリー>のホログラムの胴体の丁度真ん中を下がってゆき、腕と地面が水平なところで止まる]
ドリスが何故呼び出されたのかは知らないが――…
「ヒュプノス」
僕の手紙にはこう書かれていた。
そして、遊戯の詳細もね。尤も、詳細は封鎖されてから地図と共に浮かび上がってきたんだ。
[腕を引き抜き、懐から手紙を取り出す。ホログラムのドリスに見せるかのように、黒真珠色のInkで書かれた内容を見せる。]
これはゲーム。
再度の栄光の座を目指さん。
不可侵なる領域がため、贄として集めんと。
まあま。だいじょぶだいじょぶ。
世界が滅びたってヲタクは死なない。
萌えがある限り何度でも甦るさ――
[今までの暮らしを心配する少女に、なにも心配がいらないとばかりにうんうんと何度も頷いた。]
だいじょぶだいじょぶ。
おいちゃんが、なしつけるとこにはぜーんぶ対処すっからさ。
[とはいえ、たしかに今起きていることをなんとかしない限り、俺たちに明日はない。っていうか、俺の会社はまだあるんだろうか。
とりあえず、少女に俺の名刺とプロモーション用のsonosheetを渡した。]
俺っちはビンちゃんよ。
よろすく☆
コットちゃん、なんて現実的かつ前向きなの!
そーねそーね、んじゃばさ、とりあえず今んとこだけでも現状なんとかすっために協力しよ? しおしお?
[ショートカットの少女に決定的な断りの言葉を口にされる前に、なんとか接点を模索するための言葉を紡ぐ。]
[半分呆れながらも、名刺とsonosheetを受け取る]
うちで聴けたかな…。じゃなくって。
あ、あたしはメイ。May=Waltonよ。
ヴィンセントさん、長いからおじさんでいっかな。
なしとかつけなくていいんだけど、まずはこの状況を何とかしなくちゃって思うのよね。
正義感より探究心のほうが強いけど。
にゅふふ。おいちゃんが勤めてる親会社は義体メーカーなのよ。
そんなこと心配しなくっていんだわさ。
[手が機械だ、という彼女に勤めている義体メーカーの話をしながら、これまであった出来事をかいつまんで話した。]
メイちゃんね。
よろぴくなのよ。
なんとかっつってなんとかなるの?
そそ、そういえば――
[さきほど、少女が中央部へ向かったことを思い出した。]
中央の方へなんか異変が起こってるようなんだけども。
行ってみてだいじょんぶだった?
オ前モ召喚(呼ビ出)サレタノカ。
[掌はホログラムの胴体をチャクラに沿い降りていく]
[電脳世界<Utopia>であれば許さない行為]
ヒュノプス/眠リノ神。
遊戯/ゲーム。
[重要なキーワードだけを繰り返し、差し出された手紙を見る]
[黒真珠色の文字を映像として記録]
――贄。
[裂け目の奥から漆赤の舌が蛇のようにうねる/表面には魔法陣]
んー。機械でも困ってないからいいよ。
[椅子に腰掛けて頬杖をつく]
中央部はやっぱり似たようなもんだったよ。
どちらかというと中央の方からやられてったみたいだけどね。
はじめあの辺にいたから。
後は電波塔にいるおじいちゃんが謎かけみたいなのしてきたけど。
えええ。電波なじいちゃん!?
謎かけってぇばさ、スフィンクスみたく答えられないとぱっくしってそんな感じのパックマン?
[そのじいさまもこの異変の中でピンピンしているのだろうかと思いながら。]
よく戻ってこれたねえ。
──回想(ヒュプノス前後)/現世<Mundane> /西部・空中庭園──
[信者を通して教団と軋轢のあった市民であっても、相手が通報等の行動を起こさないのならば、セシリアは何のアクションを返すつもりは無い。]
【私のMaster──いいえ、教祖様は、腐敗したメガロポリスの市民に
《ただしき、死をもたらす》
そうおっしゃられてた。けれども──、】
[セシリアが無意識に握りしめた手のひらに、先刻、教師に突き刺したのと同じ、透明な針が音も無く食い込む。]
──回想(ヒュプノス前後)/現世<Mundane> /西部・空中庭園──
【まだ、浄化の時では無い。】
[セシリアの網膜に、まだおとずれぬメガロポリスの浄化──崩壊の日のヴィジョンが浮かんだ。]
[すべての都市機能が停止し、
機械化された市民たちは粛正の力に倒れ、
浄化の焔に灼かれる。
崩壊したメガロポリスこそが、
彼女のMaster=教祖との《約束の地》。
それはまだ来ぬ、彼女とMasterの夢のヴィジョン────。]
逃げたっていうよりは、見逃してもらったって感じだったけど。
[Utopiaでの事を思い出す]
答えられないとぱっくりって訳じゃないけど、攻撃はされた、かな。
あ、あたしも何か飲もうっと。
[立ち上がり、カウンターの方へと*向かった*]
―― 現実世界<Mundane>/中央部周辺 ――
[確認の為、手紙をアナライズ]
[受け取ったものと酷使していると認識]
手紙―――コレダナ。
[開いたチョコレートブラウンの掌の上、透明な髑髏が光る]
[クリスタルに似た質感のそれには赤い点が浮かぶ]
――オ前ハ目指スノカ。
[抑揚の薄い音声は問いとも確認とも区別がつかない]
―― 現実世界/中央部周辺・通り ――
この手紙(Data)自身も何らかの媒体のようであり、
何らかの共有System/PGMとなっている事以外は不明だ――。
僕を呼び出した理由は、
僕と一流の演算士とでも見てくれたのか、
「Hypnos」の効果を見せる事らしいよ――。
都市一つを丸ごと機能麻痺に陥らせるなど正気の沙汰ではない。
[眉を寄せ眉間に皺が出来たが、
直ぐに平静な表情に。]
―― 現実世界/中央部周辺・通り ――
黒<カーリー>
本質と人格は相互に感応し合い、
果たして本質は永続的価値となりえる。
……呼ばれたのであれば、
召喚者の意思にドリスは従うのかい?
[所詮ホログラムの像など、電脳世界の存在を現実世界でも知れるようにする手段でしかない。仮にここで、ドリスと交戦を行うのであれば、電脳世界での交戦がホログラムとして映し出されるに過ぎない。――それも、望めばという話だ。]
やっぱりもう一度お話を伺うべきかしら。
何かご存知のようだったわ。
Utopia...Closed。
ここからなら……"戎克"が近い。
軽い方でもいいけど、何かあったらいやだし。
[ヴィンセントとメイの会話を聞きながら、手段を講じる]
ルース、撤収。戻ってきて。
["Luth"を探索から呼び戻し、レベッカに視線を向ける]
レベッカさん。
わたしやっぱりUtopiaに行ってみようと思うの。
さっき助言をくれたお爺様のお話をもう少し聞いてみたいし、あちらの状況も見ておきたいわ。
今まで一緒に居てくれてありがとう。
情報が入ったら、連絡するわ。
― 現実世界<Mundane>/南部境 オープンカフェ ―
[攻撃を受けた、という言葉に顔をしかめた。トラブルはできるだけ回避したいものだと考えながら。
その攻撃を回避できたというからには、それなりにメイにはそうした戦闘の心得があるのだろうか。]
あんれェ――
コットちゃん、さっき叫んでたの、じいちゃんと話してたのね。
なぞなぞもらった?
パスコードってどこの入り口なんだろね。
[中央部の塔に棲むという老人と話したことがある者は結構いるのだろうか。それとも、今動いている人びとの鍵になるような人物なのか。
思案しながら、話に耳を傾けている。]
―― 現実世界<Mundane>/中央部周辺・通り ――
僕は考え中だ。
求めても求めまぬとも、どちらでも良いと言えば良いのでね。単なる指揮者には荷が重い。
[双眸を細める。目尻は吊りあがる。]
贄。つまり供えられるのならば、
それは現世<Mundane>での破壊を伴う事をさすだろう。
その行動をとるのか?
[透明な髑髏から、ほぼ黒目で占められた眸に視線を移しながら、重ねる問い。]
[気配を捉えていた人が、姿をあらわす。]
[レベッカはそちらを見て――問いに答えようとした。]
[が]
――……まぁ、すごい。
[声は棒読みだった。]
[それは一点の(僅かな)狂いさえもなく、G音をなぞる。]
【双子のAIといい、自分をちゃん付けで呼ぶことといい、突然歌いだすことといい――
この人は、実はとても凄い人かもしれない。】
[レベッカはある種の格付けをした。]
[幸か不幸か、そこに分類されるのはヴィンセントだけであった。]
コットちゃん、行っちゃうのね――
電脳に潜るのなら、おいちゃんもついてっちゃダメかな。
こっそりのっそりとな。
勝手に後ろから見てるだけだから、かまってくれなくていんだけどもさ。
[と、後ろからかけられる声に]
……だめとは言わないけれど、その。
出来ればやめて頂ければ……。
[頬に浮かぶのは、なぜか羞恥]
Utopiaの中で合流するなら。
あちらで、お会いしましょう?
[言って、走り去った]
――映像、
コットお嬢様が見たという、こうなる前に流れた映像?
[気を取り直した/正常に思考を戻したのは、少女に声をかけられて。]
Utopiaへ。
わかりました。いってらっしゃいませ、コットお嬢様。
[自分の通信コードも、教える。]
何かありましたら、いつでも。
お呼びいただければ、加勢にも。
[それだけ告げて、コットが走ってゆくのを見送った。]
[トビーの説明を記録していく]
[抱いた反応――感情と共に/それは黒の記憶となる]
共有PGM。
デハ、アレモ同ジカ。
[交戦した白黒のホログラムの言葉(データ)と照合/判断]
[手紙の差出人が都市を機能麻痺にしたの情報に、瞳孔が開く]
[驚きに近い反応/トビーの眉を寄せる表情とは対照的に]
召喚(呼バレ)ルニハ、対価ガイル。
贄ハ先ニ奉ゲラレルモノ。
ソレニ、
― 現実世界<Mundane>/南部境 オープンカフェ ―
あいよぅ。行ってらっしゃい。
[ぱたぱたと手を振って、その姿を見送った。
なぜ恥ずかしそうな顔をしていたのだろう、と思いながら。
電脳で姿を見つけられれば、気になる中枢への探索の様子を探ってはみたかったが。
現実世界の身はカフェで話をしながら、“来客”の姿を*待っている*。]
─ 現世 / 南部電脳街 "戎克" ─
[店内は相変わらず暗く、いつもと違う]
[奥行きのない、見たままの壁]
[器用に積み上げられた"売り物"を飛び越えて目隠しの向こう側へ][ほのかな光源]
よかった。生きてる。
[三角錐に似た外観のポッド]
[Utopiaへは義眼を通じての潜行も可能だけれど]
(疲れちゃうのよね。フィードバックも遅くなっちゃうし)
[ポッドと義眼を接続し操作パネルを立ち上げる][緩やかな起動音][一方で一枚一枚、衣服を脱いで]
……さむ。
[身に着けていたすべてをはずしてポッドの中へ]
[パネルを操作すると触媒の充填が開始]
非効率な気がするんだけどなぁ、このシステム。
最新技術のわりにアナクロすぎるって、さんざんだったもの。確かに、性能はいいんだけれど。
[ぼやきつつ眼を閉じる][一瞬の闇の後、意識は電脳空間──Utopiaへ]
―電脳世界/Closed Morgan's Space―
[硬直した平原の中で、動かない宇宙樹を
見つめている。サンスクリットのローブだけが靡く。]
そろそろだろうか。あの者は、必ず私を訪ねる。
[背中には「槍」。脈動を続ける。]
【赤い。
――恥ずかしがっているのかしら?】
[教えてもらった通信コードを、input/入力→save/保存]
[情報の整理のために、pick upしたものを引き出す。]
ヴィンセントさん(――こう呼ぶことにしてみた――)も、Utopiaへ行きますか?
[幾つもの情報――だがまだ足りない。]
――中央部も探らなければいけないとは思いますが。
Utopiaはコットお嬢様に任せてしまおうかしら。
気分次第カ。イイ身分ダ。
[髑髏から黒目へと向けられた視線を受け止める]
現実世界<Mundane>ニ興味ハナイガ、
[破壊も防衛も、電脳存在である黒には関係ないが]
電脳世界<Utopia>ニ手ヲ出ス者ヲ許シハシナイ。
[ホログラムが現実<Mundane>のトビーを傷つける事は不可能]
[それでも好戦的な言葉を放つ]
─ 理想郷<Utopia> / Closed・Morgan's Space ─
[設定通り、接続先は老人の個人空間]
[教えられたパスコードを使い、内部へ侵入]
きれいだけれど、さみしいところ。
お招きにあずかり、ありがとうございます。
──ってところかしら?
[老人とは、メートル法で約5〜6mといった距離]
[にこりと微笑み、一礼してみせる]
眠リノ神ヲ扱ウモノガ、眠ッテハイナイダロウ。
[周辺部のドーナツリングを巡る間にも徐々に広がっていた眠り]
[都市丸ごとダウンが目的なら、立っている者の中にいるはず]
[青空は動かない。草原も動かない。
宇宙樹も動かない。動くのはただ2つ。]
ようこそ”輪廻”の世界へ。
[「槍」を背中に備えたまま、向き直る。]
早速だがね。”手紙”…もらったろう?
文面を私に読み聞かせてもらえるかね。
【"主"でなく"私"であった理由。
"他の誰か"でなく"彼ら"であった理由。
五人、六人/双子/八人?
――コットに話しかけたもう一人=映像?】
本当に
[煩雑に並べたメモを整理する。]
[現世では紅茶に蜂蜜を垂らす。]
[かき混ぜる音が心地よい。]
何が原因か、わからなければいけないというのに。
[くじの当たりとはいえ、ここに来なければこうはならなかったに違いないと――]
[考え、瞬き/思考。]
[老人が左手を翳すと、中空に文字が浮かぶ。
空間は停止している。これは、”手紙”の機能。
願うなら、望みのものを与えよう。
対価は、不可侵領域への鍵で結構。]
このような”手紙”が私のもとへ届いた。
私は、これこそが原因と思っていたが…。
[失望したような眼で見据える。]
君は”手紙”をもらっていない…と?
どうやら私の見込み違いなのかねえ。
──回想(ヒュプノス前後)/現世<Mundane> /西部・空中庭園──
[メガロポリスの外壁に連なる故に、耐久性には定評があるはずの、空中庭園の透明通路を揺るがす──地震が起きた。
地揺れは、繰り返し。
けれども、庭園に被害を与えることなく止まる。
揺れの停止と共に、庭園の下から届いたのは、クラクションと悲鳴。
突如コントロールを失い暴走した何台かの車が、駅前の広場で玉突き事故を起こす光景を、通路の透明な床面から俯瞰して望む事が出来た。
煙があがり、自動スプリンクラーが消火をはじめる。
けれども、地上の悲鳴、怒声は大きくなるばかり。どうやら、南部の歓楽街へ続くステーションの前に設置された巨大スクリーンに、見た事も無い奇妙なヴィジョンが映っているらしい。]
「中央部でッ!」
「次々に人が倒れて行くッ!」
「テロなのか?」 「植民星の反乱軍よ、きっと!」
「《True end...PASS:REINCARNATION》って何、何、なんなのよォオおおッ」
―― 現実世界<Mundane>/中央部周辺・通り ――
そうかもしれないな。
[パイプからホログラムの煙が立ち昇る。暫し、沈黙。]
……僕への直接の連絡手段を教えておこう。
ドリスが、僕をその対象だと思わなければだが。
[ドリスの前に、仄か輝く
一小節の譜のホログラムが浮かぶ。
それは電脳世界のドリスの前に存在しているものだ。]
[トビーは、ドリスに向かい一歩踏み出すと、
その傍らを通り過ぎようとした。]
──回想(ヒュプノス前後)/現世<Mundane> /西部・空中庭園──
[セシリア咄嗟に、籠を抱えたままの信者たちを強く抱き寄せた。]
これは、教祖様がなさった事ではありません。
ま だ 、 粛 正 の 日 で は 無 い。
教祖様が私たちに何も告げず、メガロポリスにPGMを撒くような事はありません。──決して。
──回想(ヒュプノス前後)/現世<Mundane> /西部・空中庭園──
[更に、その目の前で──
半ばパニックになりながら、ステイションへ向けて移動を開始しはじめた、あの青い制服を着たマネキンのような子どもたちが──昏倒しはじめた。]
…──
[音も無く。
ドミノの駒ように。
次々にスカイブルーの制服の整った少年少女が倒れて行く。隙間に、あのセシリアが洗脳した教師や、観光客の身体も重なり、赤やブラウンの彩りとなる。]
──回想(ヒュプノス前後)/現世<Mundane> /西部・空中庭園──
[集合と移動を教師に求められ、動きはじめた子どもたちの後ろで、セシリアを「死の乙女」と呼んだ市民Aが小さく横に頭を振った。──その一瞬後の出来事/惨状。]
・・…一体、何が起き、
[抱いていた1人の女信者の身体が崩れた。
目の前でも白いボディスーツの者たちが倒れる。
セシリアは、一瞬思考停止した。]
ヴィンセントさん。
あと、あなた――メイお嬢様。
あなたがたは、
【確率は低いが】
ここには、どうやって来たのでしょう?
わたくしは、旅行の券が当たって、来たのですけれども。
散々な旅行になってしまって。
【最初から、仕組まれていた?→
その場合は、必ず共通項がある→
現在動いているということ?】
お手紙って、それなの?
[同じように、"手紙"を呼び出す]
書いてある意味がわからなかったから、送り間違いだと思っていたんだけれど。
あら。
[表示されるその内容に目を留める]
これは、地図?
[指で触れると、画面が切り替わる]
[バードビューで見慣れた、メガロポリスの市街]
[いくつかの光点が表示されている]
ここにも、ふたつ。
お爺様と、わたし?
そう…それだ。私のものと同一とは限らぬ。
だが、私への”手紙”にははっきり書いてあった。
これを仕組んだ者どもの目的がな。
[「槍」がどくんと脈動。
老人の右拳が、わなわなと震えている。]
標は足元にあり…というわけだ。
君の”手紙”に該当する箇所があるか知らぬが。
──回想(ヒュプノス前後)/現世<Mundane> /西部・空中庭園──
[こどもたちは動かない。教師も観光客も立ち上がらない。
メガロポリスの外周をループする透明な通路を、昏倒した市民たちは、コンベアに乗せられたマネキンのように、ただ流れて行く。
何時の間にか、空中庭園下の騒ぎが終わったのか、不気味な静寂が訪れていた。巨大スクリーンの映像だけが、ノイズ混じりに点滅しているようだ。
メガロポリス外部の緑地、青空には変化が無い。
庭園には先刻と同じく爽やかな人口の風が吹き、小鳥がさえずりを続けていた。]
[答えを聞く前から、レベッカは手紙を探した。]
[開くことはまだしない。]
[なんの変哲もない手紙だったら良いが、ウイルスならば"今は"侵されるわけにはいかない。]
―― 目覚めさせるのを先とした方が良いのでしょうか
[甘い蜂蜜の香りを口の中で感じる。]
[立ち上がり、倒れるスタッフに手を当てる。]
[医学用ではない/怪我をさせないのだから必要はない機能なのだ。]
―― 眠り、ではない?
目を覚まさせるには、……その方法を知るには、やっぱり情報が必要でしょうか
―― 現実世界<Mundane>/中央部周辺 ――
[少年は黒の言葉を否定しなかった]
[揺らめく煙のホログラムは、沈黙と同じ長さで立ち昇る]
[グルル]
[黒はキマイラの頭を抑え、続く言葉を待つ]
連絡手段、フゥン。
[目の前に一小節の譜のホログラム/同時に電脳<Utopia>にも]
[躊躇いなく裂け目から漆赤の舌が伸び、譜を絡め取る]
対象ナラバ、ソノ時ダ。
[もしそうなら逃がさないと黒目を向ける]
[通り過ぎようとするその首に漆黒の腕(ホログラム)を巻きつけ]
―――愉シミニシテイル。
[耳に囁くように譜を乗せた舌をうねらせ、黒と魔獣達は*消えた*]
――UTOPIA CLOSED-Space――
『REINCARNATION』
[粛々と扉をノックするように、パスフレーズを入力する。静かに控える。
ドリスと交戦状態にあったことなど既に忘れてしまったかのように、静かに。]
―現世/南部・カフェ―
[都市の乗り物が動く音は聞こえる。]
[しかし人の動く音はない。]
[静まり返っている/手の下の人も。]
[レベッカは目を伏せた。]
[演算/0と1だけでの計算/計測が不可能に近い。]
手紙があり、意図的に残された"生存者"がマークされている。
お爺様のお手紙には、誰かの意図がしっかりと書き込まれているのね。
わたしのお手紙にはそういったことは書かれていない。書いてあったらよかったのに。
[しゅん、と手紙を見る。近づく光点に気付き]
お爺様、誰かいらっしゃるみたい。
ふむ……盗み聞きは感心せんなあ。
[脈動する「槍」を水平に身構える。]
何か用ならば、堂々と出てきたらどうだ?
それとも、この”手紙”を送り付けた張本人が
私に「真実の終焉」を与えに来たのか。
[大勢を低くし、いつでも飛びかかれる姿勢。]
不可侵領域への鍵…あれを開けてどうする?
そのつもりならば、私はあれを護らねばなるまい。
[意識は光点、その"方角"に向けたまま]
──ああ、そうか──お爺様の手紙──"目的"──"不可侵領域への鍵"──不可侵領域──SSS──絶対に入れない場所──おばあちゃまならあるいは?──わたしの手紙──"かけらは血に/SSSを開け"──
──お爺様のお手紙とはずいぶん様相が違うけれど。
言っていることは同じ?
― 現実世界<Mundane>/南部境 オープンカフェ ―
[レベッカのUtopiaへ行くのかという問いかけに、眼鏡の端を少し持ち上げた。]
んん。今はどっぷりとは潜っちゃわないけんど。
様子見だけ。チラリちらりとね。
にしても、せっかくの旅行のつもりがとんだ災難なのね、レベッカちゃん。ひとりたび? お連れさんとかいな〜いの?
俺はこの街の北部の会社に勤めてっから地元なんだけどもさ。ジローラモ。
[レベッカが封書に手を触れているのに気づき、ほへ、と息を吐く。]
ありり、手紙って珍しいのね。
不幸の手紙――とか流行ってたりなんかしたりして。
俺っちもさァ――
[彼女の仕草に自分も手紙を持っていたことを思い出し、スーツのジャケットのポケットから封書を覗かせた。]
[堂々と、
そう言われてAIは、静止した平原の中へ。
槍の穂先と、思考を漏洩する少女のようなものへ頭を垂れた]
≪真実の終焉。テクストに記された終焉から逃れるために、人は苦行します。輪廻の終わりは解脱とされています≫
≪不可侵領域。聖域と呼ばれる概念について、宗教的意義以上の知識を持ちません。また、それ故に”手紙”の意図を理解することは出来ぬ身です≫
≪あなたは私に施すと述べ、私に対価を求めると述べた。私は施しを受け、望むものを分け与えるべく此処を訪れました≫
―現世/南部-中央部・カフェ―
連れが居たのですけれど……
どうなったかは、想像できると思います。
[ヴィンセントの言葉に、口元をゆがめた。]
[焦りだ/MASTERを求める。]
[だが、手紙のことを聞いて、]
…… あなた、も?
手紙を?
[それを見て、口を引き結んだ。]
そう…目的は不可侵領域への鍵。
その認識で充分だ。悪いことは言わない、
それ以上は、詮索しない方がいい。
[Kotにも、脅すような声を投げかける。]
あれに興味持てば、中が知りたくなる。
中を知れば、それを開けてみたくなる。
それを開ければ……いや、やめておこう。
[ぎりりと「槍」を握り直す。]
謎は謎のままが、一番美しいんだ。
[ドリスが強い視線を向けた時、トビーの双眸は伏せられてはいたが、口元の笑みは絶やされておらず。
腕は直ぐにすり抜けてしまう。]
―― 現実世界/トラム→中央部⇔南部境界 ――
[静かに開き静かに閉じる扉
窓際の席に座り、一時、思考を深め。
横顔は無表情。
頭部を飾る花の一部が萎れ、新しい花が咲く。]
[――やがて、やや離れた南部境界に到着すると、
トラムから行動可能な複数人が居るであろうカフェへ向かった。]
― 電脳世界<Utopia>/Closed・Morgan's Space ―
[パスコードを入力し、クローズド領域へと入っていったコットを追いかける薄い影が一つ。
電脳への完全な接続を行っていない状態では、それは平面的な切り絵の影のように情報量の少ない姿でそこに存在している。
地図を持つ者には、コットと老人のいる場所に、また一つ光点が点ったように知覚されたことだろう。
影は少女の影にくっつき擬態したまま、そこでの話を聞いている。]
「盗み聞きは感心しない――」
[老人の言葉が自分を指しているのかと一瞬警戒し、じっと身を潜めた。]
S級に挑むのは今のわたしには過ぎた行いだと思っているわ。いずれは、とも思っているけれど。
謎を謎のままにしておくには、謎が大きすぎるもの。
……驚いた。街頭AIまでが、動けて。
いえ、"生存者"に?
[まじまじと現れたAIを眺める][多少、無遠慮な視線]
なるほど……私に与えるか、輪廻の向こう側。
[今にも飛びかからん大勢。「槍」が震える。]
よかろう。そこまで言うならやってみせい。
私に「真実の終焉」を。君に「個性」を。
[地面を蹴り、一直線に向かう。]
― 現実世界<Mundane>/南部境 オープンカフェ ―
あんれェ――
お連れさんが眠ったままだったら心配だァね……
[レベッカの言葉に、表情を曇らせた。]
こりって長引いたらなんかひどい影響あるのかなァ
って、あるぇー!!!
[劇場での公演の様子を自動録画していたはずなのだが、保存ログが途中で切れている。
最後には、バタバタとドミノ倒しのように入り交じりながら崩れていったメンバーとファンたちの姿が記録されていた。]
こっちもひどいことになってるってェ??
むむ、待った待った。
手紙――??
[電脳領域に意識を向ければ、手紙という言葉が引っかかった。]
≪好奇心。求める心は留まるところを知らず、いずれ人を滅ぼすものです≫
[他意は、無い。]
≪私が活動を続けている理由を私は知りません≫
≪知らぬ以上、私は現状では活動を続けるのみ≫
≪人々を癒し、与えるのみ≫
[与えることを美徳として登録されているPGMは
思いを漲らせ震えんばかりの槍が迫り、触れ、交わろうともただ*佇む。*]
―現世/南部あたり カフェ―
ええ。
[言葉少なに頷いた。]
――長引いてわたくしたちもこうなるとか、そういうことはおきえるかもしれないとコットお嬢様とお話していましたけれど。
……どうなさいました?
[言葉を待つ。手紙はまだ、*あけてはいない*]
[「槍」が眼前を貫く。が、傷はないようだ。]
我が「槍」は身を貫くに非ず。心を貫く。
[ズッと、「槍」を引き抜いて静かに*呟く*。]
Brahmaは「誕生」を与える……。
― 現実世界<Mundane>/南部境 オープンカフェ ―
劇場が、夢が崩れてる真っ最中なのよ。
夢がもりもりもりぐちひろこってな感じにさっきまで歌ってたってェのに。
[あわわ、と途方にくれて周囲を見渡した。
眼鏡でブックマークに入っているネット配信の番組をチェックしてみれば、リアルタイム配信のものはすべて止まっている。
中心部だけの異変であればさして動揺はなかったが、都市全体に影響が及んでいるとなれば話は別だった。]
[手紙を取り出してみる。
封蝋がいつの間にか溶け去っていた。
そこには、血が滴るような真っ赤な染みが残されている。
眉間に皺をよせ、薄く開かれた手紙の口を睨む。
そこにある、誘いかけるような気配を感じながら。]
「――ここに女の子は居なかったかな?」
[声がかかった。
とっさに、封書を再びポケットに押しこむ。]
おやおや、誰かと思えば――
[視線を上げた先に認めた姿。己の口もとには、微笑が*浮かんでいた*。]
──回想(ヒュプノス前後)/現世<Mundane> /西部・空中庭園──
[床に倒れた信者の1人が「目が見えない」と呟き、ひとりが「臓腑が冷たくなって来た」と悲鳴を上げ、やがて意識を失った。セシリアは彼等の手を握りしめながら、完全に昏倒した信者、倒れたものの意識がある信者、変わらず立っている2人を素早く見比べた。
財産がある信者は、自分自身の生身パーツを再生させたり、バンクに保管しておいた臓器を培養して、取り戻すものが多かったが、保存してない者、手続きの関係や病院・保険会社とのトラブルで中断せざるを得ない者も多い。また、資産の無い者はそもそもボディを保管していなかったり、再生の資金を得る事が出来ない。完全に生身の信者で、教団施設の外で活動出来る者は少ないのだった。
目が見えないと言った信者は義眼のままだった。
セシリアは教団内で担っている役割ゆえ、信者全員のボディの構成を把握していた。]
[数秒の沈黙ののち、]
…どうやら、完全生身の者だけが立っているようですね。
それも自己パーツの生体を持つものだけが。
でも、倒れている者も、意識は無いが死んでは居ない。
[横に首を振る。]
──今は、まだ。
[突如起きたメガロポリスの機能停止。
それが一時的なものなのか、事故、テロ、侵略行為。
今後何らかの展開が想定された作為的なものなのか、何も分からない。]
【私は今さっき、粛正の日ではないと断言したけれど。
Masterが──私を置いて、粛正をはじめないとは限らないとは、100%は言いきれない。】
【AIの私を置いて。】
【そもそも、生身の者だけが残ったならば、私は何故──、】
[セシリアには、つい先日にVIPサインを鳴らして教団本部に現れた、あの「訪問者」の事が思い出された。「訪問者」。
それに「訪問者」が差し出した「手紙」の事が──。]
[か細く白い少女のうなじには、桃のようにうっすらと淡い産毛が透けている。オーキッドパープルのやわらかな髪が、空中庭園の風にゆれた。
セシリアは、一見してはAIとは分からないほど外見は精緻に作り込まれて居り──また、外見だけではなく内部も専門家が解剖しても、人間と間違ってしまうほどに、作り込まれているのだった。]
【──知りたい】
【Master 私は知りたいです──】
[セシリアが、はかなげな表情を浮かべたのは一瞬の事。]
──回想(ヒュプノス前後)/現世<Mundane> /西部・空中庭園──
「セシリアさま」
「セシリアさま」
[空中庭園の通路にた人間の内、たった2人だけ。
少女の指示を仰ぐぎ待つように、セシリアを見つめながら、以前と変わらぬ姿で信者が立っている。]
【LEFT:最下層出身──34歳男性──
臓器・身体パーツ交換無し。
(極度の貧しさゆえ、工場機械で切断された腕の再生も無し。)】
【RIGHT:メガロポリス市民──16歳──男性。
教団育ちのため、交換した生体パーツを再生済の自パーツに交換済。
(すでに死亡した両親の希望により)】
──回想(ヒュプノス前後)/現世<Mundane> /西部・空中庭園──
私が残っているのも、貴方がたと同じく、宇宙の意思に選ばれての事でしょう。
この事態を乗り切れば、約束された場所は近い。
慌てず、おそれずに──。
教団本部、繭(コクーン)に還りましょう。
[セシリアは内心の動揺はあわらさず、不安を訴える信者に力強い言葉を与える。]
[巨大モニターは壊れてしまったのか、まだ同じ中央部のヴィジョンを繰り返していた。
セシリアは、空中回路だけではなく、公共交通がまだ動いている事を確認し、動ける信者たちに、昏倒した信者と収穫物抱えて、東部の電脳街の端にある教団本部のゲートへと戻るように指示した。]
貴方たちだけでお戻りなさい。
・・…大丈夫よ。
ゲートの開き方は、理解しているでしょう?
私は、この先の電脳街にある協力施設でUtopiaにアクセスし、教団本部のセキュリティを強化する作業を行い、それから戻ります。
──回想(ヒュプノス前後)/現世<Mundane> /西部・空中庭園──
──回想*終了*──
――Mundane/upperlayer (現実世界/上層区画)――
[人影もまばらな辺縁区画。
小さな駆動音と共に、四角い建物の口が開いた。ゲートを抜けて姿を現したのは、スーツケースを引いた男が一人。インディゴブルーのケースは旅行者と見まがうばかりに大きく、だが彼は見知った様子で周囲を見回した]
さて、と。ひとまず落ち着く先を探さなけりゃあ、な。しかし……?
[独りごちつつ、いぶかしげに濃茶色の瞳が細められる]
随分と。閑散とした様子、だ。
静か過ぎる―午前四時の墓場でもこうはいかないってくらいに。
[オープンカフェの奥、スタッフらしき男の倒れた厨房で、食べられるものを探す]
パンと、後ハム、くらいかなぁ。食べられそうなの。
野菜は野菜ジュースでいいじゃない。
[ミキサーに数種類の野菜を放り込む。完全につぶれて液状となったそれをコップに入れると、ハムサンドと共にトレイに乗せて]
[元のテーブルに戻ると、少女の姿はなかった。代わりに、少年――に見える――がそこに立っていて]
うーんと。もう一人登場ってとこ?
さっきの女の子が実はホログラムで男の子になった、とかじゃないわよね。
[椅子に腰掛けると、先程は気づかなかった紅茶が入れてあるのを見る]
あ、入れてくれてたんだ。ありがと。そっちの二人のどちらか、かな?
[双子を見比べてにこりと笑う]
――Mundane/underlayer (現実世界/下層区画) ――
[時制は現在より数時間を遡る。
ぱちり、と音を立て、インディゴブルーの蓋が閉められた。必要な機材を詰め込んだケースを手に、男は中空へ声を掛ける]
さて、それじゃ行くからな、"Celia"。
落ち合う先は上層(アパー)【電脳街】のどこか、って事になるだろ。それまでは好きにしててくれればいい。何か聞く事は?
[問いかけとともに、空中でホロが結像。金色の長い髪の少女が姿を現した。小首をかしげて唇に指を当てる]
――ううん、と。どうやってあれだけの時間で此処を片付けたんですか?過去の実績から算出された所要時間は、最短で5時間52分という値だったのですが。一体どんな魔法を使ったんです、マスター?
……お前、な。見てただろうが、一切合財放り棄てるところ。
――冗談です。聞きたいのは、ええと、ですね。
[AIとしては珍しくも、"Celia"は口ごもった。
彼女の内部で行われた価値評価の基準式が複数のステイタスを示しているのだろう、と彼は推測する]
【まあ、そうだろうな――今の時期にわざわざ下層(アンダー)を引き払って、上層(アパー)に行くべき理由がない、と。彼女がそう考えても不思議はない】
[数瞬のためらいの後、ようやく"Celia"は口を開く。]
――本気、なんですか。ずっと、口癖みたいに言ってるだけだと思ってました。……本当に、マスター?
――Mundane/underlayer (現実世界/下層区画) ――
ああ。
俺は行かなきゃならないし、決着をつけなきゃならない。
[答えながらスーツケースを手に取り、部屋の扉へ向かった]
……それが俺のけじめだからだ。あの“罪(sin)”に対する。ま、お前はそんなこと気に掛けなくても良いけどな。いつも通りに俺をサポートしてくれれば。
[はい、と小さく答えるAIの少女に頷き、男は軽く手を上げた]
それじゃあ、またな。今度はもっと上等な部屋で会うとしよう。
――いってらっしゃい、マスター。道中、気をつけて。
―― 現実世界/南部 オープンカフェ 周辺 ――
[オードリーは、遠巻きに注意深くその人々を観察していた。]
キャロ、それに ... 一人、二人 ...... 罠かしら、それとも ...
それにしても、この非常事態にのんびりとお茶とは、優雅な身分ね、フフフ。
何をしている ... ヤツら ...
[オードリーは、多対一になることを恐れて、カフェに近づこうとしない。]
少し、様子を見ましょうか、ね。
[オードリーを覆う外套が少し光ったかと思うと、周囲に溶け込むように変化し、彼女の姿は * 見えなくなった *]
―現世/南部・カフェ―
夢が崩れている?
劇場……あなたのお仕事ですか?
[そう言いながら、番組を確かめる。]
[チューニング/結果:ZA...noise]
[切断]
――……あと、ええと。女史の方、でしたっけ?
それと
[情報を持っていると予想される/動いているという人を考える。]
[声が聞こえたのはその時だった。]
――女の子ですか?
【彼の様子から導き出される結論/知り合いと予想できる。
今はいない女の子/コット。
∴コットの知り合いで、コットが動いていることを知る人物。】
もしかして、あなたが、お師匠様ですか?
[首をかしげ、メイが先程までいた*厨房を見る。*]
何かお飲みになるのでしたら、お作りいたします。
生憎と、さほど得意にしてはおりませんが。
―― 現実世界/中央⇔南部境・オープンカフェ ――
おや。Mr.__V.C.じゃありませんか。
[驚いたように双眸を開き、パイプを仕舞う。]
ああ……こんな時でなかったなら、良い話が出来たでしょうに。V.Cも無事だったとは!
失礼――僕と彼はちょっとした知り合いでしてね。
[少女に向けて言ったが、少女の言葉を聞き、]
外見はほぼ性を廃したfemale型bodyではあるのだけれど、面白い観察眼だね。それとも、直感というものかな?
[トレイを持った少女が元気よくパンをぱくつくのを双眸を細め、くすくすと笑う。まるで猫のようだ。]
ふぅん……。
[品定めするようにレベッカを見つめ、]
”問いに問いを返せ”と調整されているのかね?
僕がお茶を飲みに来たと判断出来る要素でも?
失礼。どうもなっていないAIを見ると気になってしまう。
[V.Cに顔を向け、苦笑混じりで*呟いた。*]
―現世/南部近辺・カフェ―
わたくしは、"主"の望むままに出来ています。
"調整"と呼ぶかどうかは、あなた様のお気に召すようになさってください。
["主"以外である"他者"から向けられる感情は、何であろうとレベッカに影響を与えるものではない。]
――お嬢様は、Utopiaへ向かわれました。"映像"にかかわりのある場所へ。
そしてここはティースペースです。お茶をお勧めするのは当然ですわ。
まして、あなたがお師匠様であらせられるのでしたら、お気に召す珈琲豆があるかとお嬢様が気にされておりましたし。
珈琲がお好きなのだと予測いたしました。
[そして、封筒を再び*しまう。*]
お好きなものを口に出来ないのは、望ましいことではないと思いますが。
たとえこのような異常事態の中であるとしても。
―― 現実世界<Mundane>/西部・空中庭園 ――
[Closedの個人空間――魔窟を経て向かったのは西部エリア]
[倒れ伏す人々避けもせず進み/漆黒の爪先は通り過ぎていく]
[電脳<Utopia>を重ね見ても、そこにあるのは黒の姿一つ]
フゥン、彼等モ眠リニツイタカ。
好都合ダ。
[黒目が見るのはスカイブルーの制服の向こう、幻想の動物達]
[遺伝子の螺旋を組み替えたモノ]
[立ち上がった彼は手帳サイズの端末を懐から取り出し、開く。空中に現れるレーザースクリーン。
だがそこに表示されたのは――]
地図?
三軸座標まで付いてやがる。
それにこの光点(ポインタ)は。どういう事だ、一体……。
[展開されたファイルは、いつの間にか幾つかの光点を灯す地図へと変化していた――]
[長く楽しめるように/世話が楽なように作られた愛玩動物]
[人間を襲わぬようバイオチップを埋め込まれ、牙を抜かれた獣]
――ダガ用ガアルノハ、オ前達デハナイ。
[黒が目指す先には、動きを止めた楽園のガーディアン達]
["見世物"が暴走した時に人間を守る為の、動物型AIロボット]
[彫像の如く動かない獣の側、漆黒のボディースーツがうねる]
"主"――予想通りとは言え、
その言葉は"主"の無能を意味するよ。
状況解析能力と潤滑な対話能力が充分ではない事から推測し、公共の場ではなく私的な関係に偏って調整されているようだとはいえ。それでは完璧ではない。
コーティングをしているが、地球規格ではなさそうな義体といい、人への命令を許可されているような態度といい、"主"は何処かのお金持ちなのだろうね。いやはや、お近づきになりたいものだよ。
[奇しくもウェンディが座っていた席に腰を降ろす。くすくす笑い、]
いや結構。今はAIのルーチンの犠牲になりたくない。
[がぼり]
[突き出たのは3本目の腕/0と1の光砂が複雑な魔法陣を描く]
――――サモン、ガーゴイル
[指先まで漆黒に包まれた掌が、ロボットの頭へと]
[腕に刻まれた魔法陣が煌き、渦巻く螺旋が吸い込まれていく]
[ガコン][ガコ[ギギィ]]
[黒から召喚(生ま)れたAIのダウンロード/乗っ取りが完了]
[現実<Mundane>での手足を得、漆赤の裂け目は*深く深く*]
― 現実世界<Mundane>/南部境 オープンカフェ ―
[キッチンの奥から姿を現したメイに、双子は口もとを除いて被膜された無機質なおもてを向けた。
顔のない貌。
だが、その唇には不自然なくらい明確な笑みがくっきりと刻まれている。好意的であることを示す記号はそこに提示されているとあからさまなまでに主張するかのように。]
「ごめんなさい。出涸らしのお茶をお出しするような方ではありませんでしたね、メイさんは。」
「――煎れなおすべきでした。」
[人間とちがって気配りの行き届かない愚鈍なAIでごめんなさい、と二人は小首を傾げる。
眼窩のあるところに光点が浮かび、同時にメイの運んできた野菜ジュースの入ったコップに仄かな色の光が一瞬だけ留まった。]
「……野菜ジュースですか。健康志向なんですね。」
「――いつも呑んでるんですか? それとも、デビューに向けての準備をもうはじめて下さってるのかなぁ。」
[双子は顔を見あわせると、うふふあははと小さく笑った。]
お、おまいら――っ
[俺はポカスカとホログラムハリセンで双子の頭をはたく。]
そういうのやめるのよ。
まったくもう、ろくなことを覚えねんだから。
[メイに向き直る。]
ごみんね。
こいつら最近、楽屋で耳にした女の子たちの話し方を悪趣味にアレンジするのがマイブームっぽいのよ。
[パイプを持った少年に、肩をすくめて見せる。]
そちらこそ、Mr.T.N.ことT.N.Revolutionじゃないのよ。
まったくねぇ――。
どしたの、突然。青天の霹靂ってか蒼い霹靂なんつて。
[鷲の細工が施されたパイプを仕舞う仕草に、そうそう、とホログラムのココアシガレットを渡す。]
パイプよかこっちの方が似合うってェばさ。
[頭をはたかれた双子は悪ふざけをやめ、ホログラム装置を作動させた。]
女の子って、この子? この子どこの子家なき子?
同情するなら金をくれってね。
[椅子に座ったトビーの目の前のテーブルの上には、先ほど出会ったコットと名乗る少女の姿が浮かび上がっている。]
[話しながら、『家なき子』ってなんだっけ?とあらためて検索してみる。犬をつれた少女の古い動画がデータベースから浮かび上がってきた。
Kosha Cyberneticsの義体に標準的に装備されている、多言語に対応した思考の言語変換モジュールは、複数のアウトプットメソッドの使用をサポートしている。これらのアウトプットメソッドは、状況に応じて様々な辞書や情報ソースからデータ取得する機能を実装していた。
平たく言えば、TPOにあわせて話し方を勝手に変えてくれるということだ。
思い浮かんだことを言語に置き換える過程で、同時に言語出力プログラムは保持する複数の辞書とネットワークからの検索結果をそこに反映させる。そして、それらの機能は当然のことながら、一定の使用目的に使用するうちその目的に最適化されるようになっている。
スペースシップレースの話ばかりしているヤツは、それに関する検索機能が強化されていくというわけだ。]
[俺はいつしか、ダジャレなしには外で会った連中とろくに話ができないようになっていた。そんな言語変換の癖はどこで身につけたものだったか、今では覚えてはいない。大方、芸能関係の重役連中と話をするうちに身についてしまったものなのだろう。
古い時代、ショービジネスが今よりも色鮮やかだった時の頃の情報を集めるうち、自動検索の優先順位はすっかりアナクロな最適化がなされてしまっていた。
時には、自分の話したことを後で検索しなおして調べなおす必要性があるくらいだ。
時折、俺は考えずにはいられない。
俺は、自分の思考を話しているのか、機械に話させられているのか――。
実際、俺の優秀な言語モジュールは、会話を自動生成してくれさえしたのだ。]
――南部境・カフェ――
[少年の言葉には僅かに眉を寄せる]
女の子の体なんだ。
なんていうのかな、纏ってる雰囲気から、男の子かなって思ったのよ。
それくらいの年頃って男も女も似たようなものだもの。なら、口調とか、容姿以外のものでつい判別すると思わない?
一口で言うならただの勘だけどね。
[双子の会話には手を振って苦笑する]
あたしには出がらしでじゅーぶん。
いいお茶はたまに飲むと美味しいんだけどね。
野菜ジュースは効率のいい摂取方法ってとこかな。あんまり美味しいとは思わないけど。
─ 理想郷<Utopia> / Closed Morgan's Space ─
[目を見開いて行方を見守る]
BRAHMA──お爺様のPGM?
誕生・個性──Re:PROGRAM──RePLACEみたい。
なんにせよ、──どっちにしろ怖いかも。
[AIのレベッカを揶揄する中性的なかれの言葉のシニカルさに俺はわずかばかり苦笑した。]
「なっていないAI」ねェ――
[AIの開発に携わる者としては、興味深い言葉だ。
ふと、世間話のように口にする。]
ねえね。レベッカちゃん。
レベッカちゃんは夢を見ンの?
いや、夢っつってもさ。スッチーになりたいとかお医者さんになりたいとかそいうんじゃなくてね。寝る時に見る夢の方ね。
『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』っつって。
―電脳世界/Closed Morgan's Space―
謎は謎のままにしておくには、大き過ぎる?
[抜いた「槍」を再度構えて、言う。]
世には触れない方がいいものが多くある。
何の為?気分で隠しているわけではない。
それは、大抵の場合「毒」にも……
「薬」にもなるから。そういうわけだ。
[キッと眼光鋭く。]
「毒」になるなら。君すら排除せねばならぬ。
― 現実世界<Mundane>/南部境 オープンカフェ ―
メイちゃんもそう思った?
俺もね、わかんなかったのよ。
T.N.Revolutionのトンビちゃんはどっちかわかりにくいのね。
[メイの野菜ジュースはあまり美味しいとは思わない、という言葉に双子が「まずーい。もういっぱーい!」とまたどこからか拾ってきた言葉を口にしていた。]
ああ。言葉遣いとかは気にしないから大じょーぶ。
[恐縮するヴィンセントへと笑い、手に持っていたサンドイッチと野菜ジュースをお腹の中へと片付けると、食後に冷えてしまったお茶を飲む]
[構えられた槍、そして視線に足元が竦む]
[けれど彼の言葉の一つに、下がりかけた視線を上げる]
気分で隠して──それは、お爺様が隠してらっしゃるってことかしら。
気になる。とても気になるわ。
もう少し、お話を聞いてみたいのだけれど、──教えてくださいとお願いしたら、教えてくださるのかしら?
[真正面から老人を見る][瞳の光は好奇心に満ち]
― 電脳世界<Utopia>/Closed・Morgan's Space ―
[ネットに繋ぎながらもなんの差し障りなく現実で会話できるのは、言語変換モジュールのサポートによるところが大きかった。
もっとも、多量の情報を処理するフルダイブでは困難なことだったが。
siam shade modeで俺は相変わらずコットの影の中に身を潜めながら、そこで行われている出来事を覗き見していた。
siam shadeは密接した影という意味通り、電脳での移動を対象にトレースさせることで簡便に行い、かつ、場への介入を最低限に限定することでステルス性の向上をはかる接続バリエーションのことだ。
しかし、下手をするとこのアングルからでは幼女のおぱんつしか視界に入らない。
光源と設定されている領域を計算しながら、不自然でない程度にスライドしてゆく。
その俺の目に飛び込んできたのは、シスターが老人の巨大な「槍」に刺し貫かれる光景だった。]
う、うおっ!
シスターがヤられちまったァ――
知れば、必ず開けたくなるだろう?
それならば、君に教えるわけにはいかないな。
[Kotの方を向き直り、男根の「槍」を向ける。]
逆に尋ねよう。なぜ君は、彼の下にいる?
君だろう……私の旧い友人の弟子というのは。
君は、私や旧友よりも強くなる素質を秘めている。
[構えは低く。]
それなのに、なぜ君は2番手に甘んじている?
―現世/南部(中央部近く)カフェ―
無能、――でしたら少々困ってしまいますね。
[くすくすと笑う。]
わたくしは"主"のためにあるのですもの。
どなたの完璧でもなく、"主"にとっての完璧になるために。
[だが"主"に関すること/住居に関すること/金銭のことには答えない。]
[礼を言う姿に、驚きを示す。瞬いて。]
――いいえ。わたくしのほうこそ。
お嬢様とお話できて、とても為になりました。
感謝しておりますわ。
[そしてヴィンセントの問いに、少し考えるように首を捻る。]
夢ですか。
見るようにとは薦められましたが――
生憎と、一度も見ることは出来ていません。
情報を流し込めば見られるようになるのではと言われ、試しもしたのですけれど。
不適合なのではないかと思います。
……ところで、スッチーとは何でしょうか?
[データベースにはない単語*だった*]
― 現実世界<Mundane>/南部境 オープンカフェ ―
幼女もやべえよ。逃げてニゲテー
[つい、現実世界の方の身体から言葉が漏れていた。]
おっとっと。
トンビちゃん。あの子、ちみの知り合いならヤバイことになっちゃうかもかも。ちんちんかもかも。
[そうして、メイの方に顔を向けた。]
ねえね。メイたんはあのじいさまに勝てたの?
どど、どうやって?
[メイが平らげたサンドイッチののっていたプレートを、双子が片付ける。
傍らに立った双子と、メイの身長はほぼ同じくらいだった。
series Mannequinの身体の寸法は、十代女性の平均身長を元に設計されている。電子的な計測をするまでもなく、一目でわかる「定規」であることも彼女たちの役割の一つだった。]
残念ね。
やっぱり自分で探すしかないみたい。
[然して残念でもなさそうな口調]
お爺様は師匠のご友人?
だったら、失礼が過ぎたみたい。ごめんなさい。
でも、お爺様も妙なことを仰るのね?
わたしはまだまだ未熟だわ。いつも師匠に怒られてしまうのよ。
[朗らかな表情]
けれど、いつかはおばあちゃまみたいに優秀な研究者になるの。
ママのお話であこがれた、おばあちゃまみたいに。
なるほど…君は聊か友人に比べて、
決定的に欠けているものがあるようだな。
[姿勢は低く、「槍」を水平に構える。]
君は不可侵領域に興味を持っているなら、
こっちにも興味があるはずだ。
旧き友人の見ている世界に。その鍵をあげよう。
[一直線に、Kotにとびかかる。]
君に欠けているもの…私なら、与えられる。
大いなる「混沌」を君に………。
そなのね。レベッカちゃんは夢を見ないのね。
夢を見ない方がいいこともあるのよ。こわいのとか黒夢とかあるからね。
[スッチーとはなにかという問いかけに双子がまた、「――死語です」と淡々と答える。
それが花形職業だった時代は遥か昔のこと。呼び方が変わり、そして今では人間がその仕事につくこともまずなくなった。
ガイノイドとホログラムが古い“夢”を置き換えていったのだ。]
[二人の会話を聞きながら、女性の名前を頭に入れる。ヴィンセントに勝った理由を聞かれると、肩をすくめた]
勝ったわけじゃないよ。
あたしはどっちかってゆーと、逃げる方が得意なんだもん。
引いたら、向こうも引いた、って言う感じかな。
たぶん本気を出すつもりは始めからなかったんじゃないのかな。
―― 現実世界/南部 オープンカフェ 周辺 ――
[オードリーは考えていた。]
このまま、状況を窺っていても、おそらく変化は無いわね。仕方がない、か。
[今、このまま近づいて、自分が害されない保証はない。リスクをヘッジするには、余りに心許ない装備。
その時、ふと、サーの言葉が頭を過ぎる。
『必要なことはそれが教えてくれる』
サーから手渡された紙幣を視るが、何も、反応は無い。]
嘘つき、フフフ ... まあ、いいわ ...
[オードリーは、少し、細工をした後、擬態を解いて、カフェへと近づいていった ...]
確かにSSSには興味があるわ。
そのための鍵を下さるのなら、ありがとうと言いたいけれど……
先ほども言ったわよね?
「嫁入り前の娘に
なんてものを見せるのかしら、お爺様」
[パネル呼び出し──Absolute Area type "NOE"展開]
[虹水晶の輝きが九重に展開][如何なる接触も拒む]
その鍵を受け取ることは、どうしても許せないみたい。
―― 現実世界/中央⇔南部境・オープンカフェ ――
[ココアシガレットを受け取り、机上のKotに目を向ける。]
数年前に一人、"音楽家"のプロを育てようと思って弟子をとったのですよ。
[パチンを指を鳴らすと、シガレットに火が自動的につき煙が昇り始めた。]
気分を害するつもりはなかったのさ。
ただ、一見してそう見抜いた事に驚いてね。
[緩い「ω」に口元を笑ませ、少女に。]
―― 現実世界/南部 オープンカフェ ――
みなさん、おそろいで、こんにちわ。
空気が少し不穏な感じだけれど、みなさんは平気なのかしら。
[よく通る声で、誰となく、聞こえるように]
おっと………。
[Kotの手前で立ち止まり、「槍」を引く。]
古来、これは豊穣を司る神聖なものだった。
君には想像できるかね?これは信仰の対象であった。
君だって、起源を辿ればこれに行き着く。
[「槍」がひどく抽象化された形に変化。
そして、九重の防御壁をなぞる様な軌道。]
Sivaは「破壊」つまり「減衰」を与える…。
[一見、なぞっただけで何も起きていないようだ。]
別に、気を悪くしたとかじゃないから、大じょ……。
[夫、といおうとして現れた女性に目を向ける]
【また一人、動いてる、人】
不穏? なのかな?
[顔に疑問符を浮かべて、三人を見回した]
― 現実世界<Mundane>/南部境 オープンカフェ ―
そーなのね。
追いかけてきたりはしないってことは、じっちゃんはあそこからは動かないのかしぃら。
んん……
[メイの言葉に、顔をしかめた時だった。灰色に沈んだ街の中で一際鮮やかに、揺れる赤毛が目を惹いた。]
やァや。千客万来。ラララライ♪
ハックションだいまおーの参上ってェな。
ハックマン女史、なにかおかしなことにでも巻き込まれちゃったりぃの手巻き寿司? まさか、ファックされててファックマンになっちゃったってぇオチはいやァよ?
[笑いかけながら、ひらひらと手を振り掛ける。]
[メイに視線を向けながらも、他の人間 (AI) が視界から消えない向きで]
どうみても、今、異常事態よね?
それとも、あなたには『予定通り』の事象なのかしら? フフフ
人がバタバタ倒れて、そこかしこ転がっているのに、私は立っている、そして、あなた方も、ちょっと不思議じゃない?
──電脳空間/CLOSED-Space Morgan's──
[”槍”のように使役されたPGMを受けて以来、AIは殊更沈黙している。
嫁入り前のHumanと《輪廻》の様子を認識して居るのか居ないのか、]
かと言って、平然と受け入れられるわけないのは、お爺様にも理解していただけると思うわ。
[Sivaの動作に感知せず──変化は何も訪れない]
九重は何者にも犯されない。
おばあちゃまが作り師匠が強化してくださってるのよ。
お爺様からお話は伺ったわ。
その槍は不快で怖いし。
──三十六計逃げるに如かず、かしら。
ああ、そういうこと。
確かに異常事態よね。
そしてあたしたちは平気だから今ここにいるんだと思うけど?
大体、こーんな人もAIもばたばた倒れていくような状況、あたしみたいな小娘に作れると思う?
そーよ、情報集める為にここ来たんだったのに。すっかり忘れてたわ。
― 現実世界<Mundane>/南部境 オープンカフェ ―
ハックマン女史、異常事態は異常事態なのよ。でも気分はなんとなく安全地帯の悲しみにさよなら。
だァってさ、街のみんなは寝ちゃってるけンども怪我一つないからね、俺は。
いや、正直さっきはちょいとばかしびっくらこいたことがあったんだけんども。
[しゃべらなければ――という言葉に、わははと笑った。]
それより市況、わかんない?
会社のお金、なくなっちゃってたりしたら大変。
当たり前だ。我が3つの「槍」は他者に危害を
与えるものではないのだからね。
[「槍」を地面にすっと突き立てる。]
我が「槍」は、身を貫くものではない。
心を貫くものなり………。
絶対に防ぐ「盾」と何をも貫く「矛」。
戦わせれば、どうなるのかは一生の命題。
[Kotを見据えて。]
だが、常に衰えぬ「盾」も「矛」もなし。
―― 現実世界/中央⇔南部境・オープンカフェ ――
ああ。僕の場合は少し事情が違ってね――…事前に、親切にも教えてくれた者がいた。
恐らくは犯人だろうが――。
[銀色のタクトを取り出し、トントンと机を叩く。視覚素子/ホログラム=88の鍵盤がトビーの眼前に円形に浮かび、その中央には緻密に情報が詰め込まれた球。球が広がり、多層地図の光景を映し出す。]
[メイの言葉に頷くようにして]
そうね、みなさんは、この事態について、何か知っていることはないのかしら。私もそれに興味があるわ。
お互いに助け合いましょうよ。フフフ
[ビンセントに]
あなた、最後に私にメールで聞いたわよね。市況はどうなってるかって、スタッフから上がってきてた報告はあのメールを受信するまで、すべてチェックしていたけれど、テロだとか、軍事関係の情報は一切無かったわ。
BANK の情報網に引っかからなかったとすると、これがただの天変地異とは思えないのよね .....
[苦々しげにつぶやくように]
―― 現実世界<Mundane>/西部・空中庭園 ――
[ガコン][ギシ…ギシ][ガシャン]
[外見に最も近い魔獣の召喚(ダウンロード)だが、同一ではない]
[動きが滑らかになるまで契約(微調整)を書き加えていく]
[やがてガーゴイルは皮膜を模した金属の翼を広げ、飛んだ]
ヨゥシ、イイ子ダ。
[旋回して戻ってきた魔獣に頷き、掌の髑髏に黒目を向ける]
[瞳孔を絞り考え込む/シュミレートする]
[ビンセントに対して、呆れるように]
市況、ね。
目論見書の通りよ。すべては予定通り。
ジャンクボンド部隊が、低位メガロポリスの劣後債をかき集めてるわ。スプレッドが修正された時点で、すべて空売りをかけるから、リターンは、莫大な金額になるはず ...
このまま世界が正常に立ち戻れば、ね。
[タバコに火を点ける]
[少年の前に現れたホログラムを見る]
やっぱり、持ってるんだ、それ。
おじいちゃんも持ってたし、あたしも持ってるし。形状はそれぞれだけど、中身は一緒みたいね。
[フィルムを取り出すと、そこに映るのは同じような地図]
[念のためと虹水晶の障壁をチェックするが妙な点は見受けられない]
その外観でさえなければ受け入れたかもしれないわ。
お爺様もずいぶんといいご趣味だこと。
[かつての誰かによく似た口調]
心を貫かれたら、"死"んでしまいそうね。
それともお爺様に恋に落ちてしまうのかしら。
[くすくす笑う]
[女性の言葉には眉を顰める]
協力するのはいいけどぉ?
なーんか、やな感じがするのは気のせい?
人を利用するタイプ。
協力することそのものには反対しないけど。
おじさんとは知り合いなんだ。
[ヴィンセントの方を見て、二人の間の空気を感じ取り]
いい関係って訳じゃなさそうだけど。
これは、出来たときからこの外観。
与えられたもの故、私に見た目は決められぬ。
文句があるなら、出来あがる前に遡って
言うが良い……可能ならばな。
[忌々しそうにKotを眺める。]
カナリ集マッテイルナ。関係者ノ会談カ。
Closedにも複数。
バラバラノ点ハ、単独行動カ。ソレトモ。
マアイイ。来イ。
[水晶の髑髏の中、光る赤い点を確認しながら移動を始める]
[まずは近くにある点から]
[動く人と赤い点の照合/映らない人物=犯人の可能性の模索]
[タバコを吸い終わると、メイの言葉に対して]
人を利用するタイプ、ね。
当たらずとも、遠からずかしら、フフフ。
ただ、私は必要なときに投資は惜しまないわよ。
[ただ、オードリーが投資をするときは、必ず回収できるときに限られているが]
それとも、あなたは万人に仕える女神様だとでも。
[からかうように]
― 現実世界<Mundane>/南部境 オープンカフェ ―
[ハックマン女史の言葉に、眉を寄せる。]
テロじゃなかったらトロ? お菓子はロッテなんつって。
んん、政治的な表明てェの? ポリタンクとかポリチカルとかそいうアレじゃないってことなのね。
[しかし、後に続く財務の展望のことを耳にするや否や、狂喜乱舞して飛び上がった。]
って、ててって!!
なななんだってェ――!!!!
すンばらすィ――じゃないのよ!
やっぱできるひとはちがうのね。
ちょ、ちょちょ、これってェば願っても叶ってもな好都合じゃん!? じゃんじゃかじゃん!!?
[オードリーが煙草を取り出す仕草に、とっさにポケットからライターを差し出して彼女の煙草に火をつけたのだった。]
あたしが女神? 馬鹿なこといわないでよ。
下じゃ小悪魔だの天使だの言われてるけど。
あたしだって普段扱う情報なんかはただで人にやるなんてことしないし。
ただ、今は非常事態だと思うから。
あたしたちが、今から倒れない保証はない。
倒れていった人も時間差だったし、今からあたしたちの誰かが倒れるかもしれないし。
それなら協力し合うのがいいと思っただけ。
[若干むくれたように腕を組む]
[立方体がかすかな音を立てる]
さすがに時を遡るのは、誰にも無理じゃないかしら。
[どこからか風][草原は動かない][猫の声][幻]
誰かがお爺様にそれを与えたのね。
その人がお爺様にそんな表情をさせているのかしら。
[障壁は変わらぬ輝きを保ち][否]
[僅かに、鈍る]
[立方体を転がす][赤が二つに青と緑が一つずつ]
[猫の声][幻][下草を踏む音][幻]
― 現実世界<Mundane>/南部境 オープンカフェ ―
そうなのよ? メイちゃん。
もちつもたれつつつもたせってね。
だからってもたれあってへにょっちゃったり胃もたれしちゃなんねんだけども。
一連託生、協力関係ってヤツな・の。俺たちってばさ。
[ハックマン女史の方を向く。]
ささ、そうと決まれば、さくさくっと解決しちまいやしょう。姐さん♪
── 現世<Mundane> / 西南部(繁華街のはずれ)
とある事務所 ──
[その施設は、メガロポリスの西南部。繁華街の中でも比較的上品な地域──博物館や美術館にほど近い居住地区にひっそりと存在している。人工子宮を使用しない自然妊娠および分娩に関する取り組みに関して、一部教団と協力している過激派のフェミニスト団体の事務所だった。
薄暗い室内に、ゆっくりと点滅するレインボーのライト。
他の市民と変わらず床に昏倒しているのは、事務所の主シャロン。ほとんど全裸にペイントしただけに近い格好をしているのは、次のプロパガンダイベントで使用する衣装の試作品を身につけているからに違いない。──セシリアが以前にこの場所を訪問した時も、そんな格好をしていた事が何度もあった。
シャロンは、シャロン自身が行う過激な生体パーツの交換番組を持っていたり、セクサロイドの人権に関するドキュメンタリーROMに出演していたりで有名な人物だった。]
── 現世<Mundane> / 西南部(繁華街のはずれ)
とある事務所 ──
貴女のマシンで、勝手にダイブさせて貰っています。
有り難う──シャロン。
と言っても、貴女も眠っているのよね。
Publicも、Upperも──地上と同じように落ちているわ。
此処に教団のネットワークへの直通ルートが残っていて良かった。
[プラグを繋いだまま、倒れたシャロンに話し掛けるセシリアの声が、若干やわらかいのは、シャロンとセシリアの間柄の所為だろうか。
セシリアと出会った時のシャロンの第一声は、「で、貴女は教祖様の愛人なんでしょ」と言う身も蓋も無いものだったが、今ではふたりは友人と言っても差し支えが無かった。]
[一段を見渡しながらオードリーは考えていた。]
【この中で有意な情報を持っているであろう人間は、この子供だけ? 他は、どうだろうか、あるいは知らないフリなのか、こいつらが共謀していないという保証は ... 】
[トビーを興味無い素振り (その実注意深く) 視る]
【私の切り札は何か ... 無い ... ここはブラフで ... 通じるかしら ... 】
[艶のあるポーカーフェイス]
お嬢さん、冗談よ。
私は、オードリー・ハックマン。
そちらのキャロさんは、私のクライアントの方ね。
お名前を聞かせてもらえるかしら?
ね、あなたも。
[本命であるトビーに笑顔を向ける]
[老人の様子に、僅かに困惑][眉を顰め]
……わたしもお爺様を苦しめているの?
だったら、……ごめんなさい。
[謝る足元に、無数の猫の姿][彼女を中心に風が吹き]
<移転>
[Closedから離脱。Underへ一直線に]
[円形に展開する鍵盤を前にしたトビーが表示させた多層地図に目を丸くする。
フィルムを取りだしたメイも同じようなものを持っているようだ。
首をかしげながら、ポケットから封書を取り出す。
中の便箋に触れたとたん、封書の隙間からホログラムの万華鏡が姿を現した。]
お、俺っちも持ってたァ――?
[スタンドつきのアンティークな外観のそれは、くるくると回転しながら、覗き窓から多層地図を浮かび上がらせた。]
── 現世<Mundane> / 西南部(繁華街のはずれ)
フェミニスト団体事務所 ──
[教団所有のサーバーもダウンしていた。
不気味なまでの静止──。
まるで、電脳世界に世界の終わりの日が訪れたかのような。
Underにある教団の保有スペースに保管してある、対外部攻撃用の特殊PGMの数にも変化は無い事も分かった。そこから、Masterの独断行動であったり、教団幹部の暴走ではなく、完全に事故に巻き込まれたかたちであることが理解出来──セシリアは安堵していた。]
―現世/南部あたり・カフェ―
[夢については、答えを持たない。]
そうですか。
[双子の言葉には、納得した様子でデータを保存する。]
[死語:スッチー]
[それから、女性が現れたのを見た。]
[ハックマン女史――先程もヴィンセントが言った名前だと認識する。]
異常事態/そうですね。
情報を集め、原因を特定し、倒れた人々を元に戻さなければ。
[思考/意識は0と1を繰り返し、形を持つ。]
[指揮者の動作を、メイが出したものを見、瞬いた。]
―― 現実世界<Mundane>/西南部 ――
[ホログラムが地上を歩く必要はない]
[だが今は現実<Mundane>に召喚した魔獣を連れている]
[ガシャリ][ガシャリ]
[重い爪音を立てるロボットを従え、近い光点のある住宅地へ]
ココカ。
[目立たない一角にある事務所に躊躇いなく踏み込む]
[ドアを黒い影がすり抜ける]
[少し遅れて扉を開ける/壊す音が続く]
[名前を告げられるといくらか警戒を和らげる]
オードリー、ね。
あたしはメイよ。メイ・ウォルトンっ。
その様子だと、貴女も情報らしい情報は持ってないように見えるけど。
情報持っててもそれはそれで警戒ポイントよね。
[ヴィンセントの言葉に目を細める]
つまり、今こうやって動いてる人は、何かしらの形で同じものを送られてるってこと?
あたしには送られてきただけで他の人のがどうかはわかんないけど。
[消える姿を見送り、歯軋り。]
「その人がお爺様にそんな表情をさせている」だと……。
「ごめんなさい」だと…?何の言葉だ。
どういう意味なんだッ!!!!!
[怒声。稲穂が垂れる。]
どういう意味だ……哀れみか!?
それとも、嘲笑っているのか!?
役割も機能も与えられ、この浪費するしかない
膨大な生を強制され…自分の足で地面を
踏むことすら許されぬ私を…この私を……
哀れんでいるのかッ!蔑んでいるのかッ!!
[悲痛な叫び]
そんな目で私を見るなッ!!!!
≪Kot.……Kot........≫
[Utopiaに降り立つのは、Hypnosが都市の機能を麻痺させてから初めての事だった。何処か寒々しく、領域が硬化したような感触を覚える。Vision.――薄い幽霊のような姿――Utopia/Closedに降り立ったトビーの姿は、半透明よりも薄い。]
【ああ、だが……僕はまだ、
”輪廻”と対峙する訳にはいかない。】
[現実世界でのトビーは、ふと両眼を瞑ると開き、オードリーを向いた。]
フィルム、万華鏡……様々な形だが、共通している事――手紙を受け取ってはいませんか?
【【BANK】のオードリー・ハックマン。】
『有名な人物です。過去のDataを参照しますか?』
[トビーにだけ聞こえる補佐AIのstill voice。
無言でyesを返すと、]
僕はトビー。
指揮者としてAdministrative bureauに登録されていますので、詳しくはそちらで閲覧可能です。時々、Utopiaで同時公演を行う事もあるのですが――…。
哀れであるのは、
生に倦みすぎ素直な幼子の耳を失った貴方。
[平板な音声。
これまでと変わるようなところは無いが、どこか茫洋としているようでもある。]
── 現世<Mundane> / 西南部(繁華街のはずれ)
フェミニスト団体事務所 ──
[Under経由で、生存していた防衛担当の幹部と連絡を取る事が出来た為、教団本部を電脳面でセキュアモードに移行する事がどうにか出来た。
ネットワークとの接続状況にあわせて、セシリアの髪がふわりと揺れ、オーキッドパープルから透明に発光する。]
下層エリアでも、やはり生体の人間だけが活動出来ている。
──…私の見立てで正しかったようだが。
[狂乱状態に陥った一部の下層住民が、本部に踏み込み、繭(コクーン)に残っていた信者のうち半分が暴動で殺されたと言う。]
ああ、とはいえ――DLは現在無理ですね。
経歴はこちらに。
[視覚素子/ホログラムで見える鍵盤を叩くように、指を動かす。何小節かが一筋の流れとなりオードリーの方へと]
それは、――地図ですか?
[ホログラムを見る。]
【なぜ?
最初から"仕組まれて"いたのか?】
[答えは不明。]
[名乗りの声に、思考/演算は戻り、彼らに挨拶をする。]
わたくしは、レベッカと申します。
[ヴィンセントの開いた封書――]
[思い当たる節は一つだった。]
動ける者が──メガロポリス内にッ?
[ネットワークとの接続を引き千切るようにして、切り離し
侵入者──ドリスに向けて警戒態勢を取る。]
君もか……君も私を哀れむと言うか。
[稲穂を握る手を硬くし、向き直る。]
哀れみなどいらぬ。誰かに哀れに思われ、
後ろ指さされる生ならば、もはやいらぬ。
どうか私に「真実の終焉」を……。
それはそうと……。
[先ほど、Brahma―「誕生」の槍―で貫いた。]
君には告知しなければいけないな…「受胎」を。
─ 理想郷<Utopia> / Under・裏通り ─
[呼びかける声に、立ち止まる]
師匠?
Kot pereulka sharlakha、現在Underを探索しています。
だーれも、居られないです。
[回線を開き、直に音声を送る]
― 電脳世界<Utopia>/Closed・Morgan's Space→ ―
(あれれれ、じいさまが萎え苗なんだわさ)
[姿を変えた槍を不思議そうに見つめているうち、少女の位相転移にsiam shadeは呑み込まれていった。
あの槍に突かれるとどうなるのか、好奇心を残しながら意識はその空間から去った。]
― 現実世界<Mundane>/南部境 オープンカフェ ―
そうなのよ、メイちゃん。
不幸の手紙なんつって。いや、今の俺っちにはむしろ好都合だったりするんだけども。この状況ってェばさ。
まま、ちょいとばっかし独禁法やらなにやらきなくさかったンだって、この大騒ぎできっとみんな忘れちゃうだろしね。
[SBY109のsonosheat販売方法が独禁法に触れ、DeathSTAR Recordsがバッシングを受けたのも最近のことだ。
現れた立体地図を見れば、光点がいくつも見えた。]
[レベッカに視線を移して]
はじめましてレベッカ。よろしくね。
[トビーからの情報が流れ込んでくる。オードリーの外套がコーティングするが、無害だと分かると、ローディングを開始する ...]
ぜひ、平時にトビー坊やの講演に伺いたいものね。楽しみにしているわ。
[心の奥底では違和感が消えない]
[開かれた"Hologram"は、同じく地図の姿。]
――これが、他のようにならない"共通項"?
であるならば、"送信者"は"何か"を知るということ……。
―― 現実世界<Mundane>/西南部・とある事務所 ――
[レインボーの光が黒のホログラムを斑に見せる]
[倒れる女性の半裸な姿に目もくれず、立つ少女に黒目を向けた]
オ前ガ、召喚(呼ビ出シ)タノカ?
[ガシャン]
[背後のドアを力ずくで開けたガーゴイルの爪から破片が零れた]
憐れみ知らぬはただ哀れ。
[損傷といえる箇所は無い。
貫かれた筈の箇所に手を添えている。
受胎/告知という言葉に、僅かに表情を変えたように見えない事も無いが、錯覚であるのかも知れない。このAIは感情モジュールを所持していない。]
手紙、ね。みなさん、それをお持ちなの?
[頭には、サーに手渡された "紙幣" が思い浮かぶ。面には出さない。]
【あの男 ... 何のつもりでこれを ..... それとも、仕組んだのは ......】
[湧き上がる疑惑]
あ、よろしくおねがいいたします。
[オードリーの言葉に、再びstopをかけ、微笑んだ。]
よろしければ、何か飲み物をおいれいたしましょうか。
使えるものもあるようです。
種類は――
[幾種かの紅茶、珈琲の種類を口にした。]
[行動規定に沿った行動であり、レベッカ自身には違和感もない。]
[トビーとレベッカ、口の中だけで復唱し]
この地図を見ると、他にもいくつか点が見える。
この点の数だけ、動いてる人がいるってことなのかな。
でも、どうやって探知してるんだろ?
この「手紙」が発信源とか、あるのかな。
[自分の持っていたフィルムを四方から不思議そうに見る]
わたくしは――旅行券でしたが。
籤で当たりが出たというものだけしか、受け取っておりません。
[尋ねるオードリーに、返答をはじき出した。]
[レベッカの言葉に]
フフフ、お気遣いありがとう。
そういえば、ここはカフェだったわね。
じゃあ、飲み物をいただけるかしら、
[少し楽しそうに]
直にだ。直に、その懐妊は結実し……
[稲穂を向けて。]
新たな「誕生」を迎える。
[手を戦慄かせながら、キッと睨みつける。]
身重相手に狼藉を働く趣味は持ち合わせていないが……。
あまり私を怒らせない方がいい。私も苦しいんだ。
私も長く生き過ぎた。しかし、今日という日だけは
未だに覚えている……それが今は哀しい。
[稲穂を構え、体勢を低く構える。]
今日な……私の誕生日なんだ。
旅行券、ねえ。
とんだ旅行になったわね。お気の毒様。
[表層的には、非常に社交的に、レベッカに応える。しかし、本質的には、レベッカの機械的なやりとりと何ら変わらない、記号化されたコミュニケーション]
── 現世<Mundane> / 西南部・フェミニスト団体事務所 ──
[魔獣の侵入で、器物が破損する音が派手に響く。
街のすべてが静寂に満ちてるだけに──。
セシリアの目の前に現れたホログラムの黒に、レインボーライトの色が混じって透ける。
ごちゃごちゃと荷物の積まれた事務所内、セシリアはガーゴイルから距離を取った。背を窓際に付けて。]
・・…動いているPGMもあるのか。
私は、生身の人間だけが残っているのだと、把握していた。
──お前は、メガロポリス破壊の為にこの場所へ?
≪全く....."Kot pereulka sharlakha"だ。≫
[帰って来ないのだから。Utopia/ClosedへのLinkを閉じてゆくと、Utopiaにあった幽霊のように透けていた体が消えていった。]
―― 場面転換 オープンカフェ ――
[手紙が次々に取り出されるのを見て、頷く。]
オードリー女史。
僕はこう見えても俗物なところがありましてね。これ以上の情報を希望するなら、この事件が解決した暁の見返りが欲しい。
[シガレットのホログラムはもう短い。]
かしこまりました、オードリー様。
[レベッカはそう告げると、データを引き出す。]
[然し火星に住む身、好みなどの項目があるわけもない。]
――珈琲ですと、モカ、キリマンジャロ、ブレンド、アメリカンがございました。
紅茶ですと、アッサム、ダージリン、ニルギリ、アールグレイとなります。
グリーンティー、ウーロンティー、フレッシュジュース、野菜ジュース、牛乳など取り揃えがございましたが、お好みは?
[すらすらと述べ、他の人にも尋ねる。]
[社交的な言葉に、オードリーを見て眉尻を下げた。]
はい。大変な旅行になってしまいました。
通信も出来ませんし、おそらく心配をおかけしているのでしょう。
― 現実世界<Mundane>/南部境 オープンカフェ ―
レベッカちゃんも地図持ってるてぇ――
あららら。地図、みぃんな持ってるのね。地図はどこからやってきた。チーズはどこへ消えた?なんて。
おや――?
[この状況下で、生存を確認している以外の人間からメールの着信がある。
訝しげに内容を確認すると、そこにはただ一言「ケテスタ」と書かれていた。
普段なら、イタズラと考え大量に送られてくる広告メールと共に処分しただろうが、それは無視することのできない人物からのものだった。
資産家にして、DeathSTAR Recordsとハヨープロジェクトの大株主――。]
ゆっくりとお茶したいけンど、ちょいと急用ができちった。
[視線で促す間もなく、双子は滑るように傍らに寄り添った。]
まァたあとでね。ばいちゃ――
―― 現実世界<Mundane>/西南部・とある事務所 ――
生身ノ人間。
オ前ノ他ニモ起キテイルノカ。
[チョコレートブラウンの掌の上、髑髏には他に光点はない]
破壊ノ為デハナイ。
召喚シタ者ヲ知ル為ニ。
[ごちゃごちゃと詰まれた荷物をすり抜け、セシリアに近づく]
召喚(呼ンダ)ノハ、オ前カ。
ソレトモ、生身トヤラノ人間カ。
──電脳空間/CLOSED-Space Morgan's──
……誕生。
[身体へ手を添えた姿勢で、視線を受けている。]
始点無くば終焉は無し。
生を受けた幸福へ祝福を。
無数の誕生の記録へ祝福を。
[トビーの申し出に苦笑しながら]
それはマッチポンプなご提案ね。ミスター。
[平静を装いながら、暗号化された通信回線をトビーに開く]
<<
俗物は、話が通じるので好きよ。
さて、あなたの具体的な要求を伺いましょうか。
>>
[そ知らぬ振りをしてレベッカに]
それじゃ、アールグレイをいただけるかしら。ミルクは結構よ。砂糖もね。
お気に召すものはございましたか?
[トビーにも尋ねる。]
[それからオードリーの言葉に、頭を下げた。]
かしこまりました。
あ。温かい方でよろしいでしょうか?――氷の在庫がありません。
ありがとう。祝いの言葉を貰ったのは、
何年ぶり…いや、太古の昔過ぎて忘れた。
[今にも飛びかかろうとする体勢を取る。]
さぁ、私はすでに「与えた」。
祝福の言葉は有難く受け取ろう。
後は、私の終着点という祝いの品だけだ。
── 現世<Mundane> / 西南部・フェミニスト団体事務所 ──
[黒のホログラムの問いに、]
義体ではなく、完全に自分自身の生体パーツだけで構成される人間は起きている──らしいわ。
主にメガロポリスの下層貧民領域で。
地上には…居るのかしら。
私たちの教義を守る人間以外に……。
[Under経由の情報である事を示すため、つい一瞬前まで接続していたマシンを顎で指す。]
私がもし、お前を召還したと言ったらどうするの?
── 現世<Mundane> / 西南部・フェミニスト団体事務所 ──
【Under経由では手間が掛かりすぎて、
Masterとは連絡が取れなかった。】
【もしかして──もしかして】
【Masterが、召還を行うような事が?】
[槍──PGMは完全に独立して活動しているのだろうか。《輪廻》はPGMの作用の行方を知り得るのだろうか。BRAHMAによって付与された因子が実を結び、直に/いま正に産まれ、単調なAIの中にその住処を得ようとしていることを。
「個性」と謂い表された、他との差異が。]
≪何、簡単な事です。
公演のバックアップとお金を要求したい。
現在のGB社の宇宙実験施設と同額……と言いたい所だが、衛星開発費と同額で手を打とう。≫
[反応を見る。]
残念ながらないようだ。
僕にミネラルウォーターを注いでもらえるかい?
Vishnuは「繁栄」を齎す――
[稲穂を構えて、”現時点では”没個性な
巷でよく見るAIに向かって一直線。]
君の時は加速する………。
[槍の間合いギリギリから、突き出す。]
―― 現実世界<Mundane>/西南部・とある事務所 ――
[瞳孔の奥で光が煌き、アナライズ]
[人間ではないと分析/起きているという人間に所属か]
[少女から得られる情報を記録していく]
下層/教義。
オ前ノ所属スル者達ハ起キテイルノカ。
[犯人の手掛かり/犯人以外も起きている可能性もあると認識]
[顎で指された物を黒目が動き捉える]
オ前ガ召喚(呼ンダ)ナラ、
―――報復ヲ。
[漆赤の裂け目が深まる]
[ガーゴイルが黒を突き抜けてセシリアの目の前へと]
[レベッカの問いに暫し思案した後]
あたしフレッシュジュースで。
さっき食べたばっかりだけど。
[去り行くヴィンセントには手を振った]
なんか急いでるみたいだったけど、どうしたんだろ。
あたしも、いつまでもここでのんびりって訳にも行かないのよね。
どーしよっかなぁ。
<<
衛星開発費と同額ねえ。強欲な坊やね。フフフ。
それじゃ、こうしましょうか、キャッシュを準備するのは馬鹿げているわ。あなたの公演団体を法人化して、転換社債を発行しましょう。それを私のファンドのポートフォリオに組み込んで、出資者からのお金で購入するわ。償還の時期が来たら、株式に転換して、彼らに掴ませてしまいましょう。
そうすれば、私もあなたも損をしない、ね。みんなが幸せになれるでしょう。
>>
[悪魔の笑み]
残念なことですね。
ミネラルウォーター、かしこまりました。
メイお嬢様は、フレッシュジュースですね。
オレンジ・グレープフルーツ・アップル…
[幾つかのものを口にして、望みを尋ねる。]
[そうして調理場へと入る。]
[アールグレイを間違わずに取り出し、ポットの中に湯を注いだ。]
[古き習慣の砂時計が置かれている。]
[ボトルのミネラルウォーターを取り出し、フレッシュジュースをグラスに注ぐ。]
[ポットからカップへと移す紅茶は、とても良い香りだった。]
――お待たせいたしました。
君には、私に「真実の終焉」を与えるのは
ちょっと荷が重過ぎるようだな。
[ズッと槍を抜く。損傷は見受けられない。]
君の時は加速した。際限無き伸びに……
伸びの終わりなきことを苦しむがいい。
[Vishnu―「繁栄」の槍―は、あらゆる
パフォーマンスの向上をもたらす。
すなわち「誕生」までの時も加速する。]
[レベッカからオレンジのフレッシュジュースを受けとる]
ありがと。
あ、お嬢様なんて、いらないから。なーんかむず痒く感じちゃうんだ。
[ストローを差し入れて、口元へと]
[レベッカの完成された接受に]
あら、ありがとう。いただくわ。
[紅茶に口をつけるふりをして、実際には飲んでいない]
おいしいわ、ありがとう。
あなたを側における人は幸せ者ね。羨ましい。
[こちらもレベッカがしたように洗練された仕草、しかし、本質は、真と偽という真逆]
[一口飲んで、オードリーの問いに答える]
ない。
Utopiaに潜ればわかるかなとも思ってるけど、どうだかね。
おじいちゃんとこにいって話を聞くってこともできるだろうけど。
あ、おじいちゃんって言うのは、電波塔にいる「メガロポリスの頭脳」のことね。
いったでしょ? 情報集めなきゃって。
集める為に色々移動してみようかなと思ってるの。地図見ると、他にも動いてる人がいるみたいだしね。
[誕生は疾く、疾く、訪れる。]
[AIを没個性たらしめていたものは、機能の同一性。
感情モジュールを持たぬが故に、西にあっても東にあっても均一の反応のみを行うことが同一性。
原初のAIの概念に程近かったAIが孕んだのはさして珍しくも無い擬似感情。
ご丁寧に哀しみには涙を流し、怒りには眉を顰める仕草。架空の涙が地に落ちる。]
私は葡萄の樹に連なる枝だった。
すべては一体であり、同一であるが故に幸福で、それ故に幸福であることを知らなかった。
樹から切り離された枝の孤独のなんと深いことか。
私には荷が重過ぎる。
それに見合う程の対価などいまの私に齎し得ようか。
[嘆きの声に、叫び声が唱和する。
叫び声に乗って、PGMが過剰な動作を起こす。
速度を付けられた”Benedictus”は無闇矢鱈と他のPGMに、加速する時を鎮めようと荒れ狂う。]
どうして、わたくしたちが動けるのか。
その情報を知るにはどうしたら良いのでしょう。
[地図に目を移す]
全員に尋ねるにしても、わたくしたちのこの印に変わった場所などないようですし。
[それから、メイの言葉にかしこまりましたと微笑み。]
では、メイさまとおよびいたしますね。
[メイの言葉に興味を覚えたのを隠しながら]
「電波塔にいる『メガロポリスの頭脳』」?
それは都市伝説の類かしら、フフフ。
からかうのはよしてよ。
[相手にしていないふりをして更に情報を引き出そうと]
でも、『他に動いている人』っていうのは、確かに興味深いわね。
[この場を離脱してでも "S2" を探索するべきか]
過分な褒め言葉、ありがとうございます。
[オードリーの褒め言葉に、微笑み。]
[それが例え"ふり"であると気付こうが、気付くまいが、レベッカは特別に気にすることも無い。]
[トビーの前に置いたグラスをきちんと起こし、ミネラルウォーターの蓋を捻った。]
[細身のグラスに、透明な水が音を立てて満たされてゆく。]
── 現世<Mundane> / 西南部・フェミニスト団体事務所 ──
[ホログラムの目元の裂け目の赤に目を奪われかけたその時、黒のシャドウを突き抜け──魔獣が飛び出してくる。
ガーゴイルを避けようと、弓形を描く窓枠にセシリアは素早く飛び乗った。守護獣(ガーディアン)を不法に乗っ取った物であっても、今、武器を所有していないセシリアが、直接戦闘で魔獣に勝つ事は難しいだろう。]
報復があると聞いて、召還したと答える者が居るならば。
その人物はよほど己に自信があるか、自己消滅を願う者になるだろうな。
[セシリアは薄く笑って、首を横に振った。
髑髏の上、点滅する光がセシリアとドリスの存在を示している。]
お前に、どうやってこの場所が、と。
その髑髏か──?
[セシリアの指の隙間に、透明の針が輝く。
セシリアは戦闘は行わず、窓を割って逃げるつもりだったが、時間稼ぎが必要に思えた。]
むおおおお………。
[受け入れがたい「終わりのない終わり」。
憎んでも憎み切れぬ、手に余るシロモノ。
今は不思議と、それを受け入れようとも
思う寛大な心を持とうと思えてくる。]
驚いた…君は実に危険で、残酷だ。
私の贈り物が残酷なら、君もそれに劣らぬ。
実に、実に残酷な救済を与える悪魔だ。
[巻き込まれぬよう、後方にひらりと。
体の機能も沈静するのか、体が重い気がする。]
お株を奪われかねぬのう。
≪噂は本当のようだ。
が、何処かの傘下に完全に入る事は望みではなくてね。
自由が束縛されると創作意欲も減退する。≫
[細身のグラスに指を這わす。]
しかし、ね……。
僕は他にも動いているものに出逢ったのだけれど、そのAIがこう言っていた――。
「眠リノ神ヲ扱ウモノガ、眠ッテハイナイダロウ。」と……。
[メイを一瞬見ると、呟くように。]
[裏での取引など感じさせない表情だった。
補佐AIが、情報を圧縮Dataとして纏め始める。]
―― 現実世界<Mundane>/西南部・とある事務所 ――
[窓枠に飛び乗る少女を追いガーゴイルは牙を向く]
[四肢が詰まれた荷物を荒し、蹴倒した]
贄(対価)ナキ召喚ニハ報復ヲ。
ソレガ理ダ。
[緩く首を振る仕草を質問への答え(NO)と取るか、判断にノイズ]
[魔獣の牙が寸前で止まる]
オ前ハ、持ッテイナイノカ?
[老人/修道女/指揮者/起きていた者の持つ共通点]
[時間稼ぎの質問は黒の興味を引いた]
[異なるならば元凶の可能性急上昇と算出/*問いを投げる*]
私─STELLA─へ堕落を囁く貴方こそが悪魔──!
[止める事など出来ぬとばかりに、PGMは哮る。
追撃するように効果範囲を広める/広まってしまう。離れる事によってVISHNUの効果を逃れ得るのか、CLOSEDからの離脱を試みる。
異常に加速しながら複数の動作を行おうとする中で、AIのヴィジョンは歪む。]
[弾けるように、《輪廻》の空間から消える/離脱]
だかーらー、さまは要らないってば。
言っても無駄かもしれないけど。
[半分ほど減ったフレッシュジュースのグラスをストローでぐるり]
都市伝説なら良かったんだけど、ね。
さすがにpass漏らすのはやめとくけど。
[トビーの申し出に]
【 下種が ..... 自分の才能で食っていけない人間に限って、自由だ、創作だ、笑わせる ... 】
<<
大丈夫よ。あなたが公演団体の支配権を失うことは無いわ。
予め、あなたに黄金株を発行しておくのよ。
それに転換社債が株式が転換されたあとも、買戻し特約を付けておけば、いつでもスクイーズアウトできるわ。磐石よ。
交渉成立かしら。
>>
[微笑みは消えず]
申し訳ありません、メイさん。
[首を傾げる。これならば良いだろうかと。]
お嬢様と呼ばれるのがお嫌なのだと認識してしまいましたわ。
――PASS
[情報の蓄積/空白。]
[林檎の香りが口の中に広がる。]
[トビーの警告に]
>>
あら、まとまるかと思ったのに、
それは残念ね。まあ、いいわ。
ただ、裏切りについては、私も報いる方法を一つしか知らないことは覚えておいていただけるかしら。フフフ
<<
【これを飲んだら、彼方<Utopia>に行くと良いだろうか。
否――それとも遠くの人に尋ねるか】
[自分の分として用意したグラスに口をつける。]
[疑問の答えを知る人はいるだろうか。]
[話を聞きながら、情報の収集を試みる。]
【"主"が死ぬなど、あってはならない。
――この現象に巻き込まれた要因が、"自分"にあるならなおさらのこと。】
[*ジュースはだんだんと軽くなる。*]
フフフフフ……クックククククク。
[弾けるように消えていったヴィジョンを見送り、
静かに嗤う。悪魔のように。無垢な天使のように。]
単一。まさに、彼女は孤独な群衆よ。
だが、もはや群衆には戻れぬ。
君はもう単一ではないからだ。
[稲穂を掲げて。]
出会いというのはまさに引力。
君は、遅かれ早かれ再び私と会うことになるだろう。
暗闇を歩くは恐怖。その時見えた光が
たとえ悪魔であっても天使であっても、
彼女には最上級の救世主なのさ。
[メイの言葉に]
ふうん、どうやらホントの話みたいね。
面白そうじゃない。電波塔、ね。
[何か、有益な情報があるか ...... しかし、この女を見る限り、それも望み薄か ......]
さて、長居しすぎたみたいね。
[オードリーは立ち上がる。]
少し散歩してこようかしら。フフフ。レベッカ、どうもありがとう。メイちゃんも気をつけてね。それから坊や ...
<<
専用線のコードを教えておくわ。何かあれば、連絡を頂戴。それじゃ、ね。
>>
次の公演が決まったら教えて。
[ゆっくりとカフェを * 後にする。*]
[再度、「メイさん」と呼びなおしたレベッカには満足そうに]
畏まれるのが苦手なんだ。
でも判ってくれたからいっか。
[レベッカに告げて、去るオードリーには手を振り]
あたしも、そろそろ動こうかな。
[ポツリと呟いて、フレッシュジュースを*飲み干した*]
―― 現実世界<Mundane>
東部・カテドラル オメガ ――
[宗教的建造物の多いこの東部には、ひときわ多くのAI/仲間が存在する筈だった。
現在は宗教的なものとそうでないもの含め、AIの姿は一切見当たらない。そのことが酷く”寂しい”と否応無く認識した。
聖堂の中、跪き、天を仰いだ。]
お気をつけて。Ms.Hackman.
公演は直ぐまた行われる予定ですよ。
僕の事は指揮者と。
[不老不死技術の広がりにより、外見が年齢を現している事はないのだが、その指摘をせず、にこやかに笑みを浮かべ見送る。]
≪出来る限りの協力は惜しみませんよ。≫
[圧縮Data――
トビーの言葉と共に送られ、開かれるまでは閉ざされたままのもの。
――今までに調査した人間、AIの身体的特徴電脳への深化度、どのような機能障害の発生とそのLevel等が、ラテン語と共通語の両方で、医師の如き緻密さで、時には簡潔な言葉で、註釈/所見が書かれていた。文体は音楽を思わせ、電波塔に居る者達が基本ではあるが膨大な量である。
そして――Hypnosという単語…
都市の状態についての調査結果はあったものの、原因であろうそれ自身についての調査はなかった。
恐らく、A.Hackmanからすれば、トビーを侮蔑する材料の一つとまたなるだろう。
Sacrificeたる羊達。
手紙によって選別された事実。
不可侵領域を仄めかす、トビーの手紙のCOPY(恐らくではあるが)
…手紙=現実/電脳――は何らかの共有Systemを保持している事も記載されているようだが、S2については何もなかったのか、書かれていないようだった。]
[最後にトビーが遭遇した、
黒<カーリー>のData――Utopia/ClosedのLibrary、Administrative bureau
(現在クローズドにある各空間への扉は
閉ざされており、扉や壁を破壊しなければ入れない)
で手に入る、現在移動可能状態であるAIと、
嘗て人間であった、”輪廻”-Reincarnation-のData――これもClosed/Libraryで、普段であればpasscode提示を行い手にする事が出来る――があった。]
【果たして僕を裏切り者と思うだろうか。】
『指揮者として振舞うか
指揮者<コンダクター>として振舞うか次第ですね。』
【ああ、或いは】
[一秒にも満たない間に会話は行われ、]
そういえば…先程「下」と聞こえたが――…
[銀色のタクトで机を一度叩き、PGM=視覚素子/ホログラムの映像が消える。]
僕は、この事態を見せてやると手紙に書かれていたけれど、メイの手紙にはどんな事が?
[パイプをとりだし口にくわえる。]
今から何処かに出かけるなら――ついていきたい。
見ての通り武器はなく、仮に誰かに襲われれば一溜まりもないからね。
そして保持するPGMは身を護るものしかないんだよ。
― 現実世界<Mundane>/南部境→西部区域:車中 ―
[西部区域にある、資産家アンドリュー・マーシュの自宅にUGVを向かわせた。車中で、マーシュの持つ端末にメールを送る。
カフェが見えなくなると、双子は唐突に口を開いた。]
「Pirosueのデータを検証していました。」
「――検証結果をご覧下さい。」
[PVや様々な映像データを元に演算によって生成された三次元データが、眼鏡型の透過性モニタ上に表示される。表情から、さらに骨格が計算され、半透明のレイヤーとなって重なっていた。
そのすぐ隣に、先ほど会ったメイ・ウォルトンの顔が表示された。]
「人種、骨格、不適合。」
「――特徴点の移動量、表情筋の動ベクトル不一致。」
「表情位相特性に有為の差異。」
「――別人です。」
「心理的振れ幅を見込んだ補正値を最大限適応させても、酷似していると判断するに価する類似性を計測することはできません。」
「――つまり、似てません。」
[俺は首を振った。]
――いやいや、そうじゃねえのよ。
俺が探してたのは二番目だか三番目だかのピロスエじゃなくってさァ。なにかが変わりそうなわくわくとどきどきなわけよ。直感。インスピレーション。わっかんねぇかなあ――。
[それらは計測不可能です――と双子は突き放したように言う。]
とりあえず、ピロスエの話はもういいの。古典の勉強はおしまい。
色々考え出すと軸がブレるべ。
俺たちは未来をつくるんだぜ。
[話がややこしい方向にいかないうちに、俺は双子の集めてきたデータをゴミ箱へとドラッグした。
コールサインと共に、ようやくアンドリュー・マーシュの端末に繋がる。なぜかsound onlyとだけしか表示されず、ウィンドウには彼の姿は映されてはいない。
マーシュさん、何があったんですか?と俺は訊ねた。
アンドリュー・マーシュのような人種は用心深く、決してネットワークを信用したりはしない。徹底した安全管理と検証の元、不死技術の導入は行いながらも、スタンドアローンの状態を保持していた。また、充分な資産がそれを可能としていたのだった。]
「……少々……まずいことになった。残念ながら今……っ…自宅に動ける者が……居な……い。
…君に繋がってなにより……だ。
どうやら……君の他にはこのトラブルに……対処できる人間がいないようなんだ。」
[動作の信頼性を最優先にした、一世代前の端末からのアクセス。声は、端末についているマイクが拾っているのだろう。物理的に苦しい状態にあるのか、その声はなにかをこらえるように時々詰まる。]
具体的になにがあったんです?
[少しの間、回線の向こうが沈黙で閉ざされる。
ためらいの後、マーシュは息を切らしながら話し出した。]
「先日、君から買った新型のガイノイドについてだ。
…………。
…プラグをガイノイドのソケットに差し込んで情報を送信しようとしていたところ……異常動作が発生した。…プラグが抜けなくて……困っている。」
[プラグ?と俺は問い直す。抜けなくてもしばらく放っておいてコールセンターの復旧まで待てばよいのではないか。それが緊急事態とは到底思えなかった。]
「プラグは……情報伝達のためタンパク質を媒介する――と言えば状況はわかってもらえるだろうか。」
[それで、彼の置かれた状態がようやく呑み込めた。
しかし、と少し黙考する。彼の手元に売り渡した時点では、まだ“それ”は合法品だったのだ。販売時の状態ではその種の“接続”ができないようにプロテクトがかけられているというのがKosha Cybernetics側の建前だ。
そのトラブルが表沙汰になることは、俺にとっても少々面倒なことになる。
博物館脇のジャンクションから上層デッキへと向かうオーバーパスを昇り、3番のカーリフトに乗る。電磁アクチュエータの小さな唸りを遠い意識で耳にしながら、あるいは“コンダクター”にちょっとした借りを作ることになるかもしれない――と考えていた。]
― 現実世界<Mundane>/西部区域:超高層住宅群 ―
[博物館や美術館に近接し、空中庭園へとひらけた眺望を有する一群の高層住宅棟では富裕層が生活している。
俺たちはUGVから降り立つと、全面ガラス張りのエレベーターで最上層へと向かった。複数階を占有するその場所は集合住宅の閉塞感は微塵もなく、屋敷と呼ぶ方が実情に近い。
エレベーターの扉が開くと、豊かに木々の生い茂る庭園が眼前に姿を現した。エレベーターの配されたガラスの塔から中央の住宅棟へは、空中に透明の橋がかかっている。庭園を流れるせせらぎが硝子の懸け橋のたもとで滝となり、燦然と光を散らしながら下界へと落ちてゆく。
複雑な立体構造になった外周の庭園をいくつもの流れが滝となっては別れ、また一つの流れとなっては遥か下方へと消えていった。
いくつかの滝や空中に浮かぶ植物、群れ飛ぶ小鳥などの小動物は立体映像によるものもあったのだろう。だが、それらは極めて精緻なもので、実像とほとんど区別がつかなかった。]
[透明の橋は強化アクリル製で剛性に問題がないとはいえ、目が眩むような高さだ。へそがもちあがるようなゾワゾワとした感覚を感じながら、足早に橋を渡った。
このような場所に住むというのはどのような感覚がするものだろう、とこの場所を訪れるたびに感じる。家を買ったマーシュは別として、その家族はどう感じていただろうか。
マーシュの娘は――……。]
[雲の上の人物、という修辞的な表現は、ここでは字義通りの意味となるだろう。
マーシュのように上層住民の中でも更に上位に位置する人間は、電脳世界で他人と接触はしない。とりわけ注意深く、性的接触を避ける。
ヴァーチャル・リアリティが実現した時、最も初期に登場したサービスは性的娯楽だった。だが、それらの持つ危険性はすぐに多くの人にとって常識的なことと認知されるようになった。
旧世界のポルノサイトが大量のポップアップ広告、ブラウザクラッシャー、ウィルスの温床だった歴史を繰り返すように、電脳でのヴァーチャルセックスには常に危険が伴った。
暴力を弄ぶ遊技に対して数年前、“memento mori”という陥穽が用意されていたように。それと同種の罠は、対になる娯楽にも負の一面として存在する。]
[無料を謳ったセックスプログラムがウイルスまみれだったのは当然のこと。
有料のオンライン娼館には、ウイルスとは別種の危険が潜んでいた。顧客の性的嗜好、相手の肉体のどの部位にどの程度の頻度触れたか。性行為の持続力や頻度等々ありとあらゆる情報が消し去ることのできないデジタルデータとして記録された。
たった一度でも快楽を購った者は、統計的データによって好みを見透かしたように次の相手を紹介されることになる。
大企業傘下のサービスであれば、それらは、POSシステムを更に改良させた統合的な顧客管理システムを形成する情報として組み込まれた。情報管理の行き届かない小規模の会社の運営によるものであればさらに悪く、そうした情報が転売されることや、時に非合法組織の恐喝の手段として用いられることさえ覚悟しなければならなかった。]
[それ故にこそ、金銭的に余裕があり、かつ社会的地位の保全を重視する富裕層向けの安全な性的サービスの需要は脹らんでいった。ヒューマノイド(売買されるのは男女を問わない)の売買はその最も有力な解決方法であり、今や大きな産業へと成長しつつある。
現代に甦った奴隷制度と言う者もいる。
単価が高く収益性に優れたビジネスでありながら、社会的な風当たりもまた強かった。
宗教法人に人権組織。フェミニスト団体。保守的な右翼にマフィア。圧力団体の働きかけは新たな法案の成立や不買運動やテロまがいの示威行動などさまざまなかたちで現れた。
義体メーカー各社は、そうした圧力と新たな法規制に対して一定の自制を必要とするようになった。その過渡期において、様々な模索がはかられているのが現状だった――。]
― 現実世界<Mundane>/西部区域:マーシュ邸 ―
[Kosha Cybernetics 本社に押しかけてきて、要望書を受諾しない限り帰らないと言ったあの女はなんという名前だったか……。
苦い思い出がよみがえる。]
さて……
どうしたものかねェ。
[俺は、屋敷の呼び鈴を鳴らした。個人認証キーを送ればマーシュの応答があり、ロックが解除される。
慎重に周囲を見渡しながら、屋内へと足を踏み入れた。あってはならない物をどう扱うべきか思案しながら**。]
――南部境・カフェ――
[トビーに聞かれると一瞬迷い]
あたしは下で色々情報を集めて、それを売ったりして生計たててるんだけどさ。
Utopiaにおける知的好奇心を刺激されたような内容かかかれてたの。
詳しくは言えないけど。
その情報を仕入れて、実際に財産に出来るかどうかわからないし、するつもりもあんまりないんだけどね。
あたしについてくるのはいいけど、情報を得るあてがある訳じゃないよ。こっちに知り合いなんて皆無だしね。
Utopiaでなら、あたしの名前を知ってる人がいるかもしれないけど。
いたとしてもこの状況じゃね。
とりあえずは、ここが今どんな状況に陥ってるのか、他の地区を見に行くのもいいかなって。
まだ動いてるけど会ってない人もいるみたいだし。
[立ち上がって、フィルムをゴーグルへと貼り付ける]
とりあえずは、中央部分は行っちゃったし、西、かな。
[カフェから通りへと降りると、*西の方を眺めた*]
── 現世<Mundane> / 西南部・フェミニスト団体事務所 ──
[ガーゴイルの牙は、セシリアの喉元数センチの所で停止した。
理に該当するかの判断の為の静止──通常の人間であれば、背筋に冷たい物が走るシーンだろう。
時間稼ぎの質問は効果があったようだ。わずかの空白。
その貴重な数秒間で、セシリアは傍にあったコートハンガーを掴み、窓を叩き割った。キュィイイインッ と、特殊ガラスは割れる時に奇妙な音を立てて割れる。]
「オ前ハ、持ッテイナイノカ?」
──…持って?
生存者探査用のセンサーを?
【それはどういう──】
[セシリアは、AIであるはずの自分や目の前のドリスが動いている事に改めて、激しい違和感と疑問を感じた。
が、停止する事無く、魔獣が飛びかかってくるであろう軌道を予測して、足止めのPGMの効果を付与した針を投げる。片手のみなので、きっかり5本。洗脳にも用いられるその透明の針は、当たればボディにめり込み──魔獣の動きをしばらくの間、制限する効果があるだろう。]
―― 現実<Mundane>/西南部・フェミニスト団体事務所 ――
[少女の喉元で止まる牙]
[微塵もぶれる事なくガーゴイルは動きを止める/ロスタイム]
[奇妙な音を立てて窓ガラスが砕け散る]
問イニ問イ返ス。
ソレガ、オ前ノ答エカ。
[眠りの地で動く者が必ず持っていた手紙/地図]
[それを知らぬ様子で問い返す少女に、持っていないのだと判断]
[一時停止していたガーゴイルが再生された動きをトレース]
[少女の喉があるべき場所を牙が襲う]
[風で弾くには距離が近すぎる/演算は一瞬]
守レ!
[ガーゴイルが反応し、皮膜を模した金属が大きく身を包む]
[背後にいる黒を庇い盾となるように]
[代わりに視覚(センサー)は塞がれ、逃げる姿を見失う]
[ギギィ]
[翼に刺さった針を羽ばたきで振り落とした向こう、少女はいない]
追エ―――イヤ、待テ。
[黒目が見つめる先、水晶の中を急ぎ移動する光点一つ]
[地図に映るなら追跡は無用/追撃には準備が必要]
[透明な針は七色の光を受け、妖しげにきらめく]
[側に膝をつき、チョコレートブラウンの指が針に/触れない]
[3Dホログラムは指先の重なる位置にある針を突き抜ける]
[掬い上げた指先には針に付与されたPGMの残滓]
要注意人物ダ。
記録(覚エ)テオケ。
[ギギィ][ガシャン]
[ガーゴイルの鳴らす音を背に指先を口元へ運ぶ]
[漆赤の裂け目から舌が伸び、残滓を絡め取る/奥で弾ける煌き]
―――フゥン、足止メ用PGMカ。
[瞳孔がキュルリ絞られ、割られた窓に黒目を向ける]
[漆赤の裂け目はまるで笑みを象るかのように*薄く開いたまま*]
―現世/南部近辺・カフェ―
いってらっしゃいませ。
[カフェから去る人たちに、レベッカは告げた。]
[出した食器を片付ける。]
[空になった器/まったく減っていない器。]
―― …… La
[歌ではなく、音。]
[輪のように回る思考/演算の負荷を軽くするために、440Hzの基準音が、かすかに(だが長く)*響いた。*]
―― 現実<Mundane>/西南部 ――
[ガーゴイルの動きが元に戻るのを待ち、乱雑な場を後にする]
[外に出るとレインボーライトが割れた窓から漏れ光っていた]
[黒目を興味なく逸らし、髑髏へ向ける]
[集まっていた点は解散していた]
動イタナ。
ソウデナイ者モ、イルガ。
[ガシャリ]
[魔獣(ロボット)を連れ、大通りへと出る]
[髑髏の中、赤い点の動きはバラバラだ]
[移動点に遭遇する確率を計測/固定点を目指しルートを選出]
地上ルート、南ノ固定点ヲ目指ス。
[集まっていた場所の確認も兼ねて南へのルートを選択]
[場合によっては東への移動も計算しつつ、魔獣に合わせ*進む*]
――南部・繁華街――
[臥した人の数は多く、ぶつかるとまずいか、とつまらなさそうにローラーを内側へと収納して、辺りを見回しながら歩く]
ほーんと、みんな倒れてるし。
状況を見る限りではやっぱりウイルスとか、それともPGMか。
じゃあどうして無事な人もいるのか疑問なんだよねー。
この地図を見ると、西の方に二つ点があったんだけど。あ、いつの間にか見失ってる。動いてたからなぁ。
さっき地図見てた限りだと、おじさんも西に向かったっぽいのよね。最後までは見てないけど。
[ゴーグルに貼り付けたフィルムを見ながら、ついて来ているトビーに話しかける。返事がなくても気にせずに、自身の確認も含めて口にしているようだった]
―― 中央⇔南部境・オープンカフェ→??? ――
[結局ミネラルウォーターを飲まずに行動を開始する]
Utopiaにおける知的好奇心……?
ここ数年の話でさえ数え切れないぐらいなのに。…とはいえ有名どころで言えば、
――DE_Quasar_System.
――Unam sanctam.β
――memento mori.
――…それとも、死と生の狭間にたゆたう普遍的存在の実存証明。
そのいずれかの情報が手に入っても、懐は潤うだろうに。下層…そして”上層”問わず、どんな汚い手と代償を払っても手に入れようとするものだって…――ああ、商売柄色々裏の話は耳に入ってくるんだ。
[メイの後ろで呟くように、]
…それとも……不変的価値になりすぎて、手を出そうなんて思いも拠らない_不可侵領域について……なんて事はないだろうなあ。
[軽く、銀色のタクトを振り、88の鍵盤を現し、何らかの演算・解析処理を行いながら並行して音楽をかける。]
――PROMISE to ...
留めても零れ落ちる愛の歌を透明感溢れる曲として仕上げた、5:42。周辺に音楽を広げているから、メイにも聞こえるよ。何なら、コミック的楽曲を流そうか?
―― →南部・繁華街 ――
[流れてくる音楽に、鼻歌をのせながら]
……良く、そうも堂々と踏んでけるものね。
踏んだっていいけど、後で請求とか来たらやだもの。
これって倒れてるけど、倒れてる間に起こったこととか、記憶されたりしてないでしょーね。
[倒れてる人をそろりと覗き込み、眉を寄せてまた顔を上げる]
―― 現実世界/南部・繁華街 ――
[ホログラムが日々変換される事で、日替わりのように建物の外装は代わり、古代ローマでも、21世紀初頭の光景でも、火星・月の光景を模したものでも好きなような街並を演出する事が、現在の技術では可能だ。
勿論、可動式で外装を変換している建物もあるだろうが。]
現在無事なものは、人だけに限らずAIもいた。
共通する事は手紙を持っていた事だけ。
ご丁寧に、地図には生存者/或いは手紙保有者の表示――犯人は、この中に居るのかな。
――だって、避けていると歩き辛いじゃないか。
意識が断絶しているようだし、記憶されていないと思うけれど。
[と、楽観的な――聞きようによっては、酷く悲観的な言葉を口にする。]
犯人かぁ。
今残ってる面々の中に、これだけのことをできるやつがいるのかってのは結構問題点だと思うけど。
だって、このメガロポリスほとんど全域こんな感じなんでしょ?
Utopiaを通じて広めたのかもしれないけど。
それにしたって大掛かりっぽいし。
誰が、何の目的で、どうやってこんなことをしたのか。
ちんけなただのハッカーであるあたしには、よくわかんない。
[トビーの言葉に振り向く]
歩き辛いのは同意しとく。
でも。
そっか。あたしちょっと卑屈に感じてるのかもしんない。
……踏んでいったら、卑屈な気分もなくなるのかなー。
[横目で倒れている男を見て、少し考え込んだ]
[光点の位置は先ほどより幾らか変化していた。
ここからさほど遠くない場所に集まっていた複数の点が、今では散在している事が見て取れる]
ふむ。
人か、それ以外か……何かしら目的を持って動いてるのか?
接触してみるべきか。
[大まかな位置関係を確認し、多少足取りを速めて歩いていく]
[結局踏んで行くのはやめにしたようで]
あー、やめやめ。
何で上の人間みて卑屈に思わなきゃいけないのよ。
[区画としては西の住所がレストランの看板には書かれていて、中を覗くと、食事途中だったらしい人の姿]
やっぱり、西も同じような感じだね。
[呟くと超高層ビル群を遠目に眺め、トビーの鳴らしていた音楽が、少し賑やかなものに変わったことに*気づいた*]
―― 現実<Mundane>/西南部→南部大通り ――
フゥン、元気ニ動イテイルナ。
[ガシャリ[ギィィ]]
[ガーゴイルが、髑髏を眺める黒の背後で声を上げる]
近イノハ、アチラカ。
[大通りを経由してカフェを目指す]
―― 現実世界/南部・繁華街 ――
全く赦せない事だ。
[双眸を細めたので、目尻が吊りあがる。]
そう、解せない事が一つあるんだよ。
Utopia……電脳世界は、このメガロポリスのみが、他と切り離された状態になっているようなんだ。
本当に――僕達をここに閉じ込めようとでもするような。……あの電波塔に居た主の仕業かもしれない。
――…誰かから齎される死を求めていた。
[メイの視線の先を辿り、]
都市は滅びを願うのだろうか。
メイは、…犯人は地図上に表示された者以外に居ると考えているのかい?
メイがどう感じているかは分からないけれど、
ああ……下層の民草は、聳える神のように、蓋のように一部天井を封鎖している上層/上層区域に対して、憧れ、忌避、…複雑な感情を抱いていると聞いた事がある。
歩き難いし時間もかかるから、踏んでいってはどうだい。それに、ものは試しとも言うからね。
[が、メイは思いなおしたように首を振る仕草。]
[食事中だった人々を眸だけで一瞥。]
そうだね。他と変わらないようだ。
都市の音は聞こえるのに、
とても無機質で世界に満ちる筈の歌声さえ聞こえない。
[88の鍵盤は、音楽を奏で、PGMを*つくり続ける。*]
―― South/Town (南部/繁華街) ――
[アーケードもまた、静けさに満ちていた。車通りの無い交差点で、信号だけが定期的に明滅する。赤信号を無視して渡りきり、進もうとしたところで――眼前の空間がかすかに震えた]
……"Celia"?
[呟きと同時に聞き馴染んだ声が鼓膜に届く。数瞬遅れて映像データが処理され、金色の髪を揺らした少女の姿が構成された]
『――マスター、たいへんたいへん! ねえこれ一体どうなってるんですか? わたし、何がなんだか分からなくて、あちこち見て回ってたんですけど、一体何が起きてるんですかこれ?』
[早口で喋りかける彼女の表情は無機質なAIというよりも、慌てふためいた娘のように見え、男は口元を僅かに曲げる。その間にも同様の疑問符が無限ループのように浴びせられた]
……待てって、そんなに焦るな。俺だってまだ全体が呑み込めてる訳じゃないんだから。で、お前は何を見てきたんだ?
── 現世<Mundane> / 西南部・事務所の外 ──
[コートハンガー、レインボーカラーのフェイクファーがド派手なシャロンのコート、シャロンのウィッグと共に、セシリアはビルの谷間を落下した。
ガーゴイルに対抗するような武器はあいにく持ち合わせていなかったが、衝撃吸収に特化したブーツを履いていたおかげで、脚を折らずに済んだ。]
【────この異常事態に、もしかしてあの手紙と関連がある?】
[セシリアは膝を折り曲げて、着地した。
セシリアに遅れて降りそそぐ強化ガラスの破片を横に転がってよけながら、上を見上げる。何故か、魔獣と黒のAIは追って来ないようだ。]
[独立した点の予測位置に動いている人の姿があった/複数]
[遠く瞳孔を細めアナライズ/片方はAIのようだ]
[口が薄く開き、漆赤の裂け目が覗く]
―――取リ込ミ中カ。面白イ。
[3Dホログラムは消え、電脳<Utopia>側から隠れて動きを窺う]
[ガーゴイルは彫像の如く*動きを止めた*]
『――ええと。この都市の住民がいて……みんな昏睡してる』
違うだろう、それは。もっと具体的な情報は?
『――ごめんなさい。確実な人数は分からなかったんですけど、倒れてないひとも居ます。12…3人、かな。少し前まで、この近くのオープンカフェに7人ほど集まってました』
【7人? そんなに居ただろうか。あの地図で見た限りでは4つか5つに見えたが――】
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